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連載

ウツボカズラ戦

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 さて、先制攻撃で出来る限りダメージを与えたい所だ。特に即死攻撃持ちなんかと長時間戦うのは色々とリスクが高いので御免被る。そうすると……久々にアミュレット・オブ・フェアリーズの能力にお世話になる事にしよう。さて、そうなると先に他の人と契約してる妖精に攻撃してもらわないといけない。ミリーの妖精は土の小さい女の子、カザミネの妖精は風のチビハーピー、カナさんが土のハリネズミ。そうなると、速さという意味ではカザミネの風妖精に攻撃を仕掛けて貰う方が良いか。

「見えてきました。これ以上近寄れば感づかれます、なので、ここで大まかな作戦を決めておきましょう」

 カザミネの向いている方向に視線を飛ばせば、確かにかなりの大きさを誇るウツボカズラがででんと鎮座していた。色は紫色で、毒々しい感じを受ける。また無数の蔦をうねうねと動かしており、それがより気持ち悪さを増している感じだ。これは絶対アミュレットの力を借りて、一気に燃やすべきだな。

「カザミネの妖精に協力を頼んでいいかな? カザミネの妖精は風属性のハーピーちゃんだからさ、攻撃魔法の弾速はかなり早いと思うんだが……」

 と、切り出してこちらからの要望を伝える。最初にカザミネの妖精に攻撃をしてもらい、次に自分が試作爆裂矢であのウツボカズラを燃やす。アミュレットの効果がどこまでできかがちょっと未知数なのだが、おそらくかなりの大炎上を引き起こしてくれるはずだ。そうして炎で弱った所にカザミネとカナさんの二人に切り込んでもらう。もちろん自分も円花と強化オイルを用いて攻撃に参加。そうして二人に注意を引きつけてもらえればミリーがフリーになるから、強力な炎系魔法で一気に削って貰おうというのはどうだろうか? と提案してみた。

「速攻、ですか。確かにドロップを狙う相手ではないですし、一気に燃やし尽くして被害を抑えると言うのは十分にアリですね。代案が出せない以上、私はそれに従います」

 カナさんが真っ先に同意した。そう、即死攻撃をさせない位に早く倒せば被害が出ないだろうと言う考えの元にこの提案を自分は出したのだ。とっとと倒して、次のダンジョンに向かいたい。その為にも被害を出さずに勝つことは必須。誰か一人でもやられたら、デスペナルティで即座に次に行くことは困難となる。何て事は言うまでも無いので……遠距離から一気にダメージを取れる手段があると言うのであれば、と反論は出なかった。

「じゃ、お願いね」

 自分のお願いにカザミネの風妖精は頷き、薄く見ずらい風の刃をウツボカズラに向かって飛ばした。それを見届けた自分は、試作爆裂矢を矢に番えて攻撃のタイミングを計り、風の刃が当たる直前にアミュレットへ祈りを込めてから矢を放った。ウツボカズラに届いた風の刃はほんの少しだけウツボカズラの側面に傷をつけた。当然それによってウツボカズラも敵勢がやってきたと察したんだろうが、その後に自分が放った試作爆裂矢によって大炎上を引き起こされたために、こちらを構う所ではなくなったようだ。

 その時の試作爆裂矢の燃え広がり方は異様の一言。当たった場所から最初はゆっくりと渦を巻くような感じで炎が広がり、一定の大きさに達した途端に魔法の一つである《エクスプロージョン》を連打するような感じで複数の炎による爆発が発生。明らかに本来の試作爆裂矢の能力ではない、問題なくアミュレットの効果は発揮された。爆発が収まった所で見えたウツボカズラの姿は、あちこちが火に包まれた痛々しい姿であった。だが、ウツボカズラの袋部分はいくつか健在であり、燃えてない蔦もある様なので即死の心配が消えたわけではないが。

「切り込みます!」「ミリーさん、アースさん、後方支援はお願いします!」

 そのウツボカズラの姿を見たカザミネとカナさんは全力で駆け出し、近接攻撃を開始。炎によって燃やされた影響で脆くなっているのか、カザミネの魔剣によってウツボカズラの体が次々と切り裂かれてゆく。カナさんも積極的に攻めるが、カザミネほど上手くは斬り割けていない。これは両者の扱う武器から来る違いだろうから、仕方がないだろう。とにかく、前衛の二人が積極的にウツボカズラに攻撃を仕掛け、注意を引いてくれているうちに、こちらも攻撃を仕掛けよう。

「では〜、ファイアランスの連射で〜《フレイムランスガトリング》! これは本当に扱いやすくていい魔法ですね〜」

 ミリーは炎の槍を次々と作成して打ち出す《フレイムランスガトリング》を主軸にするようだ。下手に爆発させるより、突き刺して燃やす方が前衛の邪魔をしないから正しい判断だろう。自分も矢を次々と放ち、前衛の二人を邪魔しない様に広範囲にばらけるアーツは用いずに、貫通力を重視した《アローツイスター》や、シンプルな二連射アーツである《ツインファングアロー》を主軸に戦っている。

「おっと、やらせないよ。円花!」

 と、戦っているうちに炎を逃れた蔦の一つが、カナさんをぐるぐる巻きにしようと前衛二人の死角から襲い掛かるのが見えた。そこで円花を出し、その蔦を切り捨てておく。スネーク・ソードの魔剣だけあって、こういう行動はお手の物だ。ただ、出しておくと常時MPを消費するようになってしまったので用が済めばさっと右腕の中に戻ってもらう。時々MPを回復するためにポーションを口にするが、前衛の二人が頑張っているので落ち着いて回復できる。

「これでお終いです!」

 カザミネのそんな言葉とともに振り抜かれる氷の魔剣。自分の矢であちこち穴だらけになり、ミリーの火魔法でいくつかの場所が炭になり。カザミネとカナさんによって散々切り刻まれたウツボカズラは、ようやくその身を横たえ、光の塵となって消え去った。幸いにして危ない場面は無かったが、なかなかタフな相手だったな。

「お疲れ様、皆さん問題はありませんか?」

 片手剣を鞘に納めたカナさんが皆に声をかける。今回はこれと言った重い攻撃を受けたわけではないので、あくまで念押しぐらいの気持ちだろうけど。

「やっぱりドロップはありませんね〜、まあ体のあちこちをあれだけ燃やせば使える部分なんてなくなっちゃうんでしょうけど〜」

 そして事前に聞いていた通り、思いっきり火属性の攻撃で畳み掛けた事が原因でドロップは一切なしだった。まあ今回はそれでも良し、メンバーが欠けるほうが問題だったからね。

「ま、ドロップは二の次の戦い方だったからそこは仕方がない。さっさとここを出て、次に期待するという事で」

 と自分の発言に、カザミネが「そうですね、対して時間もかかりませんでしたし、次に期待しましょう」と話を締めて現れた出口に向かう。ただ、先程の戦闘で重力が反転している事を忘れてしまっていたのか、カザミネが頭から地面に落っこちた。頭を抱えている所から見て、かなり痛かった様だ。

「すっかり忘れてたわ……そう言えば重力反転の洞窟だったのよね」

 カナさんのつぶやきに、つい自分も頷く。カザミネの脳天落下という犠牲のお蔭で、自分やミリー、カナさんは無事に受け身を取って痛い思いをすることなく洞窟から出る事が出来た。
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風邪を親からうつされてしまい、微熱を出している状態です。
横になっているのもつらいので、文字数は少ないですが更新しました。
作業をやっている方が気がまぎれるので。
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