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連載

現れた今回のターゲット

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 さて、レイジ達と合流してモンスターの到着を待ち構える。レイジ達に「いったい何だったんだ?」と聞かれたが、それには「斥候能力を持つ人間にいくつか訪ねておきたい事があったみたいだよ」と返しておく。まさかこんな場所でマントの本当の姿を見る事が出来る人が居るとか予想外でしたよ。マントの隠蔽能力はプレイヤーには完ぺきに働くけど、魔族の一部の人には無効化されるんだよね。つまり、あの魔族の方はかなり位が高いんだろう。他にも側近の人とか四天王の皆さんにはもちろん隠蔽効果は効かない。

 まあそれは置いといて、だ。いよいよここまで追いかけてきたモンスターとのご対面だ。《危険察知》の隅っこに反応が現れた。レイジ達にも「来るぞ」とだけ小声で伝えておく。それから少し間が空いて──

「敵、来襲! 総員戦闘準備、まずは魔法と弓による遠距離攻撃で相手を削る! 構えよ!」

 との指示する声が。なので自分とコーンポタージュが攻撃態勢に入る。そのまま魔法使いの皆さんは呪文の詠唱を始め、自分を含む弓使いの皆さんは一斉に矢を番える。そうして待つことしばし、目視できる距離に今回のターゲットモンスターが現れた。その姿は……

「なんだあれは……狂ってやがる」「あれ、魔物なの?」「気味が悪すぎるぜ……」

 そんな言葉が耳に入ってきたが、それも無理はない。正直自分もあれは気持ちが悪い。その理由は……アイスジャガーが物理的な意味で数珠つなぎになっていると言う気味の悪い姿を見せたからだ。何十匹もの体毛が紫色に変色したアイスジャガーの前足と後ろ脚が肉の塊のようなもので無理やり溶接され、繋げられている。百里眼でみたアイスジャガー達の目はうつろで、間違いなく視点があっていない点も不気味さを増している。その上酸化し始めた血の様などす黒い色に染まっているのも気味が悪い。

 そんなアイスジャガーの数珠つなぎが三体も現れたのだ。引くなというのが無理だろう。隣に居るコーンポタージュからは、「うわあ、気持ち悪すぎるぅ」なんて声が聞こえてきた。全く持って同意だ、趣味が悪いどころの話ではない。とりあえず、個人的にチェインアイスジャガーとでも仮に呼んでおくことにしよう。

「攻撃開始! あの様な明らかにおかしい存在を街に引き込む訳にはいかん!」

 その攻撃指示に待ってましたとばかりに多数の矢と魔法が飛んでいく。しかし……矢は次々とチェインアイスジャガーの体に突き刺さるが、魔法は火の魔法は弾かれた。幸い風、雷、土魔法は奴の体に届いているようだ。魔族の指揮官もそれにすぐ気が付いたようで、火系統の魔法は用いずに他の属性で攻撃しろとの指揮を出している。

 攻撃を受けたチェインアイスジャガーだが、三体とも前進を止めない。いや、厳密に言えばいくら矢が刺さろうが魔法攻撃を受けようが痛みを感じている様子がない。ただただこちら側に前進してくるのだ。その点から予想すると、遠距離攻撃を持っていないのかも知れない。直接食らいつくとか、絡みついて締め上げるとかしかできないのかも……が、攻撃が効いていないと言うわけでもなさそうだ。攻撃を何度も食らったチェインアイスジャガーの部分部分は崩れ落ちたりして消失している。なんだか、火のついた導火線を見ているような気分になる。その火の火元が、こちらの攻撃ってだけで。

「攻撃は通じているぞ! このまま攻撃を加え、完全に消失させろ!」「「「「「了解!」」」」」

 攻撃はそのまま続行される。それにしても、これだけの存在なのか? ただただ前進してくるだけの……でもその前進してくる三体のチェインアイスジャガー先端部を滅するにはそれなりの人数が必要という訳だから、極端に弱いと言う訳でもないか。今日の最初に集った十人だけで戦おうとした場合は、間違いなく敵の耐久に押されて押しつぶされただろうからな。まあ、今の戦況は押せている。このまま押し切ってしまえばお終いだ。それでいい。

 だと言うのに。ああ、やっぱりそんなに優しいモンスターじゃなかったんだな。チェインアイスジャガーの先に、大きな一つの塊があると言う事を《危険察知》が教えてくれた。そしてその塊とチェインアイスジャガーが繋がっている事も確認できた。つまり、アイスチェインジャガーは、一種の切り捨てても構わない触手のような物に過ぎなかったという事になりそうだ。そして本体はいまだに無傷って事か? その上、塊が近寄って来るにつれて、あの日戦った暴走魔力から感じた威圧感の様なものが徐々に強くなってくる。

「総員、そのまま戦闘行為を続けながら聞け! こちらの攻撃で削られて、業を煮やした敵の本体と思われる部分の接近を感知した! ここからが本番だ、総員油断をするな!」「「「「「了解!」」」」」

 っと、魔族の皆さんはこの展開も予測の内だったのか? それともこういう事もあると普段の訓練から馴らしてあるのか? どちらにせよ、敵の本命がやってきたところにこちらはかなり消耗しているのに、なんてこった! という事態には陥らずに済む様で何よりだ。

「近接戦闘能力者は前へ! 敵の本体が見えた所に攻撃を仕掛けられる様に準備を整えろ!」

 今戦っているのは魔法使いと弓使いだけだ。前衛の皆さんは体力を全く使わずに温存できている。前に出ると言う事はそれだけ消耗を強いられる立ち位置だから、ここまで指揮官は温存したんだろう。

「じゃ、行ってくる」「ここからが本番ですね、鍛えてきた力と技を存分に振るいましょう」「俺の槍は長いから、気を付けて戦かわないとな……」

 レイジ、カザミネ、ガルドと彼らが契約している妖精達が前に出ていく。そんな前衛たちの準備と陣形が出来た時、奴は現れた。雪の下から。背中に短くなったチェインアイスジャガーを繋ぎ、体毛を完全に失い、肌は黒い。目は金色に輝き、異様に長い殺す為だけの牙を持つ。そして体は下手な平屋建ての家よりでかい……そんな特徴を持った変異体とでもいうべきアイスジャガーキングと思われる存在がその姿をここに曝した。それと同時に、威圧感もより一層強くなった。とはいってもオリジナルの暴走魔力と比べてしまえば可愛い物なのだが……周囲の人達はそうはいかなかったようだ。明らかに動きが止まってしまっている。目立つのはあんまり好まないんだが、今はやむをえん、か。

「しっかりしろ! ぼさっとしてたら一瞬で殺されるぞ!!」

 この自分の大声で威圧感から作られた一種の結界に近い状況が壊れる。まるで気絶から覚めたかのように全員が動き出す。目の前の敵の威圧感に飲まれていた状況から脱したな。

「そ、総員戦闘開始! 奴を倒せ! ここで引くことは出来んぞ!!」「「「「おう!」」」」

 すぐさま指揮官からの声とその声に反応して、自らを奮い立たせるように大きな声を出す魔族の皆さん。とりあえずこれで大丈夫かな、後は気合を入れて戦おう。そして状況によっては……黄龍か魔王の札を切る。
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本日のBGMは、銀河鉄道999のオープニングテーマと、
最大往生の火蜂BGMの二本立てで書いてました。え? 共通点がない?
大丈夫、いつもの事です。
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