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第三章 学園・領主編

第二十三話 移送

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 朝を迎え食事を済ませたあと、アレクと共に馬車で衛兵詰所へ向かった。
 衛兵詰所は領主邸から、中央広場を通り東の門付近にある。御者をしているダルメシアはすでに街は把握しているようで、馬車は街を抜けていく。
 衛兵詰所の門番も領主の馬車だとすぐに分かり、門を開け、その間を馬車は通り抜ける。
 そして馬車は詰所の建物の前に止まった。

「カイン様、アレク様、衛兵詰所に到着いたしました」

 先に降りていたダルメシアが扉を開ける。

「ありがとう」

 カインとアレクは馬車から降りて詰所の応接室へ向かう。詰所内には衛兵の他に、王都より騎士団も移送の準備をしている。カインの姿を見て一同に手を止め敬礼する。

「カイン殿、久しぶりだね」

 その声に振り返ると、近衛騎士団の副騎士団長であるダイムだった。騎士団でも役職付きに与えられる白銀の鎧を着て、久しぶりに会えたことでカインも顔を緩ます。

「お久しぶりです。わざわざ移送のために、副騎士団長が出てきたのですか」

 カインとダイムはがっちりと握手を交わす。さすがに十歳と三十過ぎた中年が、笑いながら握手しているのは違和感がある。

「そりゃな、今回は国の不始末だ。宰相から直接騎士団に依頼があったくらいだからな。団長はさすがに王家の護衛があるから王都を離れるわけにはいかないから俺が来たんだ」

「あ、紹介しますね、ドリントルの新しい代官となった、僕の兄でもあるアレクです」

 カインの紹介でアレクが前に出る。

「ドリントルの代官に赴任することになった、アレク・フォン・シルフォードです。カインの兄ではありますが、次男ですし、気軽にアレクと呼んでください」

「近衛騎士団で副騎士団長をしているダイム・フォン・ガザードだ。よろしく頼む。カインは五歳の頃から良く近衛騎士団で訓練していたから、ほぼ全員の顔を知っているぞ。しかも誰よりも強いしな。あのティファーナ団長より強いし」

 笑いながらダイムは言うが、カインの顔を横目で見ながらアレクは苦笑いしている。五歳で叙爵されたのは知っているが、さすがにこのエスフォート王国でも精鋭が集まった、近衛騎士団で訓練しているとは誰も想像できない。その中でも一番強いということは、この国でも一番強いということだ。横で頭を掻いているカインがそこまでの強さを持っていると聞いて、アレクはため息しかつけなかった。

「今回、主犯の四人は王都へ移送する予定ですが、残りは週末に奴隷商がくるので、全員犯罪奴隷とする予定です」

 カインの言葉にダイムは頷く。

「まずは、四人を見てくれや。あれはカインがやったんだろ? ああなったら、もうどうにもならないな」

 ダイムは笑いながら、カインとアレクを案内する。衛兵詰所の収監所は地下となっており、ダイムが先頭を歩き二人が続いていく。その後を移送の為に四人を運ぶ騎士団が追う。
各所に衛兵が二人組で見張りをしており、数十人を同時に収監していることが原因で緊張している様子だ。皆、領主のカインの顔を見た瞬間にさらに引き締まった顔になる。衛兵たちに「おつかれさま」と声を掛けながらダイムの先導で階段を降りていく。
 階段を降りた地下部分は、空気は流れているが、僅かながらの開口から入る日の光によって、最低限の明るさを保たれた薄暗い通路となっている。通路の両側に檻があり、数名ごとに分けられて収監されている襲撃者達がいた。
 襲撃者たちは、カインの顔を見た瞬間に悲鳴を上げた。
 悪魔や魔獣使いだと呟くものもいれば、顔を見た瞬間に震えあがって失神したものもいた。一様にカインに怯えているのはよくわかった。
 その様子を見ながら三者三様の顔をした。ダイムは笑い、アレクは苦笑い、カインは何故怖がっているのかわからない顔をしていた。

「カイン、襲撃者達がここまで怯えるなんて何やったんだ? 失神しているのまでいるぞ」

 カインは屋敷に入ってきた襲撃者達は誰一人殺していない。殺したのはエナクを捕まえていた奴だけだ。

「こいつらは、僕の召喚獣が相手しただけですよ」

 カインは何事もなかったように言葉を返す。
 ダイムはカインの召喚獣を見たことがある。王城の応接室で召喚されたときに立ち会っていた。白い狼と銀色のドラゴンは想像以上の神々しい気配を放ち、思わず平伏したいと思わせる程だった。あの二頭が揃って襲ってくるところを想像してダイムは身震いした。
 檻が並んでいる一番奥に辿り着くと、そこには個室サイズの檻が並んでいた。そして見慣れた顔がいくつかある。A級冒険者たち4人と主犯の4人だ。闇ギルドのリックは一撃で意識を奪ったため外傷はないが、他の三人は四肢を欠損している状態だ。スタッグの回復魔法で傷口を塞いだだけの状態だ。
 騎士団の後をついて来たカインの顔を見た瞬間、一様に皆震えだした。司祭であったスタッグは司教クラスが使える上級回復魔法を使用した事により、許しを請うために祈り始める始末だ。
 エライブだけはこちらを睨みつけている。

「私がいないとこの街はどうにもならん! 金のある場所も私しか知らんしな。ガキが治められると思ったら大間違いだ」

 大口を叩くエライブの前にカインは立つ。

「エライブ、あなた達はやり過ぎた。この街を良くしようと思っていたのかも知れないが、やり方が間違っていた。これから王都へ移送され尋問を受けることになると思う。それに猫の和み亭にしたことは絶対に許さない。それとあなたの執務室の秘密の部屋から既に裏金は回収させてもらっていますよ」

 カインから僅かながら殺気が漏れ出していく。牢に入っている連中はその殺気でガクガクと震えだす。エライブは目の前にいたこともあり、泡を吹いていた。その瞬間にカインの肩に手が置かれた。

「カイン、殺気がでているぞ。俺は平気だが、衛兵もお前の兄貴も辛そうだぞ」

 カインはアレクの方に振り向くと、アレクは腰を抜かしていた。衛兵も顔を真っ青にさせ、小刻みに震えている。

「あ、アレク兄様、すいません」

 カインが殺気を引っ込めた事により、アレクは衛兵に手を借りてなんとか立ち上がった。

「いやー、びっくりしたよ。まさかカインの殺気がここまで辛いとは思わなかったよ。もう大丈夫、衛兵さんもありがとう」

 アレクは立ち上がり、尻餅ついた時に汚れた服を叩いている。

「では、これから移送をする。お前ら、こいつら四人を運ぶぞ」

 ダイムの指示で騎士団が牢の鍵を開けて次々と運ぶ準備をしていく。両足がない三人は担架に乗せられたあと、縛られて運ばれていった。

 四人が運ばれて、空となった牢を見ながらカインは、これからいい街にしようと決意する。
 薄暗い地下牢を出ると、騎士団が運んできた馬車牢の中に四人が入れられていた。
 既に騎士団は出発準備を整え、馬に跨っている。

「では、カイン。また王都で訓練しような」

 ダイムは笑いながら手を振り、騎士団に出発の合図をした。
 カインとアレクの二人は、その行進をただ見守っていた。
 ダルメシアがカインの肩越しで小さく声をかける。

「ダイム様にも護衛をつけてあります。何かあれば助けるようにと。ご安心ください」

 カインはダルメシアの言葉に頷く。護衛をつけてくれるのはありがたいが、蟲というは勘弁してほしいと思うカインであった。





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 いつもお読みいただきありがとうございます。
 家庭の事情で忙しかったために、今回は移動中の電車で書いたため短いです。
 今後、時間があるときに加筆予定です。
 本日忘年会のため、感想の返信は明日以降となります。
 これからもよろしくお願いいたします。


 
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