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連載

その後のエルフ森&活動拠点移動

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 木を切られたことにより増えてしまったモンスターの数が減り、鎮静化したと判断されるまでリアルで一週間と三日もかかってしまった。これだけの時間をかけてやっと鎮める事が出来た事からして、エルフの人達が無断で木を大量に切り出していった連中に重罪を課すのは当然だなと納得させられた。幸いにしてエルフの皆さんの中から死者は出なかったようだが、やはりある程度の重軽傷者は出てしまった。

 そして、今回の事を聞いたプレイヤーの一部は森のモンスターを討伐して、沈静化を図る手伝いをしていた。無断に木を切り出して私腹を肥やすような連中とは違う、という事を証明したかったと言っている人も居る。自分達と同じ出身の者が迷惑をかけたのだから、と。幸いエルフの皆さんも、そうやって手助けを申し入れた人と協力態勢を取ってくれた。

 この行為により、エルフの皆さんとプレイヤー達の関係が悪化することは何とか回避される事になる。森が沈静化した後も、もうしばらくは様子を見ると宣言してエルフの村に滞在するプレイヤーはそれなりに居るようだ。

「何とか治まったわね。貴方達の協力もあって助かったわ。予想以上に数がいたから、私達だけではちょっとまずかったかも」

 支度を整えながら、ルイさんが今回の事件を振り返った。そう、大討伐とまではいかないが……最終的にかなりの数のモンスターが森の中に沸いてしまったのだ。その為蹴りの修行は急遽中止、使える手段全てを使ってモンスターを倒す方向に切り替えざるをえなかったほどだ。そのため、あるプレイヤーが今回の事件とその顛末、援軍要請を掲示板に上げた。それを見た人達が駆けつけてくれたおかげで何とかなった、という事になる。

「本当に木を切り倒した連中には怒りを覚えますよ。これだけ大勢の人に余計な負担を強いたのですから」

 今回の事件を引き起こした連中は、何者かによってその顔などが大きく公表されている。これまた掲示板からの情報に過ぎないが、彼らはプレイヤーからも、こちらの世界の人からも何も売って貰えない状況に陥っているようだという報告もあった。顔が公表されている上に、特徴的な腕輪と足輪がついているのだからごまかしようがない。彼らはこれから時間をかけて、行った罪による償いをしていくことになるのだろう。

「さて、それはそれとして。アース君、ちゃんと宿屋は引き払ってきたのよね?」

 ルイ師匠の言葉に自分は頷く。エルフの森でモンスターの大量発生が沈静化し、こう言っては何だが蹴りの修練相手も居なくなった。また、訓練に刺激を与える為にも場所を移して訓練内容も代えようとのルイ師匠の言葉に自分は同意し、今日からはダークエルフの里に出向くのだ。行くのも久々だし、いい刺激になると思う。

「戸締り良し、火の元もよし! じゃ、行きましょう!」

 ルイ師匠の家はきちんと戸締りが行われたが、近所の人にもしばらくダークエルフの領域に行くので家の事はよろしくお願いします、と頼んであるそうだ。リアルだとそう言うのって少なくなったよな……お隣がしばらく旅行とかで確実にいないと分かるや否や、犯罪行為に走るバカも居るわけで……少なくとも、こうやって後の事をお願いしますと頼み、周りも気にせず行ってきなと送り出す光景はまず見ない。何とも寂しい気がするな。

 ダークエルフの街に行くために森に入るが、向かう途中で出会うのは動物だけだ。もちろん万が一に備えて警戒は解いていないが、モンスターと出くわすような空気はない。森の空気も穏やかで、先日までのピリピリとした嫌な感じも受けない。沈静化が発表された昨日までは、森の中に入ったら〈義賊頭〉関連のアーツにいろいろとひっかかってたからなぁ。第六感的な悪寒もセットでついてきたし。

「森が穏やかな状態に戻ってよかったなぁ……」

 ついボソッとつぶやいていしまったが、ルイ師匠の耳には届いてしまった様で「ホントね。大討伐でもないのにあんなことになっちゃって……死者や取り返しのつかない怪我を負った人が出なかったのは本当に良かったわ」と同意された。確かに、その通りであるな。元々人口がそう多くないエルフの皆さんなのに、更に数が減ってしまったらかなり不味い展開になる。最悪種族が消滅するとかね。

 そんな嫌な展開を回避できてほっとしている自分やルイ師匠を案内するとらちゃん。時々チチチチチ……と言った鳥の鳴き声も聞こえる。そんな穏やかな空気を維持したまま、森を抜けてダークエルフの街の到着した。ダークエルフの街は今日も活気にあふれている。

「メイドさ〜ん、こっち向いてー!」「ああ、ここは楽園だ。楽園はここに有ったんだ」「ああ、こっちに永久移住したい。そしてメイドさんと仲睦まじく暮らしたい」

 ──活気にあふれている。さて、まずは宿屋を見つけて腰を落ち着けないとな。って、なんかルイ師匠がそわそわしているな? 何か問題が発生しているのか? 念のために周囲の様子を《危険察知》にて念入りに調査したが、これといった害意のある存在とか危険な感じのするものは見つけられない。なんだ?

「ね、ねえアース君」

 緊張した面持ちで、ルイ師匠が自分に話しかけてきた。何だろう、修行の内容の発表なのか? それとも何かしらのトラブルの前兆を感じているのか? 何を言われても良いように身構えた自分に、ルイ師匠の言葉が続く。

「やっぱり男の子って、メイドさんが好きなの?」

 この言葉を聞いたとたん、脱力してorzの体勢になってしまった自分。緊張して損したと言うべきなのか、はたまたそんな事で済んでよかったと安心すべきなのか……頭に乗っかっていたアクアも「ぴぃひゅ〜〜……」と、まあ何とも気の抜ける鳴き声? を発していた。そうか、アクアも緊張していたんだな。

「ど、どうしたのアース君!? ほら、しっかりして」

 こんな態勢を取ってしまう原因を作ったのはルイ師匠、貴女なんですけどねえ。そんな反論をしても暖簾に腕押しか。それは置いといても、ルイ師匠がそんなことを口走ってしまうのも無理はない。何せそこらじゅうにメイド服 (クラシックロングスカート)を着たダークエルフの女性と、声をかける男性の姿が多数見受けられるのだから。この場合の男性はプレイヤーに限った話ではない。本当にダークエルフの街がメイドの街になりつつあるな。

(あの時の自分を殴りたい)

 広がる原因の一つを作ってしまった当人としては頭が痛い。今日はもう宿屋に戻ってログアウトしよう……メイドは嫌いじゃないけどさ。ここまで流行ってしまうのもなんだかなーと思うわ……幸いダークエルフの皆さんも、嫌々やっている感じがしないのは救いかな? 楽しんでやってる雰囲気ではある。

「街に帰る時、一着ぐらい買おうかしら? あそこで買えるみたいだし」

 そんなルイ師匠の言葉にん? となった自分は、ルイ師匠の見ている方向を向く。そこには『メイド服、仕立てます』『ダークエルフ名産、メイド服をお土産に如何でしょうか!?』などのうたい文句が書かれた店が……いかん、本当に頭痛がして来た。掲示板でもメイドカフェがいくつもできているとかの書き込みを見たような気がするが、勢いがますます強まっているぞ。なんでこうなったのよダークエルフの皆さん。

 そんな頭の痛くなる光景を横に置いといて、宿さがしである。幸いこれはすんなり見つける事が出来たのだが、部屋の取り方でルイ師匠と揉めた。自分は個室二つを提案したが、ルイ師匠は二人一部屋を提示。お互いの言い分だが、自分は『恋人でも親子でも夫婦でもない異性が二人一部屋はまずい』。ルイ師匠は『二人一部屋の方が安いし、アース君の事はエルの事もあって信用している。それに、師匠と弟子なんだから同じ部屋に居ても問題ない』。

 お互いに譲らず、宿屋の御主人を困らせてしまった。これ以上言い合ってもきりがないと判断した自分がここは折れる事にした。ちょっとだけ勝ち誇った顔をしたルイ師匠が部屋のかぎを受け取り、同じ部屋に。部屋は三階になる様だ。部屋に入って一息ついたところで、ルイ師匠から今後の大まかな指示が下った。

「とりあえず、ここでも最初は蹴りのみを使って魔物たちと戦ってもらうわね。貴方の妖精と私は、危険だと言う状況になるまで手助けはしない。そしてある程度の数をこなしたら、私から新しい技術を身に着けてもらうための修行に入る……という感じになるわ。ちなみに、真剣にやらなかったら……」

 やらなかったら?

「私にメイド服を数着買ってもらうことになりまーす! 結構お値段するみたいだから、そんな事にならないように真剣にやってね♪ ま、今までの様子からしてそんな事にはならないとは思うけどね」

 後でお店に行って確認したら、一着だけで八万グローほどしました。ええ、今まで以上に真剣に特訓することを心に決めました。メイド服破産なんて御免こうむるっての!
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六巻販売したのかな? 今回はごたごたが多すぎて、
全然気を回す余裕がなかった……。
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