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第2章

坑道探索、参ります

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「ほほう、ほうほうほう、ほほほう!!久しぶりだのギル!わしは見た目の通り元気だ!なあに鉱山でちょーっと問題があるくらいで他は皆元気だ!」

グラン・リオ・ドワーフ王国を束ねるゾロワディーン王。
ドワーフの王様って何と言いますかこう…もっと威厳に満ち溢れた貫禄たっぷりのイメージがあったんだけど。

「わしがゾロワディーンである!ギルの仲間であるそなた達は気軽に呼べば良いぞ!こう、ゾロちゃんとかディンちゃんとかの」

なにこのちまこいの。

「ゾロワディーン、落ち着いて聞いてくれ。まずあの巨大な立像はなんだ!」
「ん?あれ見てくれた?ほうほう、凄いであろう凄いであろう!わしらの自信作!わしもこの手で掘ったのだぞ!目玉のところを!ぐりぐりと!」
「あの立像を俺にするのは止めろ!俺はあんなに恐ろしくはないだろう!」
「ん?ん?恰好良いだろう?わしらの守り神!」

2m30僖ーバーの巨大クレイストンが1m弱ほどのドワーフの王様に怒鳴っている。
ちまこいドワーフは件の王様、ゾロワディーン王。警備のドワーフよりも小さなそのおっさんは、アレでも一族に慕われている有能な王様らしい。ヴォズラオの完璧な防御壁も全ての改革もこのちまこいおっさんが先導したという。
保守的ではない、王族としては珍しい改革派なんだろうな。守るべきものは守り、変えるべきものは柔軟に変えていく。統治者としては理想的。
だが、やはり威厳は無い。

「お楽しみのところ失礼致します」
「誰がお楽しみだ」
「まあまあ」

ちょろちょろ動く王様に一礼をし、膝をつき、頭を下げる。確か映画ではこうやって王様に敬意を表していたはずだ。
王様は長い顎鬚を撫でながら俺の頭上を凝視。そこにはビーがキョトン顔して王様を凝視。

「はじめまして、ゾロワディーン王。俺は冒険者のタケルと申します」
「ほほう、ほうほう!ギルの仲間だな。大きいな!巨人(タイタン)族か?」
「いいえ、人間です王様」
「ほほうほうほう、ほほう!頭の上のはドラゴンか?幼生とは初めて見た!」
「ピューイ…」
「めんこいのうめんこいのう!よーしよしよしよし!ところで何用だ?」

やっと本題を聞いてくれた。
俺はグルサス親方が書いてくれた紹介状を執政のセラフィン氏に手渡す。それを読んだセラフィン氏は驚いた顔をし、俺の顔を見てパッと顔を明るくさせた。

「王様王様、吉報でございますぞ」
「うむうむ、申してみよ」
「ベルカイム商業地区武器鍛冶組合代表、グルサス・ペンドラススよりの紹介状でございます」
「ほうほう、グルサスか!存じておるぞ!」
「グルサスが申しますには、そこなる冒険者タケルは素晴らしい腕を持った素材採取家であるとか。此度のリュハイ鉱山の騒動の真相を突き止められるほどの腕と」

えっ?

「ほほほほう!!それは素晴らしい!」
「えちょま」

真相を突き止めるつもりは無いんだけど。

「北坑道には巨大な正体不明の禍々しい悪魔が巣食っておるのだ!勇猛な戦士が幾人も立ち向かったが、誰も敵うことは出来なんだ…」
「ギルドにも高額報酬の依頼(クエスト)として出したのですが、何せその悪魔、モンスターの正体が不明のままでは安易に受けることも出来ぬと敬遠されておりまして」

いくら無謀で脳筋な冒険者でも対象が未確認のままでは安易に受注することなど出来ないだろう。命あっての物種だ。

「ギルドに冒険者はたくさん居たようだけど、みんな様子を見ているって感じなのかな」
「そうだな。ヴォズラオは良い武具が揃っておる故高位冒険者も訪れる。だが坑道に現れる悪魔なるモンスターについての情報はあまりにも少ない」

それは今までリュハイの鉱山が平和だったからだろう。グラン・リオ大陸は他にも幾つか名の知れた鉱山があるが、リュハイほど規模が大きくない。そもそも坑道のような人が行き来をする場所に巨大なモンスターはわざわざ寄り付かないはずなのだ。

モンスターは身体が大きくなるのと比例して賢さも向上する。動物の勘とでも言えば良いだろうか。故に坑道内に出没するモンスターは比較的小さなものが多い。
ドワーフ族の背丈に比べればサーペントウルフでも巨大と表現されるかもしれないが、そこはギルド基準を採用して巨大と表現しないらしい。

他の冒険者が捜索するのをのんびりと待つ時間はない。グルサス親方は武具を作る大会に渾身の作品を出展する。となれば、明日にでも坑道に入ってイルドラ石を採掘しなければ。

「王様、宜しいでしょうか」

荘厳な謁見の間に、声は静かに響き渡った。




***( ´Д`)***




便利な鞄の中には大量の食糧と水が入っている。
俺一人だけでは数年経っても食いきれないほどの量だ。いやなに気に入ったものは大人買いしてしまう傾向がありましてね…。
他に娯楽が無いのだ。食う寝る風呂に金を費やすのは惜しくないと開き直った。肉焼きジュペ美味い。

自炊出来るだけの食材と調味料、野営準備も万端だ。装備は今着ているもので十分だし、最強のユグドラシルの杖もある。
元々の性格からだと思うが、全てに於いて余裕が無ければ不安になる性分なのだ。余裕ある行動、余裕ある所持品、余裕ある日常。焦ること嫌い。

そんなわけで翌日、特に改めて準備することもなく坑道の入り口に来た。

「ブロライトは坑道内での護衛を頼んだけど、クレイも来るのか?」
「当たり前であろう。俺はお前の用心棒だ」

準備万端の鼻息荒いブロライトの隣に、同じくやる気満々のクレイストン。来るかなと思っていたが、案の定。

「Aランク冒険者としてギルドは通しただろうな」
「無論」
「ブロライトは?」
「わたしも昨日ギルド登録をしたのじゃ!タケルと同じFランク冒険者じゃぞ」

坑道探査依頼はランクDからの指定になっていた。だがランクAのクレイが同行するということでブロライトも受注することが出来たのだろう。俺は面倒なので今回はクエスト受注をしていない。採掘した鉱石を無償で貰える約束を王様直々にしてもらったからな。
クレイの威光も大いに利用させてもらった。クレイの信用はんぱない。その仲間ってだけで無条件に坑道探査を許してくれたからなあ。

「さてそれじゃあ、準備はいいか?」

坑夫ルックに身を包んだギルドの受付主任ザンボ氏。黄色いヘルメットが眩しいです。
案内係を一人付けてくれと頼んだが、何故に受付主任が来たのかと思えば。

「張り切って行こうぜ!ワシは逃げ足だけは速いぞ!邪魔にならんよう、優秀な素材採取専門家の仕事ぶりを見物させてもらうからな!」

そういうわけで、俺の採取の腕をスパイしたいらしい。
参考にならないと思うが邪魔をしなければ構わない。

「ザンボさん、坑道内の地図とかある?」
「玄武道…今から向かう坑道のでよけりゃ」
「ちょっと貸して」

茶色い巻き紙をするすると伸ばすと簡単な地図が描かれていた。あまりにも簡易すぎて少し不安になったが。

「解読(リード)」

地図を読み取り記憶する。これで探査(サーチ)をかければ途中ではぐれても道に迷うことは無くなる。

「タケル、今何をしたのじゃ。一瞬魔力の波を感じたのじゃが」
「うん?俺には何も感じられなかったぞ」

ブロライトは魔力感知能力が長けていて、俺の僅かな魔法発動にも気付く。クレイストンはブロライトほど魔力は無いのか、まったく感じられないようだ。ちなみにザンボ氏はキョトン顔している。

「地図を読み取った。もしもザンボさんとはぐれても道に迷わないように」
「読み取る??地図を??」
「うーんと、一瞬で記憶する、って言えばいいかな。ともかくこれは返す。ありがとう」

この魔法は図書館でよく使った。
本はとても貴重なものであり、特に貴重な文献は読むだけで銀貨数枚も取られた。しかも1日だけで。なので本の内容を暗記できないかなと考えたら思いついた。覚える容量にもよるが、地図一枚程度じゃ魔力もさほど使わない。ちなみに百科事典のようなものを解読(リード)しようとしたら酷い頭痛がしたものだ。

「……クレイ、今の魔法は何か知っておるか?」
「いいや…地図を一瞬で記憶する、だと?有り得ん」
「タケルは魔法使いではないと申しておった。じゃが…あのような複雑な魔法を扱うものは熟練の魔法使い以外有り得ぬ」
「魔法使いじゃないって。はいはい行くよー」
「ピュイィ〜ィ」

リュハイ鉱山北坑道入口、玄武道。

頑丈な鉄の扉に閉ざされたその坑道は、リュハイ鉱山の中では一番新しい坑道だ。数か月前に広大なイルドラ石の鉱脈を発見し、ドワーフ国の更なる発展を喜んでいた矢先のこと、謎のモンスターが出没したと。
その場に居合わせた坑夫らの証言によると今まで見たことも聞いたこともない巨大で邪悪でおぞましい悪魔…。とにかくなんかすごいモンスターが居るらしい。

ごつい扉の鍵を鍵番のドワーフに開けてもらい、いざ中へ。町にもある空気循環システムなる魔道具(マジックアイテム)が等間隔に配備されており、呼吸の心配はしなくても良さそうだ。灯りもあったが、少し薄暗い。

「灯光(ライト)」

四人分の目に優しいダイニング・ライトの小さな玉を作り出して歩みを進める。

「タケル、お前は本当に高名な魔法使いではないのか?!」

小ぶりだが十分な光を放つそれをつつきながらクレイが叫ぶ。こんなんで叫ばないで欲しい。

「素材採取を生業としておりますー。っと、探査(サーチ)」

目の前に広がる岩の壁に僅かに反応がある白の光。状態の良い、含有量が豊富な鉱石を意識すると光は消えてしまった。坑道入口なんてこんなものだろう。

「タケル、今…貴殿は重複魔法を唱えたのか?」
「なにそれ知らない。はいはい次こっち行くよー」
「ピュイピュイ」

解読(リード)のおかげで初めて来た坑道なのに何度も通い慣れた道のような印象。こっちの道は行き止まりで、あっちからは光の反応が見られない。迷うことなくずんずんと先を進む。

「………ワシ、道案内いらんかったかな」
「そう落ち込むことはない。アレでもタケルは鉱山に来るのがはじめてと申しておった。突然のことに対処出来うるだけの能力は流石に」
「あ、その前に地点確保させてくれ」

坑道入口から直ぐのところに魔石を置く。位置がずれないように。

「地点(ポイント)確保、固定(フィク)」

小さな魔石は合図と共に光る。この場所から決して動かないように固定魔法かけておけばかんぺ

「「今何をした!」のじゃ!!」


だから単独行動が気楽だったのになあ…。


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