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第1話 法廷のシーメール

07:ドレスとナイフ

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   07:ドレスとナイフ

弁護人・・・「犯行時に意識が清明な根拠は傷口といいますが、せん妄状態では果物ナイフは握れないのですか?」 
鑑定医指尻・「意識が混濁状態であれば、しっかり握るのは不可能と思います。」 
弁護人・・・「せん妄状態で興奮した場合でも、ナイフは握れないと?」 
鑑定医指尻・「集中力や注意力が散漫し、ナイフを握っても次の段階へと行動することは不可能と考えます。」 
弁護人・・・「不可能とは?」 
鑑定医指尻・「刺したとしても(ナイフを)抜くとかは不可能です。」

 弁護側は自分たちの主張に沿った言葉を聞き出せないでいる。
 一方で検察側は余裕の表情のようにもみえた。

弁護人・・・「Mさんが、セックスのことは記憶にあるが、Aさんから傷を見せられるまでの直前の記憶が飛んでいると言っていますが、それはどういったことでしょうか?」 
鑑定医指尻・「わかりません。」 
弁護人・・・「というのは?」 
鑑定医指尻・「証明できないと言うことです。ですが、そういう事はあり得ることです。」

 ここで弁護側は質問を、女性弁護人に交代した。

弁護人・・・「これまではMさんが傷つけられることが多かったが、今回はなぜAさんが傷つけられたのですか?」 
鑑定医指尻・「SM行為は日を重ねてエスカレートしていました。刃物が持ち出されることが増え、刃物でM被告にA氏が自分を傷つけてくれと頼んだことは十分考えられます。」 
弁護人・・・「Mさんから、今までAさんから『(自分を)刺してくれ』と頼まれたことがあったとは聞いていますか?」 
鑑定医指尻・「聞いたことはありません。」 
弁護人・・・「犯行当日にM被告が脳しんとうになり、意識を失ったのは間違いありませんか?」 
鑑定医指尻・「そうした時間帯もあったということです」

 弁護人による反対尋問は終了し、質問は裁判官に移った。
 M被告は終始動かないままだ。


 未知矢の今日の出で立ちは、黒いロングドレスだった。 
 こういうドレスを着る時は下着のラインが出ないようにパンティをはかないものらしいが、ペニスがある未知矢には、それは不可能だ。
 だから、ペニスを折り曲げ股間からお尻の谷間に向けて隠すように収納してあった。 
 やれやれ、護身用の拳銃もこんな風に隠せればいいのだがと、未知矢は思う。
 ドレスはホルターネックで、胸のところで斜め十字に交差して胸元をカバーしている。
 背中も脇腹もすっかり露出した大胆なセクシーデザインで、左サイドには深々とスリットが入っている。
  髪はアップにまとめ、(とは言っても半分はエクステだが)アクセサリーはダイヤストーンのイヤリングと同じダイヤストーンのブレスだけ、きわめてシンプルなセクシーシックな装いだ。 
 このチョイスは同じ6係で、巡査同士の香山微笑花からアドバイスを得ている。
 こういう変装をする度に、少し前まで交番勤務で着ていた制服を懐かしく思い、又、同僚の刑事達が着るスーツが、一種の戦いのための鎧なんだと未知矢は改めて思った。

 その地下の部屋には、小ぶりの円形の舞台が中央にあり、この舞台を扇形に囲むようにしてボックス席が並んでいた。 すでに何組もの客が、席についている。 
 美馬と未知矢は、舞台がすぐ前の、特等席ともいうべきボックスに案内された。 
 今度は、黒い胸出しビスチェにブラックレザーのミニ、黒網タイツで例のペニスぶらぶらの美女がやってきて、 「お飲み物はいかがなさいますか?」 と、ハスキーな声で訊いて来た。
 典型的なニューハーフ声だ。 
 美馬は、マール・ド・シャンパーニュを注文し、未知矢が何を望んでいいのかわからなくて困っていると、「このコには何か口あたりのいいカクテルを」と美馬が言ってくれた。 
 新しい客たちがつぎつぎと席についてゆく。 
 紳士淑女のパーティのように表面上は見える。 
 あまりキョロキョロするのも不審に思われそうで、未知矢は目線だけを動かせて周囲をうかがった。 
 美馬は「いいところに連れていってやろう」と言っただけで、ここが何の会場なのかを、未知矢に伏せていた。
 もうその事だけで、この会場と美馬の関わりは確定した様なものだが、。
 真澄さんは、美馬のことを少し見くびっていると思った。
 真澄さんは、観察力も分析力も抜群だが、美馬とは直接接触していない。
 それが大きいと思った。
 自分がこの潜入捜査から抜ける潮時だと判断したのは間違いはないと思っているし、真澄も許可を出してくれた。
 だが出来るなら最後に、もう少し粘って情報を掴んでおきたいと未知矢は思っていた。
 美馬は真澄さんが思っている以上に、大物だという感触が未知矢にはあったのだ。
 例えば、麻薬取引にしても、それがこの男の奥座敷ではないような気がした。
 この男にはもっと巨大な悪の臭いがしたのだ。
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