トップ>小説>転生貴族の異世界冒険録〜自重を知らない神々の使徒〜
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第三章 学園・領主編

第二十話 奴隷商

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 カインは屋敷に戻ったあと、コランに声を掛けてから床についた。
 そして次の朝。朝食を食べながら、後ろで控えているコランに話しかける。

「コラン、奴隷商ってどこにあるのかな? ドリントルの襲撃の件で犯罪奴隷にする必要があって、輸送を含め頼みたい。学園の帰りに寄ろうと思っているんだ」

「カイン様、この王都で奴隷商といえば、西門から少し外れた通りにある、サンダラマール商会が一番でございます。多く扱っている奴隷商は他にもありますが、奴隷の躾からこなし、質が良い奴隷が多いと有名でございます」

「わかった、ありがとう。学園の帰りに寄ってみるね」
「いえ、奴隷商に行くのでしたら、馬車で学園までお迎えにあがります。私が場所を知っておりますので。貴族の当主自ら歩く、ましてや御一人で奴隷商に向かわれるなど、どこぞの輩からあることないことを醜聞が流され、それはシルフォード子爵家の沽券にも関わります。ただでさえカイン様は王家の覚えがよろしく、それをよく思わない貴族も少なからずおります。御自重下さいませ」

 コランの必死な説得もあり、帰りに学園の門まで迎えにきてもらうことになった。
 そして食事を済ませたカインは学園に向かった。週末領主をしていくつもりだったのが、襲撃事件や横領などかなりの問題を抱え、週末だけの予定が、放課後まで領主の仕事をしないといけないカインにとっては、唯一休憩できるのが学園だ。屋敷から十五分程度の距離だが、太陽の光を浴びながらのんびりと歩く。教室に入ると、すでに見慣れた二人が席に座っていた。

「おはようございます、カイン様」
「おはよう、カインくん」

 綺麗な金髪を肩で揃えて天使のような笑顔を向けてくれるテレスと、茶髪を後ろで結びポニーテールのようにしていて、元気な笑顔を向けてくるシルクだ。

「おはよぉ。テレス、シルク」

 そんな二人に手を上げて挨拶をする。

「カイン様、たまには放課後にご一緒にお茶でもいたしませんか。最近週末はお忙しそうで、私たちも構っていただいていませんわ」

 誘ってきたテレスに、カインは顔を横に振った。

「ごめんね。今日は放課後に奴隷商に行かないといけない。お茶するなら明日以降かな」

 『奴隷商』と聞いてテレスは、カインが幼気いたいけな少女や妖艶な女性を、奴隷として買い、抱きしめているところを妄想していた。

「カイン様! も、も、もしかして、幼い少女や、妖艶な女性でも買うつもりですかっ!! 私たちというものがありながらっ!!」

 テレスが顔を真っ赤にして、カインに責めよっていく。
 カインの首元を両手で掴み、頭を前後に揺らすくらいの強い力で締め上げていく。
 カインはこういうことかと、頭の済みでコランの言っていたことに今更納得する。

「ちょ、ちょっと待って。なんで買う前提なの? この前、領主邸が襲われたのを聞いたでしょ? 捕らえた襲撃者をいつまでも詰所の牢屋に置いておけないから、犯罪奴隷として売るつもりでドリントルに引き取りに来てもらうために、奴隷商に行く予定なの」

 カインの言葉を聞き、ハっとしたテレスは、自分の行動が恥ずかしくなり、顔を真っ赤にさせて、手で顔を覆い、半泣きになってしまった。
 そんな行動を見て、隣でシルクは、お腹を抱えて笑っている。

「テレスったら早とちりしすぎだよー」
「もう、カイン様ったら、勘違いさせる言い方するのが悪いのですわ」

 テレスはヘソを曲げてしまって、頬を膨らませ横を向いているが、その姿もまた可愛らしかった。

「怒っているテレスの横顔も可愛いね」

 カインは心で思っていたことを、そのまま口に出してしまった。それを聞いたテレスは怒りではなく照れて頬を染める。

「そういえば、カインくん。もうすぐ夏休みだけど、予定は? ずっとドリントルに行っている予定なの?」

 テレスのほうを見ているカインが気になって、シルクが聞いてきた。

「今のところはその予定だよ。ドリントルもこれからが本番だし。何かあれば戻ってくるけど……」
「初めて会った時みたいに、テレスと一緒にまたマルビーク領に行く予定だけど、心配だから一緒に行かないかなって思ってさ。あの時はカインくんがいたから助かったけど、やっぱり心配で」

 シルクは上目遣いでカインに聞いてくる。
 初めて王都に向かう時のオークの群れと戦ったことを思い出した。あの時は間に合ったけど、次はわからない。カインとしては婚約者たちの安全を期したいと思った。

「今すぐには言えないけど、二人が安全に行けるようにするよ。一緒に行けなくても、後から合流することも出来るし」

 本当は、先にマルビークまで飛翔フライで飛んだあと、転移で王都に戻ってきて一緒にまた転移で行くのが一番安全だとカインは思ったが、貴族の責務として、途中の街に金を落としていかなければならない。ましてや、王家と公爵家が通るのだ。それなりの金額を消費していく必要がある。
 午後からの選択授業が魔道具科だったこともあり、カインは二人のために、安全対策になる魔道具を制作しようと心に決めたのだった。

 そして授業は進み、午後の魔道具科の授業となった。
 魔道具科の授業は、基本的に理論や作成方法を説明していくのが主となっている。実際に自分の制作をするのは、高学年になってからになるとのことだった。

「――で、あるからして、魔石に魔法を思念しながら刻み、魔力を込めることによって、その刻まれた魔法を起動するのだ」



「――それだっ!!!」

 カインは、二人を守る事のできる方法を考えていたが、いい方法が思い浮かばなかった。
 今、授業で行われている説明が、丁度作りたい魔道具だったことでカインは思わず声を出してしまった。

「カインくん、何が、それだ、なのかな?」

 魔道具科の担当教諭である、セリナ先生が聞いてきた。
 ハッとなって周りを見渡すと、カイン一人だけ立ち、他の生徒の視線がカインに集まっていた。

「いえ、すいません。今、先生が説明した方法で、作りたい魔道具が思い浮かんだので」

 カインは頭を下げて席に座る。

「うむ、そうか。ただ、君は少しやり過ぎると聞いている。あまり人を困らせるものを作らないようにな」

「わかりました。気をつけます」

 また授業は再開したが、カインの頭の中では、すでにテレスとシルクに渡す魔道具に思いを集中させていた。
 授業も終わり、手早く帰り支度を整え、テレスやシルク、クラスメイトに挨拶を済ませ、学園を後にした。カインは魔道具のことを一度心に仕舞い、迎えに来たコランが待っている馬車の乗りこむ。
 貴族街から、平民街の方へ抜け西門近くから、一本裏の路地にはいった。
 コランから着いたことを告げられ、馬車から降りると、目の前にある奴隷商の建物は、賑やかな繁華街ではなく、少し路地を入った目立たない裏通りに建っていた。
 三階建てで、レンガで建てられた立派な店構えをしており『サンダラマール商会』と看板が出ていた。
 先に馬車を降りたコランが商会の扉を開き、カインは制服姿も気にせず中に入る。

「いらっしゃいませ」

 カインが店に入ると同時に、執事服に身を包んだ初老の男性が挨拶をしてきた。
 まだ子供のカインを見ても、動じず姿勢を正し挨拶をしてくる。

「いらっしゃいませ、シルフォード卿。我が商会へようこそお出でくださいました。今日はどのようなご用向きでしょうか」

 ただの子供に対してもここまで礼儀正しく、しかも名前まで知っていたことに、カインは目を丸くする。

「どうして僕の名前を?」

「それは、王都で商会をしていれば、情報には特に気をつけますからね。魔物を蹴散らし王女様たちを救い、齢五歳で叙爵をされ、さらに十歳で子爵に陞爵されるほどの御方は、この王都にはおりませぬ。――失礼いたしました、私はこの商会の会長をしております、サンダラマールと申します。よろしくお願いいたします、シルフォード卿」

 受付だと思っていた男性は商会長だったことに、カインはさらに驚いた。

「わざわざ私が受付をしていることに驚きましたかな。私は人を見て商売をいたします。誰にでも奴隷を売るわけでもございません。私の目で判断して、売るか決めております」

 カインはその商売方法に共感した。売った相手がもしも酷い人なら、奴隷は辛いことになるだろうとすぐに理解できる。
 それを商会長自らが、判断しているとはさすがにコランが勧めるだけあると感心した。

「シルフォード卿、まずはこちらの応接室へどうぞお入りください。おい、誰か、受付を交代してくれ」

 奥から出てきた店員と代わり、サンダラマールは受付の横にある扉を開け、応接室へカインを案内する。
 カインはそのまま奥のソファーに腰掛け、サンダラマールが対面に座る。

「実はですね、私が領主をしているドリントルの街で、数十名の犯罪者を捕縛したのですが、それを犯罪奴隷として引渡したいと思って、今日はお伺いしました」

「犯罪奴隷ですか……。犯罪奴隷は用途が限られておりますので、そこまで高値ではお引取りできませんがよろしいでしょうか。一般的な犯罪奴隷は、一名あたり大銀貨三枚とされております。もちろん四肢が無事な事が条件ですが。手足がない奴隷は、引き取り手がありませんからね」

「それは同感です。他に現役のAランク冒険者が四名おります。詳しいことは話せませんが五十名程度引き取ってもらいたい」

「そこまでの大人数ですか。ドリントルからの移送費はこちらで持ちます。Aランクの冒険者でしたら、一人金貨一枚出しましょう。他の犯罪奴隷は一名あたり大銀貨三枚でどうでしょうか」

「それで構いません。引き取りだけは早めにお願いしたいのですが。人数が多いこともあり、警護にも人が割かれてしまうので」

「わかりました、今週中にはお伺いしてお引きとりさせてもらいます。その時に契約書をお持ちいたします」
 カインとサンダラマールは立ち上がり握手をする。

「シルフォード卿、せっかくですから奴隷でも見ていかれませんか。こんな機会でないと、この商会に来ることも少ないと思いますし」

 カインは買うつもりはないが、やはり前世の知識を有しているだけあり、奴隷というものに少しだけ興味があった。

「では、少しだけ見学させてください」

 サンダラマールの案内で、奴隷の居住スペースに入っていく。さすがに部屋の扉は鍵付き格子となっており、中が覗けるようになっている。ベッドが部屋に並び、小奇麗な服を着ている人族が多かった。男女の部屋が別れ、食事をしっかりと取っているようで、痩せこけて病気を患っているような奴隷は見られない。

「誰を見ても、奴隷として少し暗い顔をしていますが、食事管理が行き届いているようで、皆さんそこまで悲観的ではないですね」

「奴隷商にとっては大切な商品でございますからね。体調がすぐれないものは売る事はありませんし。やはり信用が必要な商売でございます。このフロアは主に借金奴隷ですから、商会などで失敗した方など色々とおります。文字を読めない者には教育をしており、そのおかげでお客様からの信用をいただいております」

 さらに階段を上がると、獣人のみとなっている。犬獣人や猫獣人、熊獣人など様々な獣人がいた。

「この獣人たちも、集落で収穫が少ない時に、身売りされたのが多いです。戦争奴隷や犯罪奴隷たちは、すぐに鉱山送りになることが多いので、この中には犯罪者はおりません」

 話を聞きながら、カインはふと目に入った奥に続く扉の向こうに気配察知を使うと、気になる気配を感じた。

「サンダラマールさん、ここの奥を見たいのですが」

「――奥ですか。シルフォード卿が見る必要もないかと思いますが……。奥には移送中に魔物に襲われ、身体を欠損した奴隷がいるのです」

「それでも構いません。見せてください」

カインは案内され、気になる気配を感じた部屋に入る。
 そこには、歳の違う二人の獣人の少女がベッドに座っていた。年の頃は十五歳と十歳くらいだろうか。二人とも白い髪を腰くらいまで伸ばし、頭には髪と同じ白の狐耳があることから、姉妹のように見えなくもない。しかし、年上の少女は両脚とも膝から下が無く、もう一人は、右腕が肘の先からない。
お互いを守るように寄り添いながらも、その顔には悲壮感を漂わせ、部屋に入ってきたカインをちらりと見て、また目を伏せる。

「この二人は?」

 カインの問いにサンダラマールは、少し額にシワを寄せながら話し始めた。

「この二人は姉妹なのですが、狐人族の中で白狐は不幸を運んでくると言われております。そのせいで集落から奴隷商に売られたとのことですが、移送中に魔物に襲われ、奴隷商が自らを守るために、あの子達を囮として逃げたようです。その時にあの様な怪我をしてしまったと聞いています。その後、当商会の馬車がたまたま通り、護衛の冒険者達が魔物を駆除し助けたことで、当商会で保護させていただきました。身体の欠損はありますが、姉は知識もあるということもあり、こちらにおいております」



「――この二人をください」


 カインはじっと二人を見つめたまま、思わずサンダラマールに伝えてしまった。




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 いつもありがとうございます。
 また余計なフラグを・・・(´Д`;)
 すいません。飲んで帰ってきてから書きました。
 池袋でもつ鍋の店に行ったのですが美味しかったです。
 そしていっぱい飲みました。
 見直しは明日するつもりです。(できるのか!?)






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