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連載

四天王最後の一人

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これでやっと四天王をメインストーリーで出せました。
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「お待ちしておりました。まずはこちらにお掛けください。改めて申し上げます、メイド長と四天王を兼任しておりますリビングアーマーです。名前もあるのですが、名前を知られてしまいますと色々と問題が出てしまうため名乗ることが出来ません。その点はご了承ください」

 四天王最後の一人は……最初にお会いしたリビングアーマーさんでした。進められた椅子に腰を下ろし、まずは一息。

「さて、実は今までであなたが出会った四天王達との受け答えと、貴方様がここにやって来るまでの行動を大まかに調べさせていただきました。方法は内緒です」

 と、リビングアーマーさんはそんな事を唐突に告げてきた。ここにやって来るまでの行動ってのはどこまでを含むんだろう。目の前に報告書らしきものをめくっている。

「えー、妖精と龍の国にそれなりに顔が効くようですね。また、過去にあったゲヘナクロスとの戦いにも参加し、獣人連合内で突如起こったバッファローの大群との戦いにも顔を出している様ですね……なかなかのご活躍をされているようで」

 ! そんな事までこの短時間で調べ上げた、だと? 最初に出会って自己紹介をしてから……二時間はまだ経過していないぞ? これは何らかのパイプがあるな。いくら魔法で短縮できる部分は短縮するにしても、二時間足らずでそこまでの情報を集めることは出来まい。だが、〈義賊頭〉で行ってきた行動内容は一切なし、か。そっちがばれていないなら、何ら問題は無いな。

「──と言った感じの旅を続け、魔王領に入った直後にこちらにやってきた。間違いはありませんか?」

 と、確認をこちらに求めて来るリビングアーマーさん。まあ、隠すようなことは無いからいいか。

「ええ、その内容で間違いありません。それにしてもよく調べ上げましたね……かなりあちこちを行ったり来たりしていたのですが」

 ここであれこれ聞いても、どうせ『メイドですから』でごまかされそうな気がする。まあ異世界のメイドって聞くと、可愛いだけではなく、戦ったり情報収集をして来たり護衛もできたりと多彩な子が多いから、気にするだけ無駄だ。メイドと言えば、あのダークエルフのメイド三人組は元気でやってるかな。

「収集した情報は、この後破棄します。あくまで魔王様と謁見させても問題ない人物か否かを確認するためだけに集めた物ですので、確認が取れた今はもう不要です」

 言うが早いか、分厚い報告書を目の前で部屋の隅にある暖炉に突っ込み、燃やしてしまうリビングアーマーさん。城の中は温かいので、暖炉に火が入っておらず……それ故にただの飾りなのかと思っていたが、こういう風に使うのか。

「さて、私の試験ですが……実はもう終わっております。それと同時に、ここまでの試験の意味などを発表しようと思います。さすがに一切教えないと言うのは、そちらも気味が悪いでしょうから」

 いや、別に。何かにつれ、知らない内に試されるなんてのは世の中ではしょっちゅうだしねぇ。とはいえ、一々そんな事を告げる事もあるまい。ここは大人しく話を聞くことにしよう。

「まず最初のエキドナのマドリアから行きましょう。彼女の審査は、『自分の姿とは大きく異なる異形の姿をしている者でも受け入れるか否か』です。彼女は特に背中から羽が生え、下半身は蛇と言うエキドナと言う種族ですからね。受け入れられない者は簡単に拒絶反応を示します。たとえポーカーフェイスを保てたとしても、一瞬目に浮かぶ脅えや嫌悪は隠せません。そして、そういった物を見逃さないのがマドリアなのです」

 あー、うん。これは分かりやすかった。何せ特に下半身の蛇の部分をことさら強調して来たからね。あれで自分の目に嫌悪感とかが浮かんだら、即座に不合格にするつもりだったんだろう。残念ながら、こっちにしてみれば、もう色々と見てきちゃったから一つの種族特製としか見れないんだよね。別段嫌悪感を抱く事も無いし。

「次はサキュバス・クィーンであるヘテラですね。彼女の試験は、『色欲に簡単に流されるような心弱きものであるか否か』です。サキュバスと言う種族が持つ色香と言う物は、服を多く纏った所でそうそう薄れるものではありません。むしろサキュバスでありながら服を多く纏う事で扇情感を煽る一面もありました。まあ、彼女の言う肌を晒したくないと言う言葉は真実ではありますが。そして彼女は誘惑の精神魔法を放っていた事に気がつかれましたか? それらに負けて、彼女に襲い掛かる様では失格ですね」

 ああ、何かされていたなーとは思っていたが、そう言う事か。にしても、その手の精神系魔法がプレイヤーに効くのか? だが、色々と変な部分があるのがワンモアだし……ちょっと追及するのが怖いから黙っておこう。まあ、多分だけど、影響を受けたら触りたくなってしまうって言う穏やかなレベルだと思う。それ以上だったらいろいろと不味いだろうし。

「三番目の死神のデスの試験は『闇を一方的な悪と見なしていないか』ですね。魔族は種族の関係上、光系統の魔法や技術は苦手で闇系統の魔法などが得意と言う一面があります。その為、光を正義、闇をあくと一方的に断じて攻撃を仕掛けられたことも多々あります。そしてその事が切っ掛けで他の種族と戦争になった事も一度や二度ではありません。今は時代が変わって、そう言った考えはかなり薄れましたが……やはり、ゼロにはなっておりませんので」

 あーうん、とくに宗教関連でそう言う考えが根強いと面倒だよね。もしかすると、過去にあった妖精達が各国に攻め入っていた時期ってのは、そう言う腐れ宗教が原因だったのかも知れない。で、それを止めた妖精の王が出て、やっと侵略行為が収まった、と。宗教が理由って言うのは、なかなか終わりが見えないんだよね。これも歴史が証明してる。

「そして最後の私ですが……やってきた人物の情報を集め、それらの情報と、事前に試験をした四天王三人の評価から魔王様に謁見する資格があるかどうかを判断するのです。なので、城に居る四天王の前でだけ猫を被っても無意味、という事ですね。魔王様に対して害をなそうと言う者は履いて捨てるほどいた時代もありましたので、その時の名残もあってこのような判別方法を取っているのです」

 何せ謁見を望んだ相手は魔族の王様だもんね、それぐらい調べるのは当然だろう。が、今回ばっかりは遊びでも好奇心でもなく、引けない理由があるから落とされるわけにはいかない。かといって、あの手紙を先に出して、これを見せれば──なんて方法は要らん混乱を招く可能性がそれなりにある。確認のために中を見せろなんて事態に発展する様な事を避けたかったからこそ、今回の試験を自分は受けた。

「なるほど、そう言う事であれば、ここにやってきた時点で終わった事になるのでしょう。では、今回の試験の合否を教えて頂けますか?」

 とりあえず、合否を聞く。もし否だった場合は……また何かを考えよう。それでも四天王の皆さんには顔を合わせる事が出来たのだから、例の手紙を魔王様に届けることはなんとか出来そう、か。ただその場合は、自分が直接持っていけないのが気がかりだが

「では、発表します。アース様の魔王様謁見許可の合否、それは〜〜〜〜」

 何故そこで溜める。そしてどこからともなくリビングメイド? が数名やって来て一斉にドラムロールを始める。そんな知識をどこで手に入れた! そしてまだ溜めるんかい! こんな焦りを煽るような演出は要らない!

「〜〜〜〜合格です! 四天王からの評価も良く、今までやってきた行いからも魔王様に狼藉を働く人物ではないと判断できます。ですので、この後魔王様に謁見していただきます。魔王様もすでにスタンバイしておりますので、早速向かいましょう!」

 魔王様がスタンバイしてるって何ですか。カタパルトにでも乗って、何時でも行けますって事ですか。いや、これがワンモアの世界だ。常識なんかかなぐり捨てる所はすてるべきなんだ。色々と不安なんだがなぁ。どのみち魔王様に直接会える絶好の機会を捨てると言う選択肢はない。

「合格と聞いてほっとしました。では……そう言えば、いまさらと言えば今更なのですが、一つ質問してもよろしいでしょうか?」

 早速案内を使用していたリビングアーマーさんを呼び止めた。リビングアーマーさんも「どうしました? 何か問題が?」と言わんばかりに首を傾げたので話を続ける。

「魔王様に謁見すると言うのに、こんな冒険者姿のままで宜しいんでしょうか?」

 ほら、魔王様に限らず王様に謁見するときはそれにふさわしい恰好をしろって言うのが、一種のお約束的な面があるじゃないですか。ほら、アニメでもゲームでも映画でもなんでもいいから、王様に主人公が謁見に行くシーンを思い浮かべて欲しい。王様やその周囲に居る人達が立派な服を着ているのは当然だが、主人公の方だってそれに負けない服、もしくは鎧を纏っているだろう? その場に合わせた物を纏うってのは、必要な事なんだよ。

「ああ、服装ですか。今回の事は完全に公式的な要素はありませんから問題はありませんよ。もちろん公式行事の時の謁見であったならば、それ相応の服を無理やりにでも着て頂く必要がありますけどね」

 それでいいのかメイド長。まあ、良いと言うのであればいいんだろう。幸い外套も擦り切れているという訳ではないし、そんなに不潔さや不衛生さを感じるものではないはずだ。一応メイド長であるリビングアーマーさんにも確認してもらい、問題なしと言って貰えたので良しとする。そうしてリビングアーマーさんに案内されて歩くことしばし、ついに魔王様との謁見室の前に到着する。

「では、中に入ってこちらのメイドの出す指示に従ってください。一応、王との謁見という事になりますので、最初だけはそれなりの手順を踏ませていただきます」

 で、謁見室の中に通されていくつかの指示を受ける。まあ、これも予想通りで、まず最初は片膝をついた格好で頭を下げて置き、魔王様から「面を上げよ」と言われたところでゆっくりと上げる。そこから魔王様の挨拶の後に、「して、名のようでここまで来たのかを聞かせて貰おう」と言う発言の後に、「では、恐れながら申し上げます」と一言断りを入れてから理由を述べると言う流れにしてくださいとの事。

「良く解りました、その流れに従います」「よろしくお願いしますね、あと少しで魔王様がいらっしゃいますので、少々窮屈かもしれませんがそのままお待ちくださいませ」

 リビングメイドさんが立ち去り、謁見室の奥の方が騒がしくなってきた。非公式なので、部屋に居る人も魔王様の護衛をする方々と四天王のリビングアーマーさんを除いた三名しかいない様だ。いよいよだ、これで目的が達成される。そして──

「魔王様、ご入場! 皆、敬意をもって迎えよ!」

 との声が。さて、どんな魔王様なのか……ちょっと楽しみだ。
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四天王とは戦う訳でもないのでサクサク進めました。
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