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ここからがやっと普通の冒険に

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 何やかんやあったが、守護者から受けた依頼もこれで完全に終了した。これにてようやくではあるが、魔王領での活動を心置きなく出来るようになったという事だ。ダークエルフの街から大急ぎで魔王領までとんぼ返りしてからログアウト。アクアを酷使してしまったので、ちゃんと謝っておいた。

 そして、フォルカウスから魔王領に入る関所を超えて、一番最初に訪れる事になる町であるサルアという街にある宿屋で自分は目覚める。とんぼ返りして来て、一番最初に見つけた宿屋の部屋に飽きがあったのは行幸だったな……さて、とりあえず今後の予定だ。

 まず、このサルアの街の周辺にできる『ランダムダンジョン』の中には、多数の薬草があると魔王様や掲示板から得た情報で判明している。そして出て来るモンスターも草花系統であるとの事。さらに、サルアにの東側にあるデコンドという街の近くに生まれるランダムダンジョンでは鉱石が。西にあるデッグという街の近くでは色々な獣系モンスターが存在しており、骨とか毛皮とかを得る事が出来るんだそうだ。

 ただ、この魔王領に存在しているランダムダンジョンは、今までのダンジョンとは毛色が違う。一定期間だけ存在し、制限時間がくると内部に居る人をペッと吐き出して消滅するらしい。また当たりはずれがひどい様で、あたりを引けば各種貴重な素材をがっぽり入手できるが、外れだとサルア付近なら雑草だらけ、デコンドならくず鉄ばかり、デッグなら出て来る獣型モンスターが滅茶苦茶強い上に、倒しても碌な素材が出ないと散々な事になるらしい。外れと分かったら即座に出ればいいだろうと思ったが、一旦入ると出口が封鎖されてしまう。そして十五分ぐらい探索すると、突如真横に出口がぽっかり空くと言う仕組みらしい。

 さらに重力が滅茶苦茶らしく、探索途中で壁や天井に立って歩くこともあるとの事。水が天井に張り付いて落ちてこないとか、滝が天空に上っていくなんて言う珍現象も存在している。とにかく、下手に常識を持ち込むと混乱すること間違いなしな内容が盛りだくさんとの事。これらの現象はすべて強すぎる魔力が引き起こしている事らしく、魔王領に居るダンジョンからアイテムをもち返って商売をしている人達にとっては自然現象でしかないんだそうだ。

 それらの情報を得た自分は、とりあえずしばらくの間はサルアの街に滞在することに決めている。ダンジョンに潜って薬草を獲得し、各種アイテムの強化を行いたい。特に今までお世話になっている強化オイルの更なる発展や、獣人連合で試作を試みたはいいが、その後何やかんやあって全然進んでいない猛毒ソースの完成を目指したい。急ぎの仕事も終わった事だし、しばらくは手札の強化に努める事にしておきたい。

(さて、そこまでは良いとして……問題はこのままソロでの活動が難しいって事だが)

 ランダムダンジョンで襲い掛かって来るモンスターは、団体さんばかりらしいのだ。しかも入ったら出口は塞がれるし、死亡したら強制排出される。更に強制排出された場合は、ダンジョン内で手に入れたアイテムや素材は全部没収というシステムが動いているとも聞く。いくらなんでも、そんなダンジョンにソロで突撃はちょっと……ダンジョン内でアクシデントが発生して、やむなく対処するしかない状況下に陥ったとかいうならともかく、最初っからソロ活動で足を踏み入れたくはない。

(ここは、ツヴァイ達に傭兵として出向いてもらおうか? 都合のよい日だけ来てもらえるだけでもずっと楽だしな。って、そうだ。すっかり忘れてたけど、ヒーローズのブラックに連絡入れておかないと)

 PTをどう組むかと考えてたところで、以前ヒーローズに何か分かったら教えると言う約束を完全にすっぽかしていた事を忘れていた。とりあえず大慌てで『詳しい話は口止めされているが、例の赤い連中が新しく出てくる現象は収まったと見て良い』とブラック充てにメールを飛ばしておく。ここ最近は色々あったとはいえ、こんな約束をすっぽかすってのは頂けない。忙しいは、何でも許される免罪符じゃない。

(ブラック達は納得できないかもしれないが、協力体制を取っているって話の魔族の方からも情報を仕入れている可能性もあるからな。後で謝るにしても、今はこれぐらいで)

 とりあえずメールを送って落ち着きを取り戻した所で、ツヴァイに向かってウィスパーチャットを飛ばしてみる。忙しい様子であれば、また今度にすればいいだけで。待つことしばし、ウィスパーが繋がった。

【ツヴァイ、今いいかな?】

【ああ、大丈夫だぜアース。今日はどうした?】

 良かった、どうやら忙しい時に邪魔をするようなことにはならなかったらしい。なので、今回は遠慮する事無くブルーカラーから数名、ダンジョン探索のためにメンバーを貸してほしいと願い出る。もちろん、サルアの街周辺に出るランダムダンジョン探索を予定しているという事も伝える。草系統のモンスターがメインとあって、切断する攻撃が得意なメンツの方が良い。ただ、火属性の攻撃や魔法は駄目だ。モンスターを灰にしてしまうらしく、アイテムドロップが消失してしまうらしい。これもまた、このダンジョンにおける特殊ルールの一つだ。

【あそこかー……確かにアースなら行きたくなるのも無理はないよな。じゃあ面子としては、前衛に立てるカナ、切断を得意にしているカザミネ、サポートも攻撃もできるミリー、そこにアースを入れた四人って所で良いか? 本来ならレイジやノーラも向かわせたいんだが、今こっちはデコンド周辺でいろんな鉱石を集めてる真っ最中なんだよ。そうなると探知が出来るノーラや斧を使えるレイジを外すのはかなり苦しくてな……とりあえず三人に話を振ってみるから、纏まったらそっちに返信するぜ】

 三人も貸してくれるならありがたい話だ。特にカザミネが来てくれると言うのはありがたい。切ることに関しては、大太刀はトップクラスの性能を誇っていたはずだ。それ故に、カザミネにはぜひ来てほしい所だった。

【いやいや、十分だ。特にカザミネに来て貰えるのは非常に助かる。じゃあ、明日の夜九時から──って感じでお願いするよ】

 まあ、今いる場所からこっちに来て貰うにはそれなりの時間がかかるし、無理させて途中で事故られても困るので、こっちに来て貰えるとしても合流は明日からとした。一応アクアにピストン空輸してもらうと言う手段もあるが、前日に酷使した身としては、それもちょっとな……一刻を争うという訳じゃないし、そんなに急かしても仕方がない。とりあえず明日に向けての準備だな。とりあえず街を回って必需品をそろえる事にしよう。

 矢を買い、鍛冶屋で装備を(見せられるもの限定で)見て貰って準備万端。と言った感じで早々に準備が終わってしまったので、のんびりと街を練り歩くことにした。街は活気にあふれており、その理由の一つに、今回の徴兵が無くなったことは間違いなく絡んでいるだろう。街ですれ違ったり、仕事をしている魔族の皆様方は皆笑顔で活力にあふれていた。だからこそ、街のお肉屋さんの前を通った時に暗い顔をしている魔族の方が気になった。何かあったんだろうか?

(まあ、街に活気があふれているからって、皆が皆完全に元気いっぱいって事も無いよな。とはいえちょっと気になるから、地図にマーカーをつけておくか。たまたまで済めばそれでいいんだし)

 と、そんな一幕もあったが……気になったのはそれぐらいか。食材や新しい調理道具も見てきたのだが……新しい物は自分のスキルレベルでは扱えない様だ。店主さんにも手をみられた後に「駄目だね、あんなの力量じゃあこいつらを扱うには足りないものが多すぎる。もっと経験を積んでから出直してきてくれ」と言われてしまった。その道のプロが言うのだから、反論の余地はない。言い返すつもりも全くないけどねえ。

 と、街を散策しているとカザミネからウィスパーチャットの要請が届いた。話が纏まったかな?

【アースさん、今大丈夫ですか?】

【ああ、大丈夫だよ。街でアイテムの補充をしながら歩き回っていただけだから。で、話は纏まった?】

【はい、明日からしばらくアースさんと同行します。正直に言えば、私としても都合が良かったんです】

 なんでも、デコンドのランダムダンジョンに沸くモンスターは鉱石で出来ているゴーレムがメインらしく、後は吸血蝙蝠が多少生息しているぐらいとの事。そして鉱石で出来ていると言うだけあって、ゴーレムは非常に硬い。その為、大剣や斧とかは良いが、片手剣や大太刀ではかなり分が悪かった双だ。しかし、ここで鉱石を集めないと、以前ダークエルフの街で知り合った鍛冶屋さんに上位武器を作ってもらえないらしいので避ける事も出来なかったんだそうだ。

【あーうん、確かに鉱石に対しては鈍器としても用いる事が出来る武器の方が良さそうだからねえ。片手剣はまだマシな部分があるかもしれないが、大太刀では厳しいか】

【ええ、魔剣で切り付けても漫画の様にスパッと斬る事も出来ず、切り付けた時の耐久力減少が厳しかったんですよ。なので、半分以上役立たずになりかけていまして……今回のアースさんのお話は願ったりかなったりという感じですね。そちらの草系統モンスターならば、大太刀の切れ味を存分に発揮できますから】

【了解、じゃあ明日の夜九時からしばらく宜しく】

【はい、私とカナさん、ミリーさんは今日中にそちらへの移動を終えて明日からはすぐに合流できるようにしておきます。それでは、明日から宜しくお願いします】

 それではまた、と最後に告げてウィスパーチャットを終了する。よし、明日から魔王領内においての普通の冒険がやっと始まるな。
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やっと、普通の魔王領内における活動がスタートです。
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