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連載

強化赤鯨戦・切り札を切る

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戦隊ヒーローがピンチになった時、何かを呼ぶとか合体メカとか
お約束の一つだと思うんですよねー。
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 そうして振り下ろされた鎧巨人の剣は、魔魚の右触手を根元から切り落とした。さらにそここから動きを止めずに剣を切り上げる動作を行う事で魔魚の目を狙う。魔魚は瞼を閉じて目を護ろうとしたが、そんな事はお構いなしとばかりに鎧巨人の剣が魔魚の目付近を切り裂く。周囲に響く魔魚の絶叫が、鎧巨人の攻撃の成功を教えてくれる。この攻撃によって、魔魚の右目が完全につぶれた。出て来るものは魔魚の血だけで、瞳が開かれる様子はない。

 だが、この一撃を成功させた鎧巨人はそのまま一気に押し切ると言う事はせず、いったん間合いをとる。様子を見るつもりなのだろう。もしボスが何らかの切り札をまだ隠し持っているとか、痛みなどによる発狂状態に入った場合、至近距離に居ると危険だ。こういったボス相手に焦りは禁物、それをヒーローズは熟知していない筈がないのだ。

 やがて絶叫を止めた魔魚が、お返しとばかりに鎧巨人に向けて針を巡らしながら突進して来た。その姿は、デカい一本の槍が一人の戦士に向かって貫かんと飛んでいくかの様だ。鎧巨人はこの攻撃を、剣を使った受け流しにより何とか回避。しかし、完全には受け流せなかったことにより鎧巨人は派手な音を立てながらしりもちをついてしまう。その隙を、魔魚は当然ながら見逃さない。魔魚は真上から錐もみ状態で脳天から鎧巨人を貫こうと突撃を仕掛けて来る。

「上だー!! 横に転がって避けるんだー!!」

 誰かが必死で魔魚の動きを鎧巨人に叫び声で伝える。その声が聞こえたのだろう、鎧巨人は立ち上がる事を中止して横にゴロリと転がる。その転がった直後に魔魚が落下。ついさっきまで鎧巨人がいた場所をがりがりと削っていく。その姿はまさにドリルそのものだ。あれを直撃で受けていたら、鎧巨人と言えども耐えることは出来なかったのではないか。そう思わせる穴がぽっかりと開く。そしてその穴の深さが、魔魚はまだまだ余力があり、鎧巨人が圧倒できている訳ではないという事を周囲に理解させた。

「お、おい! このままヒーロー達だけに任せておいて良いのかよ!? 俺達も何とかして加勢しないとやばいんじゃねえか!!?」

 そんな言葉が聞こえ始める。確かに、何らかの方法で支援を行わないとこのままでは不味いかもしれない。だが……

「それは解るけど、どうしろってんだ! 戦闘力の差もさることながら、あのデカさだぞ!? 下手に俺達がちょろちょろうろついたら、かえって邪魔にしかならねーだろ! 巻き込まれて無駄死にするだけは御免だぞ? 勝利のために捨て石に成れって言うんならまだいいけどよ、その捨て石になる方法すら今はわからねえよ!」

 という反論がすべてを物語る。魔魚も鎧巨人も人間の数倍の体躯を持っているので、下手に突っ込めばその動きに巻き込まれて吹き飛ばされるだけなのだ。また、魔魚と鎧巨人は双方とも激しく動いているので、当然その周囲にある水の動きもえらい事になっている。そんな激流の中に身を躍らせたら、人一人なんかどんな風にかき回されるか分かったものではない。現に自分を含めた生存している討伐隊は、そんな風にかき回されることを防ぐため、魔魚と鎧巨人の戦いを岩にしがみつきながら見ている状態なのだ。

「でもよ、はっきり言って戦いは一進一退だ! 大きな一発は無くても良い、何かのきっかけが作れれば状況はあのヒーロー達が呼び出した鎧巨人が優位になるように傾くはず! だから、そのきっかけを何とか作れないかって話だよ! 変身でもいい、使い捨ての道具でもいい! 何か無いか? 誰でもいい、何かねえのか!? こう、あの鎧の巨人が必殺の一撃を打てるようにできねえか!? こういうデカ物同士の戦いじゃ、見ている人間が何か策を練って体を張った一撃をぶち込んで、ヒーローのチャンスを生み出すってのはお約束だろ!」

 成程、確かにそうだ。ヒーローのピンチに、周囲に居る人間が特攻とかをかけて怪物の気をそらし、ヒーローの大技が決められる値千金のチャンスを生み出すと言うのも……ならば、ここで切り札を切るか。どのみち、あの魔魚にはほとんどの人の攻撃が通じない以上、あのヒーローたちが呼び出した鎧巨人に勝って貰う以外に勝ち目はない。なら、あの鎧巨人が必殺技と呼べるものを持っている事に賭けて、こっちの出せる物を出そう。

「あ、まずいぞ! 鎧巨人が赤鯨のタックルをもろに食らってダウンさせられた! あのままじゃやられる!」

 そんな時、鎧巨人は再び高速で体当たりして来た魔魚の攻撃を回避しきれずに食らって吹き飛ばされた。まずい、先程とは違って一切受け流せていないから、ダメージがもろにとおってしまった可能性が高い! 魔魚の方もそれを計算に入れているようで、再び真上からの錐もみ突撃を仕掛ける状態に入っている。あのままでは、胴体にでかい風穴をあけられてしまう!

「──そうは問屋が卸さない、という事にさせてもらうか! 『黄龍変化』!」

 水中であっても、黄龍の力であれば何とかなると信じて……自分はここで黄龍変化を使用した。変身できる時間は短いが、その少ない制限時間の中で何とか鎧巨人が必殺の一撃を決めれるだけのお膳立てを整えなくてはならない。まずは《虎龍脚》で、錐もみ状態になる前の魔魚に突っ込む! 覚悟を決め、右手を固く握りしめて拳を作って真横から魔魚に突っ込む。魔魚は鎧巨人に狙いを定めており、針もそちらの方向に向けていた。故に、針が刺さると言う心配はない。後は全力でぶつかるのみ。

「さーせるかあああ!!」

 回転を始めていた魔魚に、《虎龍脚》で距離を詰めた自分の攻撃は不意打ち気味に突き刺さった。さすがは黄龍、針の数本をへし折って直接魔魚の胴体に拳が突き刺さった。残念ながら深々と……という訳には行かなかったが、少なくとも多少のダメージは与える事が出来たはずだ。

「な、んだ? 金色の光が……赤鯨を攻撃した?」

 鎧巨人から、そんな声が聞こえて来る。そうだ、自分の事をあの鎧巨人に言っておかないとな。再び《虎龍脚》による高速移動で鎧巨人の前に自分は移動。

「短時間ではありますが、助太刀します! 自分が何とかしてあいつの動きを止めますので、巨人殿はあいつを一刀両断できる技の準備を!」

 この時、鎧巨人の鎧に歪んだ鏡のように映る自分の姿を見てちょっとびっくりしていた。まるで黄金の光が自分の輪郭をごまかす様に包んでいて、遠くから見れば金色の縦型楕円球の様にしか見えないのだ。これは水中だからこうなっているのか? それとも、黄龍変化を極端に大っぴらにしたくないと言う自分の感情が引き起こした事なのか? どちらでもいいか。

「わ、分かった。実を言えば、あいつを切り裂ける手段は二つある。アイツの激しい動きを止めてくれると言うのであれば、絶対に決める事が出来る!」

 よかった、どうやら手段は残って居た様だ。ならば自分は残り二分弱の制限時間を使って、魔魚の動きを止めるまで。トドメはヒーローに任せる事にしよう。さて、先程不意打ちと言う形で攻撃を突き刺した魔魚は……ああ、どうやら自分も排除すべき存在と認識したようだな、威圧感みたいな物がガンガン飛んできてる。ちょうどいい、このまま引きつける事にするか。変身時のみ使える弓である魂弓を具現化させ
、魔魚に向かって構える。まずはアーツを使わないで射るか。

 放たれた矢は、魔魚の針に弾かれた。まあ様子見と、さらなる引きつけを狙った一矢だったのでその結果は大した問題ではない。魔魚も横から不意打ちをされた上にさらなる攻撃を受けた事が気に入らなかったのだろう、自分に向かって急降下してきた。ふむ、知性は大幅に上がった様だが短気な性格みたいだな。挑発アーツと言う煽りは平然と流せるが、直接手を出されると腹が立つと言った所か。そうすると、さっきの弾かれた矢も、多少のダメージを与えていたのかも。

 急降下して来た魔魚の攻撃を、自分は難なく回避する。回避できたのは黄龍変化によるパワーアップの恩恵もあるが、何せ鎧巨人と比べれば的の大きさが全然違う。その変化に戸惑ったのか、突撃攻撃の狙いがかなり甘かった。回避したことで魔魚の後ろを取る形となり、ここぞとばかりに自分は《龍雷》を吐こうとするが、ふとそこで考えた。雷、と言うか電機は水を伝って感電するのは誰も知っている事。ここで龍雷を使うと、周りの人……特に人魚さんを自分の手で殺す事にならないか? と。

 そうなるかもしれないし、そうならないかもしれない。でも、不確定要素によって自分だけが危機に陥るならともかく、周囲に危険を及ぼすのは非常によろしくない。それに、風の魔法まで使うようになった魔魚に対して、有効かどうかも微妙な線だろう。まさか一切電気を通さない超純水を作る訳にもいかず、《龍雷》の使用を取りやめた。ちなみに余計なことかもしれないが、水が電気を通すのは水の中にある不純物が理由である。そのため、本当に純粋な水を作れば、強力な絶縁体となる。

 再び魂弓を構えて狙いをつける。魔魚は行き過ぎてしまったために慌ててUターンしてからこっちに向かってきている。その動きは直線的で、弓を扱う者からしてみれば隙だらけ。ここで使うアーツは貫通性を重視した《アローツイスター》の長弓限定強化技である《ピアース・デス》と言う技。これも、弓に宿るエルの魂によって使えるアーツの一つ。魂弓もそれに伴い、大きさが変化して長弓サイズに変わる。放つまでに時間がかかるのが難点だが、十分間に合う。むしろ程よく引き付ける事が出来てちょうどいいぐらいだ。

 魔魚の間合いと自分が予定していた距離感が一致した瞬間、自分は矢を放って《ピアース・デス》を発動させる。その一矢は、まるFPSのスナイパー・ライフルの様に高速で吹っ飛んで魔魚のど真ん中をぶち抜いた。針の防御癖などお構いなしに肉を穿った事を手応えとして感じてので、かなりのダメージが入った事だろう。倒すには程遠いと思うが、奴にとってはそれなりの痛手を負ったはずだ。さて、ここからどうするか……と考えた時、周囲に居た討伐隊の人達が一斉に動きを止めた魔魚に襲い掛かった。

「時間を稼げ! 堪えればいい! あいつ一人に任せっきりにするな!」「とにかく撃て! もう魔法抵抗力とか考えなくていい! とにかく爆発なり衝撃なりを与えて足止めさせる事だけを考えろ! トドメはあのヒーローの合体した巨人がやってくれる!」「「地上の勇士達に任せっきりにするな、我らも打って出るぞ! どうせ一度は消えたこの命、全力で使うぞ!」

 どうやら、あのヒーローが合体して現れた鎧巨人からそう言う指示を受けたのだろう。そして叫んでいる言葉の内容から、どう動けばいいのかも理解した。ならばこのまま自分は魂弓を使って魔魚を足止めすることにしようか。残り変身時間はあと一分と三十秒弱しかないが、こうして周りの人と連携して足止めを行えるのであれば、いざという時黄龍専用アーツを連発するために必要な時間を温存できる。
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いよいよアースも黄龍変化を解禁です。

スキル

風迅狩弓Lv50 The limit! 砕蹴(エルフ流・限定師範代候補)Lv42  百里眼Lv38  技量の指Lv54  小盾Lv39  蛇剣武術身体能力強化Lv1 ダーク・スラッシャーLv1  人魚泳法Lv10 ↑1UP 鍛冶の経験者LV30 妖精招来Lv17 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv2.21 ↑UP!

控えスキル

木工の経験者Lv8 上級薬剤Lv34  釣り LOST!  料理の経験者Lv27 義賊頭Lv47  隠蔽・改Lv7

ExP 10

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

強化を行ったアーツ

《ソニックハウンドアローLv5》
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