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連載

変身能力、発現

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お待たせしました。もう一つの変身能力、解禁です。
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 爐修譟匹蓮⇔磴┐襪覆藐淤椶離薀ぅ鵑澄K皺ν佑某┐譴討い娠手から体に上り、心臓に突き刺さる。そこからラインはさらに心臓から左手、左足、右足、右手の順に巡回を行ってから頭に上ってきた。そのラインが頭に届いた瞬間、自分は途方もない熱に包まれた。

「!──!!」

 熱い。先ほどまで感じていた寒さは完全に消え去り、自分の全身がとても熱い。その熱さに目が回る。平衡感覚が狂う。立っていられない。

「気をしっかりと持つんだ! その熱に『自分』を持っていかれたら、荒れ狂うだけの化物となってしまうぞ!」

 魔王様が何か言っているようだが、内容が分からない。今できる事は、うずくまって全身から襲ってくるこの熱に耐える事だけだ。だが、こんな物に押しつぶされてたまるか。死亡してもデスペナルティを受けるだけで復活出来る自分とは違って、ゼタンはあの戦争を生き抜いて見せた。あのボロボロになりながらも戦った姿を思い出せ! この程度の熱なんかより、もっと熱い何かを見たはずだろう! そんな親友に顔向けできない結末を迎えるんじゃない!

 ゼタンの事を思い出しながら歯をくいしばって熱を耐えているうちに、幻影が見え始めた。だが、その幻影は妙にはっきりと見える。そしてその幻影の内容は、魔族の男性と女性が次々に映し出される映像のような物だ。割合としては男性が七、女性が三。皆美男美女であるが、一つの共通点があった。もっとも、その共通点を理解したのは、幻影の最後に現魔王様の姿がはっきりと見えたからなのだが。つまり、この熱にうなされながら見た幻影は、歴代の魔王様なのだろう。しかし、なぜこんなものが見える? 歴代の魔王様の顔や姿なんて、一度も見た事がない。見た事がない存在を、何故見たのだ?

「魔王の魔力をその身に受けたからだよ、人族」

 と、突如そんな涼やかな男の声が頭に響く。え? と自分が思った瞬間に体中の熱が引く。気がつくと、自分は青一色の世界に居た。地面が真っ青、空も真っ青、それ以外には何もない。長時間一人でいたら気が狂いそうなところだ。

「緊急事態であった事は認めよう。可能性を掛けられる物がこれしかなかったことも認めよう。しかし、無茶をしたな。人族で魔王の魔力をほんの一部とはいえその身に受けるなどと、発狂して爆発四散してもおかしくはない行為だぞ、人族よ。だが、そのような状況からここにたどり着いたその意思と意地には敬意を表しても良いぐらいだ」

 声は後ろから聞こえて来る。振り返るとそこには、黒いローブを纏った一人の魔族の男性が立っていた。だが、ただ物ではない。その威圧感に押されて、膝をついてしまったほどだ。一体、何者だ?

「そう硬くなるな。そうだな、まずは自己紹介から行こうか。私は初代の魔王だ。歴代魔王の魔力の中に眠っているのだが、魔王の継承の儀や魔王の力の譲り渡しが行われた際に目覚めて、その人物を見極める事を未だにやっている。無能な者、愚かな者、あまりにも欲が強すぎる者を弾くためにな」

 はあ、そうですか。──って、ちょっと待て。それはおかしくないか? 今まで聞いてきた事とずれた事を言い始めたので、とっさに立ち上がって反論をぶつけてしまう。

「すみません、それはおかしくないでしょうか? 現魔王様の四天王の一人から聞いた事ですが、過去の魔王様の中には戦乱を好み、他種族に争いを振りまいた魔王が居たと伺っています。貴方の様な審判を行う方が居たと言うのであれば、そんな争いを望む魔王が生まれるはずがない!」

 この自分が発した言葉に、「最もだ。それも説明しよう」と初代魔王様? は返答して来たのでとりあえず話を聞くことにした。時間は無いが、だからと言ってここで下手に話を遮ればかえって不味い事になりそうだと感じたのは約四十年の人生経験からだろう。

「アレは、私の魔力を受け継いだ魔王ではないのだ。私には姉と弟が居た。姉は穏やかな性格であったのだが、弟がかなり過激な質でな……私が魔王となった時にも、『兄上、いえ魔王様。その力を持って魔族の優秀さを世界に広めましょう! この世界は魔族によって統治されるべきなのです!』などと言って来たほどだ。むろん、私はその意見を即座に却下した。攻め入られれば返り討ちにはするが、無駄に血を流す事を良しとしないのでな」

 じゃあ、つまりその四天王の一人であるマドリアさんが言っていた『クズ魔王』ってのは、そう言う事なのか?

「そう、貴殿の想像した通りだ。魔王の歴史の中にはときどき暴君が生まれた。その暴君は我が弟の魔力を継いだ者だ。私の魔力を継いだ魔王が必死で弟の魔力を抑えようとしたが、時として弟の魔力の方が、私の魔力を上回る時代があってな……数代前までは多くの魔族があずかり知らぬところで戦いがあったのだよ」

 思考を読まれた? それはまあいい。そして数代前までって事は。

「今は弟の魔力は完全に霧散した。今後、魔王が暴君になる可能性はまずない。さて、この話をもっと続けても良いが……貴殿にはやるべき仕事があるな。まず、貴殿は人族だ。本音を言えば実に惜しい。現魔王が元気な状態で活躍出来ている時に、魔王の後継ぎ候補が生まれる事はなかなかない。貴殿が魔族であったのなら、この後英才教育を施して仁君な魔王として後を継いで欲しかったほどだ。残念ながら、魔族ではない以上、魔王となるには器が足りん」

 ああ、やっぱり種族による器の差って物があるんだな。龍族しか龍に成れないのと同じような物か。

「しかし、魔王の力の一端を体に取り込み、吸収することに成功した事で新しい力が発現したのは事実だ。その力を、破壊ではなく救いのために使うようにするのだぞ。まずは今の貴殿の姿を見せようか」

 ピン、と初代魔王様? が指を弾くと、一枚のデカい鏡がゆっくりと降りてきた。その鏡の前に立った自分の姿は……黄龍変身の時とは違い、全体的に刺々しいイメージを感じる全身鎧を身にまとっていた。特にガントレットにはベアークローとして扱えそうな爪が両手に四本づつ。靴の方にも、普段履いているマリン・レッグセイヴァーよりもより大きくなった爪が前に出ているし、膝にも飛び膝蹴りを相手に行えば深々と突き刺さりそうな杭がついている。

 鎧の色は黒に、銀のラインが複数入っている。刺々しい外見に黒を基調とした色彩の鎧……どう見ても、武闘派魔王様のような外見です。本当に……顔も目以外はがっちりと隠れてるな。龍のあぎとのような形をした兜に、顔を覆うマスク。おまけに背中には、四枚の黒い羽根が生えている。この羽根の形は、鷹の羽根が一番近いだろうか? こんな外見で街の中を歩けば、思いっきり目立つこと間違いなしだな。しかし、着ている自分はその重さを全く感じない。何で出来ているんだこれは?

「そんな鎧を着せておいてなんだが、貴殿に産まれた力は近距離戦闘の物ではない。弓を用いた中距離から遠距離戦闘の力だ。無論格闘や貴殿の持っている魔剣を生かした近距離戦闘もできるが、本分は中距離から遠距離戦だな。矢に光以外の属性を纏わせて打つのは基本で、色々な弓の技を用いる事が可能なようだ。ここはゆっくりと貴殿が時間をかけて調べるが良い。だが、いま急いで教えねばならんのは、あの暴走した魔力から生まれたあの者を消し飛ばす技だな」

 自分は頷く事で返答を返す。そう、あいつさえどうにかできれば、後は時間をかけて治癒行為を行えばいい。

「技の名は、《デモンズ・ジャッジ》。余談ではあるが、現魔王が振るったあの光の剣も《デモンズ・ジャッジ》だ。歴代魔王が振るう、とっておきの一撃が全て《デモンズ・ジャッジ》なのだ。貴殿は人族でありながら、その魔王の一撃を振るう事が出来るという訳だ。しかし、発動までに時間がかかる。現魔王の様に即座に発動することができるという訳ではない」

 それは存在スペック上仕方がない。そもそも、本来は扱えない技なのだから、使えるだけでも上等だ。

「撃ち方を教えよう。これは私の魔力を受け継いだ全ての魔王に教えてきた事だからな……一人一人の《デモンズ・ジャッジ》が違う以上、最初に扱い方を教えておかないと惨劇の元になりかねんのでな。さて、まずは的を用意しようか」

 初代魔王様が指を弾くと、現れたのはデカい岩山。あれをぶっ壊せという事で間違いなさそうだな。

「では、弓を構えろ。貴殿の持つ魂弓を用いるのだ。弓を構えたら、背中に魔力を集めて力を蓄積し、目標に向けて前方に七つのリングを形成しろ。七つのリングを高速回転させ、魔力が完全に充填されたら、その七つのリングの中を通過させるように矢を放つ。それが貴殿の《デモンズ・ジャッジ》だ」

 えーっと? まずは弓を構える、と。そして背中に魔力を集めると言われたが、どうやればいいんだ? とにかく後ろに何かのエネルギーが集まる様子をイメージ……うあ!? 背中の羽根が動いたような……そして背後から聞こえて来るヒィィイイイイインンン……と言う一種のモーターのような音。これで良いのかね? で、前方に七つのリングを形成しろってのも、輪をイメージすればいいのか。が、出てきたリングは一つ目から六つ目までが輪の半分部分だけ。最後の七つ目だけは他よりもやや大きいちゃんとしたリングだが。まあ回転させてしまえば、一つのリングになるか。

 背中に集まってきた魔力? をリングに流すような感じをイメージする。そうすれば、徐々にリングがくるくると回り出す。だが、その回転は遅い。もうちょっと多く魔力を注がなきゃダメって事か……よし、魔力を注げば注ぐほど、回転速度が上がっていく。魔力を注がれたリングの回転速度が上がると、リングの中に紫電が漂い始める。ふむ、なんとなくわかった。これは今はやりの弾を何らかの要素を用いて急加速し、相手をぶち抜くと言う事を目的としてるんだな。

 まだ足りないと感じたので、背中にもっと魔力を集めて、リングに流す。すると、リングの回転音が明らかに変わった。七つもあるリングが、まるで音楽を奏でているかのような音になったのだ。これで準備が完了したという事なのだろう。矢を取り出して弓に番え、リングを通して的となった岩山を見据える。

「もっと魔力を高めろ! 今の量では足りんぞ!」

 初代魔王様の声に従い、背中により多くの魔力を集める。もしこの魔力が見えているなら、ロボット物にある後部ブースターを吹かせて高速移動している姿にそっくりなんだろうな。今の自分は静止してるけど。とにかく魔力を集め、初代魔王様から「その魔力量を忘れるなよ! 放て!」との指示に従い、矢を放った。

 そして飛んだ矢の姿を……自分は視認できなかった。解った事は、一瞬岩山が光った後にヒビが入って崩れ落ちた事だけだ。何という弾速。が、一発撃つまでにかかる時間が長すぎる。さらに、一発撃った途端にリングが消失した。現魔王様のように連続で用いると言うことは出来ない、か。

「それがお前の《デモンズ・ジャッジ》だ。撃つまでに長い時間がかかる上に、周囲の魔力を集めねばいけないと欠点が多いな。しかし、これを叩き込むことでしか、あの暴走した魔力を吹き飛ばすことは出来ないだろう。チャンスは一度だけだが、決めて見せろ。さあ、行くがよい」

 そんな初代魔王様の言葉と共に、世界がホワイトアウトすると共に意識を失った。そして──

「おい、しっかりしろ! 大丈夫か!?」

 そんな現魔王様の言葉で目を覚ます。周囲を見渡せば、先程まで戦ったあの空間。奴が明けたあの穴もある。そうか、何とか戻ってこれたのか──。
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長らく開いていた残り半分のアースの変身キャパシティが
これで埋まった事になります。細かい能力は後ほど。
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