トップ>小説>転生貴族の異世界冒険録〜自重を知らない神々の使徒〜
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第一章 幼少期編

第一話 転生

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 うっすらと意識が冴えてくる。
 窓から入る日差しが、瞼を通り抜けて明るさを教えてくれる。
 眩しさを感じながら目を開けると、視界には彩られた豪華な天井が入ってきた。

「知らない天井だ」

 定番であるセリフを口にしながら、少し違和感のある身体を起こし、和也は周りを見渡した。
和也は寝ていたベッドの周りを見渡すが、自分の部屋のシングルベッドとは比べ物にならないほど大きなベッドで寝ていたようで、その周りには机や家具などがセンスよく配置されていた。天井からはシャンデリアが吊り下がっており、窓から部屋の中に、明るい日差しがカーテンの隙間から差し込んでくる。

「それにしても、あの状態でよく助かったな俺。いったいどこの病院だろ。ここまで豪華な個室入院させてくれるなんて、どんな待遇だよ、まったく」

 部屋を見回していると、ベッドの隅で何かが動き出した。
 良く見ると、椅子に座ったままベッドに伏せて寝ていた人が、起きたようだった。
 起き上がった人は、まだ少女に見える。しかもメイド服姿だ。
目を合わせたままお互いが固まっている。次第に少女の目元は涙で溢れていた。


「カインさまぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 突然、その少女は飛び掛ってくる。
 意味もわからずに受け止めたが、その少女は頭を胸に埋めながら泣いている。

「良かったですぅ。一週間も目を覚まさなかったのですよ」

 少女はその一言だけいい、身体を締め付けていく。

「ちょっと、いきなり何!?」

 身体をバタバタさせながら、メイド服姿の少女を振りほどこうとするが、相手の身体が大きくてどうにもならない。

「あれ? なんで、俺のほうが小さい? その前になぜナースじゃなくてメイド?」

 疑問に思い、自分の手を目の前に動かし見てみた。
 どうみても高校生の手に見えないほど小さく、どうみても幼児の手と思える大きさだった。
 放心状態で自分の手を眺めていると、メイド服少女はいきなり立ち上がった。

「奥様にお知らせしてきますね!」

 メイド服の少女はパタパタと走り、扉を開けて部屋から出て行ってしまった。

「俺、いったいどうしたんだろ」

 自分の手を握ったり開いたりしながら、感触を確かめていく。

「あの時、コンビニから出た通り魔に刺されて、愛美ちゃんと会って、そのまま意識を失って・・・・・・今病院? その前にさっきの子がカインって呼んでいたよな・・・・・・。俺、和也だし」
 
 頭の中を整理していると、廊下から慌しい音がして部屋の入口の扉が開かれた。

「カイン! 目が覚めたのね! 高熱を出して、意識を失ってから一週間も目を覚まさなかったから、心配で仕方なかったわよ」

 入ってきた女性は、腰まで伸びた銀髪で、二十代に見える美人だった。
 スタイルも良く仕立ての良いドレスを着ている。普段見ることのないような人を見て和也は放心状態だった。
 そして、その美人が、いきなり抱きしめてきて、涙を流しながら喜んでいる。
 柔らかいものに顔がはさまれて、なんともうれしいような恥ずかしい気分になった。
  
「カイン! 私のことわかる? あなたの母よ? 忘れてないわよね?」
  
 この人は何言ってるんだろう、俺の両親は既に亡くなっているし、何がなんだかわからないし。
 その前に俺はカインじゃないし、和也だし。
 いきなりカインって言われても、訳わからないし。
 意味もわからず、その美人さんを眺めていた。
  
「奥様、まだカイン様は目覚めたばかりで思考が働いていないかもしれません」
「一週間も眠り続けたんだから今は仕方ないわね。今日はゆっくり休みなさい。また明日顔を出すわ」
  
 メイドの意見に同調し、母らしき人は、まだ中学生くらいに見える少女メイドに向かい続けて話しかける。
  
「シルビア。今日はカインのこと見ててあげて。あと、スープなら平気だと思うから食べさせて」
  
「かしこまりました。奥様」
  
 自称母の銀髪美女と、メイド少女は食事を用意するために、部屋を出て行った。
  
 もう一度、視線を落とし自分の手を握ったり開いたりしてみた。
 どこから見てもやはり幼児の手だった。
  
「これってラノベとかである転生だよな。やっぱりあの時助からなかったかぁ。でも愛美助けられたから良しとするかっ。沙織の悲しい顔を見ないで済んだし」
  
 ベッドに寝転がり、天井を見上げつぶやいた。
 学校での会話の中で、ラノベの話題とかもあり、和也は実際に本や携帯で転生モノなどよく読んでいた。特に沙織が好きだったこともあり、お互いに本の貸し借りもしていた。
  
「まず、今のこの状態を確認しないとな」
  
 ずっと寝ていたらしく、体が動かすのが億劫になっていたので、ベッドの周りを確認しながら時間を潰していた。少し時間た経ち、扉がノックされ、メイド服少女がスープを持って部屋に入ってきた。
  
「カイン様、スープの用意ができました」
  
 俺はベッドからだるい体を起こした。ベッドの横にテーブルを置いてもらい、用意してもらったスープを口に含んだ。
 
「美味しい・・・・・・」
 
 味は薄いものの、肉と野菜の成分がじっくりと出ていて優しい味だった。
 スープを飲みながら一番気になることを思い浮かべた。転生したからこそだ。
 えーっと確かさっきシルビアって呼ばれていたよな。
  
「シルビア。鏡ってあるかな?」
  
「ございますよ。ただ、寝たきりで何も食べてなかったので少し痩せられましたが、お変わりはないと思いますよ」
  
 シルビアは鏡を引き出しから出して渡してくれた。
 渡された手鏡は銀で装飾され豪華に仕上がっているものだった。両手で持ち、覚悟を決めて自分の顔をのぞいてみた。
  
 鏡の中の男の子は、銀に少し青が入った髪色でクルっとした蒼い目をした可愛らしい三歳くらいの男の子だった。
 顔のつくりはさっき見た母親と言っていた美人に似ていた。ブサメンだったらどうしようかと思ったけど、母似ならば将来イケメンになりそうだったので安心して思わずため息をついてしまった。
 顔を左右に振り、鏡を見ながら自分の顔を確認していると、いきなり横からシルビアが鏡を覗き込んできた。
  
「カイン様は将来有望なお顔立ちをしているので安心ですよ。今でもこんなに可愛いのですから」
  
 メイドのシルビアが笑顔でそっと声を掛けてくれた。
 シルビアが隣にいたことをすっかり忘れ鏡の中の自分に夢中になっていたことに少し照れて手鏡をシルビアに手渡した。
 
「鏡ありがとう」
  
 シルビアが手鏡を受け取ると、またスープの残りをゆっくりと食べた。美味しかったので思わずお代わりをしてしまったのは、寝ていた間何も食べていなかったから仕方なかった。
  
 
 その後、三日間ほど、ベッドでのんびりと過ごしていた。
 もう体調は万全だったがシルビアを含め家族から安静にしているように言いつけられていたからだ。
 この生活を送るについて、問題がひとつあった。
 俺がこのカインとして転生したのは、自分自身で納得は出来た。
 ただ、カインとして産まれてからいままでの記憶が何もない状態だった。
 シルビアに聞いて三歳ということは確認できたが、転生する前の記憶は何一つない。
 前世のときも三歳の時の記憶を思い出せと言われても無理だと思うが、今は三歳だろうが元は高校生だ。最低限の知識はある。
  
 この世界の情報が一番欲しいと思っていた。現代日本に住んでいた俺はスマートフォン片手に世界中の情報を見ることができていた。まだ、この部屋から出たこともないので何も情報が入ってこない。
 そして、会話は普通に出来ているけど、文字はまったくわからなかった。
 部屋にある机の棚に置いてあった絵本は日本語でないのは確かだ。英語でもなく見たこともない文字の羅列が並んでいた。
 ベッドで安静にしながら、自分の家の事など色々とシルビアから聞くことにした。
  
 自分の名前はカイン・フォン・シルフォード。グルニュード大陸にあるエスフォート王国内のグラシア領の辺境伯家の三男だということがわかった。
 エスフォート王国は、グルニュード大陸内の中央にあり、周りを色々な国に囲まれている状態であった。過去には何度か戦争を仕掛けられることもあったが、ここ数年は落ち着いているみたいだ。
 エスフォート王国で辺境伯とは、他国に接した領土を持ち、独自に軍を指揮して、他国から自領を守ることができる爵位になるということだった。
 辺境伯が上級貴族にあたると聞いて少し安心できた。何も知らないのにいきなり平民になっても困っていただろうし。
 
 父の名前は、ガルム・フォン・シルフォード・グラシア。
 その家の領主だけが、領地の名前を最後につけることとなっている。フォンが途中で入るのは貴族だけで、平民はファーストネームだけとなっている。この前意識が戻ってから初めて顔を合わせたが、青い髪でしっかりとした体つきをしており、三十代半ばに見えた。
 父には妻が二人いて、母は第二夫人だそうだ。二人目の妻だったから少し年が離れているんだろう。
 俺の母の名前はサラ・フォン・シルフォード。目を覚ました時にすぐに駆けつけてくれた銀髪の美人だ。そして姉の名前はレイネ・フォン・シルフォード。
 俺の四歳離れた姉だ。
 目が覚めてから、毎日顔を見に来てくれている。俺と同じ青が少し入った銀髪で顔も似ていた。
 
 第一夫人はマリア・フォン・シルフォード。第一夫人には男の子が二人いて、ジン・フォン・シルフォードとアレク・フォン・シルフォードといい、二人の兄は王都の学園に通っているので第一婦人のマリアを含めこの屋敷にはおらず、王都の別邸で暮らしているとのことだった。
 学園は十歳から十五歳までの五年間通い、成人は十五歳となっている。
 グラシア領は王都から東に馬車で一週間の距離にあり、領主邸があるこのグラシアの街を中心にいくつかの街や村があるみたいだ。そして、隣接するバイサス帝国との砦を東に持ち、南には魔物の森という魔物が徘徊する森を自領に持っている。
 
 なんとなくだが、領地と家族のことが理解できてきたので、自分のこれからについて考えてみた。
 この世界では、五歳のときに教会の礼拝があり、その時に司祭が神の声を届けてくれるそうだ。
 国教はマリンフォード教といい、多神教で、七人の神がいる。マリンフォード教国という国があり、そこから各国の王都や主要な街に教会を建て司祭を派遣している。そして建設した国からの補助金や住民からのお布施でまかなっているらしい。
 この世界の神はそれぞれ役割を持っている。
 
 創造神 ゼノム
  全ての根源となる神。他の神を生み出した最初の神とされている。
  
 武神 サーノス
   武に関わる神で、武技や体術のスキルを司る神だ。
   軍や冒険者などが信仰しているらしい。
 
 大地神 ベラ
  作物や土、水などを司る神で、農民が主に信仰している。
 
 魔法神 レノ
  魔法を司る神。魔法を使えるものは魔術師と言われ、宮廷魔術師や冒険者の魔術師から信仰されている。
  
 技能神 グリム
  物作りを司る神。鍛冶や大工など、ものを作ることに従事している人たちが信仰している。
  
 商業神 パナム
  契約を司る神。商人などが信仰しており、契約書を交わす場合など商業神に誓いとたてるそうだ。
  
 生命神 ライム
  輪廻を司る神。回復魔法については、魔法神ではなく生命神が司っているそうだ。結婚や、葬儀などもとりおこなっている。
  
 
 この世界には魔法があることを知った。
  
 俺は心が躍った。
 だって、魔法だよ?
 現代日本では空想でしかなかったものが使えるかもしれない。
 俺は長男ではないので、この領地は引き継げない。兄のジンが継ぐからだ。
 なんらかの功績を立てると叙爵され、独立した家を立てれることもあるそうだが、一般的には当主の手助けをするか、軍に入って騎士になるか、商会で勤めることや冒険者になることが多いそうだ。
  
 
「やっぱり冒険者だよな」
  
 せっかく転生したのだから、色々と世界を見て回りたい。
 そして色々な種族の人を見てみたい。この世界には人間だけでなく、エルフやドワーフ、獣人などをいることをシルビアから聞いたからだ。
  
 「まずは、この世界のこと。文字や歴史、地理とか勉強しないとだめだよな」
  
 そう思ったカインであった。
  

 
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 今日はあと一話アップします。
 10/26 文章を少し改変してます。
 11/28 文章修正をしてます。
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