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4巻試し読み

4-2

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(あっちは前衛役タンカー募集、こっちは回復役ヒーラー募集、そっちは支援役バッファー募集……)
PT募集ウィンドウを眺めているのだが、どういうわけか火力枠アタッカーは完全に埋まっているようで、自分はどこにも入れそうにない。平日は最大で二時間ぐらいしかプレイできない自分は、PT結成にあまり時間を掛けたくないのだが……今日はとことん歯車がかみ合わない日らしい。
(ダメだな、こりゃ。経験上、こういう流れのときは結局上手くいかないことが多い)
ウィンドウを閉じ、選択肢を考える。狩りの予定を変更して料理をやるか、鍛冶を試すか、はたまたソロで狩りにいくか。
(料理と鍛冶は止めておこう、こんな日は生産行動をやっても上手くいった試しがない)
バイオリズムなるものを完璧に信じているわけではないが、不思議とそういう波長はあるものだ。そうなると、残るは狩りしかないのだが。
(う〜ん)
悩みながら首をひねっていると、頭の上に乗っていたピカーシャがパタパタ羽ばたきながら目の前に下りてきて、こちらを見た後に街の外へゆっくり飛んでいく。
「なんだ?」
ふわふわと街の外に向かっていく、ひよこ形態のピカーシャ。というか、この形態でも空を飛べたのか。ひよこが小さく羽ばたきながら空を飛んでいるって図は結構シュールだな……可愛いだけに、余計妙な気分になる。
こうした部分は「ファンタジーだから」で片付ける方が、精神的によさそうだ。

街から出たピカーシャはひよこ形態を解除し、本来のサイズに戻った。そして体を屈める。これは「乗って」というサインなので、言われるままにする。自分が乗ったことを確認すると、ピカーシャは立ち上がり、林に向かっててこてこ歩き出した。
すぐ林に到着したのだが、ピカーシャは自分を乗せたまま突き進む。ピカーシャの考えは分からないが、従った方がいい結果になる気がする。そう言えば、この辺の木の質も調べておかなければな。木工に使えるかもしれない。
……と、《危険察知》にモンスターの反応が。そろそろピカーシャを止めねば。
「ピカーシャ、前方にモンスターがいるからそろそろ……」
自分を下ろしてくれ、と続けるつもりだった。
「ぴゅういいいいいいい〜♪♪!!」
ところが、自分の声を聞いた途端、ピカーシャは大声で鳴いたかと思うと、前方に向かって高速で突進を始めた。
「え、おい、どうしたんだ!?」
自分の慌てた声も聞こえていないかの如く、どどどどどっと突進し続けるピカーシャ。その先には、ゴブリンPTの団体様がいる。
「ピカーシャ、前、前!!」
注意を呼びかけるが、ピカーシャはそれも無視してゴブリンのPTに突っ込んだ。そうだな、ボーリングの玉をピカーシャ、ピンをゴブリンに見立てて欲しい。自分を乗せたまま、そんな感じで突っ込んで――ゴブリンのPTを弾き飛ばしたのだ。ボーリングだったら、非常にいい音が響いたことだろう。
「ぴゅい!」
それだけに留まらず、倒れこんだゴブリンを足でむんずと掴んで他のゴブリン目がけてブン投げ、追撃を始めた。こうなっては仕方がないので、近場のゴブリンはピカーシャに任せ、自分は遠くに吹き飛ばされていったゴブリンを狙撃していく。ピカーシャが背中を硬く調整してくれたので、立ち上がって弓を射ることができた。
ものの数十秒で、ゴブリン八匹のPTが全滅した。これは戦闘ではなく、蹂躙じゅうりんといった方が正しいだろう。ピカーシャが強いのは十分わかっていたのだが……ずーっとひよこ形態に押しとどめていたから、ストレスが極度に高まったのかもしれない。それくらいの暴れっぷりだった。
自分が再び背中に座り込むと、ピカーシャは再びてこてこ歩き出した。そして、自分が《危険察知》でモンスターを発見→突進→ストライク→追撃&狙撃といった流れを繰り返す。ゴブリンどころかオークすら手玉にとり、一時間も経つ頃には、周囲からモンスターの影は消えていた。
それでもピカーシャは止まらない。森の中をあちこち歩き回って見つけたモンスター達に容赦なく突進し、派手に吹き飛ばす。つつく、踏みつける、ブン投げる、氷魔法でぶち抜く。キリングマシーンと化した今日のピカーシャは止まらない、止められない。サーチ&デストロイという言葉が自分の頭にふよふよ浮かぶ。
ログアウト時間が迫って林から出てきたときには、モンスターがドロップした分だけで一〇万グローを超えていた。乾いた笑いしか出てこなかった。ピカーシャは満足そうにひよこ形態に戻っている。
絶対ピカーシャを怒らせないようにしよう、そう誓った。
蛇足だが、この日のことは「青い毛玉のユニークモンスター、林を駆ける!」などという見出し付きで掲示板に報じられ、大騒ぎになってしまったのだが……あえて言う理由もないので、真実は闇の中である……あーあ。

翌日。「キリングマシーン・ピカーシャ事件」でたっぷりお金が入ってしまったので、今日は狩りをお休みして料理を楽しむことにした。
本日の材料は……ドラゴンのお肉! そろそろ手を出したくなっていたし、色々と都合が良いので、ついに使用することにした。
一が武の隅っこを陣取り、アイテムボックスからドラゴンのお肉をいくつか引っ張り出して作業を開始。
まずはうすーく切って塩と胡椒こしょうだけの大雑把な味付けで試食してみる――どんな味かと不安に思っていたのだが、実際はそんなにくどくない、というか柔らかくて実に美味しい。
ドラゴン同士は死闘の末、勝った方が負けた方を食べることがあると聞いた。完全な同族じゃなければ、共食いには該当しないのかもしれない。
米は買ってあるし、調味料も醤油にみりん、お酒と揃っている。出汁も何とか作れるだろう。このお肉は、牛丼ならぬ【ドラゴン丼】にせざるを得まい。現実ではどう頑張っても食べることができないからこそ、作る価値があるというものだ。はたから見れば、貴重な素材でなんてことをするのだと思われそうであるが。
米をじゃこじゃこじゃこといでから、底が丸い釜に入れて水を張る。こうして水を吸わせる時間をしっかりとらないと、美味しいご飯は炊けない。しっかり手間をかけた下ごしらえこそが、美味しい料理に欠かせないのである。底が丸い釜を使う理由は、炊いたときに米を泳がせるためである。底が角ばっていると米の泳ぎ、つまり温度変化による対流が上手くいかず、ご飯が不味まずくなってしまうのだと、実体験によって知っている。
吸水時間を利用して出汁を作る。使うのは醤油にみりん、少々の砂糖にお酒。それから重要なのが昆布。よくうまみ調味料なんてものがあるが、アレは昆布が元であったりする。昆布である程度味をとってから各種調味料を入れ、手の甲に取り出して味を確認、調整していく。
出汁を作り終えてもまだまだ時間はあるので、ドラゴン肉でシンプルなステーキを三枚焼いてみる。ある意味非常にロマンがこもった料理だ。塩胡椒は最小限で十分、せっかくの肉の味を壊すわけにはいかない。柔らかな肉質は高級霜降り牛肉に勝るとも劣らないのだから。
焼きあがった熱々のステーキを、一枚は自分が、二枚はピカーシャが食べる。めったに食せぬ肉だけに、その味には感動すら覚えた。


【ドラゴンステーキ】
ドラゴンの肉を最小限の味付けで焼いた幻の一品。
これを食せるのはごく一部の人間に限られる……よほどの強者か、金持ちか、権力者、
もしくは幸運な者。
製作評価:6


じっくり【ドラゴンステーキ】を堪能したところで、ようやく米を入れた釜を火にかける。現実世界ではいつも炊飯器頼りで加熱の感覚に不安があるため、《料理促進》による時間短縮は控えることにした。
【ドラゴン丼】は大量に作ってアイテムボックスに保管しておくつもりなので、ご飯が炊けるまでにどんどん薄切り肉を製作する。
タマネギも大量にさくさく切る。さすがは上級セットの包丁、タマネギを切っても涙が全く出ない。というのもタマネギを切って涙が出るのは、包丁に原因があるからだ。安物の包丁はタマネギを「押し切る」ので、タマネギの刺激物質を空気中にばら撒いてしまい、それが目に入って染みるために涙を流すことになる。一方で日本刀に近いような切れ味の良い包丁はスパッと文字通り「切る」ことができるので、タマネギを押しつぶさず、涙が出ないのだ。機会があったらぜひお試しあれ。
ドラゴン肉の薄切りに軽く火を入れてから、出汁と調味料とタマネギを投入。肉とタマネギに出汁と調味料を染みこませつつ余計な水分を飛ばしていく。
両手でフライパンを持ち、気合を入れて振り続ける。しばらく炒めるとタマネギがうっすらと狐色になり、肉もいい感じに火が通った。頃合いだろう。
米の方もちょうど炊けたようで、釜の蓋をとると美しく輝くホッカホカの銀シャリがお出迎えをしてくれた。辺りに米特有の甘い香りがふわりと漂う。この香りにしばらく酔っていたいが、そうもいかない。
冷めてしまう前に急いで丼にガンガン米を入れて、その上にどっさりとドラゴン肉とタマネギを載っけていく。盛り付けた端から素早くアイテムボックスへどんどん収納。しばらくして、食べるために分けておいた二つを残してようやく全ての丼をしまい終えた。アイテムボックスには「ドラゴンどん×64」と表示されている。


【ドラゴン丼】
貴重なドラゴンの肉を丼物にしてしまったという、ある意味贅沢な、ある意味馬鹿な料理。
だがその味は卑怯なまでに病みつきになる可能性を秘めている、罪作りな一品。
これを食するあなたは何を思うのだろうか……
効果:攻撃力Atk上昇(大) 防御力Def上昇(中)
製作評価:8 


おおっと、能力が二つも上がる料理が出来た。説明文にまで馬鹿と言われてしまったが、考えたら負けだ! まだまだお肉はあるのだから気にしない! まずは食う、それから考える。
ピカーシャと自分の前に丼を一つずつ置く。ここはあえて下品に大きく口を開けて、がばっと食うのだ――ああ、天国はあった……ここにあった……なんでだろう、涙が止まらないや……幼い頃に返ったような気持ちになる……あーだこーだめんどくさい批評はいらない、ただただ美味い、美味いんだ……ふと顔を上げれば、ピカーシャもどこか遠くを見ている……
「美味いか?」
「ぴゅい♪」
その後はお互い無言で丼をかっ込んだ。肉が美味いだけじゃない。肉とタマネギのエキスに出汁が絡まり、その出汁がご飯に染み渡っている。そのご飯と共に肉を食うなんて、ああ、丼物とはなんて偉大な存在なのだろう……食べ終わるまで周りを気にせずがっつき続けた。実に満足な一日だった。
丼物には不思議な魅力があると思います。お米万歳。



【スキル一覧】
〈風震狩弓〉Lv15(←4UP) 〈蹴撃〉Lv48 〈遠視〉Lv60(←1UP) 
〈製作の指先〉Lv83(←5UP) 〈小盾〉Lv14 〈隠蔽〉Lv41 〈身体能力強化〉Lv63(←1UP)
〈義賊〉Lv37(←2UP) 〈上級鞭術〉Lv5 
〈妖精言語〉Lv99(強制習得・控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
〈木工〉Lv39 〈上級鍛冶〉Lv36 〈薬剤〉Lv43  〈上級料理〉Lv36(←21UP)
ExP21
称号:妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 ドラゴンと龍に関わった者
   妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者
プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人
同行者:青のピカーシャ(アクア)〈飛行可能〉〈騎乗可能〉〈戦闘可能〉〈魔法所持〉
    〈???の可能性〉



 4

ログインをして、今日こそはPTを探し当てようとPT募集ウィンドウを開く直前のことだった。
【おーい、アース、今大丈夫か〜?】
ウィスパーが飛んできた。声の主はツヴァイのようだ。
【ああ、大丈夫だ。何かあったのか?】
自分の返答に、ツヴァイはこう続けた。
【時間があるなら、ユニークモンスターを倒しにいこうぜ!】
ユニークモンスター。ゲームによって色々な呼び方があるが、とどのつまり固有の名前を持った特殊なモンスターのことである。エリアボスであったり、見つけるのが難しかったりなどの様々な特性があり、倒したときに落とすアイテムも特別なものであることが多い。時にはプレイヤー間で奪い合うことにもなるレアな存在だ。
【それはいいが、そいつはどこにいるんだ?】
この世界にもユニークモンスターが存在することは知っていたが、興味が湧かなかったため情報を集めていなかった。
【龍の国の一が武の近くに、林があるだろ? あそこに青い毛玉みたいなユニークモンスターが出たって情報があるんだ、探す価値はあるだろ? 見つからなくてもゴブリンやオークを倒してれば金が貯まるしさ】
――おめでとうピカーシャ……じゃない。これはどう考えても、モンスター達をぶっ飛ばしまくっていたこの前のピカーシャを、誰かが目撃したんだろうな……
【ちなみにそいつの特徴は?】
もしかしたら違うかもしれないという一縷いちるの望みをかけて聞いてみる。
【ああ、モンスターでも何でも見つけ次第倒しまくるってことと、遠距離の敵には弓を使う緑色の何かを生やして攻撃することらしい】
頭痛が痛い。慣用句的には大間違いだが、今の気持ちをあえて言葉で表すなら頭痛が痛い、だ。
間違いなく、この前の自分とピカーシャのことだな。目撃されたにしても近くからではなかったはずだから、元々はっきりした情報ではなかったのかもしれない、そこから伝言ゲーム的に話が捻じ曲がったのだろうか。
【それだけ強いならドロップも期待できるしな、来ないか?】
不毛だな〜……今お前は、そのユニークモンスターの正体に話しかけているんだよ。
【よし、行くことにしよう。集合場所を指定してくれ】
【じゃあ、一が武の入り口前で待っていてくれ】
ウィスパーが切れる。絶対に会えないんだがな、そのユニークモンスターもどきには。
「まあいい、行こうか、ピカーシャ」
「ぴゅぴゅ」

一が武前で待つこと数分、ツヴァイを先頭にギルド『ブルーカラー』の面々がやってきた。今日の面子メンツは、ツヴァイ、ミリー、レイジ、エリザ、カザミネのようだな。
「おお、アース。噂では引退したと聞いていたが」
そう言えば、レイジとこうして直接会うのは久々だったな。
「やめてはいないよ、まあ他のプレイヤーと関わりを持たない時間が長かったのは確かなんだけど」
フェアリークィーンやらグリーン・ドラゴンやら、色々とあったからなぁ。ドラゴンさんは丼になりましたが。
「そうだったのですか。今日はよろしくお願いします」
こちらはカザミネの挨拶。
「こちらこそ。それはそうと、武器を大太刀おおた ちに代えたんだね」
以前のカザミネの武器はバスタードソードだった。和風の名前からしてそうしたいんじゃないかと思っていたが、やはり変更したんだな。
「ええ、予想していたものとは異なっていましたが、やはり刀を使いたかったので」
そりゃ、実装されてよかったな。
「じゃ、早速行こうぜ。どうも俺達以外にも、噂のモンスターを狙ってるPTがずいぶんいるようだしな」
ツヴァイが音頭をとり、PTに入れてもらった後、林へと向かう。その途中、金髪縦ロールことエリザに声をかけられる。
「貴方の頭に止まっている、その青いひよこみたいな子は一体何なのでしょうか?」
レイジやカザミネも「そう言えば……」と目を向けてきた。
「ああ、言っていなかったか。同行者として一緒にいてくれている妖精だよ。契約妖精じゃないから能力を見ることはできないし、命令もできない。お願いはできるけどね」
自分の答えに、ふーん……と、三者三様にピカーシャを眺めている。当のピカーシャはスヤスヤとお昼寝モードのようだ。
「寝てないか?」
レイジがボソッと聞いてくるが「いざってときはちゃんとするから大丈夫だよ」と言っておく。レイジの相棒である土属性のハリネズミは、なんとなくそわそわとしているようだ。いや、レイジのハリネズミだけでなく、PTメンバーの妖精達みんながそわそわしている。これは、お偉いさんがお忍びで視察に来たことに気が付いてしまった一般社員の心情に近いだろうか?
「ミリー、そんな険しい表情をしているのは珍しいけど、どうかした?」
普段はのほほんとしているミリーが、妙な顔でこっちを見ている。
「え〜? 険しい表情なんてしていませんよ〜?」
そう言って普段の調子に戻るが、だからこそ先ほどの表情が気にかかる。何か重大な問題を見つけたのだろうか……? それとも自分の装備を見られたか?
引っかかる部分はあるものの、雑談をしながら歩く間に、目的地の林に到達。久々に会ったメンバーもいることだし、色々と見せてもらうチャンスかな。

「見つからんなぁ……もう誰かに狩られたのか?」
しばらく散策した後、ツヴァイがいかにも残念そうに呟いた。まあ絶対に見つからんのだがなぁ。本当は、ユニークモンスターの正体と、今まさに一緒にいるんだよ? 体のサイズが大幅に違うだけで……
ちなみに狩りの方は、ここまでにゴブリンPTを三つ、オークのPTを二つ潰している。レイジが挑発系アーツで注意を引き、レイジに群がったモンスターをツヴァイが叩き潰し、カザミネが斬り払う。ミリーは支援を中心に動き、エリザは魔法による高火力遠距離攻撃を担当。そしてモンスターの魔法使いなどを自分が打ち抜いて、できる限り詠唱させずに倒している。
「狩り場としてはおいしいですから、見つからなくても特に問題はないですけどね」
カザミネの言うように、実際、ドロップしたグローを六等分しても十分な収入になるだろう。他にも、ゴブリン達が使っていたと思われる武器や防具がドロップしていて、これらを売ればそれなりの資金になる……いや、金属部分はインゴットに戻すという手段もあるな。鉄が不足している現状なら、そうした方が良いかもしれない。もしかすると面白い結果になるぞ。
「に、してもだ。アース、その弓は何なのだ? この辺のモンスターをあっさり倒すなんて少々異常だぞ? 魔法使いであっても、オーク達はそれなりに体力はあるはずなのだが……」
レイジが首をかしげている。無理もない、まだ出回っていないドラゴン素材で作られたこの【ドラゴン・ボウ】は非常に攻撃力が高い。しばらくしたらもう少し手を入れるつもりなので、更に能力が伸びる可能性もある。
「しばらく見ないうちに大幅に装備が変わっていますね〜、その緑の外套もそうですけど〜」
ミリーも遠慮なく見てくる。まあ以前会ったときから、色々と変わりすぎているからな……
「やれやれ……弓は偶然取れた新しい素材を使っているからな、試作品でもある。外套は妖精国で売っていたのを買っただけだよ、レンジャーっぽく見えるかなと思ってね」
装備に関する質問は適当に流しておこう。うかつに喋るとボロが出そうだ。
「だからあまり人前に姿を見せなかったということですか……」
カザミネはある程度納得したようだ。
「私のこの大太刀もいろんな材料を集めて作ってもらいましたが、作り方などは秘密ですしね。生産もやっているアースさんには、色々あるのでしょう」
カザミネの説明を受けて、レイジも「そう言えば以前レシピについて教えてもらったな……」と思い出しているようだ。
「おしゃべりは一旦中止、オークの団体さんがいるぞ。数は八だな」
《危険察知》によるサーチにモンスターが引っかかったので注意を促す。さすがに素早く切り替えて戦闘態勢に入る『ブルーカラー』のメンバー達。
「今回も狙撃して向こうの戦力を軽く削りつつ、こちらにおびき寄せる。その後はレイジ、頼む」
レイジが頷く。任せておけという態度が頼もしい。
「始めるぞ、構えてくれ」
そうみんなに告げて、弓を構える。まずは《ホークショット》による狙撃で不意打ち。最初のターゲットは自分と同じ弓使いのオークアーチャーだ。狙いをつけて弓を引く、この一瞬の緊張感が最近は妙に楽しい。狙いは頭……タイミングは……今。
勢い良く放たれた矢は、アーツの恩恵もあって長距離を難なく飛んで行き――狙い通りにオークアーチャーの頭をぶち抜いた。相手はそのまま倒れこんでちりになる。
「狙撃成功、来るぞ!」
こちらに近づくまでに、ある程度数を削っておきたい。次の狙いは魔法使いだ。レイジをはじめタンカーはどうしても金属防具が多くなりがちなので、雷系統の魔法を受けると危険だからだ。
走ってくるオーク達の、ぶれがちな頭ではなく胴体を狙って《アローツイスター》を放つ。当たらなければどんな攻撃だって無意味なのだ。
元々オーク達は八人PTだったが、レイジ達前衛と戦い始めたときには、こちらと同じ六人にまで数を減らしていた。
「相変わらずふざけた弓の腕前ですね、ですが頼もしいですわ!」
エリザがそう言いつつ、魔法の氷柱つららをオーク達に浴びせる。アレは痛そうだな。氷柱は容赦なくオーク達の体を貫いていった。この攻撃力こそが魔法使いの真骨頂だ。耐久力が削られる分、瞬間火力はやはり魔法使いがトップだな。おまけとばかりに、エリザの妖精であるタツノオトシゴが水を細く打ち出してウォーターカッターのように攻撃する。
レイジにはばまれ、エリザに貫かれて弱ったオーク達を、ツヴァイとカザミネが妖精とのコンビネーションで確実に仕留めていき、今回の戦闘も問題なく完了した。
「うーん、なあアース、やっぱりうちのギルドに来ないか? その弓の腕はぜひ欲しいんだよなぁ」
ツヴァイが再び勧誘してくる。気持ちは分からんでもないがなぁ。
「新しく入ってきた人達も頑張ってはおりますが、ここまでの弓の腕をお持ちの人はまだいらっしゃいませんからね……」
エリザも歯切れが悪そうに言う。
「悪いね」
こちらはこう言うしかない。今や自分は持っているものが物騒すぎて、以前とは別の意味でギルドに参加できない状況になっている。手持ちのドラゴン素材、特に硬いあのクリスタルみたいな素材で大剣なんて作ったら、でたらめに目立ってしまうだろう。作った武器にどんな特殊能力が付与されるかも未知数だ。
「そろそろ一時間半ですね〜。戻りましょうか〜」
残念そうにミリーが告げてくる。自分も時計を確認してみると、確かに一時間半が経過していた。自分はそろそろログアウトしなければならない。
「目的のモンスターが見つからなかったのは残念だったが、資金的には大きくプラスだったから、まあ良しだな! 引き上げよう」
今回PTリーダーを担当していたツヴァイに従い、みんなで一が武に帰還した。
心の中でこっそり、無駄足と知りつつ放っておいたことを謝っておく。体の大きさが変化するのは反則ですよね、見つかりっこないわ。



【スキル一覧】
〈風震狩弓〉Lv17(←2UP) 〈蹴撃〉Lv48 〈遠視〉Lv63(←3UP) 〈製作の指先〉Lv83
〈小盾〉Lv14 〈隠蔽〉Lv41 〈身体能力強化〉Lv64(←1UP) 〈義賊〉Lv40(←3UP) 
〈上級鞭術〉Lv5 〈妖精言語〉Lv99(強制習得・控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
〈木工〉Lv39 〈上級鍛冶〉Lv36 〈薬剤〉Lv43  〈上級料理〉Lv36
ExP21
称号:妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 ドラゴンと龍に関わった者 
   妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者
プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人
同行者:青のピカーシャ(アクア)〈飛行可能〉〈騎乗可能〉〈戦闘可能〉〈魔法所持〉
    〈???の可能性〉


 5

不毛な探索を終えた翌日。ログインしたらなんだか体が妙に重い。
(ログイン用のヘルメットに何か不具合でも発生したか?)
そう思いながら目を開けると……目の前は青一色だった。
「え?」
「ぴゅい♪」
そこには、ほどほどに体を縮めたと思われるピカーシャが。大きさは……二・五メートルぐらいだろうか? 三メートルはないな。そのピカーシャが布団の中に潜り込んでいたために、視界が青一色だったというわけだ。
「――もしかして、体の大きさを自由に操れるようになったのか?」
「ぴゅい♪」
そうだ、と言わんばかりに元気よく応えるピカーシャ。生物として色々間違った方向に進んでいないか……? そのうち擬人化とかしそうで怖いんだが。
「分かった、でもあんまり人前で派手にやらないようにね……いつかのように取り囲まれて、いろんな場所を撫で回される可能性が高いからね……」
特に女性にな……モフモフのあの体を触ってみたいという「ピカーシャ愛好の会」なる団体が密かに存在していることを自分は知っている。
「ぴ、ぴゅい!」
気のせいか、ピカーシャも冷や汗を流しているように見える。見られるのはいいとしても、あちこち遠慮なくモフモフされるのは辛いだろうからな。不特定多数が相手ならなおさらだろう。
「それはそれとして……今日はどうするかな」
正直やることがちょっと見つからない。戦闘は昨日思いっきりやったから今日はやるつもりはないし、鍛冶はまだちょっと時間をおきたい。料理は【ドラゴン丼】がもう少し減ってからにしたい。残りは木工か。
「ピカーシャ、その大きさのままで背中に乗せてくれ。昨日の林の木質を調べに行きたい」

(うーむ、これもダメ、さっきの木も話にならん……)
使えそうな木を探して、ピカーシャに乗ったまま林を散策しているのだが、どれも第二の街ネクシア近辺の木に比べると大幅に質が落ちる。
(あっちも伐採が過剰になっていて、まともに取れないんだよな……お陰で木工系統の品物全般が値上がり傾向にある……どういうわけかノンプレイヤーキャラNPCのお店も弓や盾の値段が上がっているし……)
盾が値上がりした理由は、盾の裏地の大半が木材だから。自分の盾のように特定の素材オンリーで作られた盾というものは非常に少ない。表面には鉄系統を使い、裏地を木にすることで重量を軽減するのが基本なのである。ちなみに、とある鍛冶屋が遊びでライトメタルオンリーからなるラージシールドを作ったら、腕力自慢な本職のタンカーにすら「これは重すぎる!」と怒鳴られていた。
(せいぜい使えて矢の素材といったところか……手持ちの矢も少なくなってきているから、一本切り倒しておくか……)
しばらく時間を掛けて調べたが、これといって良い木は見つからなかった。ちなみにモンスターはこっちをひたすら避けているので、戦闘は発生していない。ピカーシャ事件のトラウマはまだ解除されていないようだ。
帰り際にピカーシャから降りて一本だけ木を切り倒し、その場で細工する。材質にあまり左右されない【木の矢】くらいしか使い道がないのがなんだかな……しかも非常に加工しにくい。将来もし家を建てるシステムが実装されたとしても、この近辺の木は全く使い物にならないだろう。
そこで、ふと思った。街の木造建築に使われている木はドコから調達したのだろう?
「聞いてみるか……ピカーシャ、一が武に戻ろうか」
「ぴゅい♪」

「冒険者がそんなことを気にするなんて初めてだよ」
街に帰って、泊まっている宿の女将おかみさんに聞いてみたところ、そう笑われてしまった。
「どうしても気になってしまったもので。自分が木工細工をかじっているからでもあります」
この質問に、女将さんは丁寧に教えてくれた。なんでも高品質な木材は四が武近辺で取れるらしく、この国の家屋に使われている最高級木材は全て四が武産なんだそうだ。逆にこの近辺の木はほったらかしにされるぐらい質が低いということか。
「そうそう、とても大事なことだから教えておくけどね、四が武の木材は国の保護がかかっているよ。外の国の人はもちろん、あたし達だって勝手に切り倒すのは犯罪だからね、馬鹿なことは考えないでおくれな」
女将さんからはそう釘を刺された。そりゃそうだな、実際、保護されてないネクシア近辺の木はとことん切り出されていて見る影もない。
「ありがとうございます、犯罪者にならずに済みました」
頭を下げてお礼を言う。国の保護指定を受けている物に手を出したくはない。しかし、そうなると良質の木材を入手するのが厳しくなってきたな……
「その他の場所で、いい木材はありませんかね?」
一応女将さんに聞いてみる。
「さあねえ……あたしゃそこまで詳しくないからね。ただ、手に入れるのはとても難しいと思うよ。周りを見れば分かるように、この国は木をよく使うからね。四が武に限らず、他の街でも木材が取れる場所は大抵誰かが押さえていると思うよ。例外はここ一が武と二が武ぐらいだね。この二つの街の近辺にある木は、国全体の中で最低だからね」
ああ、やっぱりここの木材は質が悪かったのか。調べる手間はなくなったけれど、がっかりでもある。せいぜい【木の矢】の材料にするのが関の山か。
「そうですか、やはり難しいですね……」
ついがりがりと頭をかいてしまい、頭に乗っていたひよこピカーシャが「ぴゅぴゅ!?」と驚いている。
「まあ、売ってもらうことは可能かもしれないけれど、相当高いだろうね。四が武の最高級木材で家を建てることは龍族にとっても最高の贅沢の一つだからねぇ。余計な話かもしれないけど、うちの宿は五が武製の木材だよ。これだってかなりの高級品だからね?」
女将さんの話を聞くほどに、しかめっつらにならざるを得ないな。木工職人としては当分厳しい状況が続くと宣言されたようなものだ。ネクシア近辺の木材の回転率を運営が上げてくれることに期待するしかないな。生産素材をいちいち買っていたら破産してしまうよ。

「お、起きてきたんだね。あんたにお客が来ているよ」
翌日、宿の個室から出てきた自分を、女将さんが食堂のテーブルに案内した。そこでは、おじいさんが一人でのんびりとお茶を飲んでいた。
「ヒサメさん、冒険者の弓使いを連れてきたよ。あとはヒサメさんから話しておくれ」
そう言い残して女将さんはカウンターに戻っていく。多忙だろうし、仕事に戻ったのか。
「突然申し訳ございません、わしはヒサメと申すじじいでございます。一つ、冒険者様にお頼みしたいことがありまして、女将に繋ぎを頼んだ次第でございます」
そう言って、白髪頭の龍人は頭を下げてくる。
「ご丁寧にどうも。私はアースと申します。いろんなものに手を出しながらのんびりと渡り歩く……とりあえずは弓使い、としておきます」
我ながら歯切れが悪いことこの上ないが、自分は何者かと上手く表現できなかったのだ。弓使いであり、鞭やら蹴りやらに手を出し、更に鍛冶、料理、薬、木工など色々な生産にも手を出している自分は、一体何なのだろうと。器用貧乏なんてジョブはない。
「なんだか、含むところがおありのようですな……依頼したいことですが、我々が『イボイノシシ』と呼ぶ、目の上にイボのようなものがあるイノシシがおりましてな。そやつの肉がとても美味いのです。ですがその肉を手に入れるのはなかなかほねでして。冒険者様に何とか手に入れていただければと思いましてのう」
む、新しい食材か……これは興味が出てきたぞ。
「何のためにお使いになるのか、聞いてもよろしいですか?」
ヒサメと名乗ったおじいさんはゆっくりと頷く。
「実は、数日後に孫が誕生日を迎えますので、そのお祝いの席に出したいと考えております。じっくり煮込んで灰汁あくを取ると、実に美味しい肉に化けるのですよ。一年に一度の贅沢をさせてやりたいのです」
そういうことなら、何とかしてやらなくてはならんか。が、これだけは聞いておこう。
「最後にもう一つ、なぜ私を指名されたのですか?」
「イボイノシシはなぜか剣も槍も斧もいまいち効果を上げることができぬのです。唯一効果的なのは弓でしてな。しかしわしら龍人には弓使いはかなり少なく、なかなか手に入らぬ理由の一つがそこでありまして……の」
その後、ヒサメさんからイボイノシシが見つかりやすいという場所を聞き、そこに出向いた。
一が武の林から南に向かうと開けた土地がある。この開けた土地の土の中に、野菜のような食材が多数埋まっているらしく、それをイボイノシシがよく食べに来るらしいとのことだった。
《危険察知》と〈遠視〉で辺りを調査してみるが、近くにそれらしいものはいないようだ。ちなみにイボイノシシだけではなく普通のイノシシも出没するらしいが、そちらの肉は必要ない、と念を押されている。
(とりあえず、〈遠視〉で確認しながら歩くしかないか……)
これは、長期戦になるかもしれないな。

そして三〇分後……
(確定だ、イボイノシシはレアモンスターだ……)
めったに湧くことがないモンスターをレアモンスターと呼ぶ。そういった存在はいいアイテムをドロップすることが多いが、レアモンスターの種類によっては最悪一回も見ることなくゲームを終えることすらある。今回はそのレベルは勘弁して欲しい。
更に一五分後。うろついているイノシシの中に、毛並みがちょっと違うイノシシを発見した。〈遠視〉でしっかり確認すると……目の上にいくつものイボがある。やっと見つけた……これがイボイノシシなのだろう。そのイノシシは地面に開けた穴に時折顔を突っ込んでいる。あそこに何か食べられるものがあるのか。
さて、これから狩るわけだが、いくつか問題がある。
まず一つ、イボイノシシの強さが分からない。レアモンスターにも色々いて、攻撃を当てると一目散に逃げ出す、怒って反撃してくる、特殊能力を駆使してくる、などの多様なパターンがある。今回はどうなのか。
それからもう一つ、周りのイノシシと連携リンクして襲ってこないか、という点だ。周りには普通のイノシシが五匹ほど歩き回っていて、その姿はどうもイボイノシシの護衛のように見える。さすがにその数で一気に襲って来られると厳しい。イボイノシシが逃げ出して護衛の五匹が向かってきたりしたら目も当てられない……
「ならば挟み撃ちか。ピカーシャ、向こう側に着いた後、タイミングを計って本来の姿に戻ってくれ。そこにいる六匹のイノシシが逃げ出した場合、逃がさないように足止めをしてほしい。自分がその隙にイボイノシシを討ち取るから」
「ぴゅぴゅ」
ピカーシャはふわふわっと飛んでいき、イノシシ達の向こう側に到着した。これで一応は挟み撃ちの形になる。自分は以前買っておいた手榴弾しゅりゅうだんもどきを懐から取り出しつつ、イノシシの団体さんにゆっくりと近寄っていく。
そして自分の投擲とうてきイメージと重なる場所まで前進した後、ピンを抜いてブン投げた手榴弾もどきがイボイノシシ近辺に落下して――爆発した。
ゴガァン!
ふむ、自分の作った【強化オイル】と違って、爆発による瞬間的な殺傷能力が重視されているようだ。これで先手は打てたから、あとはイボイノシシが逃げないうちに討ち取るだけ。
「ぴゅいー!」
イボイノシシだけではなく、護衛と思われた五匹のイノシシ達も一直線に向こうへ逃げ出した。まさか護衛まで一緒になって逃げ出すとは思わなかったが、その先にいたピカーシャが本来の姿に戻り、自分のお願い通り、イボイノシシを含む合計六匹を足止めしてくれた。イノシシ達は突然立ちはだかったピカーシャを前に、とっさにひと塊になって防御態勢を取ったようだ。
(固まったか、ならば遠慮なくいただく)
手榴弾もどきを投擲するには距離があるので、弓を引いて《ソニックハウンドアロー》を放つ。これは〈風震狩弓〉に進化したときに手に入れたアーツで、矢にまとわせた特殊な空気の振動によるダメージが追加される。仮に矢自体がガードされても、振動ダメージは与えられるというなかなかに優れた特性だ。また空気を振動させるので、ある程度の範囲攻撃にもなっている。一か所に固まった今のイノシシ達にはおあつらえ向きだろう……護衛のイノシシが二匹ほど、振動の衝撃でひっくり返った。
「これでどうだ!」
護衛イノシシの一部がひっくり返ったことで、イボイノシシを守る防壁に隙間ができた。その隙間からイボイノシシに狙いを定め、矢を二本同時につがえて放った。
二本の矢はイボイノシシに見事命中。プギー! とブタのような鳴き声をあげさせた……イノシシの鳴き声はこんなだっただろうか。
この攻撃であっさりイボイノシシは倒れ、念願のイボイノシシの肉が手に入った。
「ピカーシャ、残りは一気に倒しちゃっていいぞ!」
「ぴゅいー♪」
自分の声が掛かるや否や、ピカーシャは鋭いくちばしによる突き攻撃を繰り出す。イボイノシシを討ち取られて混乱していたイノシシ達は、あっと言う間にその後を追った。
ピカーシャがいなかったら、絶対に逃げ切られていたな。本来はPTで挑むべき相手だったんだろう、足止め役と討伐役の二手に分かれて……ま、いいか。
「お疲れさん、助かった」
「ぴゅいぴゅい」
ほおずりをしてくるピカーシャ。モフモフで柔らかくてあったかい。この感覚は病みつきになりそうだ。
帰りはピカーシャに乗って、街の近くまで送ってもらった。やはり空を飛ぶというのは、仮想空間であろうと格別だな。

「なんと、もう仕留められたのですか!?」
狩りの成果を報告すると、ヒサメおじいさんがびっくりしている。
「冒険者様を送り出した後、イボイノシシはすぐに逃げる特性があるというのを伝え忘れたと後悔しておりましたが……まさか仕留めてこられるとは……」
彼の目の前には、イボイノシシの肉が置いてある。
「確かにイボイノシシの肉ですな……お見事でございます。こちらは報酬の一万グローと、迷惑料として二〇〇〇グローを追加させていただきます。いや、これならばイボイノシシの肉を仕込む時間が十分に取れます」
ホクホク顔で引き上げていくヒサメおじいさん。ま、苦労に見合う報酬になったかな……?
「しかし、あっさりと狩ってきたね。イボイノシシ狩りは数人でやるのが基本なのに、よくもまあ一人でやれたものだ」
女将さんはそう言うが……
「いや、一人じゃないですよ。頼りになる相棒がいますからね」
そう言ってひよこ形態のピカーシャを撫でる。
「そうかい。ま、そういう相棒がいるのはいいことだよ。人は一人じゃ生きられないんだからね」
うんうんと頷きつつ、仕事に戻っていく女将さん。自分も今日はこれでログアウトかな。



【スキル一覧】
〈風震狩弓〉Lv17 〈蹴撃〉Lv48 〈遠視〉Lv64(←1UP) 〈製作の指先〉Lv83 〈小盾〉Lv14
〈隠蔽〉Lv41 〈身体能力強化〉Lv64 〈義賊〉Lv40 〈上級鞭術〉Lv5 
〈妖精言語〉Lv99(強制習得・控えスキルへの移動不可能)
控えスキル
〈木工〉Lv42(←3UP) 〈上級鍛冶〉Lv36 〈薬剤〉Lv43  〈上級料理〉Lv36
ExP21
称号:妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 ドラゴンと龍に関わった者
   妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者
プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人
同行者:青のピカーシャ(アクア)〈飛行可能〉〈騎乗可能〉〈戦闘可能〉〈魔法所持〉
    〈???の可能性〉
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