トップ>小説>転生貴族の異世界冒険録〜自重を知らない神々の使徒〜
49 / 112
第二章 学園・冒険者編

第十二話 カイン凹む

しおりを挟む
「それって国宝クラス……」

 リナはそう呟いた。
 そしてカインを見つめる。

「カインくん、どうしてそんなものが作れるのかな……」

 カインの両肩をしっかりと抑えて、リナは問いただす。

「……いえ、勢いで……」

「私たちもバッグの容量が少なくて大変なのよね……」

 リナはチラチラとこちらを見てくる。
 期待をするリナの目にカインは折れた。

「はい……。喜んで作らせていただきます……」

 リナは先ほどとは違って、満面の笑みを浮かべた。

「さすがカインくん!素敵だわっ!旦那クロードがいなかったらねぇ〜」

「さすがにここでは作れないので、今度渡しますね」

「うん!わかったわ。よろしくね」

 リナは満面の笑みでジョッキに口をつける。

「カイン……すまんな。うちのリナが……」

 クロードが申し訳なさそうに声を掛けてくる。

「いいですよ。作り始めたらすぐできますから。それよりも相談があるんですが……」

 カインが真面目な顔になったことで、一同が真剣な顔に変わる。

「盗賊から襲われた時に、盗賊が奴隷商人に売りつけるって聞いたんですよ。誘拐した人を奴隷商会が扱うのは不法奴隷ですよね。それで盗賊どもを尋問したのですが、そこでナルニス商会が引き取ってくれると聞いたんです」

「ナルニス商会か……あそこはかなりの大手商会だからな。後ろ盾に上級貴族もついてると思うぞ」

 カインの頭の中では、グラシア領で開かれたカインのお披露目会にきた、コロン臭い支店長を思い出した。

「やはりそうですか。グラシア領にも支店があるのですが、五歳の時のお披露目の時に「なんでも用意する」と言われましたからね」

「盗賊どもの口だけじゃ証拠にならんからな。今回盗賊どもが捕まったことで少し落ち着くといいんだがな」
 
 クロードも飲みながら考えている。

「そういえばカインはそろそろ帰る時間じゃないの?」

 そういったのはリサだった。

「随分早い帰りじゃない?」

 ミリィから言われたが、明日は学園がある日だ。先週三日間サボったので今週は行かないといけない。

「そういえばカインは学生だったな、それなら仕方ないか」

「十歳は早く帰ってねるんだな」

 クロードにいじられながら、皆で楽しく飲んでるところから一人寂しくカインは帰路についた。

 カインが帰ったあとに、レティアが飲み処に入ってきた。

「あれ?クロードさん、カイン様はまだおられますか?」

「カインなら、もう帰ったぞ。明日学園だってことで」

「そうですか、実はですね、明日学園の冒険科のほうから依頼で授業をするように言われてた冒険者が、負傷したせいで急遽代理を探しているんですよ」

 全員がニヤリとした。

「レティア、ちょっと詳しく聞かしてくれ」

 全員が怪しい笑顔になったのは言うまでもない。




 ◇◇◇



 次の日、学園に登校し基本授業を2時限受ける。次の時間は魔法科の選択授業だった。
 新しい魔法を覚えられるかと思って、カインは少し楽しみにしてた。

「それでは魔法科を教えるメリッサだ。得意魔法は火と風だ。これから自分の得意だと思う魔法をあの的にぶつけてくれ。終わったあとに悪いところがあったら言うから。それと、カイン・フォン・シルフォードはいるか?」

「はいっ!います」

 カインは期待して手を上げた。

「お前は学園内での攻撃魔法は禁止になった。ここの結界ではお前の初級魔法でさえ耐えられないそうだ。この授業は見てるだけな。学園長は単位をそのまま渡していいって言われてるぞ。攻撃魔法意以外なら参加は問題ないが、今日は攻撃魔法の授業だからダメだな」

「……」

 カインはせっかく魔法科を選んだのに、何もすることはなかった。

「メリッサ先生、図書館で自習してていいですか……」

「うむ、それでいいわ。見てるだけでは暇だからな」

「……わかりました。行ってきます……」

 カインは授業で何もできずに魔法科の授業は終わった。


 ◇◇◇


 昼食後は冒険科の選択授業になった。

「冒険科担当のボウガンだ。専門は剣士をやっている。今日は特別に、ギルドから冒険者が先生として来てくれた」

 扉が開き入ってきたのはリナだった。

 いや、一人ではなかった。そのあとにクロードが入ってきてそしてミリィとニーナまで……。

 四人の冒険者たちが教壇に並んだ。

「本当なら、Cランクの冒険者の予定だったがAランクのクロードさん、リナさん、Bランクのミリィさん、ニーナさんが今日の講師で来てくれた。みんな拍手」

 上級冒険者が来てくれたことで、冒険科を選択した生徒達は大騒ぎだ。男子生徒は女性三人の講師に見とれている。

 カインは何も言わず下を向いた。

「昨日そんなこと一言も言わなかったのに……」

 思わずカインは呟いた。

 クロードが教壇に代表して立った。

「冒険者ギルドから来たランクAのクロードだ。入学試験でも実技試験を担当させてもらったから知っている人もいると思う」

 そう言いながら、カインを見つけにやけている。

「入学して、この冒険科を選んだということは、これから冒険者登録をしていくことになると思う。これから一人で依頼を受ける場合もあるし、俺らみたくパーティー組む場合もある。それは個々の力量になるから、過信し過ぎずにやってもらいたい。過信しても本人が死ぬだけだ」

 『死ぬ』という言葉に生徒達は震え上がった。

「この中で冒険者登録しているのはどれだけいる?」

 クロードの質問に全員の生徒が手を挙げた。さすがに冒険科を選択したこともあり事前に登録をしていた。

「全員が登録できているようだな。ギルドカードを持っているやつは出してみろ」

 クロードはこちらを見ながら言ってくる。
 持っている生徒は皆登録したばかりなのでアイアンカードだ。
 皆見せ合ったりしている。さすがにカインはカードを出さなかった。
 一人だけゴールドカードを出すわけにはいかなかった。

「ん?カインくんはカードは持っていないのかな?」

 クロードはニタニタと笑いを堪えながらカインに問い掛ける。

「すいません。今日は忘れました」

 カインはギルドカードを出すわけにもいかず、忘れたことにした。

「皆、ギルドカードはな自宅にいる以外は必ず持ち歩くように!何かあったときの身分証明書になるからな。カインくんも忘れずに持ち歩くようになっ!」

 クロードはカインの肩を二回叩きそのまま回り始めた。

アイアンじゃないの知っていて言いやがった……」

 ミリィとニーナのほうを向いたら、視線が合った途端に目を逸らされた。そして肩を震わせ笑いを堪えている。
 それから一時間ほど、野営についての準備だったり、依頼についての確認事項などを説明していった。
 そして実技の時間だ。
 クロードに仕返ししてやろうと、カインは息巻いていた。

「さっきの仕返ししてやるからな……」


「それでは、身体強化の状態での練習を行う。冒険者はいつ武器がなくなるかもしれん。身体強化ができたものから組手を行う。はじめっ!」

 生徒が得意分野に別れた。
 クロード、ミリィには剣術組、リナとニーナのところには魔法組が集まっていった。
 もちろん、カインは迷わず剣術組を選んだ。

「一人ずつ相手をしてやる。順番にかかってくるんだ」

 クロードはそう言って身体強化ができた生徒から順番に相手をしていった。
 カインは最後まで待っていた。復讐を行うのを。
 そして最後のカインの番になった。

「クロード先生、よろしくお願いしm「キーンコーンカーンコーン」す……」

「今日はここまでだな」

 授業が終わるチャイムだった。クロードが終了の合図をする。



「……」


 カインはプルプルと震えていた。
 クロードはカインの肩を叩いた。

「今日は時間がなかったからまた今度な。あ、教師の依頼は今日だけだけど」

 クロードは笑いながら去っていった。

 その日カインは一言も学校で言葉を発しなかった。
 負のオーラを撒き散らし、テレスもシルクも近くに寄れなかった。

 学校の帰り道、カインは制服のまま王都を出てグラシア領にある魔物の森に転移した。
 森の奥まで歩いてひらすら進んだ。
 途中にあるものを全てなぎ倒して一直線にだ。
 そしてレッドドラゴンの住処だった高さがある程度ある岩山まできた。

「クロードのバカヤロー!!!!!!!!」

岩石流星群メテオ

 カインは山に向けて放った。火と土の超級魔法を複合したものだ。
 空から流星のように数メートル級の燃え盛る岩が流星のようにいくつも群をなして降ってくる。
 地面にいくつものクレーターを作り、煙は天高く立ち上がり、岩山があった場所は既になにもなくなっていた。

「ふぅ、すっきりした」

 溜まっていたうっぷんを魔法ですっきりとさせたカインであった。

 その日グラシア領からは、天から燃える岩が群で魔物の森に降ってくるのが見えた。
 そして大きな地震が観測され、煙が天まで立ち上るのが見えたおかげで領内が大騒ぎとなった。
 すぐに王城に連絡がいき、王都から調査のために騎士が派遣された。
 騎士が見たものは、魔物の森の一部が五メートル幅で一直線になぎ倒されており路が出来ていた、そしてその先にはクレーターがいくつもあるおぞましい風景だった。

 その光景を見た騎士はみんな言い合った。

「魔王がでたのかも……」

 そんなことも知らずに、大魔法をぶっぱなしすっきりとしたカインはまた普通の生活に戻っていった。



 後日、カインは王城に呼ばれた。
 陛下と宰相が目の前に座っている。

「実はな、数日前にお主の父親であるガルムから至急の連絡がきた。魔物の森に魔王が出現したかもしれないとな」

「魔王ですかっ!?」

 陛下の言葉にカインは驚いた。

「うむ。そうじゃ。森は数メートル幅で削り取られ、天空からは燃え盛る岩の群が降り注ぎ、大きなクレーターをいくつもつくっていったのじゃ。この災厄がグラシア領に向かったりしたら……そう思ってお主を呼び出したのじゃ。使徒として神からの啓示はなかったのか」

 陛下と宰相は本気で悩んでいた。

 そしてカインは心当たりがありすぎて脂汗をかいていた……。

「いや……そ、そ、それはないかと……。ただの天災ではないです……か……ね?」

 カインがソワソワしていることに、陛下は気づいてしまった。

「カイン……。お主、言わないといけないことがあるんではないか?」

 二人からの冷たい視線が突き刺さる。


「「「……」」」

 無言でカインと陛下は見つめ合った。

 数分の沈黙が続いた。

 そしてカインが白状した。

「すいません……イライラして、つい魔法を放ちました……」

 カインは三日ほど王城で説教されるために学園をまた休んだ。



 


しおりを挟む