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連載

四天王の試験……と言う名の面接

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本日の作業用BGM キャプテン・ムラサのケツアンカー
なんでこれをチョイスしたんだろう。
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「まずはそこに座ってくれ。では、そちらも急いでいるという事だからな。細かい前置きなどはせず、最初から本題に入る事としよう。早速だが、私の姿を見てどう思う?」

 ほえ? それは一体どういう事だろ? とりあえずもう一度目の前に居るマドリアさんをよく見てみるが、ラミアの姿に加えて、上半身に羽根があると言うお姿。このぐらいの姿なら別に嫌悪感も何もない。龍の国でも下半身が蛇のようになっている人は居たし、妖精国でも色々な姿の妖精が居たからなぁ。このぐらいの姿ではもう驚きもしない。

「どう思うと言われましても、別に何とも思いませんが……」

 この自分の返答に、腕組みをして考え込むマドリアさん。予想外の返答だったのだろうか? 次に問いかける言葉の内容をかなり慎重に選んでいるような気がする。

「本当に何とも思わないのか? この私の姿を見ても? 人族から見ればかなり異様な姿だろうに」

 と、ことさら下半身の蛇の部分を強調しながら言ってくるが、そんな行動を取られても答えは変わらんのよ。これにはポーカーフェイスも一切必要ない。何せ本心だからね。

「えーと、ご期待に沿える返答かどうかは分かりませんが……多少姿が違う程度で恐怖心なんか持ちませんよ。今まで私は色々な国をめぐり、色々な物を見てきました。その中にはマドリアさんの様に人とは違う外見を持つ方もかなりいましたから。例を挙げると、ハーピーさんにケンタウロスさん、人魚さんにドラゴンさんと言った所でしょうか」

 この自分の返答を聞いていたマドリアさんの表情が、人魚やドラゴンの言葉が出てきたところで面白いように崩れた。そしてぼそりと「成程、先にそんな物を見てれば動じるはずもないか」と呟いていた。外見の違いで怖かったのはドラゴンさんかね。体躯の違いが大きかったからな……話が通じて本当に良かったよ。

「今までの経験から来る価値観か、良く解った。しかし、お前は私に対する敵対心が全くと言って良いほどに無いな。それは何故だ?」

 戦うなと先に教えて貰っているから、と言うのでは駄目だ。そうなると、こういう言い方にしてみるか。

「質問に質問で返すのは失礼ではありますが……逆に何故、敵対心を持たねばならないのでしょうか? 出会っていきなり魔法を撃ちあったり武器をぶつけ合ったりしたと言うのであれば分かりますが、魔族の皆様とは厄介な敵を倒すため、ともに肩を並べて戦った戦友であります。そう言ったことがある為に、真に勝手ながら一定の信頼を自分は魔族の皆様に対して寄せております。その上、こうやっていきなり押しかけて来たのにもかかわらず、こうして話し合いの場を設けてくださっている。そんな方々に対して、敵意を持つはずがありません」

 こんな所か。嘘八百という訳ではないから問題は無いだろう。

「何というか、良い意味で拍子抜けしたな。今まで急に押し掛けてきた者達の大半は、私を始めとした姿が大幅に違うと言う理由で一方的に敵意を向けて来たり罵ってきたりしてきたものだ。そう言った輩が多かったが為に、ここ最近まで国交などを最小限に絞っていたのだが……時代がそれなりに変わったという事か?」

 今気がついたが、マドリアさんの眉間に僅かにあったしわが少し消えている。それと同時に、僅かにピリピリとした物がゆっくりと消えてい行く。やっぱりそれ相応の警戒はしていたんだな。その警戒のランクをやや下げたから微弱な電流みたいな物が消えたんだろう。

「歴史を鑑みればその様な危険を考え、他種族に対して警戒信を抱き続ける事は仕方がないかもしれませんね。今は穏やかな妖精族も、過去は多くの種族に対して戦争を仕掛けていたそうですし」

 これはフェアリー・クィーンを始めとしたこちらの世界の人とのやり取りで分かっている。今は穏やかに見えるこの世界も、時代によっては凄惨な状況に置かれていた。もし、ワンモアのifに触れる時は、そのような阿鼻叫喚の世界が展開するのかも知れん。考えたくないなぁ。

「ある程度、歴史を知っているようだな。実は私の祖母がその時代の妖精達と戦っていてな。長寿を誇る種族であるにも拘らず、戦いによって受けた傷から毒が回った為に短命であった。そう言ったこともあってな、種族などが違うと言うだけで争いを吹っ掛けて来る者がやって来る可能性を考えない訳にはいかんのだ」

 世界が違っても、そう言う部分が同じってのは嫌なもんだな。地球だってそうだ、肌の色が違うってだけで差別や争いの元になった事はいくらでもある。そして、それはいまだに消え去っていない。

「そういう事であれば、こちらを警戒するのは当たり前の事かと。ましてや自分はいきなり魔王様に会わせてほしいと言う滅茶苦茶な要求をいきなりしているのですから、尚更ですね」

 と、言ったところでふと気になって質問を投げてみる事にした。

「あと、これはちょっとした興味本位で聞いてみたいのですが……魔王様を勝手に悪党に見立てて攻め込んできた者達は、今までにどれぐらい存在してますか?」

 良くあるRPGのお約束と言う奴だね。まあ、そっちの方は実際に魔王が世界征服を企むなどの悪事をしている訳だが、このワンモア世界においてはそんな単純な話ではないだろう。

「──ああ、細かい数字は面倒だから言わぬが、相当の数に上るぐらいは居るぞ。もちろん、歴代の魔王様の中には悪事を行ったクズ魔王も居るから、そう言った魔王様の時代に攻め込んできたのを除いての話だがな」

 ああ、やっぱり居るのか。というか、クズ魔王って言いきったよこの方。一部の悪事に手を染めた魔王様は、魔族にとってははた迷惑な存在だったことは想像に難くないが、それでもクズ魔王って言い切っちゃうのか。

「それに比べて、今代の魔王様は素晴らしいお方だ。だからこそ、不埒な考えを持つ者を近づける訳には行かん。まあ、いきなり戦いを挑んでくるような輩が今の魔王城に現れた場合は即座に排除だな。あのお方のお手を煩わせるわけにはいかぬ」

 おおう、先程までとは打って変わって、崇拝すら感じさせる雰囲気だ。心なしか、頬が赤いような……もしかすると、今代の魔王様はめちゃくちゃイケメンなのかもしれないな。崇拝心と恋心が入り混じっている可能性もあるし。その辺には突っ込まない方が良さそうだ。地雷を踏む事にもなりかねん。

「まあ、少なくともお前は魔王様に対する悪意は持っていない事はある程度ではあるが理解した。次の四天王の元に向かうが良い。この先でも、愚かな行動だけはしてくれるなよ? もし愚かな行為をした場合は……」

 ここで言葉を区切り、じろりと自分の事を睨んだ後に一言。

「私が直々に殺すぞ」

 実にシンプルですね。分かりやすくていい。あれこれ当たり障りのない言葉を交わし合ってやり合う『大人の会議』にはないシンプルさが実にいい。自分は「理解しています」という事を示すために椅子から立ち上がって深く一礼し、入ってきたドアへと向かう。

「それでは、失礼いたします。ありがとうございました」

 そう言い残してマドリアさんの部屋を後にする。外に出た所で、メイドさんであるミステさんが一人で待機していた。恐らくマドリアさんが試験通過を認めて、待機しておくようにと何らかの方法で伝えておいたんだろう。

「一人目の試験、お疲れ様でした。続いて二人目の四天王様へのお部屋へと案内いたします。私について来てください」

 そうして再びミステさんの案内で魔王城の中を歩く自分。さて、一人目がラミア……じゃなくってエキドナと言う自分的にはあまりなじみの無い種族が出てきたな。この分だと四天王の残り三人も変わった種族である可能性がある。その点だけは考慮したうえで挑むことにしよう。ま、戦いになる可能性は多分低いし……大丈夫だろ。
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