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第三章 学園・領主編

第十二話 襲撃事件1

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「では、また話しましょう。夏休みになったら学園も長期休暇になりますから、少しドリントルで落ち着ける予定なので」

 カインは席を立ち、ギルドマスターのリキセツと握手をした。

「こちらこそ、いつでも声を掛けてください」

 応接室から出てきたカインは、受付嬢からの熱い眼差しを受け、不思議に思いながらギルドから外に出た。
 まだ領主邸に戻るには早い時間なので、街の武器屋や防具屋などを覗きながら、領主邸まで戻ってきた。
 文官からエライブは出かけていると教えられ、一人で執務室に籠り書類の決済をすすめていた。


 ◇◇◇
 

 カインが執務室に籠っている頃、薄暗い部屋には四人の男女が椅子に座っている。全員の顔が機嫌が悪いようで額にシワを寄せている。

「今日はいったいなんなのよ。あんまりギルドを抜けるわけにもいかないのよ」

 最初の言葉を発したのは、サブギルドマスターでもあるベティだ。

「今日集まってもらったのは、他でもない。あの領主小僧のことだ。今日、教会に来たのだが、あいつが王都の教会に告発すると断言して出て行きやがった。このままではまずいだろ。査察が入った場合、お前らの企みも全て明るみにでるぞ」

 両手に指には色とりどりの宝石を散りばめた指輪をつけて、重たそうな体を揺すりながらスタッグが、酒臭い息を撒き散らしながら息巻く。いかにも成金の装いをしていれば、誰でもそう思うだろうと、他の三人が溜息をつく。

「こちらも少し問題が起きた。新しく内政官が来ることになった。街全体の税収の査察が入ることになると思う。今のままでは問題になりそうだ。私たち全員が捕らえられることになるかもしれん。早々に始末する必要がある。リック、人の手配を頼む。必要ならベティからも人手を出せ」

 中央に座っていた男が話し始めた。

「わかったよ。こっちはスラムの闇ギルドのメンツを集めておく。決行は今日の夜でいいよね。明日、王都に帰られたらスタッグは問題だろ? それに王都に向かう時に襲ってもいいが、冒険者ランクAでしょ? こちらの被害も大変なことになる」

 黒いフードを被り、あまり顔を見せないようにしていたリックが答える。

「私も、数人集めておくわ。目の前で魔法を見たけど、あれは日中、正面から襲っても、返り討ちに合うだけだと思うし、寝込みを襲うのなら問題はないはずよ」

 ベティはあのギルドの訓練場での出来事を思い出して、震えあがった。

「準備が出来たら、鍵は私が開けよう。正門は夜間も衛兵が立っているからな。裏口から入れるようにしておく。あとは、いざという時のために……」

 中央の男は不気味な笑い方をした。
 そして男の続けた言葉に皆が頷いた。


 ◇◇◇


 夕飯時にはエライブも戻ってきており、一緒に食事をした。
 領主邸での食事は、来客がない場合、基本的に代官と二人で食事となっている。そこで情報交換をしながら食事をしている。

「カイン様、教会のほうはどうでしょうか」

 エライブはワインを口にしながらカインに尋ねた。

「あの教会については、王都に戻り次第、教会本部に話すつもりです。グラシア領にいた時もそうでしたが、司祭は謙虚でないといけません。両手の指に指輪をいっぱいつけて、昼間から酒を飲んでいるなんて考えられない。新しい司祭を派遣してもらうことになると思います」

 カインは王都やグラシア領での教会を知っている。教会に絵画や装飾品などあるはずもなく、質素な生活を送っていた。それが当たり前だと思っている。

「そうですか……。そこまでひどいとは。今まで約束を取ろうとしても、いつも反故されてしまい、中々会うことができなかったのです」

 エライブは残念そうな顔をして、ワインを飲み干していく。

「明日は、早めに王都に戻ることにします。色々と回らないといけないとこがありますので」

 カインは早々に食事を済ませ、風呂に入り寝室で寝間着に着替えた。
 部屋の窓から外を見ると、賑やかに夜の明かりが街並みを彩っていた。
 この街は、冒険者が多いこともあり、飲む場所も数多く、娼館もあると聞いている。
 窓の外を覗いていると、遠くからの視線が急に気になった。

 『世界地図ワールドマップ敵対表示』

 カインが魔法を唱えると、視界の片隅にこの周囲地図が浮かび上がってくる。
 そして敵対を表す赤印が、いくつか屋敷を囲うように地図に表示された。
 この魔法は、以前、カインが創造魔法で作った世界地図ワールドマップと、探査サーチを組み合わせたものだ。

「教会に行った途端にさっそくか……」

 カインは溜息をつきながら窓を閉め、寝間着から冒険者の装いに着替えた。部屋を明るくしていたランプを消し暗闇の中で椅子に座りながら、ただじっと待つ。
 
「この街では驚かすから呼べなかったけど、今日はいいよな」

召喚サモン「ハク」「ギン」』

 部屋に魔法陣が浮かび、中から神狼フェンリルのハクと、神龍のギンが現れた。

「ワフゥ」「キュイィ」

 ハクとギンはカインに呼ばれたことを喜び、カインに纏わりついてくる。

「ほらほら、ハク、くすぐったいって、そんなに顔を舐めないでよ」

 ハクは実際の大きさよりも少し小さいサイズで召喚したが、それでも二メートル位ある。
 ギンも翼と首を伸ばせば、二メートルほどの大きさまで育っているが、ハクより小さく一メートル位になっている。何かあれば自分で大きさを変えられるから、特に心配はしていない。

「ハク、ギン、聞いて。たぶんこの屋敷は夜中に襲われる。一人で始末してもいいけど、ここに住んでいるメイドさんたちもいるから、助けてくれるかな」

「ワフゥ」「キュイ!」

 両者とも頷いた。眠気防止と最近かまってあげられなかったこともあり、ハクとギンを撫で回し堪能しながら、視界の隅に表示された赤いマークを眺めていた。深夜となり、赤いマーキングが次第に増えていく。数えていくと五十は超えてそうだ。

「まさか、こんなに集めてくるとは……」

 カインはそんな人数に負けるつもりはないが、一人のためにそこまで準備するとは思っていなかった。そして日を跨いだ時間になり、急に赤いマーキングが動き始めた。
 赤いマーキングは正面の数名を除いて、全て裏口に回って行くようだった。そして何ごともなく敷地内に入っていく。

「誰かが手引きしているのか……」

 カインは溜息をつき、剣を持ちながら部屋から出て行く。
 カインの後ろからは、ハクとギンがついてくる。ギンは屋敷の中では飛べないのでハクの背中に乗っている。
 寝室のある三階から、物音を立てずにカインは階段を下りていく。赤いマークで表示された人たちは、裏口から屋敷に入り、正面玄関を入ったすぐのホールに集まっている。
 屋敷内を探されても、メイドたちが襲われる可能性があると思い、カインは自らその敵地に乗り込むつもりだった。
 そして、二階からホールに降りる階段にカインは立った。




「やぁ。こんな時間に来客かい? ずいぶん物騒な恰好しているね。僕は呼んだつもりはないけど」

 ホールに集まって準備をしている襲撃者たちに、カインの黒い笑みを浮かべて挨拶をした。

 その瞬間に、ホールにいた五十人いる武装集団の視線は、一気にカインに集まった。

 
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 いつもご愛読ありがとうございます。
 まさかのここで次回持ち越しです。
 やっと四人の全員が出てきましたね。この先どうなることやら。

 ふと思ったこと。まだ学園の1年生の夏も迎えていないのにすでに三十話超えているのですが
 卒業するときには何話までいくんだろう。また一気に飛ばしそうな気もしますが(笑)
 一昨日一気に一万字書いたことにより、余裕ぶちかましてのんびりしてたら、あっという間にストックなくなりそうです(笑)

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