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街に戻って、行動開始

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「よう、アース。随分と魔王城に逗留していたようだが体の方は治ったのか?」

 数日ぶりにレイジを始めとしたブルーカラーのメンバーと再開し、まずは軽い挨拶を行う。

「やっと、だけどね。今回も色々な無茶をやったせいで付与された各種バッドステータスがひどかったから、回復するまでにかなり時間がかかってしまったよ……何せ回復魔法とか効かないから自然治癒するまで我慢するしかないからね」

 この自分の台詞に反応したのがロナだった。

「それにしても随分と時間がかかったね? いくら何でもバッドステータスがそこまで長引くと言うのはちょっと滅茶苦茶なんじゃないの?」

 ロナの言い分も納得はできる。普通のゲームであれば、数日掛けてやっと回復するバッドステータスと言う物はめったにない。戦争があるゲームでは、たまに敗北ペナルティと言う物があって、二日間ぐらいステータスの最大値から一割から二割ぐらい引かれるなんて物はあったような気もするが……これもちょっと珍しい例だろう。

「今回はそれだけ無茶をしたって事だから……特に戦闘終了後のアレがね」

 今回の主な原因は黄龍玉の四連続使用だからなぁ。命を救うためとはいえ、かなりの無茶をしたわけで……あの四人に変な後遺症が出てないといいなぁ。例えば髪の毛が突如金髪に変わっちゃうとか。

「変身関連は予想外の能力を持つこともありますからね。一般的なワーウルフ変身でも、プレイヤー次第で色々と変化していくみたいですからね。なかには回復を得意とするワーウルフへと変化したなんて言う人もいると噂では聞いています。ワンモアは今までの常識が本当に通用しない世界です」

 これはカザミネ。そうか、ワーウルフ一つとってもそんな風に変化というか進化していくって事か。それを繰り返せば、プレイヤー一人一人の持つ変身がオンリーワンになって行く可能性もありそうだな。

「それでも、あんな頭おかしいレベルの変身を二つも持っているアース君はやっぱり変よね」

 ノーラ、それは無いんじゃないか? と言っても反論もしにくいなぁ。確かに頭おかしいレベルのブッとんだ性能を持っている変身というのは事実だから。と、そう言えば……

「ところで話が変わるんだが、ツヴァイとミリー、エリザの姿が見えなないけど、あの三人はどうしたんだ?」

 ブルーカラーのメンバーで、その三人がこの場に居ない。まさか痴情の縺れとかが発生したか? いやいや、それは無いよな?

「あ、その三人は他のギルメンとダンジョンに潜ってるよ。最近ギルメンの一部が魔王領のダンジョンでもやっていけるレベルになったから、しばらくの間そっちの面倒を見る事になってるの。メンバー全体の底上げはしっかりやっていかないと、何時まで経っても進歩出来ないから」

 と、ロナが教えてくれた。それならば良いのだが。さてと、そろそろ自分も行動を開始するか。

「あーそうだ。レイジ、今はもうこれと言って自分の手を借りたいクエストとかは無いんだな?」

 レイジに確認を取ると、レイジはゆっくりと頷く。まあこの前の様なデカいクエストがそうそう転がっている訳も無いか。ならばこっちがソロに戻っても問題ないな。

「分かった、それじゃ傭兵契約も一旦終わりって事で良いかな? 炭の一件でごたついてた連中の魔王領から追放されたって事だし、もうソロで居ても問題は無いだろうし」

 ダンジョンの素材は気になるが、ここのところ戦ってばかりだったからちょっとこの辺で方向性を変えたくなった。特に魔王領の街は各種商店と宿屋と言った重要な行動拠点のみしかチェックしてない。それだけで街を見終わったとするのはさすがにもったいないだろう。久しぶりに街をゆっくりと見回ってみたい。

「そうか、アースがそう言うのであればこちらは構わない。だが、何かあったらすぐ呼んでくれよ? 遠慮なんかしないでくれ」

 レイジの言葉に頷き、握手を交わす。

「アースさんはこれからどうするのです? 参考までに聞いておきたいのですが」

 とカザミネから質問が飛んできたので、久しぶりに街をのんびり見て回ると素直に教えておく。カザミネも「それなら確かにソロの方が気楽ですね」と納得してくれた。もちろん知り合いと会話を交わしながら散策をするのも楽しい物だが、今は一人でのんびりと街を見て回りたい気分なのだ。

「じゃ、またね。何かあったらすぐ呼んでよ!」

 とノーラの言葉を最後にブルーカラーのメンバーとは別れた。さてと、戦闘はしばらくお休みしてのんびりしよう。その理由だが、バッドステータスこそステータス上からは消えた物の、黄龍玉四連続使用の影響は、きっとわかりずらい部分に眠っているんじゃないかと自分は見ている。その分かりずらい部分にある影響が、戦闘中に鎌首をもたげて自分に襲い掛かってきたら目も当てられない。ワンモアだからなぁ、そう言った事を平然とやって来る可能性は十分に考慮しないと。

 そうして街をのんびりと歩くこと数十分。人通りはそこそこ多く、道の左右にあるお店からの呼び込みの声も絶える事は無い。適当に買い食いをしながら街を見て回る。そんな風に散策を楽しんでいたんだが……活気にあふれている街で一人の店主らしき魔族の人が腕を組み、両眼を閉じて苦虫をかみつぶしているような表情を浮かべていた。そんな表情をしているもんだから、お客さんは誰も居ない。店主? も呼び込みの声一つ上げていない。何やってるんだろう? あれでは商売にならないだろうに……ちょっと覗いてみるか?

「すみません、具合でも悪いのでしょうか?」

 そんな風に話しかけてみたが、反応がない。死んでる……って訳ではないよな。唸り声も聞こえるし……

「すみません、よろしいでしょうか!?」

 ちょっと声のボリュームを上げて話しかけてみて、ようやく店主? さんは反応を見せた。

「お、おお。どうしたんだい?」

 こちらの声のボリュームに驚いたのか、少々慌てた様な声色で返事を返してきた。まあいい、とにかく先程の表情について聞いてみないと。

「ずいぶんと暗い表情と難しい表情という二つを同時に浮かべていらっしゃいましたが、どこから体の具合でも悪いのでしょうか? そこが心配になって声をかけさせていただいたのですが」

 自分の質問を聞いた店主? さんははあっと息を吐き出した後に、その理由を教えてくれた。

「そうか、済まないね。体の調子が悪いんじゃないんだ。ここは肉を取り扱う店なんだが、いよいよ店をたたまなきゃいけないかと考えているうちにね……」

 店をたたむ、か。まあ商売が立ち行かなくなったらそうするしかないよな。そして何か他の形で再出発する。もちろんこんな言葉一つで表現できるほどのたやすい事ではないが。

「──ちょうどいい、魔族じゃない人にも試してもらいたかったんだ。これを食ってみてくれないか? もちろんお代は頂かない」

 と、皿に乗せたお肉を出してきた。それならば遠慮なくと香りを確かめてから口に入れた。うん、これは豚肉っぽい味だな。完全な豚肉とはビミョーに違うみたいだが、大体感覚で九割ぐらいは豚肉の味なので、豚肉扱いで良いだろう。だが……問題は味じゃなかった。この肉、固い。一々噛むのにかなりあごに力を入れて噛まないといけない。その上妙に噛み切れない。何だろう、ゴムを噛んでいる様な気分になって来る。何だこの肉。

「あー、やっぱり駄目か……その表情で分かる。その肉はピジャグという動物の肉でな、数年前までは魔族の口にする肉と言えばそれだったんだ」

 必死で口の中に入れた肉と格闘していると、店主? さんがそう喋りはじめた。ふむ、これがねえ……もうちょっと突っ込んだ話を聞いてみようか。それにこの肉にも興味が湧いてきた。いじってみる価値があるかもしれない。
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