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連載

避難後……

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 そして、実時間は三分未満だったが体感としてはその十倍以上に感じた恐怖の時間は去った。溶岩のせいでかなりの恐怖を感じたが、こんなのにツヴァイ達は耐えてきたのかと思うと素直にすごいと感じる。自分はこのダンジョンにはあまり来たくはないなぁ。今はツヴァイ達の鉱石集めが完了するまでは付き合うつもりだけど……しんどい事になりそうだな。

 やってきた溶岩は、時間が過ぎるとまるで海の潮が引くかのように消えて行った。現実の溶岩では絶対にありえない光景だが、この世界ではこういう事もあるのだろう。ただ、足場にしていたゴーレムの残骸にはしっかりと張り付いており──

「よっし、溶岩のお蔭で隙間が埋まって固まったな。次からは揺らそうとしない限りはある程度安定しそうだぜ」

 とのツヴァイの発言通り、溶岩が一種の接着剤のような働きをしていた。この辺もツッコミどころ満載なんだろうが、ここのルールではこうなんだろうと言う事で深く考える事は放棄した。深く考えた所で、時間の無駄にしかならないだろうし、地球の常識をワンモアの世界にすべて当てはめるのは危険な一面もある。まあ避難所が安定して機能するようになってよかったよかったと考えるにとどめるのが一番面倒がない気がする。

「ツヴァイ、これからどうするの? カオスだから目的としている鉱石の収集にはチャンスだけど……アース君はこのダンジョン初挑戦なんだから無理はさせられないわよ?」

 ノーラからの問いかけに、ツヴァイは「どうすっかな〜」とお悩みの様子。それでも一分以内に考えをまとめたようで、この避難所を作った部屋から遠出をせずに無理せずにほどほどの狩りをすると言う方針で行くことにした様だ。間違いなくこのダンジョンに不慣れな自分に合わせてくれたのだろう。ツヴァイ、稼ぎ時だってのにすまんな。

「アース、とにかく敵の強さが滅茶苦茶だって事だけは絶対に忘れないでくれ。お前の事だから大丈夫だと思うが一応な?」

 こちらを見ながらのツヴァイの言葉にゆっくりと頷く。まあそうだな、念押ししたくなる気持ちも良く解るから別に腹も立たない。ツヴァイからしても、初心者をいきなり高難易度ダンジョンに突っ込んでしまった形となったのだから心苦しい面もあるのだろう。まあ悪いのは運というのが今回の話なのだけれど。

「このダンジョンに関しては初心者だから、普段以上に警戒しとくよ。そっちの足を引っ張って全滅なんて事になったら目も当てられないし」

 自分の返答に、ツヴァイも頷いてから前を向く。どのようなゴーレムが出て来るかのデータが自分の中には殆どない以上、気を抜く事は厳禁である。実際に戦ってみないと、分からない事って多いからな……他の人にとっては弱くても自分にとっては強敵で、その逆もあり得るのがアクション要素が多いゲームだ。

「キメラとか、ヒュドラ型ゴーレムが来ないといいのだが……」

 そんなレイジの独り言が耳に入って来る。というかそんな奴らも居るのか。まさかフラグ成立とか言わないよね?

「レイジ、近くにはそう言った大物の反応はないから安心して。だけどそこそこのゴーレムの反応がこっちに近づいて来てるわね。みんな戦闘準備に入って!」

 ノーラの言葉に従い、全員が戦闘態勢を取る。自分の《危険察知》にもそのゴーレムと思われる存在の反応が感じ取れている。数は三か、足はウルフとかの動物に比べるとやや遅いかな? そうしてこちらが戦闘態勢のまま陣を作って待機していた所に現れたのは、ガーゴイルだった。こいつはゴーレムと言っていいのかどうかわからないが、とにかくこちらに対する戦闘意思がある以上的であると言う点は間違いない。

「ガーゴイルですか! 魔法使いの皆さんは攻撃よりも妨害を優先してください! 攻撃的な魔法に対する抵抗力がかなり高いですから!」

 と、カザミネからの声で特徴を理解する。こいつも魔法抵抗力が高いタイプか、面倒だな。コーンポタージュの《マテリアルスライサー》も効きが悪いとなると、地道に殴って倒すと言う形しかないか。そうなると自分が取れる方法は、重撲の矢をひたすら射る事か。アーツを交えつつ遠距離攻撃に徹しよう。今回はテイマータイプのゴーレムも居ないお蔭で、レイジやカナさんのタウント系アーツによる挑発効果が十分に発揮されているからアクロバティックな行動をする必要は感じられない。

 ガーゴイル達はある程度宙に浮かびながら、鋭い爪と口から吐き出す衝撃波がメインの攻撃のようだ。レイジやカナさんの盾に何度も爪を突き立て、衝撃波を放っている。個人的に、爪が盾をこする時に耳を塞ぎたくなるような音が出ないのはありがたい。磨りガラスを爪で引っかいた時の『キイイイイイー!』という系統の音が出たらかなりきつい。あの音を苦手とする人はそれなりに居るだろうから、戦いどころではなくなってしまう。

 さて、こちらの攻撃の方は大剣持ちのツヴァイの攻撃や、ロナの格闘攻撃が非常に効いているようだ。その一方でカザミネの方は大太刀の刃があまりガーゴイルの体に食い込まず、いまいち効果を上げる事が出来ていない。カザミネ自身もこのダンジョンとは相性が悪いと以前に言っていたからな、そこは仕方ないだろう。全く効いていない訳ではないので、氷の魔剣をガーゴイルに向かって振るい続けている。魔法使い達は相手の行動を鈍らせたり、当てた場所を一時的に脆くすると言った弱体系魔法と、タンク役のレイジとカナさんに回復&支援魔法でバックアップに務めている。攻撃魔法が有効でなかったとしても、こういう融通が利くから魔法使いは腐らないのが強みだよね。

 自分はコストが安めの弓系統アーツを交えつつ、隙を見せたガーゴイルの頭部や胴体部分に重撲の矢を放ってダメージを稼いでいる。こういった手合いには普通の矢ではダメージがあまり取れないからな、重撲の矢を開発しておいて本当に良かった。今もガーゴイルの顔面とかにゴンゴンあたってるし。そう言えばあの痛風の洞窟に居た二人のアイスガーゴイルは元気かな? そのうち会いに行ってみるかね?

「これで仕上げだぜ、《クラッシャー・ゲイル》!」

 っと、三体のガーゴイルが弱ってきた所を勝機と見たツヴァイが、三体のガーゴイル近くまで突進し、大剣を振り回した。すると、ツヴァイの目の前に吸い寄せられるような動きを見せる三体のガーゴイル。そこでツヴァイの動きが止まる訳も無く──

「うおおおららららああああーーー!!」

 大きな声を上げながら右側から左に向かって全力で大剣を振りぬくツヴァイ。その大剣の振りに吸い寄せられていた? ガーゴイル達は三体とももろに直撃を貰って壁に叩きつけられ、全身にひびが入り、そして粉々に砕け散った。ほほー、なかなか派手な技じゃないですか。かなり力任せなフィニッシュだから、相当な筋力がないと習得できないアーツなんだろうな。まあ最初の方から大剣を振るってきたツヴァイが、筋力不足とかはまずあり得ないけど……これもまた、特化してやってきた人限定の力の一つか。

「終わったね、お疲れー。それにしてもツヴァイのソレ、相変わらずの力任せなアーツだよね。モンスターを派手に吹き飛ばすから見てる方はスカッとするけど」

 ロナも同じような意見か。確かにモンスターが派手に吹き飛ぶと言うのは見てる方は楽しい。万が一食らう側に回ったらシャレにならないけどさ。まあ、攻撃魔法が効きにくい相手が出て来てもこうやって対処できるのは良い事だ。よっぽど変な奴が襲ってこない限り、全滅の心配はなさそうだな。
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色々悩みましたが、完全に移行するまでは
更新を続けることにしました。

しかし、本当になんでこんなに六月って面倒事が来るのでしょうか?
一昨年も去年も面倒事がいっぱいで……心身共にへとへとです。
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