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連載

ダンジョン探索継続中・2

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「敵はこっちだぞ! 《メガタウント》!」

 初手は、レイジのタウントによるモンスターの注意を引きつける行動から始まった。だが、動物型ゴーレムの反応が今一つだ。レイジに向かおうとしたり、他のメンバーをみたりと挙動不審だ。もしかして、これってあんまりタウント系アーツが効いていない?

「皆さん、タウントをあてにしないでください! 奥に居る人型ゴーレムの指示がタウント系の効果中であっても生きているようで、モンスターの注意を引きつけきれません!」

 もう一人のタンカーであるカナさんの声が響く。ゴーレム達の様子がおかしいとは思ったが、やっぱりあまり効いていないか!

「魔法使いのメンバーはレイジとカナの後ろに隠れるように動いてくれ! アーツが効かないなら物理的に隠れるしかない! アース、こうなると空中に居るあいつが厄介だ! 出来るだけ早く地上に叩き落としてくれ! 放置しておいたら後衛が空中から狩られる!! 魔法による攻撃、支援は控えめに頼むぜ!」

 ツヴァイの指示に従い、自分は重撲の矢を番えてゆっくりと羽ばたく鳥型のゴーレムに狙いを定める。あんな岩の翼を持つゴーレムが宙に浮いていること自体が個人的には納得できないのだが、魔力か何かの物理法則を投げ捨てる力が働いているのだろう。しかしそうなると問題は、片方の翼を壊せば空中から落とせるのか、それとも翼はあくまで鳥を模しただけに過ぎないのか。そこら辺が分からない。その見極めの為にも一当てしてみるか。

 《風塵の矢》のアーツを使用し、風の魔力を乗せた重撲の矢を鳥型ゴーレムに向かって放つ。鳥型ゴーレムは回避行動をとった様だが、右翼の端の方に重撲の矢が命中して翼の一部を粉砕し、右翼にひびが入った事を確認できた。しかし、地面に墜落しない。やはり翼を傷つけるだけではダメか。そもそも岩という材質にあんなゆっくりとした羽ばたきでは浮力を得られるはずもない。現実世界を飛ぶ鳥たちは、骨すらも軽量化に軽量化を図る進化をしており、体重をそぎ落とす事で空を飛べる様にしているのだ。そうなると、やはりあの鳥はダメージを蓄積させて倒すと言う一般的なモンスターと同じ方法を取って倒すしかなさそうだ。弱点もゴーレム相手じゃわからないし。

 ダメージを受けた鳥型ゴーレムだが、そんなのは大したことではないとばかりに攻撃を仕掛けた自分目がけて襲い掛かってきた。やはりタウント系アーツの効きが非常に悪い。レイジの《メガタウント》がまともに効いていれば、これぐらいの攻撃ではこちらにターゲットが移ることはまずあり得ない。テイマータイプの指揮者がいるとこれだけ面倒になるか。鋭い嘴をまるで槍の穂先のように見立てて突っ込んでくる。かなりの速度が出ているが、避けれないほどではない。自分はしゃがむ事でこれをやり過ごした。頭上を鳥型ゴーレムが通り過ぎた後にブオン! という音がした。顔面に直撃した場合、少なくないダメージを受けることは容易に想像が出来るな。

「くっそ、やっぱりターゲットが固定されてないから油断するとやられるぞ! 特に出来るだけ詠唱時間の長い攻撃魔法、支援魔法の使用は控えてくれ! アースがあの鳥を落とさないと、ターゲットが不意に移った途端に空中から魔法使い達の顔面をえぐられるぞ!」

 その光景をツヴァイも見ていたのだろう。すかさず魔法使いのメンバーに指示を飛ばす。えぐられるどころか、あの勢いだと首から上を持っていかれるかもしれんぞ? そんなちょっとしたスプラッタな光景が展開される事態を避けるためにも、ここは自分が頑張らなければなるまい。単発攻撃ではあまり効果が出ないとなれば、連続攻撃を試すべきだな。矢筒から複数の重撲の矢を手に持ち、空中に投げる。そう、《ガトリングアロー》を仕掛ける。

「《ガトリングアロー》!」

 上に投げた複数の矢を次々とキャッチしながら連射する。鳥型ゴーレムは最初の二、三本目までは完全回避を決めて見せたが、四本目の矢が体をかすめてからは残りの矢が全て命中した。この攻撃によって体のあちこちにヒビが入ったが、いまだに体は崩れず、地面に落ちないのだから、かなりの頑丈さだ。重撲の矢は射程が落ちる代わりにこういった硬い連中に対しての効果が高い矢だし、弓だって相応に強化されている蒼虎の弓を用いているのにまだ落ちないか。しかし、ここで弱気になる訳にはいかない。弱気になってしまうと蒼虎の弓についている特性の一つ、蒼の闘気の影響で弓が弱体化してしまうからだ。こちらの攻撃が効いていない訳じゃないのだから、弱気になる理由も無いな。

 が、これ以上時間をかける訳にもいかない。一気に押し切るべく懐から久々に妖精の黒本を取り出し、《妖精招来》を発動する。お願いするのは大地の妖精。出してもらうのは大きな杭。そしてその出現地点は……ダンジョンの天井。ここはダンジョンの中であり、当然ながら天井がある。だから、宙に浮かぶ者の頭上から強襲すると言う地上では不可能な手段が可能になる。体のあちこちにヒビが入ってなお墜落しないのであれば、無理やりにでも潰れてもらう事にする。それにあれだけダメージが入った事を示すヒビが入れば、動きも最初と比べて鈍っていると予想できるし。

 小声で土の妖精さんに指示を出しつつMPを二割渡して攻撃待機状態になってもらい、妖精の黒本を右手に持って最適な攻撃発動タイミングを見計らう。鳥型ゴーレムはこれ以上矢を射られてはたまらないとばかりに接近し、嘴や爪で自分に攻撃を仕掛けて来る。だが、やはり先程の突撃に比べると、精度も速度も無い。回避や盾によるいなしで対処しつつ相手が隙を晒すその瞬間を待ち、生まれた隙に盾の《スタンバッシュ》を発動して殴りつけてその動きを鈍らせる。此処だな。

「出番だよ!」

 バックステップしながら発した自分の一言で、土の妖精さんが天井から岩でできた大きな杭を鳥型ゴーレムに向かって突き落とす。《スタンバッシュ》で動きが硬直させられていた鳥型ゴーレムに、これを回避することは出来なかった。杭の先端に体を捕えられ、そのまま地面に向かって叩きつけられた。その様子はさながらプレス機のようだ。さすがにこれならひとたまりもあるまい。実際にモンスターが完全消滅する時の光が舞い、《危険察知》反応も消えているので鳥型ゴーレムは間違いなく消し飛んだ。

「鳥型ゴーレム排除! 後ろに控えているテイマーゴーレムの妨害に入る!」「アース、頼んだ!」

 これで頭上からの脅威は排除された。ならば弓の射程を生かして司令塔であるテイマーゴーレム本体を叩くべきだろう、ツヴァイからも頼んだ! の声が聞こえたし。テイマーの指示が届かなくなれば、反撃に出やすくなるはず。チラッとレイジとカナさんの方を見るが、二人の壁をイノシシ型ゴーレムは突破できていない。更に空中の脅威も消えた。なので、後は戦闘時間をどれだけ短縮できるかどうかが肝心だ。

 再び重撲の矢を弓に番えて、テイマーゴーレム目がけて放つ。テイマーゴーレムは腕をクロスさせて防いだが、矢を受けた左腕に大きくヒビが入る。たった一発でこれとか、こいつはさっきの鳥と比べるとはるかに脆いぞ。それに、腕をクロスさせるまでの動きもややもたついていたようにうかがえる。これならば下手に射撃戦をするよりも、大技を打って一気に蹴りをつけた方が早いかも知れない。右腕から円花を発動しながら、テイマーゴーレムに走り寄る。蹴りの大技で一気に砕かせてもらう事にしよう。

「円花っ、頼んだぞ!」

 自分の意思をくみ取った魔剣である円花が、地面を這うように動いてテイマーゴーレムのあちこちに絡みつく事で動きを制限する。自分は大跳躍で、天井ぎりぎりにまで飛び上がる。そこから出す技は──

「伝授奥義、《幻闘乱迅脚》!」

 複数の幻影と共に蹴りを繰り出し、相手を砕く痛風の洞窟に居た氷のワーウルフから教わったこの蹴り技でテイマーゴーレムを貫く。円花の阻害によって腕で防御することもかなわなかったテイマーゴーレムは、胴体パーツに直撃を受けた。最初に刺さる自分の飛び蹴り、その後に複数の幻影が同じ場所に飛び蹴りを次々と叩き込んでいく。胴体パーツには大きな亀裂が広がって行き……最後の幻影が飛び蹴りを叩き込んで《幻闘乱迅脚》が完全にさく裂した途端、テイマーゴーレムの胴体パーツは木っ端みじんに砕け散った。胴体パーツが砕けると、他のパーツは力を失って地面に次々と転がり落ちた。こいつもこれでお終いだな。

「テイマーゴーレムは始末した!」「こっちももう終わるぞ、うおりゃあ!」

 と、自分がテイマーゴーレムを撃破するとほぼ同時に、レイジが最後のとどめをイノシシ型ゴーレムに叩き込んでいた。おそらく自分がテイマーゴーレムと戦う事によって、テイマーゴーレムの指示能力が低下。その事によりイノシシ型ゴーレムの動きが鈍ったので攻勢に出る事が出来たと言った所なんだろう。これは適所適材だな。空中に居る相手や、遠い所にいる相手は自分のようなタイプが戦いやすい。その一方で重量がある上にタフな相手はレイジやカナさんと言った耐久力のある人が前にて手足を止め、アタッカータイプの人が攻撃を叩き込む事で一気に削り切った方がいい。

「──テイマータイプは嫌いですわ、ちょっとした攻撃魔法を使うだけですぐこちらへの攻撃を動物タイプのゴーレムに指示してきますから、イライラしますわ!」

 全然活躍できなかったエリザがそんな事を吐き捨てるかのようにいう。まあ死なない事も大切な事だから割り切って頂こう。

「でもまあ、途中でアースくんがテイマーゴーレムの妨害をしてくれたおかげで、《マテリアルスライサー》を打つことが出来たのは助かったねー。テイマーゴーレムは詠唱にも反応して妨害してくるから、本当に面倒」

 コーンポタージュもそんな事を言ってる。なるほど、ツヴァイが魔法を控えろってのはそう言った一面も持っているからなのか。もし長い詠唱を始めると、自分が戦っていた鳥のターゲットを変更して、詠唱をしている魔法使いにぶつけて来るって訳だ。今後もテイマーゴーレムが出てきた時は、積極的に妨害、撃破する形で動くことにすべきだな。
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