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第三章 学園・領主編

第八話 ドリントルの暴れん坊領主1

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 ガルムの馬車で家まで送られてきたことにより、カイン邸の門番は驚いていた。

「おかえりなさいませ、カイン子爵様」

「ただいま」

 門番の二人に手を振りながら中に入っていく。
 扉を開け、中に入るとシルビアが待っていた。

「お帰りなさいませ、カイン様、今日帰ってくるのか心配でしたよ」

「学園行かないとテレスとシルクから文句を言われるからね」

「たしかに心配されて毎日こられますからね」

 シルビアの答えに無言でカインは頷いた。
 部屋に入り、革鎧を脱ぎ平服に着替える。
 その日は屋敷で食事を済ませゆっくりと休んだ。


 部屋に差し込む日の光を浴びて目が覚める。

「今日からまた学園か、頑張らないとな」

 食事を食べいつものように学園に登校していく。
 授業を受け、テレスやシルクと話しをしながら日々が過ぎていく。

 そしてまた明日から二日間の休みとなった。学校から帰ってきてすぐに冒険者の格好に着替え、旅装を整える。

「コラン、シルビア、またドリントルの街に行ってくるので家のことよろしくね」

 カインの言葉にコランとシルビアの二人が頷く。

「いってらっしゃいませ。そのうち私たちもまた連れて行ってくださいね!」
「家のことは私たちで管理しておりますので安心してください」

 二人に挨拶をして、その場で長距離瞬間移動ロングワープを使った。

 二人だけには、転移魔法を使えることを先週打ち明けたのだ。さすがにいちいち王都の門を出ていたのでは面倒なこともあり、屋敷から直接ドリントルに飛べることを知った二人は驚いていた。
 試しに、二人の肩に手を当てて長距離瞬間移動ロングワープを使ったら問題なく使えたので一瞬だけドリントルに連れて行ったのだ。一瞬で視界が変わったことに驚き、二日の距離を一瞬で転移したことにさらに二人は驚いた。シルビアに関しては目を輝かせもっと色々なところに連れて行ってほしそうだったが、さすがに多用するのは断った。
 転移魔法に関しては空間魔法の素養があり、尚且つ相当な修行が必要とされており、伝説級の魔法となっているため現在使用できる魔導師は確認できていないとのことだ。

 視界は一瞬で変わり、ドリントルの街の入口近くに転移する。

「一週間ぶりだな。今週も色々と調べないといけないけど、もう夕方近いし明日からだな。夕飯はっと……たまにはエナクの顔でも見に行くか」

 門でギルドカードを提示しそのまま門を潜り、猫の和み亭に向かった。
 宿の扉を中に入っていくと、相変わらずエナクがホールを動き回っていた。

「いらっしゃーあ、あっ! お兄ちゃん! いらっしゃい」

 エナクはカインに気づいて、お客さんにプレートを出したあとにすぐにこっちにきた。

「カインお兄ちゃん久しぶり! 今日は、ごはん? とまり?」

 エナクはおしりの方から出ている尻尾がゆっくりと振られている。

「今日は泊まらせてもらうよ。夕飯もお願いね」

「はーい! この前の部屋空いてるからそこに泊まっていいよ。あれからお母さんも元気なんだ! ハイ、301号室の鍵ね。お代は大銅貨六枚だよ」

 カインはその場で銀貨を払い、鍵を受け取った。

「すぐに夕飯できるから、着替えたら降りてきてね」

 エナクはお代を金庫にしまうと、そのまま手伝いに戻っていった。
 夕暮れときもあり忙しそうにしていたので、カインはそのまま階段を上り、前回泊まった部屋に一度入った。荷物は全て無限収納アイテムボックスに入っているので、着替えただけだ。平服に着替えた後、部屋を出て食堂に向かった。

「あ、カインお兄ちゃん、もう用意できてるよ! お父さん、お母さん、カインお兄ちゃん来たよー?」

 エナクが呼んだこともあり、厨房から二人が出てきた。

「いやー、カイン様また来てくれてありがとうございます。カイン様のおかげでヒミカもこのとおりすっかり良くなりました」
「カイン様、ありがとうございます。あれから具合も完全に良くなったので、こうしてお店をがんばれてます」

 ダッシュとヒミカが厨房から出てお礼を言いに来てくれた。

「ヒミカさんも具合が良くなってよかったですね。そのうち教会も少しよくなるといいんですが……」

 カインはまだ行っていない教会のことを考えながら返事をした。

「そういえば、先週新しい領主様が就任されたと聞きました。今までの領主様では何も変わらなかったのですが、今回少しは良くなるといいんだけどな……」

 ダッシュの話にカインは苦笑いした。さすがにこの場で「領主です」とは言えなかった。

「そうですね……。きっと変わってくれるといいですね……」

 カインにはそう答えるのが精一杯だった。

「今日は、いいミノタウロスの肉が入ったんですよ。なかなかBランクの魔物の肉は手に入らないのでステーキを焼きますね」

 ダッシュはカインが来たことで喜んで厨房に戻っていった。

「あらあら、あなたったら……。カイン様、もう少しで出来ますから少し待っててくださいね」

 一言だけ言ってヒミカも厨房へ戻っていった。
 カインはカウンターに座り、先に出されたフルーツジュースを飲んでいた。
 エナクは冒険者が数人いることもあり、ホールを一生懸命回って飲み物を出している。
 その姿を遠目で見ながら、時間を過ごしていた。

「カイン様お待たせしました。ミノタウロスのステーキです」

 ダッシュがわざわざ持ってきてくれた。カインの目の前に置かれたステーキは肉厚があり、食欲をそそるソースがかけられていることで、その匂いがカインの鼻をくすぐった。

「ありがとうございます。さっそくいただきますね」

 カインはナイフを一口大の大きさに切り分けて、フォークで刺し肉を口に放り込む。噛めば噛むほど肉汁が湧き出て口の中が旨さでいっぱいになった。

「これは美味いっ!!」

 パンを肉汁のたっぷり入ったソースにつけて食べても格別だった。
 夢中で食べていると、また四人組の少し柄の悪い冒険者らしき客が入ってきた。

「おぅ、邪魔するぜっ」

 ずかずかと店に入っていき、自分の思ったところのテーブルを囲んだ。

「おい、とりあえずエール四つもってこい」

 すでに冒険者たちは少し酔っているようだった。
 エナクは「ハイッ」って返事をし、厨房にオーダーしていた。
 そして両手に一つずつの二つのジョッキを持ってテーブルに運んでいた。
 二往復してやっとジョッキを置くことができたのだが、それでも酔った冒険者たちには遅かったと思われたようだった。

「おせーよ」

 そう言って、酔っ払い冒険者の一人がエナクの後ろから蹴りをいれた。

「痛っ」

 エナクはまだ小さいこともあり、勢いよく転んだ。

「ぎゃははは、このガキ転んでるぜ」
「足どっかに引っかかっちゃったのかなぁ」
「「ぎゃはははは」」

 大笑いしている冒険者をよそに、カインは立ち上がった。
 冒険者たちの柄が悪いこともあり、エナクに気を向けていたからすぐに気づけた。
 カインはすぐにエナクの元へ向かった。

「エナク、大丈夫だったかい? 『ヒール』」

 カインは倒れているエナクを起こしてあげ回復魔法を唱えた。
 エナクはその瞬間に白い光に包まれた。
 光が収まるとエナクの痛みは消えていた。

「あれ? お兄ちゃん、もう痛くないよ」
「うん、それならよかった。ちょっと用事ができたから待っていてね」

 カインはエナクを立ち上がらせ、蹴り飛ばした冒険者のほうを向いて睨みつけた。

「お、ガキ同士仲良くやってるか! こっち見てないで二人でママゴトでもしてろよ」
「「「ぎゃははははは」」」

 カインの視線に気づいた酔っている冒険者は、カインとエナクの二人の姿を見てさらにからかった。

「おまえ……エナクに向かって蹴りを入れたな……」

 カインは冷たい視線を向けながら話かけた。
 
「おい、ガキ、俺たちはBクラスだ。口の利き方に気を付けろよ? 教育すんぞ」
「「「ぎゃははははは」」」
 
 蹴りをいれた冒険者の一言で他の仲間が大笑いしている。
 カインはその四人に向かってゆっくり歩いていく。
 それに気づいたエナクがカインの袖を引っ張り止めようとする。

「カインお兄ちゃんダメだよ。相手はBクラスの冒険者だよ」
「大丈夫だよ。こんな酔っ払いの雑魚冒険者より僕のほうが強いから平気だよ」

 カインはエナクの方を向き頭を撫でてあげる。
 しかしその一言で酔っ払いの冒険者たちが殺気立つ。
 そして四人の冒険者がジョッキをテーブルに叩きつけ立ち上がる。

「ガキには教育が必要みたいだな……」

 四人の冒険者は先ほどまでとまったく違う表情をしていた。
 カインはゆっくりと四人に向かって歩き始める。
 周りで飲んでいる他の客もその様子に喉を鳴らす。
 そしていきなりカインが消えた。 

「「「「えっ」」」」
 
 周りの客はいきなりカインが消えたことに驚いた。
 その瞬間に、四人の冒険者たちは外に投げ出されていた。

「「「「「えぇぇぇぇっ!!!!!」」」」」

 そして、四人がいきなり扉が開き、外へ投げ出されたことでさらに驚いた。


  
「この店で暴れたら迷惑がかかるでしょう。外に行ってお話しましょうね」

 そしていきなり現れたカインは、外に投げ出した冒険者たちに向かって黒い笑みを浮かべた。


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 いつもご愛読ありがとうございます。長くなったので二話に分けます。
 そして、保存しようと思ったらタイムオーバーに……。三千文字が消えた(泣)









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