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番外編、六英雄の状態

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「ふむ、今回はここまでじゃな。多少不況の風が吹いてはおるが、緊急性はないからじき持ち直すじゃろ」

 この日、ある場所で六英雄などと言われるメンツが顔をそろえて定例会議を行っていた。

「あんまり俺達が動きすぎると、いくつもの国がうるせえからな……そのくせ困るとすぐに頼って来る精神性が気に食わねえ」

 仲間内では野生児などと言われている男がそう言葉を吐く。まあ、数回そういう事があった為に他の面子も苦笑する。それでも裏から手を回して助けたのは、その国の国民を守る為であった。国が一つ潰れれば難民問題を始めとした面倒な問題が多発する事は言うまでも無い事であり、それらを発生させないという狙いもあった。

「全くです、こちらは慈善事業で金を動かしている訳ではないのです。その辺を理解しない者にはうんざりしますね。国家のかじを取る立場なら、そう言った面も考慮して頂かないと」

 ジェントルマンの言葉に皆頷く。まあさすがに、そんなアホをやらかす国家はごく一部でしかない。逆に言えばゼロではない、とも言えてしまうのだが。

「まあ、その話はその辺りで。それと、こうして集まったのですから少々確認しておきたい事が別件であります。one worldの進歩状況はどうなっているのですか?」

 中世商人の発言に、紅一点に視点が集まる。紅一点はone worldことワンモアの世界ではミリーとして参加しているので一番情報を得ている立場である。

「それについては、随時レポートを提供しているはずですが。現段階では大まかに言って七五%程と、開発からのレポートにもあったはずです」

 紅一点に発言に、野生児が首を振る。

「そう言った紙の上にある数字の事を聞きたいんじゃねえ。実際に中に入っている連中の生の声って奴を俺は知りてえんだ。その辺の事は、実際に体験しているお前が良く知ってるだろうが。後は、娘が参加している奴もいたな」

 野生児の言葉に、エリザの父親は「娘から話は聞いていますが、当人の主観が入りすぎていますからねえ」とあいまいな笑顔を浮かべつつ野生児に言葉を返した。なので、再び視線が紅一点に集まる。

「そうね、まずAI達だけど。色々な話を振ってみたけど、返答に違和感を感じなくなったわね。本当にあのone worldの一住人としての立ち位置を確立していると言っていいわ。そして彼ら自身が自分の意思で複数のコミュニティを結成している事も確認が取れている。後は体があれば、私達の世界で生活していくことも十分可能なレベルになっているわ」

 この紅一点からの報告に、野生児だけでなく他のメンバーもそれは良い事だと満足そうにうなずく。

「あと、EAが妖精国の女王になったのは報告書にあった通りだけど、EBの方も龍の国のトップになる事が確定したわ。彼女たち二人は色々と学習を重ねていて、あと少し経験を積めば国家運営も可能にするレベルじゃないかしら。──あまりに愚かな国のトップの代わりになってもらいたくなる所ね」

 物騒な発言であるが、この紅一点の言葉に他の面子からは反論が一切出ない。これを世界の国家元首が知ったらどんな顔をするだろうか?

「なので、one worldを元にしたいくつかの事業の立ち上げ準備は順調といった所よ。後は世界をもう少し広げて、いくつかの実験と経過を見てからこちらに手渡したいと言う事で七五%の完成度と開発者たちはした様ね」

 紅一点からの話を聞いて、ふうむと長老が唸る。

「しかし、このペースじゃと儂がone worldに降り立つ前にお迎えが来るんじゃないかと怖いんじゃが」

 しかしその直後、他の五人全員から「あんたはあと二十年は余裕で生きるから心配するなと言うツッコミが入る。老いてなお盛んという言葉を地で行くこの六英雄の中で高年齢者である長老が、あと数年で床に伏せって老衰するとはどうしても思えなかったのであろう。

「間に合わなかったら間に合わなかったで仕方がないでしょう。それに、私は知っていますよ? 貴方がすでに自分の思考のコピーを取っていて、ワンモア世界に転移したかのように楽しむ事が出来るよう計画しているのは。まったく、どれだけ生きれば気がすむのですか」

 エリザの父親が長老に対してそんな事を発現し、長老は「なんじゃお前さん、知っとんたんかい……」と少々ばつの悪い表情を浮かべた。その長老に、しょうがねえなこのジジイは。という事を顔に浮かべて隠しもしない野生児。苦笑を浮かべるジェントルマンと紅一点。

「まあ長老のそんな生き汚さは横に置いとくがよ、とにかくone worldに関連した計画に大きな問題はねえんだな? そこだけははっきりしてくれよ?」

 念を押す野生児に、頷く紅一点。そのやり取りで野生児は機嫌を良くする。

「そうか、それならいいぜ。まったく、ここ最近は面倒な事ばかり振られて苛立ってたところだ。少しは良い話の一つも聞けなきゃな」

 途轍もない富を集めている六英雄の元に、面倒な事が寄ってこない事はない。何せ金に目がくらんでくだらないちょっかいや直接的な危害を加えようとしてきた連中に対する高んたー行動をとった事はもう数え切れない。ここ最近は不況の風が吹いている事もあってか、大小全てを含めればちょっかいを掛けられた数は大幅に増加。特にコンピューターウィルス系の攻撃が多い。当然備えはしているが、鬱陶しい事この上ない状況となっていた。

「面倒事は常によって来るものではありますが、ここ最近はさすがに多いですからね。私としても、少々乱暴な手段に訴えたくなりつつあります」

 なんて事を言い出すジェントルマン。紳士ではあるが、その分切れた時には報復内容がえげつなく、狙われれば社会的に抹殺する事もいとわない一面がある。もちろん滅多にはやらないが、やった事が無いわけではない。

「そう言ったうっ憤を晴らす場としても、one worldには早く完成してもらいたいの。日本に行ければすぐに入るんじゃが、こればっかりはどうしようもないわい」

 眼の光が消えつつあったジェントルマンをなだめつつ、長老が呟くように言う。なんだかんだで、六英雄が過激な手段をとることが少ないのはこの長老のお蔭である面が強い。長老がもしいなかった場合、地図からいくつかの国が消えている可能性もあったりする。そう、国家破産という形で……

「そうですね、早くone worldの世界で冒険をしたりしてみたいものです。時々映像も拝見しますが、やはり自分が体験しない事には分からない事が多いですからね」

 と、目の輝きが正常に戻って来たジェントルマン。内心ほっとしているのは長老……ではなく野生児だったりする。野生児と言われるだけあって感が鋭く、先程のジェントルマンの精神がちょっとどころではなく宜しくなかった事を感じ取っていたのである。

「とにかく、今回はこれで解散としよう。ただ、今後何があるか分からんからの、連絡は密にの」

 と、長老の言葉で今回の六英雄の会議は閉幕。そしていくつかの国がジェントルマンに潰されずに済みましたとさ。
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