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紹介をしましょう。

愛しのモフモフ様

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「アイクお兄様、申し訳ありません…」
「やり過ぎには注意って言ってるのに、この子は何処の子だろう?お城に入れる階級で、獣人の子息を持つ方の家とすると…」

 そうですよね、こんな所に聖獣でもない限りホワイトタイガーの子供が居るわけ無いですよね。獣人が普通に居る世界だという事をたまに忘れてしまいそうになります。侯爵家にもメイドや執事として働いている方も居るのですが、やはり獣人族の方々は力仕事や体を動かす仕事が得意なようで、うちの屋敷でも庭師としてだったり、厩舎の世話係などをして下さってます。
 だけど、こういう風に完全獣化するのは、よっぽど血が濃い証拠だと教えて貰ったのを本当にすっかり忘れて居ました。特に幼い子供程、獣化をコントロール出来なくて人に中々戻れないのだとか。そうだとすれば、私の膝の上で眠っているこの子も、獣化したまま戻れなくなった可能性が高いです。

(反省して落ち着きましょう…)

 だけど、一つだけ引っ掛かっている事があります。獣人でホワイトタイガーだなんて、ゲームの中でのキャラでそんなのあの人しか居ません。白黒の斑な髪を恥ずかしそうにかき上げる仕草に悶え、照れ隠しでパタパタ振られる尻尾を触りたいと何度叫んだ事か。その姿を見たいが為に、攻略対象では無いのに通い詰めました。そして同じEDを繰り返した女です。

(ああ、あの憧れのモフモフが、今私の膝に!!)

「アリア?何だか解らないけど、落ち着こうね?」
「はっ、はい!アイクお兄様!」
「もしかして、この子知り合い?」
「あの…知り合いではないのですけど…。お聞きした事がある名前がありまして」
「アリアは獣人の庭師達とも仲良しだからね」

 アイクお兄様にこの子の名前を告げようとした時、近くにあった茂みが揺れ紅い髪がひょこっと見えました。そのまま大柄な男の子?が顔を出したのです。

「あれ?アイドクレーズ?」
「ジャスパー?今頃お茶会に参加なのか?」
「いや、最初から居たんだが…一緒に参加してた子供が一人、迷子になっててちょっとな」

 突然掛けられた声にアイクお兄様が反応し、一緒になって振り返ると、其処に居たのは炎の様な紅い髪に、琥珀色の瞳をした男の人が立って居ました。お兄様の名前を呼び捨てにしたのに、お兄様が気にしていないとすると、この方が言っていたご友人なのかもしれません。
 しかも、私の膝の上で眠っているホワイトタイガー君のお知り合いの可能性が出てきましたよ!嫌な予感をヒシヒシと感じます。

「それで、隣は?もしかして、此方が妹か?」
「ああ、ジャスパーにも紹介するよ。妹のアメーリアだ」
「ロードナイト伯爵家二男ジャスパーだ、以後お見知りおきをアメーリア嬢」

(やっぱりかっ!!!)

「アトランティ侯爵家長女アメーリアですわ」

 膝を地面へとつけ胸に片手を当てて騎士の礼をとるジャスパー様、普段なら其処までしないのかもしれないが、今私の膝には獣人の子供が眠っているので、立てない私に合わせてくれたのだと思う。心の中での叫びはしっかりと隠して、私はにっこりと微笑みを浮かべ名乗り返した。
 ジャスパー様は、もしかし無くても攻略対象者です。年上の騎士科に居た名前だったんですが、私年上キャラに興味が殊更なく(お兄様は特別です)攻略の時も殆ど流してました、ごめんなさい!

「それと、大変聞きにくいんだが」
「なんでしょうか?」
「もしかして、ジャスパーこの子の知り合い?」
「ああ、捜してた迷子だ。グラッシュラー伯爵家の二男、アズライト=グラッシュラー。見ての通り獣人なんだけど、まだ獣化が不安定なんだ」
「やはり、アズライト様でしたの」
「アリア?本当に知り合いじゃないの?」

(ホワイトタイガーで気付こうよ自分、そして出来る事なら、全力でお知り合いになりたい方1でしたよお兄様)

「んん…っ」
「目が覚めたようだな」
「アズラ、ちょっと待て」
「え?何が…?おはよージャスパー」

 ふわふわのお腹を出して眠っていたホワイトタイガーのアズライト様でしたが、目覚めると同時に獣化が解けたのか、目呆け眼を擦りながら舌足らずな話し方は、とっても可愛いのですが、目のやり場はどうしましょうか?勿論、まだ私の膝を枕にしてますけどね。

(仕方ありません、アイクお兄様)

「ジャスパー、早く上着」
「解ってるから、怖い顔で笑うなって!」
「え?誰?は?上着?」
「あまり可愛い顔で無防備にされてらっしゃるのでしたら、攫ってお婿さんにしてしまいましてよ?」
「う、うわああ!?」

 やっと頭が覚醒したのか、全裸だった恥ずかしさに真っ赤になって、泣きそうな顔をしてジャスパー様に上着を借りるとか、可愛くて可愛くて。連れて帰ろうかと思ったくらいです。驚きで膨らんでる尻尾とか掴みたいし、ぺたんと寝てしまってる丸いお耳をモフりたい。
 優雅に笑いあう私とお兄様に対し、服も着て身嗜みを整えたのに、何やら疲労困憊になっていたジャスパー様とアズライト様でした。


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