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魔物娘たちの御主人様!

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要塞都市バルタロ編

第11話 活動拠点探し

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タロウはプス子が引く荷車に乗りながら要塞都市バルタロの中で宿屋を探すのだが、ついでに見学も兼ねて色々な場所を歩き回る。

要塞都市バルタロには大通りが3本あり、中央が先程、タロウ達が通り抜けた娼館通り、その中央を挟むように左側にある大通りは武器防具雑貨などの商売店、奴隷商などがメインの商売通り。
右側の大通りは酒場、賭博場、闘技場などの遊戯通りだった。

そして3本の大通りの先には、この要塞都市バルタロの存在目的である魔物殺しや魔物狩り達などがねぐらにしている「ギルド街」がある。

タロウはギルド街の入り口にある立て看板の前にいた。

タロウは荷車に乗ったままで看板に目を通す。


〜ここより先はギルド街〜
ここは魔物殺し、魔物狩り達の拠点なり。
力無き者は立ち入るべからず。
己の身は己のみが救う事を知れ。
旅人、商売人は歓楽街にて快楽を享受せよ。
力が有る者はギルド街へ入るべし。
力が有ればどのような欲望さえも望むままである。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ギルド街は要塞都市の出口部分の門側に作られており、その出口から北の未開拓地への遠征や、または帰還がしやすい場所となっている。

タロウもギルド街で拠点を探そうと考えてみたのだが、少し歩いてみた所でタロウにとってはまだまだ場違いであることがすぐに分かった。

先ほどの高級娼館もどれも豪華な作りだったが、ギルド街の宿屋も落ち着いた雰囲気ながらどれも高級な作りだった。

白を基調にした清楚な壁であったり、光沢のある石を壁にしていたり、しかも、どの宿屋も5〜6階はありそうな高層建築である。

ここをねぐらにしている者達は既に安定収入を確保しているせいなのか、どこの宿屋の立て看板を見ても1泊1人で銀貨1枚以上はする高級宿ばかりだった。

「(まだお金を稼げるかどうかも分からないのに、数日の宿代で残りの金を消費するわけにはいかないよな)」

しかも、それよりもタロウが気になったのはギルド街の住人達の目である。

「(どいつもこいつもギラギラとした目で殺気立っているなー……。ここで成り上がろうという意気込みなのだろうけども、こんな所で絡まれて人間同士で争うのはバカバカしい)」

タロウはそう考えると、すぐにプス子に指示を出す。

「プス子。ここはもういいや。さっさと来た道を戻って大通りの方へ帰ろう」

「あい」

プス子はその場で反転すると来た道を引き返す。

途中、武器を携帯している魔物殺しらしき者と何人かすれ違ったのだが、どの魔物殺しもタロウに対して「てめーやんのかコラ!」という目線を向けてくるので、タロウはどの魔物殺しとも目線を合わせずプス子の背中だけを眺めていた。

「(あーもう、勘弁してくれ。おたくらがお強いのは分かったから、どうか俺に喧嘩を吹っかけるなよ……。ここではただの喧嘩が殺し合いになりそうだからな。相手を殺す方の身にもなってくれ。無駄な殺生はなるべく避けたいんだからさ)」

タロウの心配は杞憂に終わる。

なにせギルド街に入ってまだ10分程度だったので、タロウ達はすぐにギルド街を出ることが出来たのだった。

「あーやれやれ。あんなギスギスした所に住むのは御免だな。こちとら成り上がるためじゃなくて、ほどよく稼げれば良いなーという感じなんだからさ」

「タロ様ー。人間達の殺気が凄かったですねー。私はいつでも反撃ができるように警戒してましたよ。私のタロ様を傷つける輩はこのメイスで撲殺です!」

プス子は左腰に下げているメイスを右手で取ると「ぶんぶん」とその場で上下に振る。

「偉いぞプス子。命令がなくても主人を守る。その心掛けはこれからも宜しくな」

「あい!」

プス子は「むふー」と鼻息を出しながら嬉しそうに笑う。

「でも、街の中で無意味にメイスを振り回すのはやめような」

「あいー」

プス子は「およよー」と少しだけしょんぼりしながらメイスを左腰に下げなおすのだった。

「しょげないしょげない。この要塞都市までの旅のご褒美の約束をごちそうしてやるからさ」

「――白パンですかタロ様!?」

「そうだ。プス子の大好きな白パンをごちそうしてあげるよ。さあ、店がたくさんあった商売通りに行こうか」

「あいっ!」

プス子は「にぱー」と笑うと荷車を早足で引きながら商売通りへと向かうのだった。

タロウとプス子は賑やかな商売通りに入る。

タロウは商売通りの中で適当なパン屋を見つけると、そこで焼きたての白パンを購入してプス子にご褒美として与えた。

プス子は受け取った白パンにかぶりつく。

「ふわふわー♪ 白パン美味しいです!」

「ここまで荷車を引いてくれてありがとうな」

「お礼なんていらないのです。タロ様を乗せて引くぐらいなら普通に歩いているのと変わらないのです。だからこれからも大丈夫です」

「そうか。これからも宜しくな」

「あい!」

タロウは幸せそうに白パンを頬張るプス子の顔を見ながら、タロウも3日ぶりの柔らかなパンを頬張るのだった。
 
「(柔らかいパンは美味いなー。日持ち優先でこの3日間は乾燥パンだけだったからな)」

プス子が大きな白パンをぺろりと平らげたのを見て、タロウは自分の白パンをプス子に渡す。

「ほら、これも食べな」

「え? え?」

プス子が戸惑っているので強引にその手に持たせる。

「俺はこれだけで十分だから、残りはプス子が食べな」

「いいの?」

「ああ」

「ありがとうタロ様!」

プス子はタロウから手渡された白パンを幸せそうに頬張る。

「ふわふわー!」

「それじゃ、食べながらでいいから街の外へ出ようか」

「ここから出るの?」

「ほら、外に「難民街」という街がもう1個あっただろ? あそこで安宿を探そうと思う」

「あい!」

プス子は右手に持った白パンをかじりながら、左手で荷車を引いて街の外へと歩き出すのだった。



タロウとプス子は要塞都市を出ると、城壁の外側に形成されている「難民街」に足を踏み入れる。

どの建物も要塞都市内とは比べ物にならない程に質素で簡素だった。

質の悪い木でできた掘っ立て小屋が並ぶ難民街をタロウとプス子は歩いて行く。

しかし、見た目こそ質素ではあるが、人通りは要塞都市内に劣らない程に活気があった。

「(それだけ難民が多いという事か……。しかし、それにしても色んな店が一通りは揃っているんだな)」

難民街の中にも酒場、商売店、奴隷商、娼館など、規模や質はどれも要塞都市内のものには足元にも及ばないが、一応はそれなりに揃っているようだった。

ぷらぷらとあてもなくプス子に荷車を引かせていると、タロウはとある小さな酒場の立て看板に目が止まる。

「プス子。ちょっと止まってくれ」

「あい」

プス子が小さな酒場の前で止まる。

タロウは荷車から降りると、その立て看板の前に歩み寄り内容を確かめる。

「ただいまお部屋が空いております。1泊1人で銅貨1枚。3食美味しい食事付き……か」

タロウは小さな酒場を見る。

難民が住んでいる掘っ建て小屋とは違い、かなりしっかりした作りで良い木を使っていそうだった。

「2階建てで1階が酒場、2階が宿屋という形みたいだな」

タロウは入り口からちらりと中を覗いてみると、四角いテーブルに椅子が4つが5組みにカウンター席が5つ。

まだ昼間のせいなのか客は1人もおらず、カウンターの中にいる女性が「トントン」と包丁を使う音が静かな店内に響いていた。

「(1泊1人で3食付きで銅貨1枚というのは前に泊まっていた安宿より安いんだよな。あそこは質素な夜食が出ただけだからな。そう考えるとお得だよな。ここを活動の拠点にしてみるか)」

タロウはそう考えるとプス子に声をかける。

「ちょっと話をしてみるからプス子はここで大人しく待っているんだぞ」

「あい」

プス子が素直に頷くのを見てタロウは酒場に入った。

「すいません」

「あら、いらっしゃい!」

タロウの声にカウンター内にいる女性が顔を上げて微笑む。

年の頃は25前後だろうか。
落ち着いた雰囲気の女性は、清潔を保つ為なのか長い黒髪を後ろで結んでポニーテールにしている。

少し鋭い目つきながらも、右目の下にある泣きぼくろが何とも言えず色っぽい。

唇には薄めだが赤い紅を引いている。

平凡な紺のスカートに真っ白い腰エプロン。
上着はおっぱいの上半分が「むぎゅっ」と飛び出すような白色のコルセットを着ており、酒場の女将としてエロい演出も大事にしているようだった。

全体的には優しそうな雰囲気を持っている女将にタロウは立て看板の質問をしてみる。
   
「表の立て看板に空き部屋があると書いてあったんですが」

「ええ、空いてますよ。うちに泊まってくれるんですか?」

「そのつもりなんですが」

「あら、本当に!?」

「え?」

女将が驚いたのでタロウは何か曰くがあるのかと勘ぐってしまう。

「あら、ごめんなさい。深い意味はないのよ。なにせここは「難民街」だからね。要塞都市でやっていける人は要塞都市内に住んじゃうし、商売人や旅人でも男の人は「娼館」の方を選んでしまうから、ただ寝るためだけに泊まるお客さんってほとんどいないのよ」

「ああ、なるほど」
 
「2階に3部屋あるんだけど1部屋も埋まってなくてね。泊まってくれるならとても嬉しいわ」

「その前に、何個か聞きたい事があるんですが」

「ええ、良いわよ。遠慮無く何でも聞いて下さいな」 

女将は包丁をその場に置いて、タオルで手をふきふきする。

「3食付きらしいですが、どんな食事ですかね」  

「うちの食事はメイン、サラダ、スープ、穀物が揃ったきちんとした食事よ。朝食と昼食は少し軽めだけど、夕食のメインにはその日に仕入れた肉、魚などを使うわよ」

スープと固いパンだけかと思っていたタロウは思わず聞き返す。

「え……。そんなに豪華な食事で銅貨1枚でいいんですか?」

「ええ、大丈夫よ。うちは土地も店も全て私の物だからね。だから儲けは少しでも大丈夫なの。お客さんには美味しい物を振舞いたいし、喜んで欲しいからね」

「客としてはとてもありがたいですね。それと、あと一つ聞きたいんですが。魔物と一緒に同じ部屋に泊まってもいいですかね」

「え? 魔物と? 貴方、魔物使いなの?」

「はい」

「外に居るの?」

「はい、待たせてあります」

「見せてもらってもいいかしら」

「ええ、どうぞ」

女将はそう言うとカウンターから出て、店先で佇んでいるプス子を見に行く。

「あら、サイクロプスのメスじゃない」

女将はジロジロとプス子を眺める。

「気性の荒いサイクロプスにしては大人しそうな子ね。しかも何だか「ニコニコ」しているし……」 

プス子はタロウという不思議な人間と触れ合っているせいか、他の人間に対して不必要に怖がる様子を見せることはなかった。

そんなプス子を見て女将の目線が鋭くなる。

「本当にこの魔物は言うことを聞くの?」

女将が疑いの眼差しでタロウを見る。

「ええ、とても従順ですよ。ほら、プス子。その場で座りな」

タロウは口でそう命令しながら、女将には魔物と話せていると思われないようにカムフラージュで「手信号っぽい」仕草を加える。

プス子はタロウの「言葉を聞いて」その場でちょこんと正座する。

「ほら、立って」

タロウが次の命令を手信号っぽい仕草を加えて出すと、プス子はひょっこりとその場に立ち上がる。

「……なにそれ」

「……え?」

タロウは上手くやれたと思っていたのだが、タロウとプス子の一連の動きを見た女将の表情は何故かとても険しかった。

「(……しまった。あまりにも基礎的な動作で不安を抱かせてしまったか?)」

タロウはもっと複雑な動きをプス子にさせようと考えるが、女将はタロウの動きを制するように言葉を被せてくる。

「魔物を使役するには恐怖支配が主流……、いえ、それしか見たことが無いわ。でも、このサイクロプスの目は生気に満ち溢れている。そもそも、あり得ないのよ。こんな目の輝きは。魔物は捕らえられる時に、人間に酷い行為をされて恨みを抱く。そしてさらに調教されようものなら恨みに絶望が加わり、どんな魔物も死んだような目になるのが当たり前なの。つまり、明らかにこの魔物は「調教」がまだ行われていないという事よ。いや、それよりもこの魔物は人間に捕まえられた事すら疑わしい。この目の輝きは野生そのものじゃない! それなのに 素直に命令を聞くですって!? 貴方、一体、何者なのよ!!」

女将は鋭い目つきでタロウを睨みながら一気にまくし立ててくる。

その言葉の責めの意味を理解したタロウは戦慄した。

「(――この女!! 魔物使いだったのか!!)」

タロウは心の中で「油断した!」と自分を責める。

ここ要塞都市バルタロは魔物達と命のやりとりをする魔物殺し、魔物狩り、魔物使い達の戦場であり中心地なのだ。
それぞれの技術を競い合い、いかに相手を出し抜くかが重要な競争社会。

それだけに魔物使いの使役技術に「敏感」な者がそこら辺にいるという事をもっと認識して、対処法を考えておくべきだったのだ。

しかし、相手が同業者ならまだしも、まさかの酒場の女将から突っ込まれるとは想像もつかず、タロウにとってはまさに間隙を突かれた形となった。

タロウは頭の回転を何とか必死に上げで対処を試みる。

「(あくまで「酒場の女将」だから驚いただけだ! 目の前にいる女性は「魔物使い」だと思って対処しよう!)」

タロウはそう心に決めると即座に対応に打って出る。

「……そう言われてもな〜」

タロウは動揺する心を押し殺して余裕な態度を表現する為に、頭をポリポリと掻きながらとぼけた声を出す。

「魔物使いの技術は秘技中の秘技ですからね。それぞれのやり方があるのが「普通」ではないんですかね?」

タロウは魔物使い達が「飯の種」である使役技術を公開しているわけがないと考えていたので、前々から考えていたこの論理で女将に牽制を試みる。

「……う」

その効果は抜群だったらしく女将は言葉に詰まってしまう。

だが、女将の視線には疑惑の色が色濃く宿っており、このままでは宿を借りることは難しい状況だった。

別に無理をせずに魔物に疎い店主の宿を探すという手もあるのだが、この問題は今後ともタロウにつきまとう主題であると感じていたので、ここで「相手を納得させる方法」を練習しておくべきだとタロウは考えた。

タロウは女将の心をほぐしてこの問題の軟着陸を試みる。

「他の魔物使いがどういう「調教」を行うのかは知りませんが、俺のやり方ではこうなるんですよ。ただ、それだけの事です」

女将は「うーん」と気まずそうに顔をしかめる。

「確かにそう言われればそれまでなんだけどもね。でも、普通の魔物使いなら宿屋に泊まる時は連れの魔物を外か、専用の小屋に鎖で繋いでおくわ。でも、貴方は一緒の部屋で泊まらせるという。その心は何なのか聞いてはダメかしら?」

「外では寒いから」

タロウの即答に女将は目を見開き、そして破顔する。

「あらま、ふふふ。まさかの答えね〜。つまり貴方は魔物奴隷を「優しく」扱っているのね」

「そういうことです」

「なるほど……面白いわ! 今まで見たこともない魔物の使役方法だけど、このサイクロプスのメスがちゃんと言うことを聞くんだからこれ以上、私がとやかく言う必要は無いわね。いいわ、どうぞ一緒の部屋に泊まってくれて結構よ」

「食事も俺と同じ品質でお願いします」

「はい、分かったわ。お客さんの意向は第一ですからね。なにせ魔物の調教の種類によっては、他人が優しくすることがダメな場合がありますからね。逆に貴方の場合は魔物を大事に扱って欲しいという要望だから、店の主としてちゃんと私もそう対応します。それで大丈夫?」

「むしろそれでお願いします」 

「では、何日間のお泊りになりますか?」

タロウは財布を取り出して中から銀貨1枚を女将に手渡す。

「1泊2人で銅貨2枚。その銀貨1枚で、まずは5日分を前払いしておきます。今のところは、ここを拠点に活動する予定なんで、うまくお金が稼げたらその都度、更新させてもらう予定です」

「あら、長期滞在なの? それはうちとしても有難いわ」

「金が貯まるまでは、しばらくはお世話になるつもりです。ご飯も美味しそうだし」

「ええ、料理はうちの酒場の自慢ですから期待して下さいな」

女将は一度、店内に入ると手に鍵を持ってタロウの前に戻ってくる。

「これが部屋の鍵です。階段を上がって真正面の角部屋です。うちで一番の部屋ですよ。朝日と夕日の両方が見えて日当たりも良好です。隣の部屋は浴場になってますので、朝日、夕日を眺めながらいつでも自由に入って下さいな。それでは、どうぞごゆっくり」

「ありがとう、お姉さん」

「あらやだ。お上手ね」

「ところでお姉さんは魔物使いなんですかね?」

「あ! ごめんなさい。先程は変な言いがかりをつけてしまって迷惑をかけてしまいましたね。昔、少し「魔物狩り」を営んでましてね。魔物については少し詳しかったのもので。それで、お客さんのあまりにも変わった魔物の使役方法につい興奮してしまって。本当にすみませんでした」

女将は申し訳なさそうに頭を下げてくる。

「あ、いえ、別にそれはいいんです。気にしないで下さい」

「そう言ってもらえると助かります。あ、そうだ。お泊りの前にお名前をお聞きしても宜しいですか?」

「タロウです」

「タロウさんですね」

女将は腰エプロンのポケットから取り出したノートにタロウの名前を記述する。

「お連れの魔物には名前があるんですか?」

「プス子です」

「ふふふ。やはり名前を付けているですね」

「もしかして名前を付けない魔物使いが多いんですか?」

「多いと思うわよ。魔物名で呼ぶのが基本で、貴方みたいに専用の名前を付ける人は少数派ね」

「なるほどー」

「タロウさんは、ここへは初めて来たの?」

「皆と同じく夢を求めて来ました」

「そうなんだ。じゃあ、分からないことがあったら何でも聞いてね。これでも昔は頑張っていた方だから、ここでの慣習なんかにも詳しいつもりよ」

女将は自信有りといった得意気な顔を見せながら胸を反る。
その際にコルセットの上から飛び出した豊満な上乳が強調されてタロウは思わず「すげー」と心の中で思った。
タロウは何とか平静を装いながら返事をする。

「それはありがたいです。何かあれば宜しくです。えーと、お姉さんの名前を聞いても良いでしょうか」

「ええ、もちろん。私はレーデよ。そしてここはレーデの酒場。小さい酒場だけどゆっくりしていってね」

「お世話になります」

レーデは笑顔で頷くと仕込みを再開するべく店内に戻る。

タロウは荷車の中の荷物をまとめるとプス子に背負わせる。

「それじゃプス子。今日からこの宿屋にお世話になるぞ」

「あい! タロ様」

「あのレーデさんが作る料理は美味しいんだって。一緒に食べような」

「やたー!」

タロウはプス子を連れて酒場に入ると、入口の側にある階段をあがって2階に行き、指定された部屋に入る。

ベッド、テーブルに椅子、クローゼット、トイレまで完備されており、安宿とはいえしっかりした作りの感じの良い部屋だった。

タロウとプス子は装備を外してクローゼットに収めると、椅子に腰を下ろして「ほっ」と一息つくのだった。
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