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魔剣の可能性

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「やっぱりお団子だよね」「ですわね〜、串に刺したお団子としか見れなくなってしまいました」「爆発等による攻撃範囲の広さなどはさすが、という所なのですが」

 とかなんとか、ブルーカラーの女性陣はツヴァイが放ったメテオに対する評価を付けていた……いや、確かに剣に刺さったメテオはお団子にも見えなくも無かったが、だからってあれだけの大爆発を起こして広範囲にダメージを与えられる攻撃を、お団子などという表現をする女性陣の剛毅さにちょっぴり引いている自分が居る。

「お団子お団子いうな! 俺だってまさかあんな方法で攻撃するとは思わなかったんだぞ! って……なんだこれ! さっきまで《メテオ・スラッシャー》と技名が表示されていたのに、《おだんごすとらいく》に変更されてるぞ!? これ、使う時は技名を言わなきゃいけないのに……技名を元に戻してくれよっ!」

 ──ツヴァイの様子から察するに、ツヴァイの魔剣が技名を変更してしまったらしい。しかもその技名が《おだんごすとらいく》と言っていたな。おそらくツヴァイの声からして平仮名表記で間違いあるまい。鎧を着込んで火の魔剣を持つ男が、必殺技宜しく技名を叫ぶところで、《おだんごすとらいく》と叫ぶのか? そのシーンをイメージした瞬間、ついブフッと吹き出してしまった。

「アーースウウウ!!!! 笑うなー! ってか魔剣様、お願いだから技の名前を元に戻してくださいお願いします! さすがに《おだんごすとらいく》なんて技名では気合も抜けてしまいます!」

 ツヴァイが切実に魔剣に向かって技名をもとの名前に戻してほしいと懇願しているが……あの様子では受け付けて貰えていないな。ブルーカラー男性陣は笑いをこらえているし、女性陣はやっぱりお団子ですよねーという感じで頷くばかり。ツヴァイの味方はこの場にはいない。まあ恐らく一時的な魔剣のいたずらだとは思うが……万が一元に戻らなかったら、ツヴァイは封印するんじゃないだろうか。と、そんな事を考えつつも、もう一つ自分は他の事を考えていた。それはメテオの定義に関してだ。

 個人的には今までメテオと言う物は、『魔法使い』が、『魔法力』を用いて、『隕石を呼び寄せて敵にぶつける攻撃』だと考えていた。しかし、先程のツヴァイの様に『どんな方法でもいいので、隕石を呼び寄せて相手にぶつける』事をメテオと称するのであれば……最近は全く使っていないが、自分の持ち技の一つである《七つの落星》もメテオの一種に含まれる事になる。もっとも、七つほど星を落とす代わりに一発一発は先程のツヴァイが落としたメテオの威力、範囲ともども敵いはしない。あくまで《七つの落星》は単体に攻撃する技なので用途が違うとも言うが。広範囲ならツヴァイの、単体に絞りたいのであれば自分のメテオを使うと言った所か? そもそも相手への攻撃を行う時に際して、メテオにこだわる必要自体がどこにもないと言ってしまえばそこまでの話になってしまうと言うオチがつくが。

「ま、まあ戦士が使える技として考えると破格なのは間違いないでしょう。大抵のRPGですと、魔法剣士は魔法のランクはほどほど止まりになる事が大半です。まあそうしないとゲームバランスが取れないと言うメタな話になるのですが……それがたとえどんな方法や技名であっても、戦士がメテオ何て大技を使えるなんてのは反則も良い所です。発動までに時間がかかるのが難点という見方もできますが、その代わりにあれだけの広範囲に爆発を巻き起こして焼き尽くすんです。魔剣の恐ろしさと、欲する人が後を絶たない理由を改めて痛感しましたよ」

 と、笑いをこらえていた姿から一転してシリアスな雰囲気を纏ってからのカザミネの言葉。

「それにしても、その身に取り込んでから更なる力が発現するとなると、魔剣は主が消えさるまでは何らかの成長をしているって事になるんだろう。真なる魔剣か……この情報が何らかのきっかけで情報が大きく拡散したら、プレイヤー同士でも揉める事が増えるだろう。何せ体に取り込めば失う心配はないし、普通の武器ではできない攻撃方法をとれる。更には先程の様な攻撃が出来るようになるとすると……誰もが欲するだろう。だが、当然のことながら、そんな魔剣が全プレイヤーに渡ることは絶対にないからな……やはり知らないプレイヤーの前では極力振るわないか、先程の様な技を絶体絶命の時以外は使わないようにするしかないだろう」

 レイジの言うことは尤もだ。そもそも、魔剣を持つと限定アーツが使えるようになる魔導剣の数が少ない。そしてその魔導剣は、現時点ではプレイヤーにはまずつくる事が出来ないと言うのが一般認識だ。稀に属性を持っている魔術剣を作っていると生まれる事があるらしいと言う噂はあるが。だが、この噂の裏付けは職人の掲示板でも取れていない。もちろん偶然完成させた職人が黙秘している可能性は否定できないけれど。

「まあ、さっきのお団子メテオは発動にも時間がかかるし、ツヴァイ君の戦闘スタイルとは合わないから基本的に封印で良いんじゃないかな。あくまでギルドメンバーでPTを組んでいる時だけ使うようにすれば大丈夫なんじゃないかな。遠くから見ていれば、まさか戦士であるツヴァイ君が発動しているとは思わないだろうし」

 ロナの意見だが、まあそれが妥当だろうな。ただでさえツヴァイは生暖かく『爆発しろ』と言われている存在だから、これ以上噂の種が増えると行動しずらくなってしまうだろう。それに、悪評を立てる奴ってのは基本的に無責任だ。冤罪なんかを一方的な思い込みや私怨などで擦り付けておいて、擦り付けられた人が無罪と判明しても自分が言い始めましたなんて自白する奴なんかまずいない。そんな奴らの標的にされて欲しくはないというのは偽りのない本音だ。

「でも、切り札が増えると言うのは良い事だと思いますわ。いざという時に切れる札が一枚でも多いと言うのは、それを知っている味方にも最後まで戦う気力を与えます。それにあれだけの隕石を直接たたきつける訳ですから、物理攻撃がが効きづらかったり魔法攻撃が弾かれやすいなどの特性を持ったモンスターが現れても、問答無用で押しつぶせる手段の一つになると予想しますわ」

 ──エリザも変わったな。これだけの意見をすらすらと述べるようになったなんて。だけど、切り札って所でエリザがポーカーをやっている姿が浮かんできたのは気のせいだろうか? エリザの博打好きは治ったんだろうか? 自分が気にする事ではないのだが、どうにも過去のイメージがちらつく。

「まあ、そうだな。確かに俺がこんな広範囲攻撃を可能とするようになったのは切り札の一つと考えていいだろう。消費MPは大きいが、これだけの範囲と威力でモンスターを吹き飛ばせるのは普通の前衛にはできない利点だな。しかも発動に時間はかかるが、その代わりに面倒な詠唱とかも無いのは助かる。これで後は技名が《メテオ・スラッシャー》に戻ってくれればなぁ」

 先程も考えたが、技名の変化はあくまで一時的な物だとは思うが……どうなんだろ? 聞いてみるか。

「ツヴァイ、それは魔剣のお遊びで一時的な物じゃないのか? そのうち戻るのでは?」

 この自分の質問に、ツヴァイはゆっくりと首を振った。

「いや、おそらくもう戻らねえ。何というか、魔剣からおだんごおだんごって喜んでるような感情? イメージ? とにかくそう言う物が流れて来てる。ざっくばらんに言うと、気に入っちゃったんだろうな。だからおそらく、もう《おだんごすとらいく》で固定されちまったと見て良いだろうぜ……どうしてこうなったよ」

 あれまあ。それじゃダメか。魔剣とは一体化してる分、そう言った物が本人にはわかるようになっている。円花だって、こっちの要請に対して『任せて!』といった感じの感情を送って来る事はよくある。どういった仕組みでそう言った物を伝えて来るのか自分には予想もつかないが、とにかくそう本人が感じるのだから仕方がない。

「まあ、その、なんだ。頑張れ?」

 何とか絞り出した自分の言葉に、ツヴァイは右手を重々しく上げて応える。それにしても、今回の一件。この自分の右手と一体化した円花も、何らかの技を追加で身につけてくる可能性があると言う事を示したと言っていいだろう。ましてや、円花は多くの人間に使われた過去を持つ魔剣……そこから予想されることは、過去の使い手の技の模倣。更に言うのであれば、使い手が一番得意とした殺しの技。自分は弓使いであると同時に盗賊でもある。そうなるとツヴァイのような派手な物を円花が修得させるとは思えない。それよりは多くの血を流した殺しの技、まさに本当の意味で『必ず殺す』技の模倣を習得する方が可能性としては高いだろう。円花が思い出したくないと言って教えないかも知れないが、それならそれでいい。こう言う物は無理強いすべき事ではない。

「アースの方で発動したら呼んでくれよ? 変な名前を付けないとな」

 をいツヴァイ。目がちょっぴり危ないから思いとどまってくれ。
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