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連載

アースとクィーンと魔王様によるグダグダ会話

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「さて、遊ぶのはこれぐらいにしておこうか。このまま続けてはアース殿が頭痛と腹痛を同時に発症してしまいかねん」

 この魔王様、遊びと言い切った! 良し決めた、今決めた、後で何らかのお返しをする。苦笑いが出る様なお返しを。だが、それにはユーモアにあふれていないといけない。まあいい、思いつかなかったら思いつかなったで別に問題は無い。あくまでこういうのは遊びの範疇でなければいけない。遊びに遊び以外で応えるのは、無粋と言う物だろう。

「うう、セットした髪がまたばらばらに……」

 その一方で、自分がハリセンでひっぱたいたクィーンは髪の毛を取り出した大きなくしでセットし直してた。小道具を複数持ち歩いていてもすぐに取り出して使えると言うのは、アイテムボックスがあるからできる事だよね。

「まあ、アース殿に魔王領で活躍してほしいと言うのは本心だが、縛り付けるつもりはないから安心してほしい。(という事にしておきましょう)。さて、クィーン殿も落ち着きを取り戻されたようですし……せっかくですし、ここで先日のアース殿の活躍に応じた報酬を金銭以外にも渡しておきたい所だが……普通の装備や、魔剣の類は貴殿には無意味に近いのが困った物だ」

 なんか嫌な言葉が聞こえた気もしたんだが──今は流そう。ツッコミを入れたらまたクィーンが壊れるかもしれない。国家元首の実情がこれって知っているのは嫌な話だ……世の中には知らなくていい事もたくさんあるとは良く言われる言葉だが、実に痛感する。その言葉通りであったと。それを実感しているのがワンモアの世界であると言うのがまた、ね。

「そこで、少々癖のあるものを用意させていただいた。これらの指輪だ。これらの指輪の中から一つ差し上げよう。もちろん指輪の効果は説明させていただく。先に言っておくと、どれをとっても製作に時間がかかっている一点物だ。同じものは世界に二つとないだろう、少なくともあと数百年の間は」

 癖のある物、ときましたか。魔王様の口ぶりからして、そうそう作り出せない物なんだろうが……どんな能力を指輪に封じているのやら。

「まず、使い魔系は外させて頂いた。すでに左手の薬指にそれ相応の力を持つ存在がいるようだからな」

 ルエットの事だろうな、と自分は頷くにとどめたのだが……ここでクィーンが過敏に反応した。

「使い魔、ですって!? ちょ、ちょっとアース様、指輪を近くで拝見させてください!」

 その鬼気迫る迫力に負け、「あ、ああ」なんて言葉を漏らしながらクィーンの目の前に指輪を持っていく。クィーンが指輪を両手の親指と薬指でがっしりとホールドし、じぃーっと半眼ジト目でしばらくの間観察すると……クワッという擬音が似合いそうなほどに目を大きく開けた。

「おのれ、こんな所にも泥棒猫、じゃなかった泥棒狐がっ! なんで私の分身体が、完全に私とは違う己の意思を宿してるのですか!? しかも戦い方まで私とは違って魔法剣士系統に変化してますし! 報告にはここまでのレベルになっているなんてありませんよっ!?」

 とワンブレスでまくし立てた後、何故か頭の上に居るアクアを睨みつけている。──しかしちょっと待て、その発言が意味するところは、まさか。

「ちょーっとクィーンさん? 是非聞きたい事が出来たので、後ほど時間を頂けますよね? 念押ししておきますけど、拒否権はもちろんありませんからね? それからアクアもだ。分かっているよね?」

 こいつ、アクアを使って自分の行動とかを今まで監視してやがったのか! これは後でお仕置きが必要だ。クィーンとアクアの両者にな。今回はバックドロップ一回で済ますとか、ハリセンで叩くとか、そう言ったレベルでは済ませられん。──そうなると、だ。

「魔王様、この指輪の中でこういったアホ女王のお仕置きに向いている物ってありませんか?」

 そう、どうせ癖のある物ばっかりだと言うなら、手加減次第でそう言った方向にも使える物が欲しい。冗談抜きにこちらを無許可で監視してるとかトンデモ行為してくれたクィーンには、ペナルティを与えておかなければな。そんな自分の言葉に魔王様はくつくつと笑いながら……

「はっ、はははっ、腹が、腹が苦しい。そ、そうだな。この辺りはどうだ。体術技術のない者にも使えるようにした指輪なのだが、製作者が関節技と呼ばれるものに傾倒した結果、関節技に関する能力のみしか上がらない指輪だ。普通体術ならば、突き、蹴り、投げ、関節全てを底上げするべきなのに、関節技にのみ特化したため使う者が現れずに死蔵されていたものだ。その代わり関節技に限っては体術の上位者と何ら変わらぬ力を発揮する」


 技能の指輪 関節系特化

 技能を収めていない人間にも、特定の技能を使えるようにする指輪。ただし、使えるようになるだけで成長も習得もできない。技能を習得して成長したいのであれば、この指輪を外して地道な研さんを積まなければいけない。


 ほほう、関節技と来ましたか。それは面白いな。でもまあ、プロレスとかならともかくモンスターに関節技なんか普通かけないよなぁ。実際ブルーカラーメンバー内の格闘家であるロナも、突きや蹴り、投げ技は使うが関節技って滅多に使わない。関節を決めてじわじわ削るよりも、急所を突いたり蹴ったり投げで首の骨を折ったりした方が早いからねえ。しかし、お仕置きとして使いならば話は別だ。ほどよい痛みをじっくりと相手に与える事が出来る関節技は実に便利。加減の具合で痛みも調整できるし。

「面白い指輪ですね。是非頂きたい。最初の実験体として使いやすい存在は横に一人と一匹が居ますから。こら逃げんな」

 回れ右をしてこの場から立ち去ろうとしたクィーンとアクアをがっしりと掴む。お仕置きしなきゃいけないんだから逃がす訳ないでしょうが。右手でクィーンの頭を、左手でちび化しているアクアの体を捕まえている状態である。

「あ、アース様、どうかご慈悲を!」「ぴゅぴゅぴゅ!」

 二人とも面白い事を言ってくるが……答えは一つ。

「うん。有罪(ギルティ)だからダメ」

 百歩譲って、一緒にいるからアクアがこちらのプライベート云々を見ているのはいいよ? でも、その内容をクィーンに報告してるとか許されないでしょう。いや、周りが許しても自分は許さない。ちょうど面白い道具も手に入った事だし、今日はこの後魔王様の前を辞したら、ログアウトまで一人と一匹にお仕置きタイムだな。円花も協力よろしくな、片っぽのお仕置きタイム中にもう片っぽが逃げ出さないようにしておかないと。

(あーあー、まさかとは思ったけど、本当にアース様のプライベートなんかをアクアは報告してたんですね。さすがにこれはクィーンの分身体である私から見ても有罪としか言いようがないですね)

 と、ルエットも思念を自分に飛ばしてきた。そうだよな、こんなプライベートをホイホイ報告されてはたまった物ではない。アクアともこの辺でお別れするしかないのかね?

「そ、そこを何とか!」「あーははははっ、おかしい、おかしすぎる! 冷徹な妖精女王という噂もあるフェアリークィーンがこんな、あははあはは!」

 自分に対して何とかお許しを、という懇願の言葉を紡ぎ続けるクィーンと、何がツボにはまったのか、笑い転げてる魔王様。なんだか混沌としてきたが、そろそろ失礼したい。

「では魔王様、本日はこれで失礼してよろしいでしょうか? 早速この指輪の効果を確かめたいので」

 自分が言うと魔王様は笑いを抑えて立ち上がり、自分に近寄って来て右手の親指と人差し指で持っていた指輪をそっと摘まみ上げ、自分の右手の薬指にそっとはめた。って、また薬指!? えーっと、確か左手の薬指だけでなく、右手の薬指にも指輪をはめるってのは意味が確かあったはず。えーっと確か……彼氏がいるって意味だったような……って、これ女性の話じゃないですか! 他にも意味があるはずだが、左右の薬指に指輪をしてるってのは、かなりアレな見方をされる事になるのでは? もちろん普段は防具の下に隠れるから見えないとはいえ、ちょっとこれは遠慮したい。そう思って指輪を外そうとするが……

「クィーンの真似をさせてもらった。うむ、もう貴殿の指からそれは抜けぬぞ」

 との魔王様からの一言。魔王様、そんな事に強力な魔力を用いないでください。

「ぐう──百歩譲って抜けなくなったのは良いとします。で、まさかこの指輪も使い魔が生まれる様な変質したりしませんよね?」

 ルエットがもう一人増えるとか嫌だよ? もし増えたら、クィーンが二人になって常時念話で喧嘩する事になりそうでひどく疲れる事になる。そうなったら冒険どころじゃない。

「どう頑張ってもその指輪には使い魔が生まれるだけの余剰魔力は無いからな。だから変質という形で使い魔、もしくはそれに準ずる存在が生まれる可能性はゼロだな。神が下りれば別だが……そもそも神という存在自体が居るかどうかわからん。もし万が一に降りてきた時には、ぜひ見せてもらいたいぐらいだな」

 どうやら、まずそんな事にはならずに済みそうだな。抜けなくされたのはちょっとアレだが、まあ使い道のある指輪が手に入ったのだから良しとしよう。この後、魔王様の前から辞してクィーンとをアクアを自分に割り当てられた個室に引っ張ってきた自分は、各種関節技をクィーンとアクアに掛けてお仕置きしたのであった。いや、人型だけでなくあらゆる存在に対する間接の極め方が出来る様な技能だったから、鳥であるアクアにも関節技を仕掛けられたんだけどね。まったく、何てこんなあほな事をやらかしたんだか……今回のお仕置きで懲りてくれればいいんだがな。
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