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連載

そして翌日

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 そして翌日、アクアに頑張って各地方に飛んでもらって素材をかき集め、再び魔王領のサルアの街にある宿屋に戻ってきた。とりあえず、かんじきは二〇足ぐらい作ってみようかと思う。作り方はこの前のモドキから得た経験と、もう一度ネットなどをみて調べ直してきた知識を生かす。かんじきを作り終えたら、その後は鈍足草を確保できたので強化オイルの補充を行う予定を立てていたのだが……かんじきを作り始めて六足目がほぼ完成した時だった。

(マスター、そろそろ外に出かける用意をした方が良いと思います)

 製作時には基本的に黙っているルエットが、指輪の上にちびキャラとして現れてそんな事を言って来た。珍しい事もあるが、とりあえず話を聞いてみるか。

「出かけると言ってもどこに? 宿屋のオヤジさんじゃないけど、今魔王領で外への狩りには行かない方が良いって注意が出てるのはルエットだって知ってるだろう?」

 そう、昨日の猛吹雪が原因で、全ての魔王領の中にいる人に対して外出するのは控えた方が良いという注意が出ている。自分が出た時は魔王領から出て他の地方に行くから気を付けてなぐらいしか言われなかったが、これがもし外で狩りをすると言った場合には、「悪い事は言わん、やめておけ」と止められたはずだ。街中ですら人の行き来は少ないし、露店はプレイヤーが設置できる自動販売指揮の物以外は一つも無い。せっかく徴兵が無くなったと言うのに、あの猛吹雪で全体がかなりの打撃を受けたらしく……これに徴兵が重なっていたらどうなっていたのか、考えるのも恐ろしい。というのが魔族の皆さんの話だ。

(出かけると言っても街の中ですよ、おそらくマスターの友人であるツヴァイさん辺りがそろそろウィスパーチャットを入れてくる頃合いだと思います、先日の事に関することで)

 成程、そっちか。昨日の猛吹雪で、街の外で活動していたプレイヤーは軒並み凍死したと言う。それを回避できたのは、偶然かまくらをその前に作り上げて暖を落ち着いて取る事が出来る状況を作り上げる事に成功して居た幸運な者か、街の近くにいたので何とか逃げ込むことに成功したかのどちらからしい。あの猛吹雪の中、かまくらを作り上げて退避することに成功した自分達は例外中の例外って事だ。魔王様がアホみたいに金と技術を突っ込んで作ってくれたマントには、本当に感謝しないといけない。

「あの吹雪の中の一件はやはり聞かれるかなぁ……でもマントの事は口外したくない。おそらくそのうちこのマントの防寒に特化した量産できる物がそのうち出て来るとは思うんだけど、それもいつの事かちょっとわからんし。迂闊な事を言うと、魔王様に迷惑をかけるから口にする言葉は冷静に選ばないとまず──」

 いかなぁ、と言葉を続けようとした時に、ウィスパーチャットの要請が入った。ルエットの読み通りだな……が、ウィスパーチャットの要請はツヴァイからではなくミリーからだったが。ミリーからのウィスパーチャットって非常に珍しいが……とりあえず受けるか。

【あー、もしもし〜、アースさん、今お時間大丈夫ですか〜】

 いつも通りのミリーの声だが、なんだか違和感があるな。やっぱりウィスパーチャットを滅多に受けない相手からの声だと、感覚が少し狂うのかも知れない。

【急ぎの用事は無いから問題は無いよ。さて、何か用事が出来た?】

 恐らくルエットの読み通りの内容だろうが、とりあえず話を聞いてみよう。

【えーとですね、昨日猛吹雪に私達は襲われたじゃないですか〜。で、生還した私達から話を聞いたツヴァイを始めとした皆さんがですね〜、「またアースか」みたいな感じで〜。それでとにかく昨日の事に関して、色々と聞いてみたい事があるそうでして〜……申し訳ないんですけど、私達が止まっている宿屋に来て頂けませんか〜?】

 はいビンゴ、ルエットちゃん大当たり。だが、ツヴァイ達からの要請を断りたくもないから行くか。おそらくツヴァイ達も今回の猛吹雪の経験から得た事を糧として、今後同じような事があった場合でも凍死して死に戻りせずに済むような方法を考えたいんだろう。その為に、少しでも話を聞いておきたいと、そんな所だろうか。

【分かりました、では宿屋の場所を……】

 目的の宿屋を教えてもらってからウィスパーチャットを終了させる。ミリー達が泊まっている宿屋は歩いて数分ぐらいの場所と判明、結構近くにいたんだな……マントを羽織り、アクアを貞一の頭上に乗せ、完成したかんじきをしまってから個室を出る。

「お客様、また外に出かけられるのですか?」

 宿屋から出ようとした所、宿屋のオヤジさんから声を掛けられた。オヤジさんと言いたくなる荒っぽい風貌をした魔族の方だが、言葉使いはその正反対でとても丁寧だ。お客相手の商売だから、そう言う口調にしていると言う可能性は十分あるが……

「ええ、ちょっと知り合いの所に。街の外には出ませんから問題はありませんよ」

 街の人は、猛吹雪の影響でかなり神経質になっている。なので、こうしてよく声をかけて来るのだ。かんじきの材料をかき集める為に出た時も声を掛けられていたしな。

「そうでしたか、それならばよいのですが。しつこいようですが、あのような猛吹雪はそうそうあることではありません。少しでも吹雪いてきた場合は必ず室内に退避して、暖を取ることを最重視してください。かまくらを作る余裕すら奪うほどの恐ろしい吹雪ですからね……」

 宿屋のオヤジさんからの忠告に感謝し、宿屋を出る。そしてミリー達の宿屋はこっちに……ああ、あれか。それにしても、やっぱり街が寂しいな。始めて足を踏み入れた時はもっと露店も出てて人の行き交いもあって活気があったのに、今は本当に必要最低限の動きしかない。これじゃ商人の皆さんは商売あがったりだな。早く終息宣言みたいな物が出ればいいんだが。

「おや、いらっしゃい。外は寒かっただろう……泊まりかい? それとも別の用事かい?」

 ミリー達が泊まっている宿屋に入ると、宿屋の女将さんから声を掛けられた。

「申し訳ありません、この宿に泊まっている友人から呼び出しを受けておりまして……ええっと、確か三階の三○六号室に泊まっているミリー様一行なのですが、確認して頂けませんか?」

 こう自分は申し立てたが、宿屋の女将さんが確認する必要は無かった。なぜなら。

「お待ちしてました、アースさん」

 と、カザミネがちょっと離れた所で椅子に座って待っていてくれたからだ。自分の声が聞こえたのて、椅子から立ち上がってやってきた様だ。カザミネが一言断りを入れると、女将さんも宿屋の奥に入ることを許してくれる。ただし、泊ったら罰金だよと笑いながら忠告を受けたが。もちろん、そんな真似をするつもりは欠片も無いが。

「ミリーさんから待っていてほしいと頼まれましてね。それと、つい先ほどですがギルマスを始めとしたメンバーもこちらに合流してます。向こうの宿屋のご主人からはかなり止められたようなんですが、直接話をしたいという事で、こちらに来てます」

 あれま、そうなのか。あの猛吹雪がいつ来るか分からない以上、かなり止められたんだろうが……無茶をする。情報が欲しいという気持ちは良く解るけどね。さて、カザミネの案内で、ミリーに指定された三○六号室の前に到着。カザミネがコンコンコンと三回ノックしてから、「ミリーさん、私です。アースさんをお連れしました」と中に声をかける。中からはミリーの「はーい、入ってもらってくださいね〜」との返答が聞こえてきたので入らせてもらう。

「アースさん、急な呼び出しに応えてくださってありがとうございます〜」

 いつもおなじみにこにこ笑顔でミリーが出迎えてくれた。そしてぐるっと見渡せば、いつものブルーカラーの面子が勢ぞろい。そのせいでちょっと部屋が狭い……仕方がないけど。

「いえいえ、お気になさらず。それにこちらとしても魔王領のダンジョンでは手助けしてもらっているんです。ある程度の融通は効かせます」

 さてと、お話を伺いますか……ま、話す内容ははっきりしてるんだけどね。
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スキルは上がってません。
それと更新遅れてすみませんでした。
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