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連載

四天王三人目

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 三人目の四天王への案内を受けている最中、自分はついはぁーっとため息をついてしまった。

「あら、どうなさいました?」

 ミステさんがそんな自分の様子を見て、案内する足は止めずに問いかけてきた。

「いえね、四天王の皆様と会って頂くと言う言葉を聞いたときは、かなり緊張したんですよ。どのぐらい恐ろしい猛者が出て来るのかと。なにせ魔王様の直近の方々ですからね。しかし蓋を開けてみれば、別の意味で恐ろしさを感じる方が連続で出て来るので」

 実力があるから四天王の座に居る訳で、そこは別に男女の性別は関係ないだろう。が、個人的にはもっとこう、覇気のある武将的なイメージを無意識のうちにしていたのは否めない。ところがどっこい、外見こそ下半身が蛇だったりはしていたが、かなりの美人さんが出迎えた事にびっくり。だが、その外見に騙されてはいけない事も理解できていた。最初のマドリアさんは分かりやすかったが、先程のヘテラさんもあくまで穏やかなのは表面だけ。実は、ヘテラさんからもなんとも言い難いこちらを押し潰すような威圧を受けていたのだ。それに気がついたのは、部屋を出てしばらく経ってからだが。何らかの精神攻撃を受けていた可能性もある。それもまた試験の一つである可能性がある。

「見た目は美しい皆さまですが、その気になれば一日で一つの街を地図から消せるお力をお持ちしてますからね。私達も無礼を働けば一瞬で消されてしまいます。幸い、力はお持ちでも、その力をむやみやたらと振り回さない心も一緒にお持ち下さっていましたので、大きな問題にはなりませんが」

 ああ、やっぱりそんなレベルの実力者か。なら、自分一人を一瞬で消す事もたやすいだろうな。黄龍変化なら粘れるかもしれんけど、試す気にはならない。

「やはり、実力と心の両方を兼ね備えていらっしゃるのですね」

 力だけでは暴力、心だけでは何もできないと言ったのは誰だったか。妙に心に残って居る言葉だ。

「はい、そうでなければ四天王として選ばれませんから。ただの暴れん坊ではダメです、論外です。力と心を持ったうえで、今回の様な試験を行える知力や応用力など……あらゆる力を要求されます。だからこそ、四天王の皆様は魔族の方々から敬意を払われるのですけれど」

 奇麗なバラには棘があるって言葉もあったな。もっとも、馬鹿な真似をしたら棘どころじゃ済まないんだろうけどさ。

「そして、そろそろ三人目の四天王様がお待ちしている部屋です。心の準備をお願いしますね」

 さて三人目。次はどんな方が出て来るのやら。共通点も無いからなあ、一人目がラミア? 二人目がサキュバス。とりあえず部屋に入ろうか。

「──来たね。まずは座って。おそらく前の二人はお茶の一つも出さなかったろうから待ってて」

 四天王三人目は、肌がかなり白くフードを深めに被った女性。それにしても女性が三人目か……かなり偏ってるな。魔王領でも女性が強い時代なんだろうか? とりあえず言われたとおりに椅子に座って待つ事数分、奥から紅茶の香りを漂わせながら戻ってきた。

「はい、どうぞ。私の趣味で入れている紅茶だけど」

 良い香りだ。紅茶の知識なんてほとんどないが、この香りだけで良い物であると理解できる。そっとカップに口をつけて、まずは一口。うん、程よい苦みと甘さ。これは自分の腕では出せない味だ。

「素晴らしい味です、ホッとします」

 自分の対面で同じように紅茶を飲み、少し落ち着いたところでフードを深めに被った女性が自己紹介を始めた。

「では、喉の方も程よく湿っただろうから話を始めようか。私はデス、死神よ」

 ──すごいな魔王様。死神さんまでもが四天王、つまりは配下に置いているんですか。

「デスさんですか。私はアースと申します」

 紅茶のカップをテーブルに置き、こちらの名前を告げる。するとデスさんはきょとんとした表情を浮かべていた。ついでに深めにかぶっていたフードがずり落ちてその素顔が晒される。素朴系美人? 派手さは無いが奇麗だな。

「貴方は私が怖くないの? 自分で言うのもなんだけど、私は死神だよ? 死をつかさどる神だよ? まあ、まだ死神としては半人前だけど……人にとって、死神って物凄く怖ろしいイメージを持たれてるんじゃなかった?」

 ああ、そう言う事か。なんで急にきょとんとした表情を浮かべたんだろうと思ったんだが、そう言う事前情報と自分の態度があまりにも違うから理解が追い付いていないのかも知れない。

「そうですね、確かに死神に対して畏怖の感情を持つ人は少なくないでしょう。死と言う物は恐ろしい物ですから」

 ここで一旦言葉を区切り、紅茶を口に含む。紅茶の味を楽しんでから、自分は話を続ける。

「ですが、たいていそう言った畏怖される死神のイメージは、積極的に大鎌を振るって殺しに来ると言う形ですね。骸骨に黒いぼろのフードを身にまとった姿で現れ、問答無用で無慈悲に命を刈り取りに来る。故に怖ろしい、と」

 特にアンデットとかを取り扱うゲームに出て来る死神はこういうイメージだろう。特に強いボスとして登場する死神には、即死する技を持っていたりするから尚更恐怖の対象となる。そうそう、冒険中盤までは絶対に倒せず、逃げ回るしかないと言うパターンもあったっけな。で、追いつかれるといろいろと呪われて悲惨な状況に追い込まれるとか、ね。そういやワンモアでも、そんな罠があったんだっけか。

「ですが、それは本来の死神の姿ではない」

 ──かどうかは不明なんだけど、明らかに心情を悪くする言葉を口にする必要も無いだろうって事でここは断言しておく。

「本来の死神とは、死した者がその後に向かうべき場所へ迷わぬように導く案内人。行き場所に迷ってワイトなどのモンスターになってしまわぬ様にする神。それが本来の死神」

 と言う説もあるんですよ。日本的に言うなら、地縛霊や浮遊霊と言った形で世の中に執着し、何時まで経っても浮かばれないという事にならないようにする。きちんと死んだ後にその霊魂を三途の川まで送り届けると言えばいいだろうか。だけど、大半死神のお仕事と言う名の役割ってのはデストラップ役とか、前に言った追い掛け回す恐怖の存在と言うのが多いからなぁ。

「──驚いた。死神について人族の間でもそんな風に伝わっている事もあるなんて。そう、私は貴方が言った通りの案内人。老衰、病気、大怪我などで死した者達の魂をキチンと行くべき場所へと届けるのが私の仕事。逆にいえば、死すべきではない者や、助かる可能性のある者には治療も施す。決して死神は、死を呼び寄せる不吉な存在ではない。人族がそれを知っているとは思わなかったけど」

 ああ、この子もそっちの役割を持つ死神なのか。だけど。

「そうでしたか。しかし、そうなると何故その死神様が四天王をなさってるんですか?」

 と言う疑問が湧いてくる。何も魔王様に仕える必要はないと思うのだが。

「私がここに居る理由は、死神と言う存在を魔族の方々に正しく理解してもらう為と治療法の伝達のために居る。人族風に言うのであれば、私は戦える医者。特に様々な病気に対する治療法が間違っている事を私が指摘したら、魔王様からしばらく四天王として魔王城に滞在し、知恵を分けてほしいと頼まれた。なので、正確に言うのであれば私は魔王様の配下ではない。魔王様の人格が良いので、その手助けをしているに過ぎない」

 あ、そうなのね。あくまで協力者って事か。うーん、でもそうなるともう一つ聞きたい事が。

「もう一つ質問してもよろしいですか? 死神様がここに居ると、魔族の皆様は死後に迷うことは無いでしょうが、他の種族が大変なことになるのではないですか?」

 この質問に対する返答は……

「大丈夫、各種族に合わせた死神がいるから。私は魔族担当と言うだけ」

 という事だそうだ。各種族に対応した部署とかあるのかと言う点はちょっとびっくりした。

「では、次は私から質問する。貴方にとって『闇』とは何?」
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死神については思う所もあるかもしれませんが、
あくまでこの子はこういう子です。
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