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連載

蒼海鋼

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とりあえず、書籍関連作業の合間をぬって一回更新。
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 そしてアリーンさんがニテララさんに状況やら連れてきた理由やらを説明。それに頷きながら聞いていたニテララさんだったが、本当に聞いているんだよね? 寝てないよね? って突っ込みを途中から入れたくなった。なにせこっくりこっくりと舟をこいでいると言う表現がぴったりくるような感じだったので。だからこそ……

「ん、大体わかった。それに、確かに海の恥を処理してもらった恩はとても大きい。ここに連れてきた理由は納得」

 とニテララさんが口を開いたときは内心びっくりした。あ、起きてたんだって。

「その恩を返すべく、彼に武器を与えるのも問題はないと思う。でも、私は彼の武器を作るつもりはない」

 およ? 納得もしたし問題も無いと言うのに、それでも作らないときたか。何か失礼な事でもやったかなーって考える前に、そもそも海の人魚さんとはそんな関わりがないから思い当たる節があるわけない。そうなると直感的に気に入らないとかそう言った話になるのかな?

「なんでさ? 問題ないんだろ? それにアタシ達の使う武器の原料は在庫も十分に確保できてるって言ってたじゃないか!? なのになぜ恩人であるアースに武器を作らないって言うんだい? 理由は教えてくれるんだろうね?」

 そんなニテララさんの言葉に反論するアリーンさん。こちらとしてはもともと惑一本で戦うつもりだったので、作ってくれなくても問題はないんだけど……口を挟まず話を聞こうか。こちらの疑問を述べるのはそれからでも遅くはないし。そして口を開いたニテララさんの答えはこうだった。

「彼はおそらく鍛冶の経験を持ってる。そして彼は彼のみが使う武器を作って来たと思う。そんなイメージが、履いている金属の靴から伝わってきてる。だから、私は場所と素材の提供を。そして『蒼海鋼そうかいこう』の扱いを教えるだけに留める。その方が、私が作るより良いものを彼が手にする事が出来ると思うから、私は彼の武器を作らない」

 あら、このファング・レッグブレードを見てそこまで理解してしまうのか。人魚の職人さんというのもすごい物だ。まあ確かに、今まで作ってきた武器はどれもこれも極端にへんてこな物が多くて、完全に自分専用な逸品ばかりだったからな。このファング・レッグブレード然り、X弓然り。そういう事なら、遠慮せずに打たせてもらう事にするか……正直に言えば、獣人連合の職人さんには申し訳ないが弓は物足りないなと思っていた所だ。それだからこそ、どんな形であっても武器の更新を行えるのは有難い。

「ついて来て。最初は私が実際に打つところを見せる。その後は鍛冶場を自由に使ってもらって構わない。手を貸してほしいのなら、もちろん手伝う」

 というニテララさんの言葉に従い、人魚の鍛冶場に案内された。そこは……水中なのに火が燃え盛っている炉があるという、火の物理法則を無視していませんか? と突っ込みたくなる場所だった。

「この炉に灯っている火は何なのか? 火が燃えているのになぜこの周囲が熱湯にならないのか? という疑問がわくかもしれないけど、それは教えられない。私達だけの秘密」

 と、先にニテララさんからの念押しが入った。自分が頷いたことを見たニテララさんは、インゴットを取りだし、炉の中に突っ込む。そのインゴットは蒼く輝いており、そのインゴットこそが先程ちょっとだけ出てきた蒼海鋼という奴なんだろう。その蒼海鋼は炉の中で熱され、炉の中からニテララさんの使う道具によって引きずり出される。

「これから、貴方の目の前で三本のナイフを打つ。その三本のナイフを見せながら、蒼海鋼の説明を行うから……」

 と言いつつ、ナイフ一本分と思われる分量を分けると、残りの蒼海鋼を再び炉の中に。色々と疑問はあるが、口をはさむよりもよく見る事を優先しよう。一々口を挟んでいては何も進まないからな。ナイフの作り方自体は、自分達と大差ない。スミスハンマーで叩きながら仕上げていく。

 ただ、冷水と思われる入れ物の中に仕上げる直前のナイフを突っ込んだりしているが……そうして再び炉の中から蒼海鋼を出し、二本目を作り出す分量だけ取ると再び炉の中へ戻すニテララさん。二本目を仕上げた後に三本目を作り上げる。そこで蒼海鋼を使い切ったようだ。

「──ふう、暑い……でも完成。刀身しかないけど、このナイフを手に取ってみて。なんで三本も作り上げたのか、それで分かってもらえると思う」

 との事なので、早速手に取ってみる事にした。出来上がった順番通りに、まずは一本目のナイフを手に取る。そして少し刀身をつまんでみると、その刀身は金属とは思えないような柔らかさと弾力を持っていた。何だこれはと思いつつも、次は二本目。こちらは一本目と違ってしっかりとした硬さを得ていた。しかし、ややしなる。この感触というか感覚は、以前鞭を作ったりした時に使ったライトメタルに近いな。そして最後の三本目は……一般的な武器に使われる金属と同じと言って良いだろう。このナイフは普通に仕上げれば短剣使いのプレイヤーが使う武器として運用できる。

「触ってもらって分かったと思うけど、蒼海鋼は熱する時間によって硬さが変わる。だから、地上では金属でつくらない武具でも蒼海鋼ならば作ることが可能。ただ、蒼海鋼を鍛えて武器を作る行為は、この水中にある炉でしか行えないから、地上に蒼海鋼を持って帰っても意味はないよ……修理とか、後付で行う作業なんかは大丈夫だけど」

 成程、用途によって熱する時間を変える事で対応できる鋼か。おそらくここの人魚さん達が持っていたトライデントも、この蒼海鋼で作られていたんだろう。しかし、赤鯨には通用しなかった事から、何らかの問題もありそうだが……弄ってみる価値はあるな。とりあえず、まずは蒼海鋼を見てみようか。


 蒼海鋼のインゴット

 海底のある場所限定で取れる蒼海鉱石をインゴットに加工した物。このインゴットを用いて作り出された武具は、水中などの特殊な環境下でも大きなペナルティを受けることなく運用できると言う特徴を持つ。その代わり入手が難しく、人魚などの協力者を得なければ地上に生きる者が目にすることは無いだろう。また、あらゆる素材との融合能力も持ち、更なる武器の土台としても優秀である。


 ──これはこれは、またアレな物を。水中行動へのペナルティがなくなるって事は、矢を放てば地上と同じように飛ぶようになるんだろう。これは魂弓についている特殊能力と同じように考えてよさそうだ。そしてもう一つのあらゆる素材との融合能力を持つと言う一点が気になるな。つまりここで弓を作っておけば、更なる上位素材が手に入っても融合させる形で進化させる事ができるのか? 当然ただ素材をくっつければいいと言う問題ではないだろうが……少し試すか。

「ちょっと、本格的に武器を打つ前に試したい事がある。いいかな?」

 ニテララさんに確認を取ると頷かれたので早速開始。端切れのようにアイテムボックスの隅っこに残っていた素材を混ぜて、ナイフやショートソードを作ってみた。しかし、出来栄えはどれも今一つ。自分の鍛冶における刃物製作の経験が少なすぎる事を考慮しても酷いと言わざるを得ない。例を挙げるとするならば……


 蒼海のショートソード

 製作評価4

 ATK+32


 と、一切の混ぜものなしで作ったショートソードがこれ。これを比較対象として……


 蒼海のショートソード ライトメタル融合

 製作評価3

 ATK+12

 蒼海のショートソード 鋼鉄融合

 製作評価3

 ATK+14

 蒼海のショートソード グリンド融合

 製作評価2

 ATK+4


 と、見事にボロボロ。打っている本人が同一人物なのだから、打ち方が極端に変わったという事も無い。それでこれである……武器を作るため、炉に入れて蒼海鋼を熱している時に他の素材を突っ込んで混ぜ合わせて合金とすると、この様にかえって弱くなってしまう。ならば、一度蒼海鉱石のみで作り上げた武器を文字通りの土台として、更なる素材を使った部品を組み込んだらどうだろうか? と考えてそちらも試した。


 蒼海のショートソード グリンドブレード付与

 製作評価4

 ATK41


 これは蒼海鉱石で作った最初のショートソードの刃部分の上に、刃物に向く特性を持つサーズ坑道で取れるグリンド鉱石製で作ってみた物をくっつけてみたのだ。なんとこの方法でも融合が発生し、一体化してしまったのでもう部品は取り外せなくなった。どうも、こちらの方が正しいというか、自分でも使いこなせる方法だと思われる。もっといろいろと試したいが、手持ちの素材ではこれが精一杯だ。後は直感でやるしかないだろう。

(──とりあえず、なんとなくだけど分かった。そうなると……遊び半分で書いたあれを作る土台にしようか。X弓再びって所だな。もっとも、本当の意味で完成したらX弓とも呼べなくなってしまうのだが)

 実験結果から、作る弓の形を決める。冒険初期に作り、今までつくらずにいたX弓をここで再生させる。スキルもあの時よりはるかに上がっているし、更なる無茶な設計の弓でもきっと作り出せるはずだ。そうなれば、火力にも期待が持てる。X弓は火力上昇が目覚ましかったからな……この蒼海鋼でつくったX弓なら、きっともっと上を行く物になってくれるはずだ。やる価値は十分あるだろう。ついでに、ファング・レッグブレードの方もバージョンアップを図ってみるかね?
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戦いばっかりが続いてしまっていますが、
久々の製作関連の話になります。
まあ戦闘が続いてしまったのは、人災の相の責任なんですが。
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