トップ>小説>転生貴族の異世界冒険録〜自重を知らない神々の使徒〜
61 / 94
第三章 学園・領主編

第四話 ドリントルの街の歓迎会3

しおりを挟む
 冒険者ギルドを出たカインは領主館に向かった。
 場所がわからなかったので、巡回をしている衛兵に聞いて領主館に向かっていった。
 この国のほとんどの街では領主邸と代官邸があり、領主が王都に向かったときは代官が代わりに街を治めている。
 この街は冒険者の街ということもあり、武器や防具、魔道具等色々な店があった。
 途中で美味しそうな匂いにつられて一軒の屋台ヘ寄った。

「おじさん、串焼き一本ちょうだい! いい匂いだねっ」

 串焼きを焼いているおじさんは子供の冒険者に見えるカインに気づき笑顔で話しかける。

「お! わかってくれるね、坊主。一本銅貨三枚だ。今焼きたてをやるから少し待ってろよ」

 串焼きをくるくると回しながら焼いたあと、再度タレにつけてまた焼き始めた。

「ほらよ、焼きたてはうまいぞ」

 カインは焼きたての串焼きをもらい、銅貨を払う。
 そしてそのまま串焼きにかぶりつく。

「あちちっ。でも美味しい!!」

 子供の冒険者に見えるカインが食べてる姿を見て、屋台の親父も笑顔になっていた。

「そういえば、この街ってどうなの? 今日きたばっかりなんだ」

「なんだ? 今日きたばかりなのか。この街は冒険者が多いからな。冒険者が狩ってくる魔物の素材がを加工して売る店が多いかな? この肉も冒険者たちが狩ってきたオークの肉の串焼きだぞ」

「そうなんだ。オークの肉も美味しいね。このタレがよく染み込んでるよ。さっきもギルドに顔出したら、絡まれたしあんまり治安がいいとは思えないからさ」

「この街は領主は代々、ギルドの圧力で逃げていっちまうからな。それだけ冒険者が多いしな、代官が治めてるけど最低限のことしかできない。ギルドマスターは陽気な人だからいいんだが、裏で動いているサブギルドマスターには気を付けろよ? あ、俺から聞いたなんか絶対に言うなよ」

「ふーん。サブギルドマスターね! 気をつけるようにするよ。おじさんありがとう!」
「また買いにいこいよっ!」

 カインは屋台の親父に手を振って領主館に向かって歩いていく。
 領主館は中央広場から北に行った方にあった。
 そして領主の門には衛兵が二人立っていた。領主の門に近づくと衛兵が話しかけてきた。

「冒険者のようだが、ここは領主館だ、代官様しかおられないが何もなければ立ち去るが良い」

「今日は代官はいますかね、この度この街の領主となったカイン・フォン・シルフォード・ドリントルがきたと伝えて下さい」

 カインは無限収納アイテムボックスから出しておいた就任証明書を出し衛兵に渡した。

「こ、これは領主様、すいません、すぐにエライブ様にお伝えしてきます」

 衛兵の一人は、カインに就任証明書を返し、そのまま中へ入っていった。
 待つこと数分、先ほどの衛兵ともう一人が門に向かってきた。

「これはこれは、カイン子爵、お待たせして申し訳ありません。ここの代官をしておりますエライブと申します。王城より通達は来ております。それにしても早いおつきでびっくりしました。まずは中でお休みください」

 ドリントルの代官であるエライブに案内され、領主館の応接室にきた。ソファーに座り対面にエライブが座った。

「いきなりきてすいません。冒険者としても登録しているので、この街が王都で聞いた通りなのか確かめにきました。門でも冒険者として入ってますので」

 カインは冒険者の格好をしていた。他の人が見れば登録したばかりの新人冒険者に見える。まさか領主と思う人はいなかった。

「この街のことは聞いてるとは思いますが、代官として申し訳なく思っております。ギルドの冒険者たちの人数は千人を超えており、ギルドマスターを筆頭に行政の言うことを聞くことはありません。ギルドから税収を収めることを拒否されているので、ここの住民たちからの税収のみで運営しております。だから赤字運営となっており、直轄地ということで国からの補助金でなんとかしておりました」

 申し訳なさそうにエライブが答えた。他の街では依頼者が冒険者ギルドに依頼する場合には、税金とギルド運営に関する手数料が引かれることが一般的だ。それにより、街に冒険者ギルドを配置するのを領主が許可しているのだ。千人以上の冒険者たちが税を納めてないということはこの街では問題だと思う。やはりギルドが行政とうまくいってないことがよくわかった。

「ここに来る前に色々と見て回りましたが、街の住民は問題なくできているように思えましたが……」

 先ほどの串焼き屋といい、武器や防具屋、魔道具屋などはそれなりに繁盛しているように見えた。

「冒険者たちはあまり金を貯めないですからね。いつ失くなるかわからない命ですから、依頼料をもらったら街で消費してくれるのはありがたいのですが……。いつも酒場では揉め事が起きて衛兵が駆けつけています」

「まずは、この街の普通の状態にしないといけませんね。明日までいますので、まずは冒険者ギルドと会談をしましょう。領主になったので挨拶もしておく必要がありますし」

「それでは、明日会談を行うために、領主邸までくるように使いのものを出します。今日はこちらにお泊りになりますか?」

「いえ、急な訪問でしたし、今日は街の宿屋に泊まろうと思います。もう少し街並みを見たいですし」

 カインとしては、もう少し街並みを見たかった。実際に自分の目で見て確かめたかった。

「それでは、明日の午後に手配をいたします。こちらで昼食の用意はしておきますので、昼前までに起こしいただければありがたいです」

 エライブは終始申し訳なさそうに答える。あのギルドでは仕方ないかとカインは思う。

「あ、カイン様、南門付近から裏に入っていくと、スラム街がありますのでそこはご注意ください。なるべくそちらには近づかないように……」

 スラム街があることにカインは驚いた。

「この人数の街でスラム街があるんですか……」

「はい、冒険者ギルド崩れだったり、亡くなった冒険者たちの子供などが集まってしまって……細かいことは私もわかっておりません」

「わかりました、そちらには近づかないように気をつけます。ではまた明日きますね」

 カインはエライブに返事をし、領主邸を出た。西門のほうへ歩きながら色々な店を覗きながら歩いて行った。昼食時間少し前だったが、カインは美味しそうな匂いを出している店に入ってみた。

「はいっ! いらっしゃい! おとまりですか? それともしょくじ?」

 迎えてくれたのは、カインより年下の猫耳をした女の子だった。

「とりあえず、飯かな?」
「わかりました。こちらへどうぞ」

 小さい子の案内でカウンター席に座る。厨房から匂ってくるいい匂いにカインの意識を厨房に向けた。

「日替わりでよろしいですか。今日はトロール肉のステーキです」

「うん。それでいいよ。あと果実ジュースもつけて」

「わかりましたー」

 猫耳娘は厨房のほうへ駆けていった。

「おとーさん! 日替わりひとつ!」「はーい!」

 厨房の中から父親らしき声が聞こえた。
 食事を出るまでカインはこの街について考えてみた。

「冒険者ギルドは明日会うからいいだろ。あと、さっき聞いたスラムか……。孤児に関しては孤児院みたいなのを作ってなんとかするか。あとは冒険者ばかりだから一般の人の仕事の斡旋か……」

 色々と考えていると、いつの間にか食事が出てきた。

「おまたせー!」

 女の子がお盆に食事を乗せて持ってきてくれる。

「ありがとう、手伝いしてるのかい? えらいね」

 その猫耳娘から、料理の入ったお盆をもらう。

「うん! 今、おかーさんが病気で寝込んでるからわたしが手伝いしてるのっ!」

「そっか……。教会にいってないのかい?」

 カインはその娘に聞いてみた。
 途端に、その猫耳娘がシュンとしてしまった。

「教会……。行かせたいけど、そんなお金ないし……」

 教会で回復魔法をかけてもらえることは知っていたが、お布施程度で問題なかったとカインは思っていた。

「そっか……。回復魔法使えるから治してあげようか」

「えっ!? ほんと!? おとーさんに聞いてくる!」

 猫耳娘は走って厨房に行ってしまった。

「とりあえず、食べるか……」

 出された食事に手をつける。トロールの肉は適度に脂身がのっていてとても美味しかった。つけているタレがさっぱりとしてこの肉と合っている。一緒に出されたスープも野菜のダシが染み出ていてとても美味しかった。

「うんっ! 美味しい!」

 食事をしていると、猫耳娘に連れられたお父さんらしき人が出てきた。

「ここの食事美味しいですねっ!」

 カインは素直にそう言う。猫耳父は嬉しそうな顔をして答えた。

「そう言ってくれると、つくってるほうとしてもありがたいです。それにしても娘に聞きましたが回復魔法を使えるということで……。お礼はそこまでは出せませんが是非ともお願いします」

「わかりました。食べ終わったらやりましょう」
「ありがとうございます」

 猫耳父は必死に頭を下げてお礼を言った。
 食事を済ませて、料金を払い、そのまま奥の住居スペースにカインは案内された。

「それにしても、教会での回復はそんなに高いのですか?」

 カインは知らなかったので猫耳父に聞いてみた。

「ここの街の教会では、ヒール一回で大銀貨一枚です。ハイヒールは金貨一枚になります」

 ヒール一回で日本円で十万円で、ハイヒールについては一回百万円ということにカインは驚いた。

「たかっ!!! 王都でもそんなにしませんよ。さすがにそれはおかしい……」

 案内された先では、母親らしき人が布団に入って寝ていた。顔色を見てもあまり良さそうに見えなかった。猫耳娘は布団から出ていた母の手を握っている。

「妻のヒミカです。よろしくお願いします」

 猫耳父は申し訳なさそうな顔をしている。
 寝ている母親のすぐ横に座り、カインは手をかざした。

『ハイヒール』

 その瞬間に、寝ている母親は白い光に包まれた。
  

 ◇=======================◇
 いつもご愛読ありがとうございます。
 長くなっていたので、今回はこの辺で・・・・。
しおりを挟む