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連載

円花のあれこれ?

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「ほう、質問とな? 何を聞きたい?」

 と、受け付けてくれる様子を見せたので、以前守護者様から聞いた話と円花が教えてくれた話を口にする。そして……

「と、いう事で、円花の話と守護者様の話には、食い違いというか噛みあわない部分があります。特に、円花が『守護者様に拾ってもらい、保管してもらった』という点と、以前守護者様が自分に剣を渡した時に『命を狙ってやってきた者が持っていた』と仰っていらっしゃった部分がどうにもすっきりしません。どういう事でしょうか?」

 と、気になっている部分を問いかけた。いくつかの仮説は立ててみたが、やはり聞いてみた方が早いからな。

「なるほどな、確かにそれだとこちらの話と魔剣から聞いた話とはかみ合わんと疑問を抱くのも無理はない。答えを言うのは構わぬが……その前に、お前は惑……いや、円花であったな。円花を信じてはいないのか?」

 この逆質問には首を振る。信用してなかったら一体化などしない。それに、きつい戦いを共に乗り越えてきた相棒を信用できなかったら、何を信じろと言うのだろう。

「よろしい、ならば円花の言葉を信じるがよい。こちらの言葉はお前に渡すときの方便であってもさほど問題は無いだろうが、一体化してこれからも共に歩むと決めた円花の言を疑うようであっては困る。そうなれば、お主の進む道に、要らぬ災いを呼ぶ切っ掛けにもなるからな」

 ──まあ、どこの世界でも信頼感が崩れた途端に、要らぬ争いが始まる切っ掛けが生まれると言うのは良くあることだ。それに、円花の意思はきっとどこかに残っていると思う。何せ魔剣本体が体の中にあるのだ。だから思考は解けてなくなってしまうのかも知れないが、魔剣に宿った心は自分の体のどこかにあるはず。だからこそ円花を信用し、共に歩くと誓った心を忘れてはいけないと自分は思う。こういう所は、理屈とかそう言ったしち面倒くさい物はすべて投げ捨てていいと思う。

「円花の事は一切疑っていませんよ。それに、双方ともに私に嘘を言う理由は無いですし。ただ、どうしても聞いてみたかったと言うだけです。自分が立てた仮説の一つに、双方の話の間には長い時間が流れている可能性があると考えていましたし」

 円花は自分の事をおばあちゃんと言っていた。つまり、それ相応の時間が経過しているという事を認識している訳だ。となれば……円花の話に合った捨てられた後に、長い時間が流れてから再び誰かに発見され、再び振るわれるようになったと言う可能性は十分にある。ただし、捨てられたことによるショックか何かで円花の意識は眠り続け、守護者様に拾われて強化されたところで再び目覚めたとすればどうだろう? そうなれば守護者様に拾われたと言う円花の言葉も、守護者様の命を狙ってやってきた連中が持っていたと言う言葉も嘘ではなくなる。まあ、あくまでもこの考えは仮説にすぎないのだけれど。

「ふむ、確かにこちらが見つけた時にはボロボロとなっていた事は事実。そのまま朽ち果てるのは哀れに思って闇の力を与えたわけだが……確かに、あそこまで魔剣が衰えている姿を見せるという事は、相当な時間が流れていたとしてもおかしくはない。魔剣と言えど、長き時の流れの中で共に歩む事が出来る存在を見つけられずにいれば、朽ちていく定めにある。その辺は人の言う『剣は振るってこそ剣、飾っているだけでは意味がない』という言葉に通じる所があるのだろうな」

 つまり、課程はどうあれこの守護者様に発見された時は、円花は瀕死だったという事か。で、そこから強化されたことにより生きながらえて、更に時間が経過した所で自分の手元にという流れか。

「魔剣は、その存在上、どうしても波乱万丈な人生ならぬ剣生を送ることになるんでしょうかねぇ……」

 自分の言葉に、守護者様も頷く。

「やむをえん所もあるな。魔剣の力や能力は色々とあるが、やはり強力な魔剣は狙われる。いつの世も素晴らしい武具を求める者の数は決して減りはしない。どのような新しい武器や技術が生まれたとしても、それを笑いながらひっくり返せる力がある。私の手元にはないが、魔弓の中には放てば即座に相手に命中させる能力や、放った矢を見えなくする能力を秘めている物があると聞く。おそらく今も誰かの手の内にあり、多くの者の目につかぬように用いられているのであろうな」

 へえ、そんな物もあるのか。もしかすると、そう言った魔弓は『アポロンの弓』ギルドに所属しているメンバーの誰かがこっそり持ってたりするかもしれないな。もちろんそれをいちいち探ったりするつもりは一切ない。魔剣系統は、そうそう手に入る一品ではない。それを手にできるって事は、相応の実力者か相当の運に恵まれた人物か。まあ、収まるべき場所に収まっていると自分は考える質だ。

「まあ、だからと言って自分は他の魔剣に属する武具を欲しいとは考えません。円花一つで十分……というよりも、円花は自分が使うにはもったいないぐらいのいい子ですからね」

 こう自分が言うと、守護者様は突如はっはっはと大声を上げて笑った。

「何を言っておる、詳しくは分からんがその身に纏っているマントや鎧も十分異様な逸品であろうに。弓もかなり変異しておるようだし、盾や靴からも妙な気配を感じるぞ。それだけの物を身に纏っておいて円花一つで十分とは、かなり感覚がずれておるのではないか?」

 あー、うん。その通りでした。冷静になって考えるまでも無く、この貰ったマントを始めとして、ドラゴンスケイルアーマーフルセット。蒼海鋼で進化した弓にレッグブレード。ドラゴンの骨で作ったスネーク・ソード仕込み盾&毒を相手に与えるスネーク・ソードを仕込んだ盾。異様な物をたくさん身につけてますね、ハイ。アクセサリーもアクアの羽根やら、顔につけている面、ルエットの意思が入っている指輪も十分異様な逸品だ。

「おっしゃる通りです……」

 視線をそらしながら返答するが、まだ守護者様はクックックと笑いをこらえるような声を上げている。なんか良く解らないけど、笑いのツボに入ったんだろうか? ここは大人しくしておこうと考え、守護者様の笑いが収まるのを待つ。

「いや、久方ぶりに声を上げて笑わせてもらった。それに、それだけの物が一人の男に集まるのは偶然ではないだろう。人と人の出会いには天運が絡むが、それは人に限った話でもあるまい。だが、天運が用意するのは出会いまでだ。そこから先、つまりは出会った後の付き合い方は人それぞれだ。円花とて、お前の手に収まる前には何人もの使い手の間を行ったり来たりしていると言っていたのだろう? そうなれば当然、円花の真の主になる者が先に生まれている可能性があり、お前の手にやって来ることは無かった可能性もあった訳だが、そうはならなかった訳だしな」

 そう言う考え方もあるか。天運の一言で片付けられてしまうほど安っぽい行動を取ってきたつもりはないが、そもそも出会えなければ始まらないと言うのもまた事実か。この『巡りあわせの運』は、確かに天運としか言いようがないかも知れない。現実だってそうだ。まず、産まれてくる場所、親、時代を選ぶことができない。そこから先に待っている多くの出会いによって、どういった人間になって行くかも大きく左右されるのは確かだ。

 だが、たとえどんな条件であっても、その運に屈して腐るか。その運を食らってやるとばかりに拳を握りしめるかで結末は大きく変わる事も多数ある。偉人と呼ばれる人達も、最初から最後まで幸運に恵まれ続けた例はまずない。むしろ、不運な状況が続く事の方が多い。しかし、その不運に屈せずに戦い続けたからこそ、偉人として名を残すような結果を出したともいえる。だからこそ、そういった人達の一生を本にして、教訓として残すべく本にするのだろう。

「天運、ですか」「そうだ、時に味方、時に敵となる。だが、結末は出会いの時点では確定していない」

 結局、どの世界であっても努力しなさいって事を言いたいんだろうな。ま、とりあえず話も聞けた……ごまかされた部分も多いが、これ以上突っ込む必要はないだろう。円花を信用する、大事な事はこれだけだ。そろそろお暇して、魔王領に戻ろう。そして、いよいよ本格的に魔王領での活動を始めよう。

「そろそろ失礼いたします。また何かありましたら……」「達者でな。また機会があれば合う事もあるだろう」
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と、明かすのはこれぐらいです。
ここから先は、読者の皆様の想像次第です。
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