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第2話 ファック・パペットの憂鬱

04:ゑ梨花と微笑花

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   04:ゑ梨花と微笑花

「そうかあ……、ゑ梨花さんは、この調査の為に、自分のルールを破っちゃったわけだ」 と、微笑花が言った。 
 恒例の、深夜ファミレスでの情報交換だった。 
「で、その子、二十歳なんですって?」 
 微笑花の口調は始めの頃と比べてかなり、くだけたモノになっているが、基本、礼節は欠かさないので、ゑ梨花にはこの会話が不快ではない。
 むしろゑ梨花の分析によると、微笑花のざっくばらんさや軽さは、作られた、つまり演技上のものである。
 根は至って真面目そのものの人物だ。
「そう。八才ちがいなんだけど、弟みたいで、何かヘンな感じよね」 
「いいなあ。ナンパされたんですよね。年下から。」 
「私のほうは全然その気じゃなかったのよ。だけど、成り行きでね。それに、、」
 囮捜査におけるビンゴを引き当てたからと言うのを、ゑ梨花は止めておいた。
 その事に、まだ確証が持てる段階ではなかったからだ。
 それに微笑花はカンが鋭いから、ゑ梨花がファック・パペットを見つけ出したかも知れないと言う事を、暗に伝えようとしているのに気づいている筈だった。 
「普段の年上のおじさま達と比べて、どうなんですか?」 
「たまには、いつもと違う料理を食べてみるのも悪くない、って感じかな?」 
「ねえねえ、それで?」 
 微笑花の目が輝きはじめてくる。
 ゑ梨花の体験した詳細をはやく聞きたがっている。
 半分は任務を超えている興味感情かも知れない。
 ここは、臨場感あふれる描写で語ってやらねばならないとゑ梨花は思った。
 おそらく微笑花は、それを6係の丑虎北斗巡査部長辺りに、報告するだろう。 
「あいつね、若いからだと思うけど、私のに射精しても勃起したままなのよ。ふつう、射精したら縮むでしょ」 
「溜まりまくってた?」 
「どうかな……、イケメンのいい男だし、あたしをナンパするぐらいの度胸もあるしさ、キスの仕方とか、かなり女を知ってるって気もするし」 
「じゃ、特定の彼女がいる?」 
「そこは判らないけど、女には不自由してないと思う」 
「するとさ、ゑ梨花さんのが名器なんですか?」
 おかしな言い回しだと、ゑ梨花は笑いそうになる。 
「さあね、男のあそこでやるのが、珍しくて昂奮したんじゃない?」 

 陸から離れて、ふと顔だけ振り返ると、陸のペニスは勃起したままだった。 
 あら、リクくん、元気いっぱいなのね、とエリカが言うと、陸は照れたような笑みを見せた。 
 その笑顔は、一種の磁力があった。
 善悪の区別があまりないようだが、子どもじみた部分が沢山残っている。
 精神的な発達に問題がありそうだった。
 ゑ梨花は、陸にあぐらをかかせ、口を使ってやってみた。
 精液の残滓に濡れた先端は、湯気をたてているような熱気を発散している。 
 ゑ梨花は陸の前に這いつくばって、彼の肉の幹を握り、その尖端に彼女の形の良い鼻をすりつけた。 
 若いオスの匂いだった。
 ふと失踪した男や女達も、自分と同じような事をしたのではないかとゑ梨花は思った。
 陸には、他人にそういう事をさせる磁力のような雰囲気がある。
 子どもが怪我をしたら、大人はその手当をしてやりたくなる様な感覚だ。

「お姉さんって、淫乱だね。男のが好きなんだ」 
「そうよ。女の格好してるのは、何のためだと思うの?私の場合は、女になりたいとかじゃないのよ。男の欲望が欲しいから、お化粧してスカートはいてるの、わかる?」 
「なんとなくわかるよ。女になりたい男の人って、感じが違うもんね。」
 そら引っかかった。君はそういう人間とも接触してる。
 失踪者リストの中に、そんな該当者がいる。 
「だからね、私は性同一性障害とかじゃないのよ。ただのオカマ、男のあれが大好きなオカマ、わかる?」 
「そっか、フェラチオしてくれるんだよね」
 今度はゑ梨花のフェイントに全く反応しない。 
「私に舐めさせてくれるの?でも男にしゃぶってもらうのよ、いいの?」 
「男って、思えないんだけどな」 
「だよね、リクくんは、もう私とやっちゃったものね、ふふふ」 
 男のペニスに舌をからめて舐める。 
 男の汗や恥垢やアンモニアの臭いやらが混じり合って鼻腔に流れ込んでくる。
 生臭い精液の味としょっぱいようなカウパー腺液の味。 
 ペニスの先端をねっとりねぶりから、唾液を泡立たせてヌルヌルした口でのピストン運動をしてやると、陸は「お姉さん、すっごい」と、うっとりとなって喘ぎだした。 

「あいつ、口の中で射精してしまいそうだったわ」 
「そういうのって、わかるんですか?」 
「わかるわよ。微笑花だって、わかるんでしょ?」 
「えっ、ええ、まあ」 
「もうすぐドピュッ、って兆候、経験があればわかるのよ。微笑花はさ、可愛いから一杯経験してるんでしょ」 
「そんなに多くないですって。」 
 微笑花は、ゑ梨花の前では正直だ。
 特にセックスの話題となると、微笑花は職務を忘れて教祖を盲信している信者のようになる。 
 だが、辛うじて微笑花は「私の話はいいですから」と、ゑ梨花の昨夜の体験の続きを促した。 

 射精する寸前の、絶頂の甘美の一歩手前で口腔と舌の淫撫を中断すると、陸は泣きそうな表情になっていた。 
「リクくん、飲んであげようか?」 と、誘うような言い方で陸の顔を眺めてみる。 
「ほんと?飲んでくれるの?」 
「飲んであげるわよ。」 
「飲むの、嫌がる女は多いけど」 
「さっきも言ったでしょ。あたしは男狂いのオカマなのよ。直接、吸い出してあげるわよ」 
 そう言ってからすぐにでも発射に導いて約束を果たる事が出来たが、エリカはそのあとも時間をかけて、たっぷりと陸の、身体を味わった。
 この場合では、役得という言葉はあたるまい。
 警察官なら失格だが、、。 

「女性のテクと、私たちみたいな人間のテクとはちがうのが、わかるでしょ?」 
「うん、なんとなく」
  微笑花が、その返事を、恐る恐る言うところが可愛い。
「女の淫乱と、ホモの淫乱ともちがうの、それはわかる?」 
「うーん、それは、、。でも私も、ゑ梨花さんみたいになったら凄いでしょうね」
 つまり自分がシーメールのような存在だったらという意味だ。 
「微笑花はしっかり色っぽいよ。ただ実践していないだけ」 
「男と遊んでも良いとはおもうけど、ゑ梨花さんみたいな美人じゃないし」 
 微笑花は、そう話を合わせるが、彼女にそれ程、性体験がないのは分かっている。
 それもあって自分のことはいいから、と微笑花は話の続きを聞きたがる。 
「口もあごも疲れてきたからさ、ひと休みしたくなってフィニッシュさせたのよ」 
「口の中で?」 
「ベロにこすりつけながらシコシコしてやったら、ドバッ!」 
「二十歳のザーメンってどんなのです?」 
「きれいね。あいつのは健康的だったな。ヤクとかはやってない。そんな調べ方もあるのよ。」 
「えっ?あっ!ハイ。それより、飲んだんですか?」 
「もちろん。おいしくいただきましたよ。」 
「いいなあ……」 
 微笑花は演技して言ったつもりだろうが、その「いいなあ……」 は演技にはなっていなかった。
 ただし微笑花は、男の精液を飲み下すことを、羨んだ訳ではない。
 もしかしたら彼女が、出来たかも知れない、違うもっと奔放な生き方に対してだ。
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