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こんな時もあります

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「とりあえずはお疲れさん。それにしてもこのダンジョン内でガーゴイルが出て来るとか、またレアな存在が敵が出たもんだな。カオスの影響がでかすぎるぜ……」

 なんてツヴァイが独り言っぽく言う。アイツもレアな方なのか。さて、アイテムは何を落としたかなー? 何かしらのレアドロップが来るといいのだが。

「うーんと、ドロップは未鑑定の鉱石と、何かのカギ……よね、これは。もしかするとこの近くにこの鍵を使う要素があるのかも知れないわ。宝物庫のカギとかだったら嬉しいんだけど、このダンジョン的にそれはなさそうね」

 ドロップ品を確認していたノーラはそう報告して来た。こんな人工物が存在しているとは思えないダンジョンで鍵がドロップか……確かにちょっと気になるが、この近くにその鍵を使いそうな穴はなさそうだ。今は無理に探す時ではないけれど。探索中に見つかればラッキー、ぐらいかな?

「やはりカオス状態だと、次に出て来る相手が読めない分タンカーとしては気が休まらないな。──こちらの首を容赦なく切り落としてくるあいつが出ないといいのだが」

 おいレイジ、そう言う何気ない発言が死亡フラグになるんだってば。すぐさま恋人であるコーンポタージュから「そう言う発言禁止!」とツッコミを受けている。気持ちは良く解るぞ、うんうん。だが、先程の『こちらの首を容赦なく切り落としてくる』の部分は聞いておかなければならないだろう。

「レイジ、ちょっといいかな? その首を落としてくるゴーレム? についての情報を貰えないだろうか?」

 即死攻撃持ちは、特に注意しておかないといけないからね。某RPGでは『たとえ減ったHPがたったの一ポイントであろうとも、かすっただけで首は飛ぶのだ』という事は非常に多かった。ドSが多いと予想されるワンモア開発陣だから、そう言ったモンスターは本当にプレイヤーに対して容赦がない可能性が高い。

「ああいいぞ。アイツはウサギ型……ではなく、人型なんだが。その外見が非常に特徴的だからすぐにわかる。で、その肝心の外見なんだが、ゴーレムでありながら幼女型とでも言えばいいのだろうか? とにかく小さ目で可愛らしく、身長はおそらく百センチも無いと思う。しかし、その手にはのこぎりが収まっていてな、しかも何故かそののこぎりの刃は赤黒くなってると言う場所にそぐわない謎ホラー要素のおまけつきだ。で、そののこぎりの攻撃を首に受けてしまうと……鎧など関係ないとばかりに首を落とされると言う訳だ」

 うわあ、幼女アリスタイプか。そして武器がのこぎりとか、これまたえぐいな。信長公が考案したとされるのこぎり引きの刑じゃあるまいに。地面に体を埋められて、首だけを……うん、これ以上は考えない方がいいな。

「見た目もあれだが、武器や能力がそれ以上に強烈だな……確かにこんな状況下では出会いたくないゴーレムだな。うん」

 自分の言葉に「だろう? あいつは俺としても戦いたくない相手だ」とレイジの返事。そうだよな、タンカーの防御力の高さを即死攻撃で抜いてくるとかシャレにならない。一回のミスが大惨事なんて、ホラーゲームとかの致命的な選択肢ミスとかじゃないんだから、勘弁してほしいよ。心臓によろしくない。

「それでも出て来てしまった時は、私とレイジさんが盾となるしかありません。最大限に集中しますが……万が一はありうることだけはアースさんも覚えておいてくださいね」

 カナさんがそんな風に念を押してきた。二人とも首を刎ねられた経験があるんだろうなぁ、という事は想像に難くない。万が一幼女タイプゴーレム出てきた時は、早々攻撃が出来ないように弓矢と円花を用いて徹底的に妨害してやることにしよう。もちろん、出会わないで済んでくれることが一番いいのは間違いないが、こういう流れで一回も出会わずに済むなんて事は今までなかったから、その時どうするかのシミュレーションを脳内で簡単に行っておいた方がいい。

 ──そして、それから二回ほどゴーレム集団との戦闘があったが、どっちも戦った事があるウルフ型オンリーだったので問題なく撃破。一回でも戦った経験さえあれば大体動きは分かるし、ブルーカラーのメンバーが後れを取るはずもない。自分とノーラの索敵能力で不意打ちも受けないからね。範囲が狭められているとはいえ、周囲の事が分からなくなるほどではない。っと、また敵の反応か。しかし、敵である事は間違いないが詳細が分からない。これは初めて遭遇するタイプのゴーレムと予想される。

「ノーラ、こっちの方面から接近してくる敵がいる。だが、詳細が分からないので自分が今まで出会ったモンスターじゃない。ノーラは分かる?」

 自分の指をさした方向にノーラが注意を向け、少し経った後に接近してくる敵の正体を報告してくる。。

「ちょっとまずいわね、ファイヤードレイクタイプが一、サンダードレイクが二、こっちに向かって来てる。どちらも二足歩行の小型竜みたいな外見をしてるけど、ブレス持ちよ。それにパワーも、ここまで戦ってきた動物型ゴーレムよりはるかに強い。そんな相手を三体も同時に相手どるのは今の私達でも自殺行為すぎるわ。ツヴァイ、ここは逃げの一手よ」

 む、ドレイクなんてのも居るのか。見てみたい気もするが、それは相手が単体で居る時でいいだろう。今回は三体も居るのだから、中距離からのブレス攻撃を次々と行われてしまうと、当然大盾を持つレイジとカナさんの大盾の隙間をすり塗けて、後衛に対して攻撃を当てて来る何て事は容易に予想がつく。だからこそ、ここはノーラの言うように逃げた方がいいだろう。それに、そう言ったブレスを吐かれても十分にブルーカラーのメンバーが対処できると言うのであれば、ノーラが真っ先に逃げを提案してくるはずもない。

「分かった、ノーラは先頭に立って逃げる方向をナビしてくれ! ドレイクは一匹だけでもかなり面倒だってのに、それが三体同時で属性までばらばらとか危険なんてひどすぎるぜ! 皆、全力で走って逃げるぞ!」

 素早くノーラが先頭に立って逃げ先を先導する。残りのメンバーがノーラの後ろに続く。だが、こちらが逃げ始めた事を察したのか、自分の《危険察知》上では詳細不明の敵の移動速度も上がり始めた。その事を他のメンバーにも伝えると、ブルーカラーメンバーの走る速度が一段階上がった。自分もそれに続きながら後方の索敵を続ける。ゆっくりと距離は広がりつつあるが、まだ向こうもこちらの追跡を諦めて居はいない様であり、なかなかにしつこい。

「まだ追って来てる!?」「残念ながらまだだ!」

 ノーラの問いかけに対する自分の返答。その短いやり取りで、更に走る速度を上げる──と行きたかったが、そうは問屋が卸さなかったようだ。

「最悪っ! この先にもかなりのゴーレムが居て逃げ道がふさがれてる状態よ! これ以上大きな足音を立てて走り続けたら感づかれるわ!」

 そのノーラの言葉に、全員の足が止まる。絶体絶命か? という表情を浮かべるブルーカラーのメンバーだが、まだ望みはある。

「だが、後ろから迫ってきているゴーレム? もこちらをある程度見失っているようだ。最初の時と比べて、追跡に迷いが見られる。だから、何処かの部屋に入って気配を殺す事で何とかごまかせるかもしれない」

 この自分の言葉に、それしかないかとメンバー全員が頷く。すぐさま近くの部屋に入り、息をひそめじっと様子をうかがう。ここからのやり取りは簡単なハンドサインで行う事にした。PTチャットならば大丈夫だろ? という考えが無かった訳でもないが、口を動かすこと自体が怖かったと言うのもある。強いブルーカラーのメンバーがすぐに逃げを選択するほどの相手なのだから、不安要素は少しでも排除しておく。

 そして自分とノーラが、右腕をスッと静かにあげる。これは対象がすぐそこまで来ていると言う事を他のメンバーに伝える合図だ。そしてそのまま右腕をゆっくりと下ろす。これはだから静かにしていてほしいと言う合図。そう、今ドレイク? と思われる存在が、壁一枚を隔てた向こう側に居るのだ。緊張する雰囲気が周囲のメンバーから伝わってくる。向こうもこちらを真剣に探しているようで、なかなか近くを立ち去らない。今度は左腕を上げる事で、近くに対象が居る。まだ離れる様子を見せないと言う合図を他のメンバーに伝える。

 こっちも焦れているが、向こうも焦れているようだ。時々八つ当たりするかのように地面や壁を蹴る? ような音がする。そのたびにエリザが体をビクビクッと震わせるが、そのエリザの口をツヴァイが抑えているので悲鳴は上がっていない。かなりプルプルしている様子なので、どういった心境なのかは想像に難くない。怖いよね、位置がばれたら殺されるなんていうこんな状況。それにしても、ブルーカラーのメンバーでも複数やってこられたら逃げの一手をうつしかないって言うモンスターもやっぱりいるんだな。大抵なぎ倒していくから、なんというか、ちょっぴりホッとしたような妙な気分。

「──どうやらやっと諦めたみたいよ。ドレイク三匹とか、いじめにもほどがあるわよ……」

 やっとドレイク達? が諦めて立ち去って行った。ちらりと時計を見ると、六分ぐらい息を潜めていたらしい。このノーラの言葉にホッとしたのが大多数、ホッとした途端ツヴァイが密着している事に喜びだす金髪削岩機エリザ。そんなエリザの頬を思いっきり抓るミリー。とりあえず助かっただけというのに何やってんだあの三人は……緊張感ないなぁ。
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ちなみに戦うと……まずサンダードレイク二匹がブレスでレイジとカナの二人を
感電させます。そうして動けなくなったところに、ファイヤードレイクが
上手に焼けました状態にします。そこまで行くと崩れてしまいます。

もちろんアース&○○が強力な変身をすれば全滅は免れますけど、被害は相当に出ます。
何せダンジョン故に退避場所が少ないですから、ブレスなどの放射攻撃が
途轍もなく凶悪です。
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