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まずは準備運動です

お茶会と思惑

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 そうです、魔法です。この世界には魔法が存在しているのです。


 しかし、魔法は皆が使えるとは限られていません。王族や上位貴族は使える者が多いと聞きますが、たまに下位貴族や平民の中にも現れると聞いています。魔法はとても特別ですが、扱いは難しいし適正と言うものがあるので、魔法を使える人はこの国の学園にある魔法特進科でキチンと学ぶ必要があるのです。

(って、この辺りは本に載ってましたねー)

 この国では、十歳までは魔法の使い方をあまり教えたりしないんだそうだ。五歳くらいから魔術の基礎を習ってゆっくりと身体に慣らしていくんだけど、其の中で適正を確認して、キチンと自分が扱える属性を知る事が大事なんだって。
 ゲームではアリアは三つの属性を持っていて、それもあって学園の魔法特進科クラスに居たくらい、実は有能だったりする。

(私も今は魔術の循環や魔力の容量を増やす基礎をやってるけど、アメーリアと同じのが使えるのかな…)

 アイクお兄様やラーヴァと仲良く過ごしているし、お茶会に誘われても必要最低限しか参加していない時点で、私はゲーム設定のアメーリアとはきっと違うと思う。侯爵令嬢は社交場を戦場に、戦うのです!と拳を握り締めながら言っていた侍女のセシルを遠い目で見ていたのは、つい最近の事だったと覚えている。

「アリア、いらしたようだよ」

 ざわりとお茶会会場が色めき立ち、参加している令嬢達がきゃあきゃあと騒がしくなる。アイクお兄様の声に顔を上げ、ざわめきの先に目をやると、ふわふわと揺れる金色の髪が見える。

(キラキラで眩しくて真っ直ぐ見れな…、くっっっっそ可愛い!!!本当このショタ二人お人形みたいで観賞用に下さい!おっと失礼!令嬢にあるまじき言葉遣いでしたわ)

 いやでもね?キラキラできっとサラサラであろう金色の髪に、微笑みを浮かべる白くて滑らかそうな薔薇色の頬、瞳を細めて笑みを見せていても其の瞳は今日の空の様な濃い青。まさに王道と言うべきキラキラ王子様ですよ!
 ラズーラ=クラスター第一王子殿下、年齢はアイクお兄様と同じ歳の九歳。王道のキラッキラハイスペック王子様で、今は性格も柔らかく温和な優しい方です。
 そして、その王子様の隣には、少し背の低いこれまた金髪の王子様。こちらは癖っ毛なのか、ふわふわと髪が風に揺れている。ひたすらにお兄様のラズーラ皇子様を見つめているせいか、瞳の色は見えないけど、どこか小動物っぽい。
 リモナイト=クラスター第二王子殿下、年齢は私と同じ歳の七歳。ふわふわの柔らかな金色の髪に、紫に金色がかった珍しい瞳の色をしている甘えん坊な王子様。しかもこの王子様どじっこ属性持ってます、そんな所も可愛いと侍女達からも評判なんですよ。

(攻略対象の王子様お二人、流石将来イケメンになるだけあって、このまま観賞していたいくらいの美少年だわ)

 そんな二人の出現に、周りの令嬢達は我先にと挨拶をしに行く。うーん親から言われてるのかもだけど、小さくても肉食系はいるんだな。私も本当なら挨拶に行かなくてはいけないのかも知れないけど、積極的な令嬢達にほへーと感心してしまったんだよ。

(まぁ、私は最後でいいや。攻略対象に興味ないし。侯爵家の迷惑にならないようにさえすれば)

「今日はお二人も大変だろうね」
「え?」
「だって、今日はお二人の婚約者候補を『見定める』お茶会でもあるからね。令嬢方も気合が違うんじゃないかな?」
「そ、うだったんですか…」
「アリアには、僕が黙っていてって侍女のセシルに言ったからね。アリアは知らなくても当然だったんだよ」
「は?」

 ちょっと待て、お兄様よ!人差し指を口元にもってきて『ないしょ』って可愛い仕草されたら許すしかないでしょう!?

 只のお茶会だと思ったらそれが目的のお茶会だったのか、婚約者候補だと?お断りだ!!ニコニコとしつつも優雅にお茶を飲むアイクお兄様(マナー完璧です、お見事)に吃驚しか向けられない。

「あ、あのアイクお兄様?黙っていたのはどうしてですの?」
「僕とラーヴァが、アリアにお嫁に行って欲しくないからかな」
「!?」

(さらっといいましたねアイクお兄様よ、だけどあまりの可愛い理由に鼻血ださなかった私を誰か褒めてくれ)

 行きませんし、婚約者候補になる気だってさらさら無いですよ!
 それにお兄様がラーヴァに言い含めてる時の姿を想像するだけで、悶えたいくらいに可愛い。うちの兄弟なんて天使。きっとラーヴァもあの大きな瞳に涙うるうる溜めて『ねーたまないないめー!』ってお出掛けする時みたいに嫌がったんだろうなぁ

(ああ、早く帰ってラーヴァを抱き締めたい!)

 そんな事を考えてうっとりとしてる私と、それを見て安心しているアイクお兄様だったが、挨拶は後でいいやと思っていたのに、キラキラオーラが甘ったるい匂いを多数引き連れてやってくる気配を感じた。小さな溜息を零し、手にしていたカップを置くと、優雅に立ち上がるアイクお兄様に私も合わせて立ち上がったのだった。



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