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第2章

招かれざる、新しい仲間

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元リザードマンで現ドラゴニュートだけどそれを隠しているなんちゃってリザードマンのクレイストンと。
残念すぎるヘンテコエルフのブロライトは友達同士でした。
夜盗に襲われたブロライトを助けたのがクレイストンらしいが、その実は二人して夜盗を返り討ちにしてギルドに引き渡して報奨金を得たというのだから、なんとも

なんだろうこの、壮大なる嫌な予感。

なんだぁ、すごい偶然だなぁ、なんていくら人の良い俺でもそこまで単純じゃないぞ。運命なんて言葉で片付けてたまるものか。

これはきっと、あの青年の陰謀だ。そう思ったほうが自然。
二人との出会いがこの世界の何かに干渉するのかはわからない。だがクレイもブロライトも悪人には思えないし、俺のことを騙そうとかいう気も無いだろう。俺を騙したところでどうすんだって話。


「我が友と我が友が友であったとはな!もぐもぐもぐ、こりぇもにゃにくわのえんんてぃよもうしゅるかもぐもぐもぐもぐぶぼばりゅぐんぐんぐ」
「黙って食ってろ。あのな?クレイ、俺は一応ギルドには報告していたんだからな。ちょろっと遠出しますよ、って」

俺の更に倍の量をガツガツと食っているクレイは、あのクレイストン。
真新しい甲冑とローブに身を包んだ姿。机に立てかけている巨大な槍だけが傷だらけで、彼の背負ってきた歴史を感じられる。

「曖昧な説明をしおってからに。具体的な場所を言っておけ。俺が個人的にウェイドに聞かねばわからぬままだったわ」
「半月くらいで戻る予定だったんだよ。それがどういうことかブロライトを拾ってさ」

旅の支度も十分にしていなかった汚エルフを森の中で拾い、飯を食わす代わりに護衛のようなものを引き受けてもらった、という説明をざっくりとする。

クレイストンは寡黙に俺の話を聞き、黙々と食事を続ける。もともとが怖い恐竜顔だから、怒っているのかそれが通常なのかわからん。想像して欲しい。隣に巨大なヴェロキラプトルが座っていると。怖いだろ。

「武器鍛冶職人のグルサス親方とその相方…弟子?のリブさんに依頼されたんだよ。リュハイの鉱山でイルドラ石を採取してくれって」
「鉱石採取はお前のランクでは受注出来ぬだろう。何をしておる」
「だからギルドは通していない。他に頼めるやつが居ないって猫耳女子に泣きつかれてみろよ。猫耳だぞ?」

下心が全くないと言えば嘘だと断言しよう。女子に頼られるなんざ男子の憧れ、目指すべき姿。たとえ困難な依頼だったとしても叶えてやりたいと思うじゃないか。それが男だろ?猫耳だからというのも理由ではある。そこはワタクシ、嘘つかない。

それに打算もあるんだ。
この依頼を成功させれば腕のいいグルサス親方に遠慮なく色々と注文が出来る。デカい貸しを作るわけだから。若しくは、専門の職人を紹介して貰うことも出来る。使いやすい鍋とか作ってもらえるかもしれないのだ。玉子焼き器とか。

「せっかく向こうから来た縁だ。利用しない手はない」
「お前は人が良いのか悪いのか考えナシなのかわからぬわ」

失敬な。
クレイストンは巨大ジョッキに入ったエールを一気に飲み干すと、ぶはあと酒臭い息を吐き出してぎろりと睨んできた。だから怖いってその顔。

「それで?危険な地に赴くのだ。相当の対価を要求するのだろう?」
「対価?金ってことか?現金はいらない。報酬は俺だけの特別な採取用鋏を作ってもらう事」
「特別な鋏とな」
「恐ろしく切れやすく、それでいて頑丈で、さびにくく、手入れしなくても切れ味を保てるような、俺のデカい手でも扱いやすい特別な鋏。有能な武器鍛冶職人に鋏を作ってもらうんだ。かなりの贅沢だろ」

ドヤァと胸を張って言うと、クレイは再び酒臭い息を吐く。

「お前の贅沢の基準がわからぬ…。鋏…?鋏が報酬だと?」

うーん。
この世界の人にとって報酬=金銭になるのだろうか。一番分かりやすいし納得できるものかもしれないが、しつこいけど金なら余っていないけど潤沢にあるわけ。ギャンブルやってもっと増やそうって考えよりも、限られた中でどうやりくりするか考えるほうだし、足りなければ働けばいいじゃないかと思う。

金で何でも買えるという考えはあながち間違っていない。金の切れ目は縁の切れ目。信用問題にも繋がる。一部の愛だって買うことが出来るだろう。純粋な愛だけで生活できるヤツらは環境が恵まれていることに気づけ。金は大事だ。それはわかる。
クレイは俺が貧乏人だと思っているのかもしれないな。なんせ最低ランクの冒険者だからなあ。

「採取家にとって鋏は剣より大切なんだぞ?さて、そろそろ宿に帰るとするか」

もう食わなくていいだろうというくらい食っただろうブロライトに声をかけると、口の周りをべっちゃりと汚したエルフが振り向く。このやろう。このやろう、このやろう。だからエルフの素敵なイメージを壊さないでくれ…。

クレイは別の宿を確保しているらしく、その場で別れた。
ところでクレイはドワーフの国に何の用なのだろうか。クレイの冒険者ランクは確かA。聞いたときは驚かなかったし、だったらSとかSSってどんだけ、と思ったものだ。ゴブリン討伐時のあらくれ魔王っぷりを間近で見ているものとしては、あのひともうランクSSでいいんじゃなかろうかと。
ランクAの依頼は主にモンスター討伐だったはず。ドワーフの国まで出張するような依頼、あったかな。



翌朝。

リュハイ山脈に続く一本道の真ん中に。
青い鱗の弁慶さん。

槍を片手に仁王立ち、
低血圧なのかなと思うくらい不機嫌そうな顔しているクレイがそこに居た。

「来たか」
「オハヨウゴザイマス??何してんだよクレイ」
「俺もお前と共に行こう」

えっ

「え?」
「リュハイの鉱山に行くのだろう。丁度いい、俺はヴォズラオで槍(コイツ)の修復を頼む」
「おお!貴殿も共に行くのならば、なおさら心強いな!」
「ピュイ!」

いやいやちょっと、君たち勝手に喜ばないでくれるかな。
別にクレイが同行するのは何の問題もない。ランクAの用心棒ゲットー、てなくらいに考えている。だがしかし、いかんせんクレイは年の功なのか性格なのか種族の特徴なのか、説教が多いのだ。それも、正論で責めるから反論も出来ない。学校の先生や会社の上司に懇々と説教されているような気分になるんだよ。怒ると怖いし。

「ええと、あのですね…」
「俺はヴォズラオに行ったことがある。案内あないも出来る」
「それは有難いんだけんどもですがね」
「道中の身の安全は保障するぞ」
「わあい頼もしい。いやいやそれも有難いんですけんども」
「今更遠慮などするな。俺はお前に大きな借りがある。報酬などせびらん」

鼻穴広げて迫るクレイに若干怯えながらも、さてどうやって回避するかと思案。
すると空気とか読んだことの無いエルフさんが目を輝かせて叫んだ。

「クレイもタケルの用心棒になるのじゃな!」

あちゃー。
駄目だこれー。
すっかり乗り気のブロライトさーん。

「なぬ?用心棒…とな」
「わたしもタケルの用心棒として共にヴォズラオを目指しているのじゃ!」
「ほう…用心棒、用心棒か!良き響きであるな」
「タケルとビーの身を命を賭けて守るのじゃ!」
「おおお!」
「ピュピュ〜」

ほんとまじやめて盛り上がらないで。


テッテレー

ドラゴニュートのクレイストンと、エルフのブロライトが用心棒になっ



嬉しくないっ!

説教うるさいサムライ親父と残念エルフ。
実力は折り紙付きではあるが、なんだろうこの戦国武将と問題児を引き連れた保護者的感覚。このなかで俺が一番常識知らずで世間知らずのはずなのに、とんでもなく不安なのは何故だろう。

白樹の森からトルミ村に帰るまでの道のり、ポルンさん家族と馬車で移動したのは楽しかった。あの時のように陽気で気楽な旅路になれば良いのだけど、俺の勘がそうは問屋が卸さないと囁く。
悪いほうに考えるのはやめよう。うん。この出会いに感謝するべきだ。いいじゃないか、旅の仲間が増えて賑やかで楽しいじゃないか。
頼もしい用心棒がふたりー。わー贅沢ー。

「道中、宜しく頼む」
「わたしも改めて言おう。世話になる!」
「ハイ、ヨロシクネー…」
「ピュイッピュー!」



楽しくナリソウダナー(棒読み



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