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戦闘〜ダンジョン到着

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 襲い掛かるスノーホワイトウルフの集団。しかし、どっしりと構えたタンカー二人の盾を崩すことは出来なかった。レイジとカナさんの二人がタウント系のアーツを使用して引きつけた事もあり、スノーホワイトウルフ達はタンカー二人への攻撃に夢中だ。当然それは他のメンバーから見れば隙だらけである事になる訳で。

「切り捨て御免と参りましょうか」

 カザミネが魔剣である氷の大太刀を、隙だらけなスノーホワイトウルフの一匹に向かって振り下ろす。今回はクリティカルヒットにはならなかったようだが、かなり深々と刃が体に食い込んでいたのは見えていたのでダメージは決して低くないはずだ。そこからさらにカザミネの契約妖精が風の刃で同じ場所をえぐるように追撃をかけている。容赦ないコンビだこと……とはいえチャンスなので、逃す理由はない。自分は追撃として《ツインファングアロー》を放ち、更にダメージを蓄積させる。

「まずは一匹!」

 締めはツヴァイだ。体に吸収した炎の魔剣を展開し、深手を負ったスノーホワイトウルフを切り裂く。舞い上がる炎に包まれたスノーホワイトウルフは、悲鳴も上げずに絶命。残りは五だがそのうちの半数はレイジの盾から生えた鋭い針に貫かれてダメージを負っている。レイジは盾関連の新しいアーツを手に入れたのか? そう思ってレイジをちょっと観察すると、レイジの方辺りに大半居る契約妖精が居ない。──まさか、あの盾から生えている針って、レイジの契約妖精の針なのか? そうなると、契約妖精がレイジの盾と一体化しているのか? これは後で話を聞かねばなるまい。

「じゃ、遠慮はしませんよ〜」「前衛のお二人、そのままターゲットの固定をお願いしますわよ!」

 詠唱が終わった魔法使いの二人、ミリーとエリザが攻撃魔法をスノーホワイトウルフ達に放つ。コーンポタージュは今回支援重視の動きをするために、積極的な攻撃魔法の使用は控えている様子。まー十人もこの場に居るからね、一人二人支援専門の人がいるのも問題はない。というか、なんでこいつら襲い掛かってきたんだよ? 人数で負けてるのだから、回避する方がよかっただろうに……こちらを甘く見たか、もしくは空腹で止むに止まれずか?

「なんだか、数の暴力でイジメてるような気もして来たけど……先に手を出してきたのはそちらなんだから諦めてね」

 魔法の爆発に紛れてノーラの声が聞こえる。《バックスタブ》でも打ち込んだんだろうか? フレンドリーファイアが無いとは言え、さすがに魔法発動力直後は視界が少々悪化する。そんな状況下でよくやるよ……いや、むしろそんな状況下だからやるのか。魔法による視界の悪化と音による混乱で認識が阻害されるものな。これもソロじゃできない戦法の一つという訳か。

「ボク達も今日は先を急ぎたいからね、容赦はできないよ」

 魔法による演出も終わり、視界が開けた所にロナが飛び込む。スノーホワイトウルフたちは最初の勢いはどこへやら、もう一方的にこちらがらにやられるがままになっていた。そしてそのまま全滅。こちらが失った物は多少のMPと時間ぐらいだな。失ったMPにしたって、このままダンジョンまでの移動を行っている最中に自然回復する程度の消費なので問題はない。

「ま、余裕だな。こっちの人数がモンスターよりも多かったこともあって、焦るような展開は全くなしか」

 レイジがそう呟きながら盾の構えを解く。と同時に、レイジの盾からぴょこんとレイジの契約妖精のハリネズミが姿を見せた。やっぱり盾と一体化していたんだな、器用な真似をする。

「それにしても相変わらずレイジの盾と妖精の一体化によって発生させられるようになった針の盾はえぐいな。攻撃を受けるだけでそのまま反撃になるし、タンカーのタウント系アーツと組み合わせてモンスター相手なら無理やり攻撃させる事でダメージを蓄積させていくもんな」

 と、ツヴァイがそんな事を言っていた。確かにそれはいえてるな、相手を挑発して攻撃をさせておいて、その攻撃を針だらけになっている盾で受ける。もちろんそれだけでは決定的なダメージとはいくまい。が、先が突き刺さるんだから相手側にダメージが蓄積することは確かだし、それにいらだってよりタンカーであるレイジをモンスターは攻撃するようになる。味方を護り、敵からの注意を惹き付けつつ反撃をしていくと言うタンカーの理想形の一つがここにあると言う訳だ。

「まだできる様になってから日が浅い分持続時間は短いが……徐々に伸ばしていくつもりだ。こいつも頑張ってくれているからな」

 ツヴァイの言葉にレイジはその様な返答を返しつつ、自分の相棒である契約妖精の針の無い部分を撫でる。長い付き合いから、契約妖精達も更なるステージに移行する子もいるって事なんだろうな。

「ボク達が連れている子達も、そんな能力を得る時が来るといいなー。もし来たら、どんなふうになるのかが今から楽しみなんだよねー」

 ロナが、自分の相棒のグリフォンを撫でつつ、将来の発展に期待を寄せる。グリフォンは『ちょ、ちょっとそんな期待を掛けられるとプレッシャーが』なんて感じで困り顔をしていたような気がするけど……彼? には何とか頑張って頂きたい所。

「周囲に敵の気配はないわね。アース君はどう?」「こちらもこれと言った反応はないね。進んでいいと思う」

 自分とノーラのやり取りの後、再びダンジョンに向かって歩き始めた今回のメンバー。この後はモンスターに襲われる事なく、無事に目的地周辺に到着した。ただ、到着する寸前にダンジョンの入り口がスーッと消えて行ったのはタイミングが悪かったなぁという気はしたが。なんというか、電車に乗るのにあと数秒間に合わなかった時の妙なくやしさというか。とは言え焦っても仕方がない。出入口は数分もすればまた開くようなので、念入りに装備のチェックやアイテムの再確認を行いつつ時間を潰す。数分後に再び入り口が口を開けたので、一人ひとり順番にならんでゆっくりとダンジョン内に突入した。

「さて、早速行動を開始するわけなんだけど……アース君にはいくつかこのダンジョンの事で教えておきたい事があるから聞いてね」

 ダンジョンの中に入って、最初の部屋に到着した直後にノーラがそう話しかけてきた。

「ここのダンジョンは、高低差がとても重要なの。この入り口から入って最初の部屋が基準となるんだけど、ここをゼロと私達は考えてる。そして上に昇るほど安全になって、下に降りるほど危険になるわ。危険というのはモンスターの強さじゃなくって……溶岩が流れ込んでこないかどうかの問題ね。でも、だからって高い場所ばっかり目指すと良い鉱石を落とすモンスターが居ないのよねえ」

 それから受けたノーラの説明を纏めると……このダンジョンは一定時間で溶岩が噴き出すのはすでに言ったとおりだが、溶岩の吹き出した量が多いと他の部屋にまで流れ込む。当然ながら溢れ出した溶岩は低い場所へと流れていくので、低い位置にいるほどにこの溢れ出した溶岩に体を焼かれて殺される危険性が上がる。しかし、その危険を避けて高台にばかり行くと、良い鉱石を取ることができない。なので、溶岩が噴き出すタイミングを見計らいつつ、深い場所で戦って鉱石を手に入れると言う作りになっているらしい。

「大体溶岩が噴き出すタイミングは三十分に一回ぐらい……かしら? ただ、突然周期が短くなることもあるからあまりその三十分を過信しちゃダメなんだけどね。ただ、吹き出す数分前に必ず小さな地震が発生すると言う点だけは変わらないから、地震が起きたらとにかく高い場所を目指すの。戦闘中なら逃げ出す事を最優先ね。とにかく溶岩に浸かったらそこからの脱出は絶望的ね。後は焼かれて死ぬしかないわ」

 一定周期でこっちを殺しに来る溶岩があふれるダンジョンか……これまた恐ろしいダンジョンだこと。その上その溶岩が流れ込む危険性の高い深部に行かないと良い物が取れないと言うハイリスクな一面まで持っていると。なかなかSなダンジョンだ。この分だと、さらにいやらしい何かも待っているんだろうな。
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まあ、ブルーカラーの面子&人数が上なので、
後れを取る要素はないですね。
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