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連載

魔王様の趣味

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 そして魔王城内ではあるが場所は大きく変わる。今の自分は魔族の皆さんから治療を受けて全快したアクアを頭に乗せ、作業着を着た状態でのこぎりを扱っている。切っているものは、魔王様が他国からポケットマネーで購入したと言う冷気に強い木材だ。幸い今の自分の〈木工の経験者〉のスキルレベルでも扱う事が出来る範疇であった。さて、なんでこんな魔王城内で木工作業をやっているのかというと。

「私一人ではなかなかスムーズに行かんのだが、やはりもう一人いると捗るな」

 魔王様の趣味に付き合っているからである。こちらとしてもとんでもないマントを貰った直後で断りにくかった事もあるし、戦い続きで疲れていたという事もあって魔王様の要請を引き受けた。ちなみに魔王様はダーツボードやビリヤードの台なども木工技術を駆使して作り上げる事が出来るとかなんとか。魔王という座に座っている方が、こんな趣味をお持ちだとは思わなかった。

「とりあえず、ここに用意されている物はすべて加工してよろしいんですね?」「うむ、すまんが任せる。こちらも細かい加工が必要でな……」

 自分の担当は、丸太状態の材木を加工して使えるようにする事。そうして自分が整えた木を魔王様がコツコツと加工を施していく。

「それにしても、金物は一切使えないんですね」「ああ、あの鳥の特徴でな。金物を用いた巣箱には絶対に近寄らんのだ。過去に金物でひどい目に遭ったのかも知れんな」

 そして作っている物は、この魔王城のある場所に雨宿りならぬ雪宿りをしに来るある小鳥たちの巣箱であったりする。そして、その巣箱作りも魔王様の趣味の一つもであるらしい。が、配下にはいまいち理解されていない様子でもある。魔族の職人さん達は、基本的に魔法を用いた作品に興味が強い様で、この様な巣箱作りなんかは興味を全く向けないとかなんとか。

「今回は頭の痛い問題がこれ以上ないほどの最上の結果で終わったからな。私が出張らなければいけない仕事も今は無いから、こうして趣味に使って良い時間が取れた。うむ、やはり木の温もりは素晴らしいな。こうして触っているだけでも不思議と安らぐ」

 ──上に立つことからくる重責は、知らず知らずのうちに心身を蝕む事もあると言う。だからこそ、四天王の皆さんは魔王様が趣味の時間を作ることに対して文句を言う事はしないのだろう。ただ、「木工作業を一緒にやってくれないか?」なんて言葉は、確かに魔王様の口から出る言葉としては少々ずれている様な気もしないでもない。──いや、少々では効かないか?

「それはまあそれで良いのですが、同好の士……も言っておいてなんですが、得られそうにないですよね。魔王様は立場が立場ですからねえ」

 王様が一般市民に「一緒に日曜大工やろーよ」とか呼びかけたとしよう。王様側には何の悪意も無かったとしても、一般市民はそれを受け入れることは無いだろう。何せ相手は王なのだ、何が理由で『無礼者』扱いを受けて首を刎ねられるか分かった物ではないだろう。そんな事は誰だって嫌に決まっている、故に「恐れ多い事です」などの言い訳をして呼びかけに答えることは無いだろう。更には「そんな道楽に金をかける位なら、税金を安くしろ!」と考える人だって当然出て来るはずだしな。そうなれば、王と国民の間に要らぬ争いの火種を産みかねない。

「それは仕方がない。王という立場は孤独でもある。だからこそ、何らかの趣味を持ってほどほどに重責から逃れている時間を作らんと壊れたり極端な思考に走ったりしかねん。歴代の魔王達も可愛い趣味の一つや二つは持っていたとされているぞ? 先代の魔王は、裁縫が趣味であったな」

 今私が使っているこの作業着も、先代作だなんて事を魔王様がポロリと漏らす。作業着らしく飾り気はあまりないが、左胸に自分の貰ったマントと同じ花が描かれている。位置といい花の形といい、何らかの関連性か理由があるはずだ。聞いてみるか、言葉を濁された場合は話を切り上げれば良い。

「そこで一つ疑問が出てきたのですが……魔王様の作業着にも、先程頂いたマントに描かれた花が刺繍で入っていらっしゃるようです。その花には、何かしらの意味が込められていると見ましたが、もしよろしければ教えて頂けないでしょうか?」

 自分の質問に対し、「ああそうか、こちらでは一般的な事ゆえに伝えていなかったか」との一言を前置きしてから、魔王様の説明が始める。

「この花の刺繍自体には特殊な能力は無い。だが、この花は他者への無事と幸せを願う象徴として魔族の間では用いられているのだ。解りやすい例で言えば、両親と子供の間だな。産着や揺り篭などには必ずこの花が描かれているし、大きくなっても成人するまでは目立たぬ所に必ず入る。未来は常に不透明な物であるゆえに、少しでも幸せを願うのは自然な事だ。これには種族など関係なく、共通している部分だと思うがな」

 なるほど、そんな理由があったのか。他者への無事と幸せを祈る象徴か……それが可憐な花というのは、なんとなく良いな。そして、その花が自分が頂いたマントに入れられていたという事は、マントの製作者と魔王様が、自分の未来を祈ってくれているという事か。ありがたい話だ。

「さて、とりあえずその話は横に置いておこう。作業の進み具合はどうだ?」「ええ、とりあえず指示された量は今終わりました。組み立ての方に移りますね」

 魔王様が少々照れくさそうにしながら話を変えてきたので、その流れに乗っかる。実際指定されていた量の材木加工は終わっていたので問題なし。ここからは、魔王様が材木をパーツにし終わった物を組み立てる作業に移る。金物が使えない……つまり、釘の使用が不可能なので、組み立てて最低限の補助具で完成するように魔王様が巣箱のパーツを作っている。その出来上がったパーツを、自分が順次組み立てていく形となる。もちろん魔王様も、パーツ作成が終われば組み立て作業に入る。

「それにしても巣箱を四十個も用意するんですか……鳥の一家に一つという感じなのですか?」「それは、取り付ける時のお楽しみだ」

 組み立てはそう難しくない。ガ○プ○のHGなんかよりもはるかに単純で一つをくみ上げるのに五分もかからない。組み立てた後は最小限の補強具を用いて完成である。木材の加工とパーツ作成の方が大変なのであって、組み立て作業はぱっぱと進む。もちろんくみ上げた後におかしい所は無いか、強度不足の点は無いかと確認は行うが、それだって一分はかからない。パーツ作成を終えた魔王様も組み立てに加わればもっと早くなり、四十個の巣箱はあっという間に組みあがった。

「さて、では早速取り付けるために運ぼうか。運ぶのはリビングメイドにやらせるから、貴殿はやらなくて良いぞ。ただ外に出るから、作業着を脱いで、装備だけはしっかりと身につけてくれよ」

 との事なので、さっさと着替えを済ませてマントも装備する。このマントを身につけて外に出るのは初めてだが、どれぐらいの防寒性能を誇るのか……やがてやってきたリビングメイド達が巣箱を持ち、魔王様を先頭にぞろぞろと魔王城の外に出る。そして魔王様から頂いたマントの性能に、一人驚愕することになった。寒くないのだ。雪が降っているというのに、体の方は春の陽気の中にいると錯覚するぐらいに温かい。フードを被っている頭や顔も同様で、何とも奇妙な気分になる。

「ふふ、マントの方は気に入って貰えたようだな。さて、目的の場所に向かうぞ」

 魔王様には、自分の驚きがばれていたようです。そんな一幕を挟みつつ取り付け場所に向かう。そこは魔王城の裏側で、雪があまり吹き込んでいない場所だった。そこには古くなってボロボロになった巣箱と、真っ白い体を持つ鳥達が飛び回っていた。それにしても数が多いな。

「よーしよしよしよし、新しい家を持ってきたからなー? 暴れたりするんじゃないぞー?」

 そんな魔王様の言葉に従い、鳥達は飛び回るのを止めて大人しくなる。そこに巣箱を運んできたリビングメイド達が手際よく古くなった巣箱を下ろして、新しい巣箱を取り付けていく。その光景を鳥達は歓迎しているように鳴き声を上げる。全ての巣箱がリビングメイド達の手によって付け終わると、我先に巣箱の中に入っていく鳥達。真っ白いのは雪の中に隠れる為の保護色か? それともシロクマと同じ理屈なのか? が、変に触れようとすれば敵とみなされる可能性もあるから、ここは見るだけに留めよう。

 最後に古くなった巣箱を一か所に集め、焼却処分。この辺は病気対策なのかもしれん。大抵の病気の元は焼けば対策出来るからな。そう言った一連の作業を終えて再び魔王城の中へ。ある一室に通され、魔王様と一緒にお茶を楽しむ。

「──今回は我のわがままに付き合わせたお礼として、五万グローを出させてもらおう」

 わがままに付き合うのは別段構わなかったのだが、いくら何でも高すぎる。なので断ろうと口を開こうとしたのだが──魔王様がそれよりも先に手を出して押し留める。

「貴殿の事だ、おそらく報酬なぞいらないというか高すぎると反論するだろう。が、ここは受け取ってほしい。貴殿が言うように、我は趣味を通じての同好の士を得る事が立場上非常に難しい。今日行った巣箱作りも、普段は一人で黙々とやるだけだ。しかし、今日は違う。他の者の温もりがあり、声があり、音があった。それは金銭に変えられぬ価値がある。が、それに対する礼の方法が分からぬ。故に少々金を積んで──もしかしたら、また一緒に木工の趣味を共にしてくれるかもしれないの言う可能性を作りたかった。浅ましいと言われても仕方がないが、どうか受け取っては貰えぬか」

 そう、か。ならば仕方がない、という事にしておくか。

「時間と気が向いたとき、また来ます。それでいいならば」

 必ず来るとは確約できない。それでも、完全に突き放すよりは良いのではないか……しかし、フェアリー・クィーンとの一件もある。あまりに近寄りすぎて、問題を産む訳にもいかない。その辺のバランスをしっかりと取らないと、な。

「──感謝する、何時でも来るが良い。貴殿のマントを見せれば、我にすぐ会えるようにしてある。たまにで良い、また来て欲しい。そうそう、あの鳥達だが、あ奴らは絶滅寸前の希少種だ。故に、ここで見た事は他言無用で頼むぞ。保護しているのも、私のわがままだからな……もう少し数が増えれば、徐々に外の世界に出していき、ゆっくりと復活させる予定だが、まだそこに至るまでには時間が掛かりそうだ」

 なるほどねえ、あの鳥の保護のために巣箱が必要という事か。絶滅寸前までいったのならば、数を取り戻すのは時間がかかるのはやむを得ないだろう。それに、あの鳥たちとの触れ合いも魔王様の精神安定に一役買っているのかも知れないが。こうして魔王様とのやり取りを終え、用意された部屋に戻って今日はログアウトした。そろそろ、魔王領での冒険を始めたいな……明日ログインしたら、挨拶をして城からお暇することにしよう。
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多少修正を行いました。

スキル

風迅狩弓Lv50 The limit! 砕蹴(エルフ流・限定師範代候補)Lv42  百里眼Lv38  技量の指Lv55  小盾Lv42  蛇剣武術身体能力強化Lv1 ダーク・スラッシャーLv1 義賊頭Lv47   隠蔽・改Lv7 妖精招来Lv18 (強制習得・昇格)(控えスキルへの移動不可能)

追加能力スキル

黄龍変身Lv2.58  偶像の魔王 1.12 

控えスキル

木工の経験者Lv13 ↑1UP 上級薬剤Lv35  釣り LOST!  料理の経験者Lv27  鍛冶の経験者LV31  人魚泳法Lv10

ExP 11

所持称号 妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 竜と龍に関わった者 妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊 人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル  悲しみの激情を知る者 メイドのご主人様(仮) 呪具の恋人 魔王の代理人 NEW! 人族半分辞めました NEW! 闇の盟友 NEW! 魔王領の知られざる救世主 NEW! 無謀者 NEW! 魔王の真実を知る魔王外の存在 NEW! 天を穿つ者 NEW!

二つ名 妖精王候補(妬) 戦場の料理人

強化を行ったアーツ

《ソニックハウンドアローLv5》
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