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2巻試し読み

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【死者の挑戦状情報掲示板No.4】

1:ここは死者の挑戦状関係の情報などを持ち寄る掲示板です。
荒らしダメ、ゼッタイ。950を踏んじゃった人が次のスレッド作成

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144:名無しの冒険者さん ID:7dc5rF1tS
現時点の情報を纏めると、〈盗賊〉スキル持ちの人必須、
罠は常にあると思え、〈盗賊〉スキル持ちに無茶を言わない、でOK?

145:名無しの冒険者さん ID:a1es5Ut1e
そんなところじゃね? モンスターはゾンビやスケルトンは弱いけど、
ワイトやソルジャースケルトンには注意だな

146:名無しの冒険者さん ID:gEc4s1e6d
実際死因はモンスターより罠の方が多いっぽ?

147:名無しの冒険者さん ID:axe2f4geW
罠の方が怖いね、今の時点では。
下まで降りれば厄介なヤツでてくるだろうけど

148:名無しの冒険者さん ID:he4s6GrV1
ここでまさかの〈盗賊〉スキル必須とかないわー

149:名無しの冒険者さん ID:Td5e1s22a
ギルドでも誰に取らせるかちと揉めた……

150:名無しの冒険者さん ID:Gqa8wCs1l
アセンや予定が思いっきり狂うからな、
習得に必要なExPが8とクソ重いし

151:名無しの冒険者さん ID:J2Vfr5dpo
でも実際ないと詰むよね、
大丈夫だろうと思って特攻した数時間前の自分はアホだった

152:名無しの冒険者さん ID:Fc5sxSawI
>>151どうなったん?

153:名無しの冒険者さん ID:ed1eG4azS
今までの罠とかと違って、感覚や直感ではぜんぜん分からないからなぁ、
挑戦状の罠

154:名無しの冒険者さん ID:J2Vfr5dpo
>>152 地雷踏んでよろけた先に落とし穴があって
落とされて落下ダメージで死んだ……

155:名無しの冒険者さん ID:bEsh5d8eJ
>>154 アンタは一昔前のコントかw体張ってるなwwww

156:名無しの冒険者さん ID:Aq4z7sekD
>>154 ウホッ、良いコンボww

157:名無しの冒険者さん ID:r4dY47Pdc
154じゃないけど、かなり罠が多いから
次々と踏まされるってことがあるよね

158:名無しの冒険者さん ID:d8tcYd3cq
実際のとこ即死直行コンボなんて結構あるし……
一回踏んだ時点で終わりとかふざけてる

159:名無しの冒険者さん ID:9pEdws5cd
でも罠って元々そういうものじゃ……あれ、そういうゲームあったよな

160:名無しの冒険者さん ID:2Rd8xWs4x
>>159 それ以上言ってはいけない

161:名無しの冒険者さん ID:xreqswsD9
>>155&156 喰らった方はマジ凹むぜ……?
お前らだって喰らったら凹むハズ

162:名無しの冒険者さん ID:Bfr5d2esa
>>161 モンスターハウスもきちんとあるのが厄介すぎる……

163:名無しの冒険者さん ID:Pfde8ds2e
部屋に閉じ込められて出れなくなるよな、モンスターハウス。
全滅させるしか方法がない

164:名無しの冒険者さん ID:vdlviker5
扉を外の人からあけてもらっておいて出るって無理なん?

165:名無しの冒険者さん ID:cWzigRdef
>>164 試したが見えない壁にさえぎられて無理だった
ここの運営は甘くない

167:名無しの冒険者さん ID:Oe5sse8dI
あ、やっぱりだめなんか

168:名無しの冒険者さん ID:Lrxijd4e3
数も多いし、変な大部屋に入るときは覚悟して入れよ

169:名無しの冒険者さん ID:Bgr5d81sT
でも宝箱があることも結構あるからな〜大部屋

170:名無しの冒険者さん ID:Azs2e3cDy
そそ、結構金が手に入るからふらふらーとね

171:名無しの冒険者さん ID:9e24c2Drt
そしてモンスターハウスで死ぬ、とw

172:名無しの冒険者さん ID:x8Ezs6e2c
あるあるww

173:名無しの冒険者さん ID:Gc6meisuR
お約束w

174:名無しの冒険者さん ID:Jr5sxK1eg
でもよ、以前あるPTから聞いたんだけど、
モンハウで閉じ込められた所に助けに来たPTがいたって話があったんよ

175:名無しの冒険者さん ID:eXw8s41Yi
ほうほう、それで?

176:名無しの冒険者さん ID:Jr5sxK1eg
それで助けに来たPTがかなり強くて、回復とかしてもらいつつ、
勝ったまではよかったらしい

177:名無しの冒険者さん ID:s2cZ6gR40
え? 勝ったならそれで終わりじゃない?

178:名無しの冒険者さん ID:dCr5w9ZXd
その後宝箱開けて終わりだろ?

179:名無しの冒険者さん ID:Ytrf70eGh
部屋に居る人全員で均等割りだしな……
あ、もしかして追い出されて奪われたとか?

180:名無しの冒険者さん ID:Jr5sxK1eg
大体予想するのはその辺だよな、
だけど、空けようとしたら地味な弓使いが
「罠だから開けんな!」と言ってきたらしい

181:名無しの冒険者さん ID:51scr85rH
え、モンスターハウスのご褒美宝箱に罠なんてないやん……

182:名無しの冒険者さん ID:bFe8ccy2c
分かりやすい泥棒キターwwwww

183:名無しの冒険者さん ID:sSgr5d3Kt
そんなのここ読んでれば絶対ひっかかるわけねえwwwww

184:名無しの冒険者さん ID:Oedw0dGfr
その弓、アホだ、アホがおるwwww

185:名無しの冒険者さん ID:Jr5sxK1eg
んで、そこのPTもそう思ったから
「独り占めするのか?」って言ったそうなんだ

186:名無しの冒険者さん ID:fleir8c1P
当たり前だな

187:名無しの冒険者さん ID:fe8r2dYry
当然だろ、泥棒には立ちむかわんと

188:名無しの冒険者さん ID:Jed8r2de1
助けに来たからって全部持っていくのはだめだろ

189:名無しの冒険者さん ID:Led52se8l
うん、どこもおかしいところはないな

190:名無しの冒険者さん ID:Jr5sxK1eg
そう言ったら
「すぐに出て行くから、こちらが部屋を出るまで開けないでくれ」
と言ってきたらしいんだよ……

191:名無しの冒険者さん ID:5d328deFs
へ?

192:名無しの冒険者さん ID:wQaz5de9R
泥棒じゃ……ないの?

193:名無しの冒険者さん ID:vDe0K5r7v
おいおい、話の方向が変わってきたぞ

194:名無しの冒険者さん ID:Jr5sxK1eg
んで、本当に駆け足で部屋から出て行ったらしい……

195:名無しの冒険者さん ID:dkeicd53E
ええー? なんで報酬放棄?

196:名無しの冒険者さん ID:z5xx7e1Gd
モンハウで助けたからって全部要求する連中の話は聞くけど
放棄なんて初めて聞くぞ

197:名無しの冒険者さん ID:fde8Fs1eS
ただのお人よし……って感じじゃないけどなあ?

198:名無しの冒険者さん ID:R58x7s3w6
単純に初挑戦だから知らなかったとか?

199:名無しの冒険者さん ID:d5e2sGeQ1
あーそれはありうる

200:名無しの冒険者さん ID:Jr5sxK1eg
そうしてさっさと出て行ってくれたんで、
報酬の宝箱を開けたんだとさ、そうしたら……

201:名無しの冒険者さん ID:dwQzkd5d7
レアキター?

202:名無しの冒険者さん ID:Jed57x2Uy
いいもの出たのか? ここまで引っ張るんだから

203:名無しの冒険者さん ID:wW4s12xHf
わくわく

204:名無しの冒険者さん ID:Jr5sxK1eg
……死神が宝箱からいっぱい出てきて殺されたんだとさ……

205:名無しの冒険者さん ID:Zs5e7djer
ええー!?

206:名無しの冒険者さん ID:edD52eFde
そんな罠もあんの!?

207:名無しの冒険者さん ID:Or4s1esaF
戦ったり逃げたりしなかったのかよ、そいつら

208:名無しの冒険者さん ID:Jr5sxK1eg
戦ってはみたが、武器も魔法もすり抜けてしまって、
当たらなかったらしい

209:名無しの冒険者さん ID:5sEfds1w8
なにそれ、完全に罠扱いってこと?

210:名無しの冒険者さん ID:Aqx8rPd4e
すりぬけるとかありえねー

211:名無しの冒険者さん ID:Jr5sxK1eg
そして部屋の扉もまた閉じて開けることもできず、
逃げ出せなかったんだと

212:名無しの冒険者さん ID:Ueds4e7Ed
うわ……引くわそれ

213:名無しの冒険者さん ID:Zas5rEskc
絶対に殺すってことかよ

214:名無しの冒険者さん ID:Azd5es8w1
今まで罠がないとばかり思って気楽にあけてたのに……こえええええ!?

215:名無しの冒険者さん ID:uakeA8w17
この罠、今まで聞いたことがない罠だな……

216:名無しの冒険者さん ID:sjkeTd4w1
じゃあ、弓使いはマジで警告してたってことかよ

217:名無しの冒険者さん ID:0skeicjEd
いい人だったのか

218:名無しの冒険者さん ID:a7q1x4DmW
お前らちょっと前見てみ、一方的な泥棒あつかいじゃねーかw

219:名無しの冒険者さん ID:Az5e8Fwes
なんでその弓使いは見破れたんだよ……

220:名無しの冒険者さん ID:P5df5es9s
〈盗賊〉スキルが高いのか、カンじゃね?

221:名無しの冒険者さん ID:D5e7J1dep
カンはありえない、そういう罠の発見能力、あそこじゃ通用しないし。

222:名無しの冒険者さん ID:Sidfjk8w1
じゃあ純粋な〈盗賊〉スキル高Lv持ちってこと?

223:名無しの冒険者さん ID:9Leda1eWc
弓と盗賊のコンボはサーチ&デストロイになるから持ってておかしくない

224:名無しの冒険者さん ID:C5e4d7rhs
遠距離での戦いにはあると便利とは知ってたけど、そこまで上げるかね?

225:名無しの冒険者さん ID:Jr5sxK1eg
ともかく、そういう罠もあるからおまえら気を付けろってことだ

226:名無しの冒険者さん ID:djmeka5ew
これはWikiに載せるべき情報じゃね?

227:名無しの冒険者さん ID:11zSedjkj
だな、ちょっと行って来るわ

228:名無しの冒険者さん ID:Dx52w3sAw
お疲れ様です。

229:名無しの冒険者さん ID:kduRx6sWc
お疲れ様

230:名無しの冒険者さん ID:k87wjeERw
いい情報だったわ、引っ張ったが許す

231:名無しの冒険者さん ID:Zd5e7s2wP
つかここまで罠多数だと、
いかに〈盗賊〉スキル持ちを引っ張り込むかの話になるな

232:名無しの冒険者さん ID:G4e52s1eh
そして高Lvとなると、ガチでギルドお抱えとかばっかりになりそう

233:名無しの冒険者さん ID:Rd5w4Re7d
野良盗賊なんてレアになるな

234:名無しの冒険者さん ID:Of5H2e1sW
いや、現時点でもうレアよ?

235:名無しの冒険者さん ID:Lde8sBv1e
いえてる……戦闘能力もちはいっぱい居るけど、盗賊持ちはホンと少ない

236:名無しの冒険者さん ID:Cd5aw3e2x
たまに盗賊持ちだから入れてと言う人がいると即座に拾われるよな

237:名無しの冒険者さん ID:hed87swEx
でもダンジョンには入りたいジレンマ

238:名無しの冒険者さん ID:De8s5wEd1
そうそう

239:名無しの冒険者さん ID:Ed45trDeP
分かる分かる……

240:名無しの冒険者さん ID:Aqa7xe3d2
一昔前の理不尽ゲームをやってる気分になるぜ……

241:名無しの冒険者さん ID:Prf8dWexd
心折れたとか言ってるギルメンもいたな、気持ちは分かるが……

242:名無しの冒険者さん ID:As8eQx4ed
ガチで殺しに来てるダンジョンだからなー


243:名無しの冒険者さん ID:Led57sExk
ぬるいゲームばっかりやってたヤツはぽっきり心が折れただろーなぁ……


 5

うーん……なかなか上手くいかん……この半分ぐらいまで細くしたいのだが……
鍛冶場で唸っていると親方が声をかけてきた。
「どうしたアース、また変なもの作ってるのか?」
こういう台詞は、自分の立ち位置をイヤでも理解させてくれる。
「いえ、今回はちょっとした小道具を作っているのですが」
そう、今作っているのは宝箱や扉の鍵開けに使えるピッキングツールである。もちろん純粋にダンジョン用であり、プレイヤーや街のNPC相手に盗みはできないのであしからず。
「ほー、あの新しいダンジョンは罠がいっぱいだと愚痴ってた奴らは多いが、そんなにか」
興味を持ったのか、親方が身を乗り出してきた。
「ええ、とりあえず実際に解除してみて、こういう物があればもっと早く解除ができると分かってきたので作ってみたのですが……これ以上細くすると、自分の腕では壊してしまうんです」
罠の解除、鍵開けに必要な、いわゆる七つ道具のうち六つは既に製作したが、最後の一つであるピッキングツールが上手く作れないのだ。正直これは、鍛冶というより細工の範疇なのだが……
「貸してみろ、特別に俺がやってみせよう」
そう言うと親方は、未完成のピッキングツールを自分から受け取るなり、自前の道具を使って製作を開始。今の自分には繊細すぎてできなかった焼入れと細かい作業を、燃え盛る火の前で平然とこなしていく。ピッキングツールの先はどんどん細くなっていくが、輝きの度合いから強度が全く落ちていないことが分かる。自分がやると輝きがはっきりと鈍っていき、そして折れてしまうのだ。
「こんな感じか? お前の望む形は」
完璧である……さすが本業、自分のような半端者とは違う。
「ありがとうございます、理想のさらに上を行っていました」
ここまで先端を細くしてもらえるとは思っていなかった。針先は間違いなく一ミリ以下。これなら厄介な宝箱にも対抗できそうだ。
「親方の腕、勉強させていただきました」
そう言って頭を下げる。一流の職人の仕事を見ることができたのは本当にありがたい。親方は「おう、お前も頑張れよ、今回だけはタダでいい」と言ってくれた。器がでかいな。

七つ道具を懐にしまって、減った矢の補充のために木材を採ろうと、街の外に出た。それから少し歩いたところで……クィーンが突然目の前に現れた。
「やっほー、元気にしてた〜?」
今回は正装というべき、ロッドに黒いドレス、クラウンを備えての登場である。
「相変わらず突然来るな、おい。結構びっくりするんだぞ?」
実際は少し予兆があるが、ほぼ突然なのは事実なので一応言っておく。
「じゃあもっと派手に来た方が良いかな? 音楽つきで」
音楽つきで登場って、あんたはどこぞのプロレスラーか。バックドロップにDDTでも決めるのか。
「はあ、まあ良い。で、正装のようだが何か大事があったのか?」
正装姿を見たのはあのイベント以来である。
「ええ、ここからは仕事。新しく来た人族の冒険者達に、私の眷属というべき妖精達と契約できるように契約結晶を渡しに行くのよ」
そういえばそんなイベントがあったっけか。新規参入者限定で妖精契約結晶を一つプレゼントするので、指定場所に集まるか、後日メールで届くのをお待ちくださいって内容だったかな。
「できる限り今日で渡してしまいたいわ、メールを書くのは結構大変だし。人族のお手伝いさんも協力はしてくれる手はずだけれど」
お手伝いって、ゲームマスターさん達のことかな……他に思いつかないのだが。というより、一斉送信とかじゃなくて手渡し!? 何その旧世代方式。
「そういうことで行ってきます、後でまたお会いしましょう、
すぱこーん!
「お前と所帯を持った記憶はないぞ……」
最近二つ名の方が厄介なことになってきてしまったので、きっちり釘をさしておく……ぬかにさしている気がしなくもないが、気のせいであると信じたいところである……
ちなみに今ぶっ叩いたハリセンは鈍器扱いの武器だが、ダメージが0固定で音が派手に鳴るだけという、完全なネタアイテムである。
「うう、セットした髪が少し崩れちゃった……」
いそいそと鏡を取り出して、乱れた髪を整えるクィーン。そういうところは女の子なのか。
「ちょっと強く叩きすぎたか……」
髪の毛を整え終わったクィーンは鏡を消すと、「それでは失礼しますわ」と言い残して立ち去った。一応あいつもそういう仕事はこなしていたのか。妙に安心した。

それから木をいくつか切り倒し、その場で【木の矢】を作成。街に戻って鉄と合成して【鉄の矢】を量産しておく。またいつダンジョンに行くことになっても困らないように、普段の三倍ほど製作しておいた。これでモンスターが多い日でも安全である。
〈製作の指先〉のLvが50になっているのだが、このスキルを上級スキルにするには99まで上げないといけないらしく、当分先になりそうである……生産は一日にして成らずと言いたいのだろうか。

矢の量産が終わり、後は料理を作って露店に出して落ちるかと料理作業をしていると、フェアリークィーンがぐったりとした姿で現れた。つい一瞬手が止まる。
「な、なんかやつれてないか?」
作業を再開しつつ質問してみる。ぐったりしているが、こいつのことだから死にはしないだろう。
「結晶を渡すまでは良かったのだけれど、そこから先がね……私のスリーサイズなんてどうでもいいじゃない! 私の好みのタイプなんて知ってどうするのよ!? 好きな食べ物なんて聞いてどうするの!? 寝取りOKですか? とか理解できない質問まで来るし!? どこに行けば会えますか、なんてそれこそ答える理由がないわよ!? 人族は何でああいう質問を平気でできるのかしら……」
「そ、そうか、それは災難だったな……」
こればっかりはさすがにクィーンに同情する。そういう発言をする奴はどこにでもいるからなぁ、しかもウケ狙いで悪気がないのが面倒なんだよなぁ……もしくは本当に惚れたか?
「仕方がないから、そういう質問した子達を一気にバトルフィールドに無理やり招待して倒して蘇生してまた倒してを一〇回ぐらいやったわ」
「おい!? 何やってんのオマエ!?」
現時点ではまだプレイヤー側には見つけられていない蘇生魔法を平然と使った上にフルボッコとか、鬼かお前は……
「だってだって、そうしたら『私達の業界ではご褒美です』とか言って恍惚こうこつの笑みを浮かべたのよ!? 怖いじゃない……本当に人族って怖い……」
……ノーコメントだ、絶対にノーコメントで!
「お陰で一気に疲れたわ……イベントってこんなに疲れるものなのね……」
まあ運営さんもイベントのときはひと苦労なんだろうが……今回はさすがのコイツも疲れたか。ある意味そのHENTAI紳士達も伝説の星になったのだろう、合掌。
「だからお願い、膝枕して、頭撫でて、婚姻届にサインして!」
「最後の一つは明らかにおかしいだろう!?」
この後料理が完成するまで漫才みたいなやり取りをして、結局膝枕をしてやることで話がついた。泥沼なのは分かっているのだが……さすがに今回は少しばかりコイツに構ってやろうと、要望に応えてあげた。調子に乗ったらハリセンで叩くけど。

七つ道具が完成したので、露店に出すポーションジュースや料理を作った後はひたすらソロで「死者の挑戦状」に潜っていた。
戦闘は極力回避している。あくまで目的は七つ道具を使った罠の解除、鍵開け能力の向上であるからだ。
ソロで来たのは正解だった。最初のうちは指とは違う感覚のため、罠を発動させてしまってダメージを受けたことが何十回とあった。
それでも道具の扱いや感覚はそんなに時間も掛からず掴めてゆき、指でやるのに比べて二割から三割ほど、解除にかかる時間を削減できるようになった。
もちろん、だからといってPTを組んで潜るには不安要素がまだ多く、もうちょっと罠の解除に慣れておきたいところだ。簡単な罠だけではなく難易度の高い罠の解除もできるようにならないと、下層まで行ったら役に立てないかもしれない。
今は危険の度合いがそこそこのものから、かなり高い罠の解除を中心に行っている。ちなみに失敗すれば被ダメージと共に麻痺や石化、混乱など引き起こす危険な罠も多数である。当然、何度かデスペナルティも喰らっているが、それぐらいでめげるわけにはいかない。
時にはヒーロー戦隊のブラックと一緒になり、罠を解除しながら色々喋ることもあった。内容は世間話からゲームの情勢、罠についての情報のやり取りなどである。ダンジョンで罠を解除しながら喋る二人の男は、他の人達から見ればちょいと不気味だったかもしれない。
ブラックが一緒にいるときは戦闘も行っていた。お互いあまり高くない武器能力を鍛えることを兼ねて、である。宝箱が出たときは、二人で罠を調べ合って、罠の解除と鍵開け能力の向上を図る。
収入はほんの僅かだが、スキルLvの上昇という意味では非常においしい時間であった。

やがて〈盗賊〉スキルLvが50に到達し、上級にしようとしたのだが……ここで再び選択を迫られた。〈上級盗賊〉への道と、新しくできた〈義賊〉という選択肢である。
〈上級盗賊〉は単純に今までの〈盗賊〉の上位版で、できることも一緒。もちろん能力そのものは高まるのだが……こちらへの上位変更はExPが3必要。
そしてもう一つの〈義賊〉は、モンスターからアイテムを直接奪い取ったり、姿を隠しての奇襲攻撃にボーナスが付いたりするようだ。その分習得に必要なExPは非常に多く、なんと10。〈盗賊〉習得で8も使ったのに、さらに10も使うべきかどうか……
――だがそこで使うのが自分という人間だ(苦笑)。ウィリアム・テルやロビン・フッド気分に浸るには良いかも知れないし。〈義賊〉を選択して、OKを押し込んで選択完了。
消費したExPに見合う働きができるように祈るしかないな……

〈義賊〉になっても基本的にやることは変わらず、とにかくこつこつ罠解除の練習である。こういう地味な作業を続けられるか否かで、MMOの世界でやっていけるかどうかが決まるような気がする。七つ道具の方も細かい改良を加えており、より使いやすく変化していることは明言しておく。
陰鬱なダンジョンの中にいる時間がプレイ時間の大半を占めていると、外に出たときに光をまぶしく感じてしまう。そんな自分にちょっとがっくり、まるで昼夜逆転生活ではないか……
ところで、〈遠視〉スキルの能力で暗視を兼ね備えている自分は、ダンジョンに入っても明かりが不要で、真っ暗な状態でも行動できる。実はこれこそが、モンスターとの遭遇率を大幅に下げている要因であったりする。
どうにも、この「死者の挑戦状」にはびこっているアンデッドモンスター達は光を感知する能力を持つらしく、明かりをつけていると寄ってくるようだ。
光源の一つであるカンテラで明かりをつけながらダンジョンを歩いていたときに、ゾンビやグールによく見つかったことから、それでほぼ間違いないと推測している。
モンスターとの戦闘をひたすら回避しまくって地下一〇階を目指すのであれば、なんと自分の場合はソロで突き進むのが一番安全だと判明したわけだ。〈義賊〉のLvがもう少し上がったらチャレンジしてみようと思っている。
掲示板やブラックの話によると、一番進んだ人は地下七階ぐらいまで到達できているようだ。しかし、そこから罠がさらに多くなり、扉も隠し扉やトラップ扉などが増えてくるため苦戦中らしい。
もちろん〈盗賊〉スキル持ちの人が同行しているのだが、それでも罠の解除に時間が掛かったり発動させたりしてしまい、全滅してしまったと聞いている。
ブラック達ヒーローチームも挑んでいるようだが、六階以降はかなり厳しいとのことである。
また厳しいのは罠だけではなく、地下七階からはとうとうレッサーリッチがうろつきだしているとのこと。名前にレッサーと付いていることから、リッチといえどまだ下級ということだが、逆に言えばさらに深部には本当の強さを持つリッチがいる可能性を示しているわけだ。
レッサーリッチの攻撃は魔法がメインで、一発がかなり痛いのは当然ながら、直接触れられると麻痺したり、凍結状態にさせられたりして[ブレイクアーム]まで誘発する厄介なモンスターだそうだ。そしてそんなリッチの脇をソルジャースケルトンなどが固めているのである。七階からが本番だと、掲示板には書いてあった。
罠の解除訓練を継続しながら、これから先の攻略計画を考える。
とりあえず数回ソロで完全隠蔽スタイルを用いて、一〇階に到達できるかどうかを試す。その後〈盗賊〉持ちだという強みで、どこかのPTに拾ってもらうか、ツヴァイのギルドかヒーローチームに使ってもらうか……というところか。
地下一〇階に何があるのか公式からは何の発表もないので、情報が出回る前に見に行きたいという好奇心もある。ような結末にならないためにも、しっかりと罠の発見と解除能力を磨いておかねばならない。
容赦なく冒険者を呑み込む「死者の挑戦状」、その最奥への到達者はいまだゼロである。
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