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10巻試し読み

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リアルでは数日、「ワンモア」の世界では十数日が経過した。
その間にロイド君の顔色は見違えるほどによくなったので、そろそろ大討伐に向けた調整に入る。せっかくよくなったロイド君が森に入るとまた悪化しないかとやや不安に思ったものの、仲間が新しく二人増えたことで、それは何とかまぬがれることができそうだった。
「さて、ルイは俺のことを知っているが、他の人は初対面になるな。俺のことはガルザと呼んでくれ」
ルイさんのツテで、過去に大討伐に参加したときによく組んだというガルザさんが、自分達のPTに参加することになった。ルイさんが「実力は私とほぼ同等よ」と言うので、ロイド君はガルザさんを尊敬の目で見ている。
そしてもう一人、女性エルフがこのPTに参加したのだが……
「……私のことは、トイと呼んで。よろしく……アース君はお久しぶり……」
彼女は以前、妖精国の東の砦街にてアルバイトのようなことをしたときに出会った子だった。会ったのはあのとき一回限りで、もう二度と会うことはないだろうと思っていたために、最初は誰だかまったく思い出せなかった。お陰でトイさんが膨れる膨れる。まるでフグのようだった。でもあのときは一度も自分の前で外套のフードを取らなかったのだから、トイさんの方にも非があるだろうに。
だが、話はそれだけでは終わらなかった。
「まさか、長老の娘さんまで大討伐に参加するとは……おどろきっす」
ロイド君が言うように、何とこのトイさんはエルフ長老の末っ子らしい。
「私が死んでも……上には立派な兄や姉がいるから問題ない……」
ということで、大討伐への参加にも特に問題はないそうだ。長老側としても、血縁が誰も出ないのは死地に行かせる他のエルフに申し訳が立たないと考えたのか? まあ、そこまではさすがに分からないが、トイさんが無理やり大討伐に行かされる雰囲気でもなさそうなので、自分は頭に浮かんだこの疑問を口に出さないことにした。
「ともかく、大討伐はこの六人PTで行くことになるな。みんな、よろしく頼むよ」
形だけな気もするが、一応PTリーダーである自分が場を纏めて皆に頭を下げる。人族(プレイヤー)にエルフ五人、しかも全員メインウェポンが弓という、明らかにセオリーを無視したPTがここに誕生した。
まあ、ルイさんとガルザさんが攻撃を回避しつつ反撃する回避盾、自分とロイド君が攻撃兼回復役、エルとトイさんが純火力と考えれば、組むべき構成から極端にずれてはいない。それでも、やっぱり全員手に持つ武器が弓というインパクトがすごいな。
「ええ、任せなさい」「固くならずに、これまでどおりでいいからね」「こちらこそよろしくっす!」「おう、まあそう気張らずにいこうや」「……がんばる」
順に、エル、ルイさん、ロイド君、ガルザさん、トイさんだ。大事な初対面の挨拶も無事に済ませたところで、エルフの森で道案内してくれるとらちゃんを呼びに行く。
自分が住処すみかから連れてきたとらちゃんを見た途端、ガルザさんからは「随分といい子を連れてきたな。案内役もよくそんな子を連れていくことを許したもんだ」と言われてしまった。だがやっぱり自分が見ても、他のキーン族の子との見分けがあんまりつかない。いったいどこが違うというのだろうか?

大討伐直前の軽い慣らし運転のつもりのため、行ってもせいぜい中層の浅い所までにしようと事前に決めていた。だが実際に森に入ると、中層に行くどころか、森の浅い所でも次から次へとモンスター達が出てきて大変だった。さすがにランニング・ハンターやブラッドサイス・イーターといった中層に生息するモンスターは出てこないが、随分と数が多い。
「大討伐の直前は、いつもこんな感じでモンスターが山ほどいるんですか!?」
グラスホッパーが一〇匹以上固まった群れを始末し、ようやくひと息つけたタイミングで、ガルザさんに尋ねてみた。
「いや、大討伐前と考えても今回は異様に多過ぎるな。なあリーダー、提案なんだが、中層に行くのは取りやめて、この辺でたむろしている連中を今のうちに少しでも間引いておかないか? 大討伐を待つ間にこいつらが増え過ぎて、すでに手がつけられない状況になっていた、なんて話になったら笑えんぞ」
ルイさんをチラッと見ると、頷き返してくる。そうか、大討伐経験者のルイさんとガルザさんが同じ意見ということは、相当マズいってことだな。
「分かりました。経験者の意見を採用して、今日は浅い場所でモンスターを一匹でも多く始末しましょう。他の皆もそれでいいかな?」
反対意見は出なかった。自分には分からないが、他の五名……つまりエルフ達は、この異様さを何かの形で感じている様子が窺える。自分一人だけ蚊帳かやの外だが……初めてエルフの森に入ったときのノンビリ進行と比べれば、連戦が続く今の状況の異常さを口に出すまでもない。
「熟練者でも戦い続ければ疲れが溜まる。疲れが溜まればミスをする。ミスをすれば生きて帰れなくなる可能性が高まる……数は力と言うからね、魔物を少しでも減らしておくべきなのは間違いないわ」
エルの言葉に全員が頷く。歴戦の戦士であるエルの発言には説得力があった。
そうと決まれば、とにかく森の浅い地域でモンスターがいる所へとらちゃんに案内してもらう。そうするとグラスホッパーをはじめ、ハンティング&ツインブレイド・ホーンが次から次へと出るわ出るわ。おまけに今まで出遭っていなかったミスト・フォックスまでお目見えした。
ミスト・フォックスはどうやら支援と妨害を得意とするモンスターのようで、味方に回復魔法をかけたり、こちらに能力低下や状態異常の[スタン]を引き起こす魔法を放ったりしてくる。その上、キツネ型の霧に包まれているので本体への攻撃がなかなか当たらない。弓矢だとまったくらちが明かず、結局自分がスネークソードを伸ばしてなぎ払うという無理やりな方法を採ったのだった。
倒したことで霧が晴れると、そこには霧の大きさの四分の一ほどの、一匹の黒い子狐が倒れていた。
「こんな場所に、普段見かけないミストまでいるのか。こいつは本当に面倒だ。体力自体は異様に低いから当たれば一発だが、霧で惑わされるからな……言っておくが、手探りなんて真似をすると猛毒の爪で引っかかれるから、絶対にやるんじゃないぞ」
ガルザさんがそう教えてくれた。
猛毒持ちか……念のために言っておくと、毒のダメージでは死なない、なんて変なセーフティ設定は、この「ワンモア世界」にはない。そのため、解毒剤を持ち歩かない人はまずいない。
「それにしても、本当に次から次へと魔物が来るっすね……門番の人もかなり大変そうっす」
ロイド君の言う通り、こいつらがずっと森の中だけにいてくれるとは限るまい。一定範囲の生息数が増えればその外へと出て行くのは自然の流れ。その出て行く先がエルフの村である可能性は十分にある。こいつらは動物を襲うというから、人も食料の一つとしか見ていない可能性が高い……モンスターの食料になってたまるか。
「……それでも門を守りきるのが門番の役目……だから北の門には最高の戦士を常駐させている……」
トイさん曰く、そういうことらしい。エルフの村の事情をこんな形で知りつつ、今日の活動を終える。
村に帰って手に入った素材を全て売り払った結果、買い取り金額が二〇万グローを超えた。六等分しても十分過ぎる収入になったので、ロイド君は装備をワングレード上げると皆に話している。
さて、今日はここまでにして自分も寝よう。そして明日いつもの時間にログインすると、いよいよ大討伐初日になるんだな……


【スキル一覧】
〈風迅狩弓〉Lv17(←1UP) 〈剛蹴〉Lv27 〈百里眼〉Lv25 〈技量の指〉Lv11(←1UP)
〈小盾〉Lv26 〈隠蔽・改〉Lv3 〈武術身体能力強化〉Lv43(←1UP)
〈スネークソード〉Lv49(←2UP) 〈義賊頭〉Lv20
〈妖精招来〉Lv5(強制習得・昇格・控えスキルへの移動不可能)
追加能力スキル
〈黄龍変身〉Lv4
控えスキル
〈上級木工〉Lv32 〈上級薬剤〉Lv21 〈釣り〉Lv2 〈料理の経験者〉Lv10
〈鍛冶の経験者〉Lv21 〈人魚泳法〉Lv12
ExP31
称号:妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 ドラゴンと龍に関わった者 
   妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 
   託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊
   人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル
プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人




ログインすると、「ワンモア」世界は夜明け直後だった。宿屋から出てエルフ村の看板前に向かうと、すでにたくさんの人が看板前に詰め掛けていた。
看板にはでかでかと『大討伐開始! 特に優秀な成果を出した者は表彰の上、特別報酬を出す。森に巣くう魔物達を殲滅せんめつせよ!!』と、エルフ長老の名の下に告知されている。
それを確認した人達は早速エルフの森に向かうべく、次々と案内役の住処へ駆け出していく。その中に、見覚えのある鎧姿があったような気がしたが……まあいいか、彼とは特段親しいわけでもないし、声をかけても邪魔になるだけだろうからな。
看板を後にした自分は、一度宿屋に戻って軽い朝ごはんをゆっくりと食べ、エルフの森に向かう準備を整えてから再び出発した。
案内役の住処には、普段よりも大勢の人がいた。もちろんプレイヤーだけでなく、この世界に住んでいる他の種族の人もいる。種族は違っても、今ここにいる人達は大討伐に向かうという同じ目的の下に動いている。
とらちゃんを呼び出してもらったら、すぐに外に出る。人が多いので、ここでノンビリとはしていられない。
少し離れた場所に腰を下ろしてから、PTメンバーに集合場所を伝える。エルとルイさんは食事が終わったところで、ロイド君とガルザさんもすでに準備は終わっているので、すぐに向かうとのこと。トイさんは長老から、役目をしっかり果たしてこい、と長いお言葉を頂いている最中らしい……一応全員に向けて、慌てないでいいからねと言っておく。
そうしてとらちゃんに背を預けて待つこと数分、ロイド君とガルザさんが合流した。
「ありゃ? エルにルイはまだなのか? トイちゃんは時間が掛かってもしょうがねえが」
もうちょっと掛かりそうですよ、と自分はガルザさんに伝えておく。
「ガルザさん、女性は色々と時間が掛かるものっすから……」
ロイド君はそんなフォローを入れつつ、こちらをちらちらと見てくる。
「どうしたロイド君? 何か自分の顔に付いているかい?」
それがどうにも気になったので尋ねてみたところ、答えはロイド君からではなくガルザさんから返ってきた。
「いや、ロイドがお前さんをちらちら見るのは無理もねえよ。キーン族のお嬢さん相手に、そんな風に背を預けることを許される奴はなかなかいねえ。嘘だと思うなら、ロイドにやらせてみればいい」
とのことなので、試しにロイド君に自分が座っていた場所を譲ってみた。
ロイド君は座ってゆっくりととらちゃんのふわふわの毛に背を預けようとするが……とらちゃんはその大きな体からは想像できないほどの俊敏さでささっと逃げる。支えがないロイド君の上半身は当然後ろにびたんと倒れてしまった。
「な? あれがキーン族の普通の反応だ。契約はあくまで案内役としての契約だから、さっきのお前さんのようなスキンシップはまた別の話になるんだ」
ロイド君の視線はこれが理由か。そうなるととらちゃんには、あんまりべたべたと引っ付かない方がいいのだろうか?
「うう、やっぱりダメっすねー……あのふわふわな毛に触れてみたいっすよ……」
ロイド君は悲しそうな声を上げつつ、とらちゃんを眺めている。ああ、うん、気持ちは分かるよロイド君。とらちゃんの毛はふっわふわだからね。改めて、前もってピカーシャの毛の経験があってよかったと思う。下手したら、このとらちゃんとたわむれるためだけに、サービス終了までエルフの村に滞在し続けたかもしれない。
そのとらちゃんは、てこてこと自分に歩み寄ってきて丸くなる。どうぞっと言わんばかりなので無視するわけにもいかず、再び座って背を預ける。ロイド君には申し訳ないが、もうしばしこの癒しを堪能……っというところで、ウィスパーが飛んできた。ロイド君とガルザさんにひと言断りを入れてから、通信許可を出す。
『お、繋がった。アース、大討伐に行く予定はあるのか?』
ウィスパーのおくぬしはツヴァイだった。声を聞くのは久しぶりかもしれない。
『もちろん行くぞ。こういう物事には関わっておきたいからね』
毎度のことながら上位入賞は考えないけれど、な。
『そうかそうか。で、いつも通りソロなのか? だったらこっちに来ないかって誘いなんだが……どうだ?』
なるほどな、これはツヴァイに気を遣わせてしまったか。これはどう考えても自分の手落ちだろう……現在は自分もPTを組んでいることを、ツヴァイ達に一切教えていなかったのだから。
『そういう理由でウィスパーをしてきたのか、気を遣わせてしまってすまなかったな。だが、今は自分も六人PTを組んでいるんだ』
こちらの状態を大雑把に伝える最中に、エルとルイさんも合流した。ウィスパー中であることをジェスチャーで伝え、少し待っていてほしいと頼む。
『おお、そうかそうか! いや、ギルドメンバーのカザミネとロナがな、この大討伐でもアースがソロで行動するような無茶をやらかす前に誘ってみようって話を振ってきてな。あ、カザミネ、なんだ?』
む、どうやら向こうでカザミネが何か言いたいことがあるのか、ツヴァイと二人で話し合う声がウィスパー越しに聞こえてくる。
『なあアース、カザミネからの提案なんだが、一緒にやらないか? ほら、PT同士でまたPTを組むレイドを利用して、大討伐のモンスター連中に対抗しようじゃないかって話になってな……そっちとしてはどうだ?』
悪い話ではないな。昨日の時点でもモンスターの数は相当に多く、一つのPTで対処するにはきつい場面もあった。ならばこちらも数には数で対抗する方が確実かもしれない。ツヴァイに少し待ってもらうように頼んでから、自分のPTメンバーに話を振る。
「……という呼びかけが親しい知り合いから掛かってきたんだが、どうだろうか? もちろん皆が嫌なのであればお断りするが」
ここでトイさんもPTに合流したので、全員に改めて話の流れを説明して意見を聞いてみる。
「数には数。すじは通ってるし、いいと思うぞ? お前が親しくしているというのなら変な奴らでもなさそうだ」
一番早く返答したのがガルザさんだ。
「……確かに、六人より大勢で事に当たることには何の問題もない。ならばお互い協力すべき」
と言うトイさんの意見に同調する形で、全員一致で結論が出た。
『ツヴァイ、待たせたな。こちらはその話に乗ることにした。合流したいのだが、どこに集まろうか?』
ツヴァイ達からの申し出を受けると告げて、合流場所を相談する。
お互いの居場所を確認した結果、ツヴァイ達の方がエルフの森から離れていたため、自分達はこの場で待機することになった。
『じゃそっちに急いで向かうから、待っててくれよ〜』
そうしてツヴァイからのウィスパーが切れる。PTメンバーには今の状況と、ここで待機することを伝えた。
それから数分経過して、ツヴァイを先頭にいつものギルド『ブルーカラー』のメンバー――ミリー、ノーラ、レイジ、カザミネ、ロナ、エリザ、コーンポタージュの合計八人がやってきた。自分は手を上げて、ツヴァイに挨拶をする。
「よっ、アース。今日はよろしくな!」
相変わらずの赤いつんつん髪の毛を揺らして、ツヴァイはそう威勢よく挨拶をしてくれた。
ツヴァイをレイドPTリーダーにして、自分達の六人PTを合流させてもらう。
「こちらこそよろしくな」
こうして大討伐は、大掛かりな一四人レイドPTで行うことになった。

「それにしても、なんだな」
軽い自己紹介などをしつつ歩いているので、エルフの森に向かう速度は自然と遅くなる。それに加えて一四人に案内役が二匹という大集団だから、なおさら進みが遅い。そんな中でツヴァイが言う。
「お前がPTを組んだというからどんな人達かと思えば、アース以外全員がエルフのPTとか、予想外過ぎたぞ。お前のその人脈はどこから来てるんだよ」
後ろの方からは、プレイヤーとエルフの女性陣がおしゃべりしている声が聞こえてくる。その会話の内容は、これからダンジョンに入るという雰囲気を匂わせるものではない。
「そう言われてもなぁ。まあ、こんなエルフさん達とPTを組めたのは、エルの影響が大きいかな」
ツヴァイの疑問に答えるべく、夜のネクシアから今までずーっと一緒に行動してきたエルのことを大雑把に説明する。
「と、そんな感じでな。エルがいたからルイさんが来て、ルイさん経由でロイド君とガルザさんが合流してって形だったからな」
そうだったのか、それはそれですげえな……と、ツヴァイは感想を言った後で、後方へ声をかける。
「そろそろ森に入るから、戦闘モードに切り替えてくれよー?」
それでようやくおしゃべりをやめる女性陣の反応に、男性陣は皆苦笑い。
とりあえずコミュニケーションも取れたことだし、とエルフの森に一四人と二匹は足を踏み入れた。

    ◆ ◆ ◆

「そして、森に踏み入った途端にこれですか!!」
カザミネがそう叫びつつ、ハンティング・ホーンを真っ二つにする。カザミネの言葉通り、森に足を踏み入れて数歩歩いたかどうかの場所で、ハンティング・ホーン七匹、ハンティング・グラスホッパー八匹の団体さんが出迎えたのだ。
いきなりの遭遇戦になってしまい、やや乱戦気味で戦うことになったが……さすがに戦闘モードに入っていたみんなはすばやく動く。レイジ、ツヴァイ、カザミネがすばやく前に出て敵を牽制し、その隙に自分とエルフ五人は弓矢による攻撃でモンスターの数を減らす。最後は、攻めに転じたカザミネ、ロナとノーラが一気に蹴散らした。
「皆、お疲れ。それにしてもいきなりこれとはなかなかにひどい歓迎ね」
ノーラがそうぼやく。
「おいおい、もうとっくに魔物の領域の中なんだからな、気を抜くなよ? この先には今以上の歓迎が待っているはずだからな」
ガルザさんからの言葉に、ツヴァイ達もそうだなと相槌を打って表情を引き締める。ミリーだけはいつも通りマイペースのニコニコ顔だけど。
「とらちゃん、モンスターの反応はどっちからする?」
自分が案内を頼むと、森の中モードで小さくなっているとらちゃんは色々な方向を指し示す。やはりモンスターの数は異様なほどに膨れ上がっている様子だ。
「じゃあ、特に数が多い方向はどっち?」
そう聞くと、とらちゃんはある方向をびしっと指し示した。ぶるぶる震えているところを見ると、本当に数が多いようだ。ふと、自分の肩に乗っているとらちゃんから視線を外して顔を上げると、ツヴァイ達も案内役のハリン族の子――とっとちゃんという名らしい――に色々と聞いていた。
「ツヴァイ、ここからどう動く? 余力があるうちに大きな群れを叩くか、それとも確実に少数の群れを減らすかの二択になりそうだが」
とらちゃんととっとちゃんからの情報をまとめ、ここからどう動くのかをレイドPTリーダーであるツヴァイに質問する。
「そうだな……一番モンスターが多い方向に向かってゆっくりと進み、大きな群れを駆逐しよう。どのみち大討伐では一匹でも多く倒さなければならないんだし、体力が磨り減ってきたところで大多数の群れを相手にするよりは、余裕があるうちに叩いておく方がいいと思うんだが」
こんなにモンスターが多い状況では休息をいつ挟めるか分からないのだから、ツヴァイの言う通り、余裕があるうちに大きな群れを叩いておく方が安全な場所を作れるか……
これといった代案は出なかったし、代案なき反対には意味がない。特に数が多いと示された方向に向かって、普段の速度の半分くらいのスピードで警戒しながら移動する。
「いたわ、こっちに来るわよ!」
エルがそう声を上げた直後、今度はハンティング・ホーンとツインブレイド・ホーンが数匹、こちらに向かってくる。さらに追加とばかりに、周りから多数のモンスターがわらわらと這い出てきた。合計でハンティングが八、ツインブレイドが九もいる。
「この数は厄介ですし、魔法で一気に吹き飛ばしましょう〜、ここで大きく消耗するのはまずいですから〜」
ミリーの声に従い、前衛はアーツを極力使わずにモンスターからの攻撃をしのぎ、ミリーとコーンポタージュの魔法発動までの時間を稼ぐ。自分達弓矢使いもモンスターの行動妨害に努め、前衛の負担を少しでも減らす。
「詠唱かんりょ〜、おまたせです〜。《スパーク・スクリュー》!」
「私も行きます、《エクスプロージョン・ダブル》!」
おお、どちらも〈熟練上位魔法〉レベルか。ミリーが放った《スパーク・スクリュー》は雷撃を伴った竜巻で相手を呑み込む魔法。コーンポタージュが放った《エクスプロージョン・ダブル》は派手さで有名な《エクスプロージョン》を同時に二つ炸裂させる魔法である。
それほどの魔法の前では当然……魔法抵抗力があまりない連中は一瞬でちりと化すことになる。あれほどいたモンスター達は、あっさりと目の前から消えていた。
「魔法の威力は相変わらずすごいな……その分、詠唱時間も長いようだが……」
広範囲殲滅はまさに魔法の領域だな。そういえば以前、グラッド達PTと組んだときに活躍していた……ガルさんだったか? あの人も街に襲い掛かった大量のオーガを魔法でぼんぼん吹き飛ばしていたな。魔法の詠唱に掛かる時間、再使用が可能になる時間を完全に理解していないと、あんな働きはできないだろう。
「〈上位魔法〉系列でも長かったけど、そのさらに上の〈熟練上位魔法〉となるとかなり大変みたいよ」
自分の呟きが聞こえていたらしいノーラが、そう教えてくれた。
「ちなみにミリーもコーンポタージュも、〈詠唱短縮〉系統のスキルをもちろん持っているわ。それでもかなり発動まで時間が掛かるから、しっかり他のメンバーが守らなきゃダメなのよね。PTの連携がよくないと、スキルのレベルが上がっても無意味ってことだわ」
さらにノーラから追加補足が入る。やっぱりそういう難点は抱えているのか。
「お二人ともお疲れ様ですわ。次に大勢モンスターが出てきたときには私が魔法を撃ちます」
エリザがそう宣言し、ミリーとコーンポタージュの前に出る。エルフの森での大討伐はまだまだ序盤である。

それからしばらくの間、自分達は次から次へとやってくるモンスターを相手にし続けた。連戦が続くせいでPT全体が荒い息を吐いている。息を乱していないのはベテランのルイさんとガルザさん二人だけであり、一方で前衛のツヴァイ、レイジ、カザミネ、ロナの精神的消耗がかなり激しい。地面に座り込んでしまうほどではないが、戦闘を再開するのはいくらなんでも辛そうだ。
「くっそ、ここまでの連戦になるとは思ってなかったぜ……アース達と合流しておいて正解だったな」
ツヴァイは相棒である両手剣を手に持って周りを警戒しつつ、そう呟く。こっちとしても、ツヴァイ達と合流していなかったらかなり危なかっただろう。モンスターが多いところを選んで進んできたとはいえ、同時に最低でも一〇匹以上が襲い掛かってきたから、一回一回の戦闘がかなり大変だった。
「とらちゃん、一度モンスターのいない後方に下がりたい。欲を言えばモンスターがいない方向、次点で少ない方向を教えて」
このまま前進すれば、前衛が持たずに潰れる。HPなどのゲーム的なステータスは全快でも、中のプレイヤーの疲労が無視できない状況に陥っているとなれば、ここは一度下がるべきだ。
正直に告白すれば、自分だってかなり消耗しており、集中力が大きく落ちている自覚がはっきりとある。さっきまでは戦闘状態だったのでテンションが高く、集中力を維持できていたが、一度こういう切れ間が来ると、それまでの反動で疲れがどっと押し寄せてくる。
とらちゃんの案内で、幸い少しだけ開けた場所を見つけることに成功し、女性陣の大半が地面に座り込む。特にミリー、エリザ、コーンポタージュの魔法使い達はMPの消耗が激しく、MPポーションによる中毒寸前まで追いやられている。ここでひと息ついておかないと、副作用が発症しかねない。
「警戒は私達でするから、他の人達はしばらく休憩を取って態勢を整えましょう。アース君、とらちゃんを貸してね」
余裕があるルイさんとガルザさんが警戒役を買って出てくれたので、ここは任せることにした。胡坐あぐらをかいて、アイテムボックスから肉まんを取り出し、口にする。水分補給はエルフの村で売っていた森の水。これといった特殊効果があるわけではないが、美味しくて疲れが取れる。
「そ、それは肉まんじゃないですか!?」
カザミネが自分の手を凝視してくる。
「ん? カザミネは肉まんが好きなのかい? 一つなら無料で提供するよ。二つ目からは材料費ぐらいもらうけどね」
そう言うと、ズザザザッという効果音でもつきそうな勢いでカザミネが近づいてくる。おい、先ほどまで息を荒らげていたお前さんはどこに行ったんだよ。
「ぜ、ぜひお願いします」
カザミネにしては非常に珍しい行動に苦笑しつつ、肉まんを一つカザミネに提供する。
受け取ったカザミネは早速豪快にかぶりつき、あちあちあちっと言いながらも口を動かす。口に入れた分を呑み込むと、ふところから取り出した水筒で水分補給。そのまますぐに食べ終えてしまい、ふーっと大きく息を吐いた。
「かなり疲れが抜けた気がします。もう少し休めば戦えそうですよ。それにしてもこちらの世界で肉まんをしょくせるとは」
この場所に到着した直後のこわばった表情は随分と柔らかくなり、カザミネの中にあった余計な緊張はほぐれたようだ。まあ、物を噛むという動作はストレス発散に繋がるらしいからな。カザミネに触発されたのか、他の人達も肉まんを譲ってほしいと言い出したので、一つずつ配布する。お陰で大量に作っておいたはずの肉まんの残りが、かなり少なくなってきた。
「これ、なんですの?」
エリザだけは肉まんになじみがないようで、食べ方をノーラから教わっていた。まあ下に敷いてあるクッキングペーパーもどきをはがして丸かじりするだけなのだが。ひと口目でかなり驚いていた様子だったので、やっぱりエリザはちょっといいところのお嬢様なのかもしれない。ま、あんまりその辺を考えてもしょうがないか。
「ツヴァイ、ここからどうする? とりあえず全員ある程度は回復できたが、全快というには程遠いぞ?」
ツヴァイと目が合ったので、自分はあえて今の状況を口に出す。もちろんツヴァイもその辺は重々承知だろう。休息の時間に入ってからずっと腕を組んで考え事をしていたくらいだから。それでも言葉にするということは大事だ。
「そ〜ですね〜……予想よりはるかに大勢のモンスターと戦うことになりました。初日の成果としてはいい線を行ったのではないかと〜」
ミリーのどこかのんびりとした声。しかしその言葉の中には、「今日は撤退すべき」という彼女の意見が入っている。
「ああ、別段俺達は大討伐のトップを目指しているわけじゃない。それにここまでの連戦で武器や防具の耐久もだいぶ消耗している。これ以上消耗すると、生産素材が少ない現状では修理に時間がかかり過ぎることにもなるぞ」
これはレイジの意見。タンカーとして前面に立ち続けたレイジの装備、特にその大きな盾は、誰が見ても十分な仕事をし続けたのだと分かるくらいに多くの傷がついている。
「……そうだな。正直、敵の数は多いだろうと思っていたとはいえ、ここまでだなんて予想外だったぜ。それでもかなりの数を叩けたはずだし、皆もそうだろうが、俺もそろそろ引き揚げようと考えていた」
村に帰るまでが遠足、ならぬ討伐時間だからな……余力があるうちに帰還しないといけない。ツヴァイはそう皆に伝えた。
「今までの経験から言えば、ここまでで俺達は相当貢献した気がする。引き揚げるタイミングとしては十分にありだろう」
周辺を警戒しながらガルザさんが言ったひと声もあり、今日の討伐はここまでにして引き揚げることになった。そうしてとらちゃんととっとちゃんの案内の下、帰路を進んでいたのだが……
突然、自分の肩に乗っていたとらちゃんが、ぴぃぃぃ……と低い声で鳴き出した。
「!? 何か来る! 全員警戒!」
ガチャガチャッとツヴァイ達が武器を構えるのとほぼ同時に、草むらからぞろぞろとツインブレイド・ホーンの団体さんが現れた。そこまでなら今までと同じなのだが……最後にガサリと現れた一体は全体的に妙に白っぽく、しかも他の個体よりはるかに大きい。
「いけない! あれはサージェントクラス!? 皆気をつけて、今日一番の厳しい戦闘になるわ!」
ルイさんが警告を発する大声が響く。「サージェント」ってことは軍曹ランクか。
「サージェントは、自分と同属の魔物を指揮するわ! 魔物の連携がよくなるだけではなく、〈挑発〉もあまり効かなくなるわよ! 後衛を確実にかばいたいのならば、〈挑発〉技術に頼るのではなく物理的に割って入りなさい!」
とうとう出たのか、指揮能力持ちモンスターが。
ギチギチギチギチと嫌な音を立てながら、ツインブレイド・サージェントはこちらの様子を窺っている。村に帰るためには、何とかここをしのぎ切らないといけないようだ。



【スキル一覧】
〈風迅狩弓〉Lv18(←1UP) 〈剛蹴〉Lv27 〈百里眼〉Lv25 〈技量の指〉Lv11 〈小盾〉Lv26
〈隠蔽・改〉Lv3 〈武術身体能力強化〉Lv43 〈スネークソード〉Lv49 〈義賊頭〉Lv20
〈妖精招来〉Lv5(強制習得・昇格・控えスキルへの移動不可能)
追加能力スキル
〈黄龍変身〉Lv4
控えスキル
〈上級木工〉Lv32 〈上級薬剤〉Lv21 〈釣り〉Lv2 〈料理の経験者〉Lv10
〈鍛冶の経験者〉Lv21 〈人魚泳法〉Lv12
ExP31
称号:妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 ドラゴンと龍に関わった者 
   妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 
   託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊
   人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル
プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人




「こんなときに限って、面倒ですわね!」
エリザが〈水魔法〉の《アイスガーディアン》を詠唱する。これはPTメンバーの鎧の表面に氷の膜を発生させ、防御力を上げる魔法だ。土魔法の防御系補助魔法に比べて持続時間などは落ちるが、防御力上昇率は勝る。その上、耐久が切れて消失するときには、直接攻撃をしてきた相手に破片が突き刺さるという二次効果もある。もちろんそれのダメージはおまけ程度だが。
「こちらも《アイスガーディアン》っす!」
エリザの《アイスガーディアン》はこちらまで届かないため、ロイド君も同じく唱える。これでひとまず最低限の防御体制だけは取ることができた。それとほぼ同時に、サージェントの指示なのか、六匹のツインブレイド・ホーンが横一列で突っ込んでくる。
「ノーラ! お前も早く《アイスガーディアン》で防御を上げろ!」
ツヴァイの指示が飛ぶ。だが〈高速詠唱〉を持たないノーラは、まだ詠唱が完了していない様子だ。
「ボクが守るから、早く!」
詠唱中で激しい動きができないノーラの前にロナが出て、突っ込んでくる敵をさばく。
「《アイスガーディアン》!」
ようやくノーラの魔法が発動し、これで全員が防御支援魔法の恩恵を得た。ようやく反撃開始とばかりに前衛メンバーが前に出ようとするが、自分は大声を出してそれを制止した。
「だめだ! レイジ以外大きく前に出るな! ノーラとロナ、そしてカザミネはミリー達をガードするんだ! 横から来るぞ!」
弓使いという立場、そして〈百里眼〉があるからこそ、はっきりと見えていたことがある。六匹のツインブレイド・ホーンが突っ込んでくるタイミングで、後ろの何体かが左右の草むらの中に入っていく姿が見えていたのだ。そうなれば当然……
自分の大声が響いた直後、後方にいたコーンポタージュの横にあった草むらが、ガサガサッと音を立てる。
「させませんよ!」
その奇襲に対して、カザミネと相棒の妖精がいい反応を見せた。コーンポタージュの首を両断しようと草むらから飛び出してきたツインブレイド・ホーンに向かって、カザミネの妖精であるハーピーが羽を飛ばして攻撃した後、カザミネが自慢の大太刀を振り下ろす。勢いに乗った大太刀は、モンスターの胴体を一刀両断に……
ガギン!!
できなかった。
「なぜですの!?」
エリザが驚くのも無理はない。カザミネの相棒である妖精の攻撃と、カザミネの大太刀の振り下ろしは、カウンター気味の素晴らしいタイミングで行われた。切れ味鋭い大太刀によるあれだけの攻撃ならば、一刀両断していてもおかしくはない。実際にこのPTを組んでから、多くのモンスターを一刀のもとにぶった斬るのを見てきている。
「幸い大太刀の腰は伸びずに済んでいますが……今の手ごたえは明らかにおかしいですね」
腰が伸びるとは、あまりに硬いものを切ろうとしたときに刀が曲がることを言うらしい。
それにしても、今の「ガギン」という金属音は確かにおかしいな。いくら甲殻が硬いといっても、あのような音が出るはずがない。
「ったくよう、こんなときに『頑防がんぼう』のサージェントがやってきたのかよ! よく聞け! あいつの指揮を受けているこいつらは、防御力が大きく跳ね上がっている! 生半可な攻撃じゃ一切通じないどころか、こちらの近接武器を叩き折られるぞ! もちろん魔法に対する抵抗力も上がっているからな!」
ガルザさんの声に焦りの色が見える。よりによって防御力主体とは……攻撃主体だったら、間違いなくさっきの一体は倒せていたはずだ。
「対策はどうしたらいいんだ!?」
同じく焦っているツヴァイの声が聞こえてくる。
「普通の個体は適当に捌いて、サージェントを真っ先に潰すしかないわ! サージェント自身の防御は上がらないから!」
ルイさんが対処法を教えるが、ツヴァイをはじめとした前衛の面子はそれどころではなくなっていた。後衛を執拗に狙う指揮を受けていると思われるツインブレイド・ホーンへの対処に追われ、とてもサージェントに攻撃を仕掛けられる状態ではない。
「ああもう! あいつら自分自身を盾にしているわ! これじゃ矢が届かないわね!」
ならば弓や魔法でサージェントをほふる……そういきたいが、残っていたツインブレイド・ホーンが積み重なって盾となり、サージェントをかばうのだ。エルの長弓からの攻撃も、その壁によってことごとく跳ね返されてしまう。
「くそっ、サージェントがこんな大部隊を率いるなんて聞いたことがねえぞ!? いつもはせいぜい五匹程度なのによ!」
ガルザさんがそう悪態をつきつつ、モンスターに向かって矢を放つ。ルイさんやガルザさんの弓から放たれた矢が甲殻に突き刺さるが、残念ながら中身を貫くところまではいっていないようだ。自分の攻撃では跳ね返されてしまうと簡単に予想できたために【重撲の矢】で攻撃してみるも、どうにも効いたような気配がしないな。
「……森よ、私に力を貸して。《フォレスト・ジェイル》」
トイさんが詠唱すると、森のあちこちからつたつるが伸びてきて、暴れ回るツインブレイド・ホーン達を縛って捕らえようとする。だが数匹を捕らえても、周りにいる個体が鋭い刃を生かして拘束を断ち切ってしまう。これも指揮を受けている故の行動なのだろうか。残念ながら成功しそうにない。
ちなみに、《フォレスト・ジェイル》という魔法は自分の知識の中にはない。エルフの固有魔法か、それとも……いや、そんな考察をしている状況ではないな。
「本当にまずいぞ! このままでは各個撃破されて、最終的には全滅するぞ!!」
レイジがそう大声を上げた。確かにこのままでは……だが、先ほどのトイさんのやり方はうまい。今のは失敗したにせよ、拘束できればいくら防御力が高くても問題にならない。ツインブレイド・ホーン達を拘束してしまえば、その間にサージェントを始末することができるだろう。そうなると……こういう手段がある。
「土の妖精さん、来てくれ!」
〈妖精招来〉による呼びかけに応じて地中から現われた岩石のような妖精さんに、相手を拘束する……言い換えれば動けなくするため、少々荒っぽい方法を頼む。
「こうやって、土で人の手を作って、がしっと掴んで逃げられないようにしてほしいんだ、ここにいるツインブレイド・ホーン全部を! MPはこれでどう?」
土の妖精に渡したMPは八〇%。つまり残っているMP全てをここで突っ込むことにした。土の妖精は頷くようなしぐさを見せ、地面の中に帰っていく……その直後。
「うお!?」「ぎゃあ!?」「なんですか!?」「なになに!?」「何が起こった!?」
ツヴァイ達の方からいくつか、驚く声が聞こえてきた。無理もない、突如土色の手が地面から無数に生えてきて、全てのツインブレイド・ホーン達を鷲掴わしづかみにしたのだから。
それはほぼ同時に行われたので、お互いに仲間を助け出すどころではない。せいぜいじたばた暴れるのが精一杯だ。それでもがっちりと掴まれているため、逃げ出すことは難しいだろう。
「今のうちにサージェントを!」
自分はもうMPが空っぽなので、ろくな攻撃ができない。サージェントへの攻撃は他の人に任せるしかない。
「任せなさい!」
さえぎる物がなくなった今、エルの長弓の一撃は最大の力を発揮する。撃ち出された矢は悠々と、無防備になったサージェントの体をぶち抜いた。
「今だ、全員攻めろおおおお!」
ツヴァイの声と共に、『ブルーカラー』の面子めんつがサージェントに向かって突撃を敢行する。エルの矢にぶち抜かれたサージェントは撤退も抵抗もろくにできないまま、あっさりと光の塵に変わった。
「残るは雑魚ざこだけよ!」
コーンポタージュの声も飛ぶ。
あとは土の手によって鷲掴みにされたままのツインブレイド・ホーンを倒すだけの、簡単なお仕事だった。サージェントが倒されたことにより異様な防御力を失い、その上動けないモンスター達は、三分を経ずして全滅。
こうして何とか勝利を収めた自分達は、揃って無事にエルフの村へと帰還することに成功した。



【スキル一覧】
〈風迅狩弓〉Lv19(←1UP) 〈剛蹴〉Lv27 〈百里眼〉Lv25 〈技量の指〉Lv12(←1UP)
〈小盾〉Lv26 〈隠蔽・改〉Lv3 〈武術身体能力強化〉Lv43 〈スネークソード〉Lv49
〈義賊頭〉Lv20 〈妖精招来〉Lv7(←2UP)(強制習得・昇格・控えスキルへの移動不可能)
追加能力スキル
〈黄龍変身〉Lv4
控えスキル
〈上級木工〉Lv32 〈上級薬剤〉Lv21 〈釣り〉Lv2 〈料理の経験者〉Lv10
〈鍛冶の経験者〉Lv21 〈人魚泳法〉Lv12
ExP31
称号:妖精女王の意見者 一人で強者を討伐した者 ドラゴンと龍に関わった者 
   妖精に祝福を受けた者 ドラゴンを調理した者 雲獣セラピスト 人災の相 
   託された者 龍の盟友 ドラゴンスレイヤー(胃袋限定) 義賊
   人魚を釣った人 妖精国の隠れアイドル
プレイヤーからの二つ名:妖精王候補(妬) 戦場の料理人
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