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連載

海との別れ、新しい街への旅立ち

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 そして自分は盛大に忘れていた。その忘れていた物を思い出したのは、アリーンさんと一緒にニテララさんの鍛冶場を訪れた時に「まだ作りたいものがあるんじゃなかったの?」というニテララさんの言葉だった。そう、以前に装備の大幅なパワーアップとした時に、新しいX弓を作ろうと考えていたんだった……赤鯨との死闘で完全に忘れていた。しかし、じゃあ今からのんびりと作るという訳にもいかない。長く水中に待機させてしまったアクアのストレスもたまっているし、あと少しで四つ目の街であるフォルカウスも解放されるらしいからここに居続ける訳には行かない。

「私も連日仕事して疲れてるし……日を改めた方が良い物が出来ると思う。貴方も戦いの傷や疲労が抜けてないはず。無理しても良い事ない」

 と、ニテララさんの言に従い、この場で無理な製作行為に挑むことはやめておいた。まあ、もう一度素材との兼ね合いを考慮した設計図を描いた方が良いのも事実だし、今回はそうしよう。軽い雑談の中、今回この人魚の里にまで出張ってきた人達のために蒼海鋼の武器を叩く日々が続いて、へとへとになってしまったと言うニテララさんの愚痴が少々印象に残った。百名分以上の武器を製作すりゃ、疲れるのは当然だよねぇ。

 帰りは、アリーンさんに送ってもらった。「また世話になっちまったね」なんて言われたが、今回の事は地上に居るこちらとしても無関係では済まなかった可能性が高い。なので困ったときはお互いさまだと返答をしておいた。アリーンさんは戦士と言うだけあって、並の人魚さんより泳ぐ速度が速い。サーズから人魚の里にやって来るまでにかかった時間の半分ぐらいで、サーズ近くにかかっている橋の近くまで戻ってくる事が出来た。

「人魚の里に来たいときは、ここに来ている人魚に頼んでくれればいいよ。アースの事は、アタイがしっかりと言っておくからさ!」

 との一言を別れ際に残して去ってアリーンさんは去っていった。彼女達もこれからが大変だ。人魚の里自体は無事だったが、その周辺は戦いの傷跡でめちゃくちゃにされている。そう言った場所の修繕やら、赤鯨によって狂わさせた他の海の生き物達のへの支援等が待っていると聞いている。さすがに手助けできる内容ではないので、頑張ってほしいとしか言えないのだが。

 そしてやっと帰ってきた地上。海中も美しかったが、やっぱり地上の風を感じるとホッとする。アクアにも自由に行動していいよと告げ、思いっきり空を飛んでもらう事にする。さてと、フォルカウスに一番近いのはファストであると公式で発表されているので実装の直前にはファストに居る必要があるが、まだそんな急ぐ必要も無い。が、だからと言ってどこか他に行って冒険をして来るほどの時間がある訳でもない。かといってあのまま海中に居たらアクアのストレスがなあ。

 そんな風に今後の行動に悩んでいた所で、突然インフォメーションからお知らせが。えーと、ハーピーの卵か孵りそう? 安全圏でハーピーの卵を取り出してください、か。なら、サーズに行って宿屋の一室を借りればいいか。そうと決まれば即座に行動を開始するか。やることがなかったからちょうどいいや。

 宿屋の一室を借り、ハーピーから貰った卵をアイテムボックスから表に出す。なるほど、ぷるぷるっと震えているな。しかし、中から出て来るのはハーピーの子供ではないという事は分かっている。ハーピーの卵を譲られたブルーカラーのメンバーも卵の中身は武具だったから、自分には何が来るのやら。プルプルと震え続ける卵を見守っていると、ピキッと卵の頭頂部にヒビが。お、いよいよか。

 パキパキと音を立てながらヒビが入っていく様子を見守っていると、ぱかっと真っ二つに割れて……その中には……粉? 金色に輝いているが、この粉末は一体なんだ? ゴミではないと思うが。とりあえず手に取って確認してみると──


オリハルコン・ダスト

神の金属と言われているオリハルコンの製作時に出た粉末。これをいくら集めて叩き直してもオリハルコンにはならない。しかし、神の金属であるオリハルコンからこぼれ出た物であるためにある程度の魔力を秘めており、この粉末を用いて武具を製作すると耐久力の増加や素材同士の結合力が高まると言った性質を持っている。その為使い道を知っている者にとっては、扱いにくいオリハルコンよりもこちらの方がお宝となる事も多い。


 なるほど、ブルーカラーのメンバーとは違い、製作にある程度手を出している自分だからこんなアイテムが出てきたのかも知れないな。有用なアイテムであることは間違いなさそうだし、これもX弓製作時に突っ込ませてもらう事にしよう。こうなってくると、もう一度あちこち歩き回って色んな素材を探し回った方が良いのかも。せっかく一品物で作るんだから、色々な素材を見つけて最適な物で作りたいよな。ましてや、作りたいX弓は完成すれば弦が四本も張られることになるのだから。

 とりあえず手に入ったオリハルコン・ダストをアイテムボックスにしまい込み、今後の実装予定をもう一度確認しながら今後の予定を立てる。やはり大人しく人族の街でフォルカウス実装まで待つのは確定としても、ただただぼけーっと過ごすのはもったいなさすぎる。仕事の方も極端な忙しさに見舞われている訳ではないから、ログインできない訳でもないし。こういう時に釣りが出来ればいいんだろうけど、そっちの方は完全に壊滅してしまっているからなぁ。スキルは消失しているし、そもそも周囲の人が首を捻るぐらい釣れなかったし。

 そうなると、何かプレイヤー主催でイベントの開催を行っている所はないか? と探してみるが、あいにくなかった。そうそう上手く行かないか。ならば……静かに生産関連のスキルあげでもやってるしかないな。〈木工の経験者〉、〈上級薬剤〉、〈鍛冶の経験者〉の三つをまんべんなく訓練。ついでにヘルマインオイルの方も火力を上げる事が出来ないかちょっと試すか。赤鯨戦で役に立ったし、今後は死蔵しているだけという事にもならなそうだ。この訓練の結果、木工は四、他は一づつスキルレベルが上昇。まあ、さすがにヘルマインオイルの更なる火力上昇は望めなかったが。


 と、生産関連の訓練をする日々を送っているうちにアップデートのために行われる長時間メンテの日を迎え、メンテが明ければいよいよ新しい街、フォルカウスが登場する。位置はファストの北。人族の街では唯一雨が降らずに雪が降る街で、かなり寒い。自分のように外套を始めとした防寒具を用意していないとかなり堪えると言う設計になっていると言う点は事前発表通り。さらに、魔族の人も出張ってきている街らしく、さらに北側に位置するため、より寒くなる魔王領で凍死しない為のアドバイスなども行われるとされている。

 フォルカウスの西側には一つダンジョンが存在しているそうで、雪に関連したモンスターが生息しているらしい。フォルカウスを見て回ったら、早速潜りに行こうと話しているプレイヤーの会話もちらほら聞こえて来る。自分は初日はパスだな……どうせごっちゃりと混んでろくに狩れないだろう。のんびりと白く染まる町、フォルカウスを見て回る事としよう。

 それにしても、フォルカウスに向かう道は草原から徐々にツンドラなどに生える短い草のみ生息している大地へと変わってきている。もう少し歩けば、おそらく足元は雪の白さに染まるのだろう。そしてそれはそう遠くはない。何故なら──

「あ、雪が降ってきた」

 そんな女性プレイヤーの声が聞こえてきたからだ。ぱらりぱらりとわずかな量であるが、白くて冷たい雪が空から舞い降りてきている。現時点での天候は晴れているが、徐々に籠り始めて来ている事から、雪の降る量は増えると見ていいだろう。あちこちから「ちょっと肌寒くなってきたね」「防寒具の準備が間に合わなかったのがきついな」等のやり取りも聞こえ始める。自分は、外套を二枚はおる事で対処。なんだかんだと使う事が多いのは緑色の外套の方だが、もう一枚の瑠璃色の方も持っていてよかった。

 そんな風に一部の人は寒さに堪えながら歩くことしばし、一面銀世界の大地の先にフォルカウスの街があった。雪の降る量も明らかに増えており、しばらくの間は止んでくれそうにない。ひとまず宿屋を抑えて、温かいお茶でも飲みたいな……その後で魔王領に出向くための注意事項を聞くことにしよう。お風呂もあるといいのだが、さすがにそこまでは望めないか。
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ようやくハーピーの卵からアイテムが生まれました。


風迅狩弓Lv50 The limit! 砕蹴(エルフ流・限定師範代候補)Lv42  百里眼Lv38  技量の指Lv54  小盾Lv39  蛇剣武術身体能力強化Lv1 ダーク・スラッシャーLv1 義賊頭Lv47   隠蔽・改Lv7 妖精招来Lv17 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv2.48 ↑UP!

控えスキル

木工の経験者Lv12↑4UP 上級薬剤Lv35↑1UP  釣り LOST!  料理の経験者Lv27  鍛冶の経験者LV31↑1UP  人魚泳法Lv10

ExP 11

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

強化を行ったアーツ

《ソニックハウンドアローLv5》
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