トップ>小説>転生貴族の異世界冒険録〜自重を知らない神々の使徒〜
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第一章 幼少期編

第十五話 王との謁見

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 今、カインは王城にある、応接室のソファーに腰掛けている。
 部屋には誰もいない。扉の外には、王城に勤めるメイドが控えているが。
 五歳の子供一人を、この部屋で待たせる意味がわからない。
 先ほどは、執事とメイドが数人が現れ、いきなり服を剥ぎ取られ、体のサイズを測られた上に、新しい貴族服に着替えさせられた。
 さすがに旅用の貴族服では、王への謁見はできないからということだ。
 
 今回の謁見だが、たしかに、オーク三十体を倒して、王女殿下とシルク嬢を助けたのは確かだ。
 騎士たちから事情は聞いているだろうし、今更何を話すことがあるんだろう。
 
 色々と考えていると、ノックがして執事服の人が入ってきた。
 
「カイン様、謁見の準備がすみましたのでご用意ください」
 
「あ、あの……謁見の方法すら知らないのですが」
 
「たしかに五歳で謁見するのは珍しいですからね。謁見の間に入ったらまっすぐ進み絨毯の切れ目のところで片膝をつき、手を胸に当てて頭をお下げください。あとは、その場ごとでお声をかけますので平気だと思いますよ」
 
「ありがとうございます」
 
 丁寧に教えてくれた執事さんにカインは感謝をする。
 
「それでは行きましょうか」
 
「はいっ。よろしくお願いします」
 
 廊下を進み、大きな扉の前に立たされる。
 扉が開き、前に進む。左右には貴族と思われる人たちが並んでいた。もちろん父親のガルムも並んでいる。
 絨毯の切れ目まで進み、カインは片膝をつき頭を下げる。
 
「顔をあげよ」
 
 正面から陛下の声がかかった。
 先ほど説明を受けたとおり顔を上げる。正面の玉座に陛下が座り、周りには王妃とその子供達が立っている。もちろん第三王女のテレスティアも並んでいた。テレスはカインを見ながらニコニコしている。
 玉座に座っている陛下は、国王らしく立派な服を着て王冠をつけている。金髪で、四十代に見えるが、鍛えているようで、しっかりとした身体をし、顎髭がある。
 横から、五十代くらいで白髪の人が出てきた。先ほど話しに聞いた宰相だ。
 
「この度、テレスティア王女殿下及びシルク・フォン・サンタナ嬢が、五十体のオークの群れに襲われた」
 
 その内容に謁見の間にいる貴族達が一斉にざわめく。
 
「そんな時、そこにいるカイン・フォン・シルフォードは自ら死地へ飛び込み、一人で三十体のオークを討伐したのじゃ。討伐後は負傷した騎士たちを魔法で癒し、亡きものとなった騎士たちも王都まで持ち帰ってきてくれた」
 
 一人で三十体も倒したと聞き、さらに並んでいる貴族達が騒ぐ。
 
「そこで褒章を与える。陛下、よろしくお願いいたします」
 
 宰相が説明を終えた。
 国王が頷く。
 
「カイン・フォン・シルフォードよ、この度の活躍見事であった。そなたがいなかったら、ここにいるテレスティアもシルク嬢も助かっていなかっただろう。よって、カイン・フォン・シルフォードを男爵と叙する。また、白金貨十枚と王都に屋敷を与える」
 
 並んでいる貴族達がまた一斉に騒ぐ。先ほどより大きな声だ。
 騒いでいる貴族の中から、一人の貴族が前に出てきた。太った体を揺すりながらだ。
 
「お、お待ちください陛下。いくらなんでも五歳に叙勲はありえません。まだこんな子供なのですよ」
 
 一人は反対のようだ。いや、正直言うと俺も反対だよ。貴族の当主なんて何すればいいかわからないもん。
 
「だまれ。コルジーノ侯爵。ならお前は一人で死地に飛び込み三十体ものオークを殲滅できるのか?」
 
「だからといって……」
 
 まだ侯爵は反対をしている。
 
「カイン・フォン・シルフォードは三男だったな。今のシルフォード家の嫡男ではない。このような優秀な子が在野に放してしまったらどうするんだ。この決定は変えん。下がれ!」
 
 コルジーノ侯爵は貴族が並んでいる列に、カインの事を睨みつけながら下がっていく。
 
「カイン・フォン・シルフォードよ。受けてくれるな」
 
 国王はまっすぐにカインを見つめた。
 
 国王の視線が怖い。
 宰相の顔を見た。
 宰相は無言で頷く。
 ガルムの顔も見た。
 同じく無言で頷くだけだった。
 
 カインは一呼吸したあとに答えた。
 
「あ、ありがたく……受けさせていただきます」
 
 この雰囲気で五歳のカインに断れる状態ではなかった。
 
「これにて謁見を終了とする。陛下、ご退出をお願いいたします」
 
 その言葉の後に、陛下が退出した。その後ろに追うように王族が退出していく。
 
「詳細は別室で説明する。案内するからそこで待つといい」
 
 宰相に言われカインも退出する。メイドに案内された部屋は、テーブルがあり十人位が座れるほど椅子が並んでいた。
 部屋で待っていると、最初にきたのは父のガルムだった。
 
「カイン待たせたな。まさか叙爵までされるとはな。王都の屋敷も含め予想外だったぞ。三男だと思ってたのに、一番最初に出世したな」
 
 そう言いながら頭を撫でてくれる。
 二人で話していると、扉が開き数人が入ってくる。
 先頭で入ってきたのは、先ほど中央にいた陛下だ、その後に王妃、宰相、テレスティナ王女殿下、シルク嬢、シルク嬢の父親と思われる人だ。
 シルクがカインを見て笑顔で手を振っている。
 こんな国の上層部が勢ぞろいした状況では、とてもじゃないが振り替えすことは出来ない。
 国王が一番先に一番奥の真ん中の椅子に座った。
 
「皆、ここは謁見ではない。座るとよい」
 
 その言葉のあとに、皆、座り始める。
 カインは陛下の対面に座る。
 
「よし、そろったな。カインよ、まず、今回は本当にありがとう。テレスティアから話は聞いた」
 
 国王が頭を下げる。それに習って王妃も頭を下げた。
 
「カインくん、私からもお礼を言わせてくれ。シルクの父親のエリック・フォン・サンタナ・マルビークだ。本当にありがとう。お陰でシルクが助かった」
 
 公爵も頭を下げてくる。五歳のカインに向かって、王と公爵が頭を下げたのだ。
 
「陛下、王妃様、公爵様、頭を上げてください。私は襲われていた人がいたので、助けにはいっただけです」
 
 王と王妃、公爵の三人が頭を上げる。
 
「ありがとう。ただ、やはり王としてではなく、一人の親として礼を言わせてもらう。それでは話をしようか」
 
 皆が頷く。
 
「それにしても、五歳のカインに叙爵してよろしいのでしょうか」
 
 父のガルムが陛下に問いかけた。
 
「いいのだ、ガルムよ。テレスティアの話を聞いた。五歳にして、魔法も剣技も一流、アイテムボックスまでもっている。五歳にしてその腕だ。加護も持っておろう。そんな優秀な子を放置しておくほど、わが国はお人よしではないのでな」
 
 カインを見て陛下がにやりと笑う。
 思わずカインは背中に冷汗をかいた。
 
「叙爵といっても、まだ五歳だ、何をすることでもないぞ。未だ学園に通ってもおらんしな。給金は規定通りに支給する。屋敷の維持もあるしな。貴族のことで何かあればガルムに聞け」
 
「ありがとうございます。父に相談してやってみます」
 
「それよりもな、大事な話がある」
 
 国王が真剣な顔になった。そしてエリック公爵と顔を合わせて、お互い頷く。
 
「カインよ。良ければじゃが、うちのテレスティナと、エリックのとこのシルク嬢をもらってくれんかな? もちろん正式な結婚は成人してからになるが、とりあえず今は婚約者としてじゃ」
 
「「!!!!!!!!!」」
 
 ガルムは愕然とした。もちろんカインもだ。
 
 テレスティアとシルクを見たが、二人とも顔が真っ赤だ。
 
「……そそ、それは一体……な、なぜですか、陛下」
 
「カインよ。記憶にないか。馬車の中とか、途中の宿とか」
 
 馬車の中、馬車の中、何があったのかカインは頭の中で思い出していく。
 確かに同乗した馬車の中で、王女とシルク嬢は両隣に座って腕を組んでいた。
 宿については、同じ部屋に泊まると強固な態度をとったテレスティア王女殿下に根負けし、ベッドを分けて同じ部屋で一緒に寝た。同じベッドではないし、まだ五歳ということもあり問題ないとカインは思っていた。。
 
「王族や、公爵家の未婚の女性が、未婚男性と宿では同じ部屋で寝て、馬車の中では腕を組んでいたとなれば、今さら他に嫁にだせまい? それとも、わしらの娘じゃ不満だというのか?」
 
 陛下がカインに向かって言う。公爵と二人からの無言の圧力がカインを襲う。
 王族がそこまで厳しいのかをカインは把握していなかった。
 どうしていいのかわからずにカインは、思い宰相のほうを向いた。宰相は無言でただ頷くだけだった。
 

「……受け賜わりました。ただ、テレスティア王女殿下とシルク嬢の気持ちを優先させてください」
 
 その言葉を返すだけでカインは力尽きた。
 
「言質をとったぞ。聞いたかテレスティア、シルク嬢。それで良いな二人とも」
 
 二人とも顔を真っ赤にして、口を抑え、涙目になりながら頷いている。
 


 こうしてカインは五歳にして二人の婚約者を持つことになった。
 
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