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第1章 

2:素材採取をして魔法を試して地底湖発見。

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「探査(サーチ)」

村の外に出て暫く街道を歩き、林の中に入って探査魔法を展開。

「うおっ」

途端に目の前がキラッキラと輝き出す。赤白緑の光があっちこちで自己主張し、これは少し鬱陶しいほどだ。
しかし金目のものがそこかしこに落ちていると考えれば眩しいのくらい我慢してやる。さっそく側の光から採取をはじめた。


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エプララの葉 ランクE
回復薬の素材の一つ。葉はそのまま食べても疲労回復の効果(小)がある。

リオラの葉 ランクD
回復薬の素材の一つ。根は腹下しになるので注意。

ハンマーアリクイの糞 ランクC

ハンマーアリクイの骨 ランクC

ハンマーアリクイの皮 ランクC


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おいおいおいアリクイの死骸発見したよ。おまけにまたうんこ。
赤表示はモンスターとか動物の素材を表しているのだろうか。草原では殆ど見られなかった赤い光が、それほど多くないけどそこかしこで見られる。まさか全部アリクイのわけはないだろう。


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ロックバードの羽根 ランクF
装飾品として人気。

ベオウフルの抜け毛 ランクD
武具錬金の素材になる。炎耐性。

イツカネズミの抜け歯 ランクC
装飾品として人気。


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赤表示はやはりモンスターとか動物の素材ということだ。
つまり売買できる素材は赤白緑で表示され、それを探査魔法で簡単に探し出せると。ランクにバラつきがあるのは見つかりやすいか見つけにくいか。若しくはいくらあっても需要があるか、ないか。
ものの名前と使用目的がわかるのは本当に便利だ。


++++


特に危険な目にも遭わず、無事村に帰ってきた。
モンスターに遭遇したらどうしようかと警戒していたが、ウサギ一匹見つからなかった。ウサギが居るのかはわからないが。
警備のマーロウに挨拶をして村に入り、子供らの洗礼を受ける。アイツら俺の持っている飴玉を催促しやがって。
また全身子供まみれになってゆっくりとジェロムの店に行く。子供らは店の前に来ると俺から離れて散会。店の中には入るなと言われているのか。躾がなっているな。

「こんちはー」
「お?タケルじゃねぇか。今日は何の用だい」
「必要になったものを仕入れるのと、また色々拾ってきたんで」
「お。今度は何を持ってきた。見せてみろ」

言われるままに鞄からいろいろと取り出す。無限に詰め込められるから調子に乗って拾いまくってしまった。
薬草に山菜にきのこ、動物の牙やら抜け毛やら。うんこは摘んで取り出す。

「んんー?ほう、ほう、むむむ…こりゃあ…おおお…」

ジェロムは一つ一つ手に取って確かめ、唸ったり感心したりと忙しそうだ。
俺はというと店内をぐるりと見渡し、手触りの良いタオル状の布数枚とスリッパ状のサンダルを発見。サンダルは踵が出てしまったが、部屋で過ごす分には気にならない。いくつか手ごろな袋とうんこ専用袋も買っておこう。丈夫そうな手袋と鉄の短剣もあった。武器になるようなものは…ないな。

「おう、タケル!あんたはすげぇな!」
「ん?」

突然声を上げられ、背中をバシバシと叩かれる。痛くはないけどなんだい。

「どれもこれも最ッ高の状態じゃねぇか!マーロウがアンタを素材採取専門家って言ってたが、これがその仕事ってことか!」
「いやべつに専門家ってわけじゃ」
「なぁに言ってやがんだこの野郎。こんだけすげぇもんもってきて、馬鹿な事ぬかすんじゃねぇよ」

褒めてるんだか貶しているんだか。

「なあなあなあ、アンタの腕を見込んで頼みたいことがあるんだ」
「内容によるかな。俺が知らないことはまだまだあるから」
「大したことじゃねぇよ。ベルカイムの商人から頼まれていることでもあるんだけどな、トルミから東の奥に行った山にミスリル鉱石があるって噂なんだ。まあ、冒険者も探しているらしいんだがまだ見つかっていねぇ。でもあの山にはミスリル鉱石があるってことはわかっている。だから山に行って一つでもミスリル鉱石を採取してきてほしいんだ」
「その山に行くまでの地図、とかあれば」
「いいのか?!」
「行ってみないとわからない」
「よっしゃ!」
「それから必要経費とか…」
「任せろ。ミスリル鉱石は見つかっても見つからなくっても、手付として経費は1万出してやる!成功報酬は10万、モノによっちゃあその上もだ!」

おお。10万レイブ!

「見つからなくっても経費を払うって、いいのか?」
「その山に行くまでにいろんなモン見つけてくれるだろ?俺に優先的に売ってくれりゃあ構わねぇ。その時点で俺にとっては黒字になるんだよ」
「なるほどなあ」
「どうする。危険な道中になるかもしれんがな。あそこいらはランクDまでのモンスターが出やがる」

え。
モンスター出ちゃうの?

「これだけの素材を採取できる腕だ。今日も傷一つ負ってねぇんだから、アッチのほうの腕もいいんだろうよ」

アッチってどっち?!

「回復薬(ポーション)も少しだが置いてあるぜ。買って行くか?」

ジェロムはすっかりご機嫌になり、俺の返答を待たずカウンターに緑色の液体が入った小瓶を3つ置いた。

「1つはサービスしてやる。買うもんはそれで全部か?持ってきた素材は全部買い取らせてもらう。しめて…諸々差し引いて36万レイブでどうだ!」

この金があれば遠出することも無いような気がします…。


宿に戻った俺は女将さんと厨房に居たおやじさんに採取したキノコや山菜をあげた。サービスしてくれた食事のお礼だと言うと、どうやら採取したものは新鮮で形も良いものだったらしく、とても喜ばれた。知らずに胡椒のような香辛料も採取していた。これは加工してから使わせてもらうと言っていた。貴重な調味料だから却って申し訳ないと言われたがなんのその。また美味い飯を食わせてくれればいい。

それよりもいつの間にか受けたことになっているジェロムの依頼。異世界初クエストなのだが、いろいろと不安だ。
何より謎なのが、俺がいろいろと拾い物をしてきたあの林。ランクFからDまでのモンスターが出没するらしいと聞いた。それもっと早く言ってくれよ!
ジェロムが俺はアッチの腕もイイと言っていたのはモンスター討伐のことだった。いや得意とか言う前にモンスターに遭遇していないし、殴り合いの喧嘩すらしたことない。

で。
そのモンスターと一度も遭遇したことがないのだけども、どうしてだろう。
………幸運?あの『青年』が付与した幸運の効果なのだろうか。いくらなんでもずっと幸運のままというわけじゃないだろう。モンスターに対抗できるだけの身体強化をしてもらったのだから、きっとどうにかして対抗しろということだ。

出来れば遭遇したくはないなあ…。
襲ってきたら自衛しないとならんものなあ…。
大きな犬に吠えられるのすら恐ろしいからなあ…。

でかい熊みたいなのがガオーって襲ってきたらどう対処すりゃいいんだ?



「着替え、よーし。回復薬、よーし。水袋×10、よーし。…さすがに水は持ちすぎたか?でも何があるかわからないからな…」

翌々日、遠出の支度をして村を出た。と、言っても便利な鞄に何でも入れられるから、見た目は近所を散歩する格好にしか見えないだろう。
女将さんに事情を話せば宿を利用しない日数はカウントしないことにしてくれた。貢いだ野草やキノコ類が功を奏したようだ。


ミスリル鉱石の採取できる山はトルミ村から徒歩で片道2日ほどかかる。馬は乗れないし馬車も走っていない。仕方なく徒歩です。車とかバイクとか自転車とか、ほんと素晴らしい技術でした。
街道沿いに歩いた後にぶち当たる白樹の森を目指す。名前の通り白い森だから直ぐに分かると。森に入って更に1日歩けば山が出てくる。

しかし、スキップ無双をしたおかげで午後には白樹の森に着いてしまった。
いやここまで丸1日かかるって言ったべや…。
俺の身体能力どんだけだよ。

白樹の森は白樺の森だった。
幹が白い巨木が鬱蒼と生い茂り天高く聳え立っている。おかげで青緑の葉が空を隠し、朝だというのにめちゃくちゃ薄暗い。ぶっちゃけ、こんな森に入りたくありません…。
ミスリル鉱石の採掘できる場所と言っていたが、森というよりは山。全体的に白い木が何処までも生えていて、どれくらいの規模なのかわからなかった。
地図ではここから真っすぐ東に進み、峡谷に出る。その近くでミスリル鉱石が採られるらしい。

そういう金になりそうな鉱石が採取できる場所は国とか領とかが管理しているものだが、ここは別名『古代竜(エンシェントドラゴン)の森』とも呼ばれ、モンスターが跋扈する危険地帯なのだとか。

…そんな場所によく行かせたなあのおっさん。
ドラゴンとか…ちょっと滾るじゃねぇか…。

さて、採取に向かいますか。


「灯光(ライト)」

ぼんやりと仄かに光る玉が辺りを照らし出す。
漆黒の闇というわけではないが、足元が影で見えにくいうえ泥土と化し歩きにくい。湿気もものすごくてジメジメしている。精神的疲労がハンパないが、身体的疲労は一切感じない。さっきのスキップ無双でも感じたが、この世界に来てから疲れたり息切れがしたり関節が痛くなることが無くなった。もう自分の身体の変化に嘆くことは無い。ただただラッキーと思うだけだ。

よし、ランクCからの素材探査開始。
やはり光の点滅は多くない。が、見たことのない素材だらけだったのである程度は採取。ランクFからの状態のいい食用のキノコや山菜を優先的に、ここにもあるアリクイのうんこを忘れず。
巨大な倒木をものともせず、ちょっとジャンプしたら数メートルも飛んだ。どんだけ跳躍力あるんだと空中でコントロール出来ずにケツから着地。地味に恥ずかしい。それでも強打したはずのケツは痛くなかった。

足元のぬかるみにはまらないよう、ランニングしながら丘を登る。傾斜角度がけっこうあるが強靭すぎる俺の足腰は全く堪えない。調子に乗ってまたもやスキップ無双をすると、深い渓谷に着いた。オイオイ1日かからず着いちゃったよ…。

「これが黒竜渓谷か。うん、谷底真っ暗でなんも見えねぇ」

その昔、世界最強の竜が住処にしていたという神聖な場所。らしい。
この世界で竜種は多種存在しているらしいが、『古代竜(エンシェントドラゴン)』と呼ばれる種は世界に4匹しか存在しないと言われている。その姿を見たものがはっきりしないため伝説上の生き物として神聖視され、古代竜を奉る種族や国も存在。

竜とか…ものすごく滾るな。こう、ゲームやファンタジーもののお約束である生物。時には序盤で出てくる雑魚敵だったり、世界最強最悪の強敵だったりした。
どんな姿かたちをしているのだろう。どんなもんなのか見てみたいが、命のほうが大切。触らぬ神にナントヤラだ。

崖づたいに下へと降りる僅かな階段らしきものを発見した。階段と呼べるほどしっかりした造りではないが、大昔に階段として利用していたのではないか、という配置。これが自然に出来たものとは考えにくい。
調査(サーチ)を展開すると、岩の壁一面に赤点滅。鞄の中から雑貨屋で購入した小型つるはしを出し、適当にカンカンと叩いていく。あまり力を込めなくてもぼろぼろと岩壁が崩れるから掘りやすい。

「これは銀鉱石か」

ミスリルほど価値は無いが、鉄鉱石よりは高価。主に装飾目的で使われるらしい。武器の飾りとか、アクセサリーとか。
足元に気をつけつつ下に降り、降りながらも岩壁をカンカンと叩いて採取。ミスリル鉱石はなかなか見つからない。それでも銀鉱石の塊が6つと鉄鉱石が10こも採取できた。ジェロムはこれだけじゃ満足してくれないだろうか…。

「高所恐怖症とか無くて良かった」

これもある意味で恐怖耐性、というものなのだろう。
独りで考え独りで納得をし、探査開始。手元が暗くなってきたので灯光(ライト)を3つに増やして降りていく。ミスリル鉱石を強く思って探査(サーチ)をかけたら、ぼんやりとした光が岩壁の向こうから反応。これ、深く掘らないと出てこないんじゃないか。

順調に岩壁を爆破していくと、急にぼかんと空間が出来た。その空間は洞窟のように奥へ奥へと続いている。
ダンジョン的なにおいがする!と、内心興奮しながら灯光(ライト)の光を強くして中を照らした。どうして何も無い岩壁からこんな空間ができるんだ?と思いつつ、大昔の鉱山なのかもしれないと洞窟らしきものに入ることにした。

探査(サーチ)の応用で来た道はわかるし、道に迷うことは無い。危険なモンスターにいつでも対処できるよう、片手にツルハシ片手に短剣の珍妙な格好で進んだ。
でかい俺の身長でも更に頭一つ分高い天井。人工的なのか自然発生なのかはわからないが、空気は濁っていないし湿気も酷くない。妙にカラッとした空気で呼吸がしやすかった。

探査(サーチ)をかけると僅かにミスリル鉱石が採掘できた。小指の先ほどの小さな塊が数個のみ。これだけでも価値はあるはずだが、どうせならジェロムにドヤ顔したい。
奥に進んでいくと道幅が広くなり、天井もどんどん高くなっていった。時々見つける白骨死体に嫌気が差しながらも進み、開けた場所に出た。

開けた場所、なんてもんじゃない。これは巨大な空間だ。
光をもっと強くして遠くに飛ばすと、ドーム上の天井に深い底。底は地底湖。澄んだ青い水が底いっぱいに広がっていた。

「すっげぇ…」

小さく呟いたのに声が何処までも響いた。
あの白樹の森の下にこんな地底湖があるだなんて。
下に降りてあの水を触ってみたい。飲めるなら水筒に入れて持って帰りたい。だが、ここは底まで数十メートルもある高さ。持ってきたロープじゃ足りないだろうし、降りられたとしても帰りはどうしようとウンウン考え。

「困った時の魔法か。ええと、身体を軽くすればいいのか?落ちても死なないように…うーんうーん…飛ぶ?飛べるのか?……ううううむ、飛翔(フライ)か!!」

灯光(ライト)と共に下に降りると、この空間の広さが更にわかる。スタジアムとかドーム並みに広いんじゃないだろうか。地球だとこういう空間は太古にマグマが冷えてこういった空間を作り出すもんだが、マグマが冷えたにしては随分と綺麗なドームだ。

写真があったら数百枚もデータに残すんだろうなと思いつつ、湖の側まで来る。光で照らせばとんでもない透明度であることがわかった。深い深い底は見えないけれど、一切濁っていない水。

このまま汚れた手を入れたら生態系が狂うかもしれない。この綺麗な水が汚れてしまうのが嫌で両手両腕に清潔(クリーン)をかけた。
実は強酸だったら嫌なので、調査(スキャン)先生に聞いてみる。

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地底の魔素水 ランクSS
古代竜の住処である地底湖の水。長年古代竜から溢れ出す魔素が溶け込み、高濃度高純度の魔素水と化している。飲料水としても可能であるが、力の強すぎる魔素は魔素中毒症になりやすいので注意。
備考:タケル・カミシロは飲料可能。疲労回復にもなる。

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ランクSS?!
今まで調査した中で一番の大物じゃないか!
SSってあれだよな。伝説級とか幻とか言われているやつだよな。
ただの水じゃないのかよこれ!道理で綺麗過ぎると思った…。魔素水?魔素が溶け込んだ、ってことは魔石みたいなもんか。魔力の塊じゃなくて液体。
古代竜の魔素が溶け込んだということは、大昔はこの地底湖に古代竜が住んでいたってことなのか。

―――我を眠りから覚ますものは 誰ぞ

竜って両生類?哺乳類?卵から孵化するイメージがあるんだが、水の中でどれだけ息が持つんだ。
いや、それはどうでもいい。それよりこの水、持って帰りたいな。何に使えるのかはわからないが、少なくとも俺の疲労回復には役立つ。

―――ううむ ヒトではないな ぬしは なにものだ

水袋×10の水を全部捨てるのは惜しい…。この水は宿屋のエリィちゃんが必死こいて井戸から汲んでくれた貴重な水だ。一袋はほぼ空だからそれに入れるとしても、もっと持って帰りたい。なんせSSだ。

―――ぬしに 聞いておるのだ ぬしは なにものだ

水袋の水をここで飲めばいいのか!…一袋に大体2リットルくらい入っているとして、合計で…。駄目だいくら俺が大食漢でも水でお腹たぷたぷになっちゃう。

―――聞いておるのだ 答えろ

まさかこんな貴重な水を発見するとはなあ。先ず味見してもいいかな。どんな味をしているのか…。

ぶちっ


『 我の話を 聞け !!』

グガアアアアァァァッ!!!



突如地底湖から現れた巨大な黒い何か。

爆風に身体は吹き飛ばされ、ごろごろと転がる。

岩に頭を強く打ち付け、これは痛いと静かに悶絶していると。




きょだいな ドラゴンが あらわれた !






キャー


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