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第1話 法廷のシーメール

03:蛸蜘蛛屋敷の性転換双子姉妹

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    03:蛸蜘蛛屋敷の性転換双子姉妹

 ここで鑑定医・指尻ゑ梨花女史が、裁判で関わる事になった「事件」の裏話をしておこう。
 被告人Mと被害者Aは、両名とも神室家の使用人として、街から流れ着き雇い入れられた男達だが、それは表面上の話だ。
 驚くべき事に、AとMは、双子姉妹に生まれ変わらされるべく、神室家の客分でもあった医師・柊によって、非合法とも言える整形手術のメスをその身体に入れられていたのだ。 
 ・・雇用主の命令で、性転換手術とも取れるものを施術される。
 しかもその手術は、彼らの契約条項の中に、しっかり明記されており、彼らはそれを承認していた。
 もちろんこの手術の表面上の名目は、「性転換手術」ではなかった。
 だが、常識的に考えて、雇い入れ条件の中に「手術」を必要とする使用人や雇い主が、どこの世界に存在するだろうか。 
 しかし、この事件が起こった頃には、彼らは、外見上、殆ど女性の姿を示していたのである。 
 人は、「平成の世の中で、まさか、こんな奴隷めいたことが?」と思うかも知れないが、田舎にいけば、四方に対して未だに絶大な権力を持つ旧家が存在し、実際、この事件はそんな旧家(神室一族)の肥大しねじ曲がった欲望が産み出した結果なのだ。
 だがその結果が、法に照らし合わされた時、彼らの罪は浮かび上がってこず、ただ旧家に雇われていたMがAを刺し、その身体を放置・死に至らしめたという事実だけが、残ったのである。

 柊医師による大整形手術の結果、男性から女性への変貌は無論のこと、その容貌まで双子の姉妹のようにそっくりになってしまったAとM。 
 どちらがどちらなのか、ちょっと見ただけでは区別が難しい程の完成度だったという。 
 服を脱げば、肋骨が透けて見えるほど痩せているのに、妙に乳房だけが立派なのがA、スレンダーな体つきの中に太い骨格が見て取れるのがM、、、そんな風に、辛うじて骨格上の見分けは、付いたそうだが。 
 その双子の容貌が、また面妖だったという。 
 彼らは、柊医師の手によって意図的に、「典型的な整形顔」になるように手術されていたのだ。 
 深い二重まぶたは、日本人離れしており、高く薄い鼻は、整いすぎアゴは尖っている。
 そしていかにも口紅が旨く乗りそうな唇、安物のクラブホステスやニューハーフにありがちな容貌である。
 あるいは、男の欲望が抽出された「オンナの顔」と言って良いのか。 
 特に、昔はアクション派の男優だったMの彫りの深い顔を思うと、その変容ぶりは、画用紙に書いた男の似顔絵を「オンナの顔」へと、消しゴムを多用して描き直したのではないかと思える程だったという。

 手術の腫れがほぼ引いたころ、MとAの二人は神室邸内にある美容室まがいの場所に連れて行かれ、同じような髪型、化粧を施され同じ服を着せられ、彼らの雇い主の前に引き出されていた。
 このあたりの裏付け、証言は、他の使用人や出張美容師などへの聞き込みによって完全に取れている。 
 彼らは、いや彼女らは、その見分けが付けられるようにと、意識的にけばけばしくしたファッションやアクセサリーの色使いを、Aが金、Mは銀に、統一されていたという。 
 しかし元はまったく別人の、しかも男だった二人が、事件当時には「双子の姉妹」とは.いかにも面妖な展開だった。 


「我ながら良い出来だ。三平。この二人なら、お前と俺で、双子姉妹スワッピングもいいな。」 
「いや、Mは胃の中までお前のザーメン漬けなんだろ?随分、つまみ食いをしてくれたそうじゃないか、スワッピングは遠慮しておくよ。」 
「まあ、手始めにAとMで双子レズでも披露してもらおうか?SMじみたのがいいな。」 
 神室と柊の前に引き出されたAとMは、「こんな事の為に、わざわざ整形手術を、、」と言葉を失い、呆然と立ち尽くした事だろう。 
「何かな?この沈黙は。普段、あんなに愛し合っていたんだから、レズの真似事など造作もないことだろ?」 
「...」
 黙りこくる二人。 
 彼らの男色の営みは以前からで、その様子は、四六時中、神室の当主・三平によってモニタリングされていた。
 それが、彼ら二人を、人生のドンズまりから引き上げる際に、神室が最初に出した条件の一つだったのだ。
 そして今も、彼ら、いや彼女らは、雇い主に逆らうわけにはいかない状況に置かれている。 
「はい...」
 先にAが口を開いた。 
「そう、それが当然の返事だ。では、これから君たちの『姉妹の時間』だ。これまで君たちが楽しんで来た例の部屋でSMレズをやってみてくれ。・・壮絶なのをな、ありきたりのものでは、私達は満足しない。君たちだって、実はそうしたいんだろう?」 
 蛸蜘蛛屋敷の名は、中央に大きな母屋、そこから放射状に様々な家屋が伸びていく神室屋敷の異様な建築様式から来ているが、蛸や蜘蛛がその脚で獲物を取り込んで行く様も同時に表しているのだろう。
 実際、地元では何人かの若い女性が行方不明になっている。
「人工双子美女姉妹のSMプレイか。あんたに言われた通り、人工美丸出しで整形をやってみたが、正解だったな。こいつらのこの顔じゃ、二度と普通の生活にはもどれん。ククッ、、他の人間達のように、あんたの蛸蜘蛛屋敷で飼い殺しってわけだ。それに、この二人、Mから聞いた話によると、そうとう血なまぐさいSMを普段からやるらしいからな、今から楽しみだぜ。」 
「この二人は、もう我々の掌中で踊るだけの生肉人形と同じだよ。それも、かつては羽振りもよく、男丈夫なプレイボーイだったのを、女に変えてやって、ここまで墜としたんだから、二人のショータイム、なおさらに味わい深いってものだ。」 
「・・完全な犯罪なのに、どこに出しても合法で通る。本人達の念書があるからな。まさに契約社会様々だよ。金と力で人を縛れる、あんたが言ってた権力の魅力とは、そういったもんなんだなぁ、、たまんねぇな。」

 以上が、まだ公になっていないこの事件の背景である。
 自慢ではないが、我が特殊犯捜査第6係の調査結果だ、精度は高い。
 勿論、彼らの性の実態などにおいては、いくつかは私の長年の知見による推測が入っているが、おそらく、おおよそは、こんな所に間違いないだろう。
 これは公式の文書ではないから、こういう暴露が出来る。 
 だが裁判で、明らかにされた、彼らの実態は、もう少し乾いたものだった。
 当然、その「乾き」には、後に我々の外部コンサルタントとなるシーメール精神鑑定医・指尻ゑ梨花のメス捌きが、実に大きく関わっていたのだが。

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