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連載

ヒーローたちからの情報

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 魔魚を倒した翌日。戦いに勝利し、人魚の里が守られた事の祝いと、戦いで永遠の眠りについた者を慰める事を兼ねた宴が開かれた。死した者は、生き残った者の笑顔によって慰められると言う考えが人魚の皆さんにはあるらしく、湿っぽい雰囲気は厳禁とされた。ただ踊り、笑い、皆で宴を楽しむ。それが最大の使者に対する弔いらしい……やはり場所が変われば常識も大きく変わるな。

 そんな宴を満喫し、宴が終わる前にブラックに呼び出された。なんでも、話しておきたい事があるから与えられた個室に来てほしいと。それを断る理由も特に無く、宴が終わった後にそのままブラックの個室へとお邪魔する。自分を出迎えたブラックは、他のメンバーも呼び出して勢ぞろいさせたところで話を切り出した。その内容とは……今回戦った赤鯨の様に、体を異様な赤色に染め上げたモンスターが近ごろ発生するようになっているらしい。

「実は、アース君から要請を受けても急行できなかった理由でもあるんだ。連絡を受けた時も、そいつらと戦っている時だったからね……」

 何でも、ヒーローズは陰ながらそいつらと戦い、倒してきたのだと言う。また、情報を提供してくれる人達とも出会い (プレイヤーではなく、ワンモア世界の人達のようだ)、各地で街などに被害が及ぶ前に対処してきたと教えてくれた。強さはピンキリで、一人で鼻歌交じりに倒せるような奴から、全員の力を合わせてもぎりぎりの戦いとなったとその力の差はかなり激しいとの事。

「でも、さすがにこんな離れた場所ですら発生しているとは思わなかった。今回は、アース君による情報がなければ完全に知らないままでいただろうね」

 と、ブラックの言。情報を集めてくれる人たちも、さすがにこんな海中の情報までは集める事が出来なかったらしい。まあ、距離もさることながら地形が特殊だから無理もない話だ。

「なるほど、そんな事が各地で起きていたとは。しかし、何故その話を自分に?」

 と、こちらが疑問をぶつけるとブラックは……

「情報を集めてくれている人達も、赤く染まったモンスターはここ最近、急に現れるようになったと言っていたんだ。そして、何故発生するのかという事を聞いても首を振るばかりなんだ。まあ、予想できないと言う点はこちらも同じなのだけどね。しかし、アース君は色々な所に色々な形で首を突っ込んでいるだろう? 実際、妖精城なんかはまだ殆どのプレイヤーが中に入ることを許されてはいないよ? そんなアース君だからこそ、こちらの知らない情報を得ている可能性があるんだ。だから、何か心当たりはないかなと思ってね」

 心当たりか。間違いなくあのダークエルフの守護者? から聞いた暴走しかかってる闇の影響とやらが関係しているんだろうな。というか、それ以外が原因だったら自分にはどうしようもない。顎に手を当てて考え事をしている自分を見たレッドが、やはり何か知っているなとばかりにこちらを見て来る。

「話せる範囲で構わない。なんでもいいから情報が欲しいんだ。このままやみくもに戦い続けるだけでは、状況が良くなるとも思えない」

 ブルーの言葉も最もだ。球に現れるようになったからには何かしらの原因がある。そしてその原因を知っている可能性が高い人物が目の前に居れば、何かしらの情報を得たいと思うのは当然だろう。さて、そうするとどうしようか。どこまで話すかな……このヒーローズは知らない仲じゃないし、ある程度なら情報を渡しても構わないだろう。ましてや今回、来てもらえなかったらまず人魚の里を護ることは不可能だったと言う面もある。

「──まず、これは他言無用で頼みたい。皆さんを信用しない訳ではないが、念押しをしておきたいので」

 この自分の言葉に、ヒーローズの皆さんは無言でうなずく。委細承知、という事で良いだろう。

「まず、突如各地で現れるようになっている赤いオーラを身にまとうモンスター達だが……ある場所で、何かしらの暴走が起きそうになっている事の影響を受けて発生している可能性があるのではないか、と皆さんの話を聞いて自分は予想した。もしかすると、自分に情報を教えてくれたあの存在の予想よりも、状況の進行が速いのかも知れないな」

 顔を見合わせるヒーローズのメンバー。そしてピンクが口を開く。

「アース君はその暴走が起きそうになっている個所を知っているのね? そこに私達を連れて行くことは出来る? 単独行動するよりも、協力し合った方が良いのではないかしら?」

 もっともな意見だが、自分は横に首を振らざるを得ない。

「問題がいくつかある。まず、その暴走が起きそうになっている個所だが……現時点の自分だけではなく、全プレイヤーが行ける場所ではない。もうしばらくその場所にたどり着けるようになるまでは時間が必要と言う状態。さらに、その暴走を止める為には闇との親和性が高くないといけないらしい。闇との親和性が高くないと、暴走を止める為に行わなければいけない行動で即死しかねないらしいんだ」

 暴走が起きそうになっているのは魔王領のどこかなので、現時点では行く事が出来ない。そして、あのダークエルフの守護者? から預かった道具は、闇との親和性が高くないと死ぬことになる劇薬でもある。その点から、いくらヒーローズが強くても、現時点では完全な解決は望めない。

「なので、今はヒーローズの皆さんがやっている沸いたら倒すを続けるのが唯一の応急処置という事になる。もちろん、自分は問題が発生している場所へ行けるようになったら出来る限り早く問題の解決を行うために行動を開始するつもりでいるが……今はどうやっても無理だ」

 ここまでの話で、問題が発生している場所はなんとなくヒーローズも察したようだ。今のプレイヤーがいけない場所で、時間が経てば後から行けるようになる所は魔王領しか該当しない。なのでヒーローズの皆さんも「そうか、それじゃあどうしようもないか」と納得している。あえてお互いその場所を口にはしないだけなので、問題はないだろう。

「そうなると、今までのパターンから考えて……その場所に住むワンモアの人達もそれなりには動いていると見ていいかな。プレイヤー任せにせず、独自の防衛行動を取っている事が多かったし。そして、今の協力者の中に特定の種族が多くて、その種族の対応しきれない場所への援軍を頼まれている理由も大体察しがついたかな。そうか、首を振る理由は分からないのではなく、言えないと言う方の意味だったか」

 と、グリーン。なるほどね、今のヒーローズにそう言ったモンスターの情報を届けているのは魔族の皆さんか。そういうことをこちらが察することが容易にできるように、わざわざ『協力者の中に特定の種族が多い』と言ったんだろう。そうなると、やはり魔族の方も大きな被害が出る前に何とかしようと動いているんだな。しかし、問題なのは暴走を抑える方法が難しいため、被害を出来る限り減らすべくおかしくなったモンスターの排除行動を開始していると言う感じか。そうすると、プレイヤーを国に受け入れるタイミングは、防衛時の戦力増強を見込んでの事か? 今回の様に魔法の効きが悪い相手だと、魔族の皆さんにとっては相性がかなり悪いはずだからな。考え過ぎ……であれば良いのだが。

「一つ質問良いかな? その赤く染まったモンスター達はまだまだ数がいる状態? それとも、とりあえず数が減って小康状態?」

 この質問に答えてくれたのはイエロー。

「ああ、とりあえずは大丈夫だよ。情報提供を受けたモンスターは軒並み倒してきたからこっちまで出張ってこれたっていう状態さ。今後も注意はするけど、ひとまず現状は治まってると言って問題ない」

 イエローに発言に頷くヒーローズ。そうか、ならば一安心だな。とはいえ、あくまでそれらは一時的な対処法に過ぎない訳で。やはり魔王領に行けるようになったら即座に行動を起こして、暴走が起きそうになっている個所に向かう必要があるな。自分の行動が遅れればそれだけ被害が広まってしまう可能性が高くなる。本音を言うなら、今すぐにでも魔王領に乗り込みたい所だが……それは叶わない。暴走を冴える道具にしても、自分以外が持つと悪影響を及ぼしてしまう訳で……本当に歯がゆい。

「とりあえず、今後はこちらも情報が入ったら何らかの対処するよ。もしどうしようもない時は今回みたいに協力を頼むことになるだろうけど」

 知った以上は協力しよう。と言っても一人で倒せるのは弱い奴だけで、ある程度の強さを盛った奴が相手だったら手伝いを要請することになるだろうけど。ヒーローズに限らず、ブルーカラーとかに。今回は戦闘を行う場所が水中であったが為に、水泳技能を持っていないと思われるブルーカラーには支援要請が出来なかったのだが。

「困ったときは遠慮せずに教えて欲しい。困っている人を助けてこそヒーローだからな」

 レッドの言葉に、他のヒーローズが頷く。このメンバーもぶれないなぁ。

「その時は頼みます。では、今日はこの辺で」「ああ、また」

 ヒーローズに別れを告げて、自分の個室に戻る。指輪の方も確認するが、ルエットの方はまだまだお休みモードのようで反応は一切ない。無理に起こす理由はないのでそのまま放置。

「ぴゅいぴゅい……」

 一方でアクアは退屈そうだ。まあたまに泳ぐぐらいしかここではやることがないからな……そうだ。

「アクア、ここから一人でも帰れるか? ここに来た用事はほぼ終わったので近いうちに帰ることになるが、空を飛び回りたいのであれば先に帰っていてくれても構わないよ。サーズの街近くに居てくれれば、合流もできるし」

 この言葉にアクアはしばし悩んだ様であったが、首を左右に振った。そうか、それが答えならそれでいい。

「わかった、じゃあもうちょっとだけ我慢をして欲しい。後はいくつかのこまごまとした用事を済ませたら、地上に帰れるから」

 自分の言葉にぴゅ、と一鳴きしながら頷くアクア。この日はそのままアクアの体の中に体をうずめてログアウトした。あとはアリーンさんとニテララさんに挨拶をするだけだな……。
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