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ドラゴンが街の近くにいたのは……

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 翌日から、早速ブルーカラーの面子と協力してドラゴン探しを始めた。街の人から聞いた話だと、街の北側で見たと言う情報が多い。また、街からは常に一定の距離を置いていて近寄る気配も無いと言う事で、街の人達からしてみれば敵意が無い様だから放っておけばいいんじゃないか? という感じであった。

「北側って言っても、結構広いから各自手分けで探そうな。で、見つけたら連絡をするって事で。後、あくまで話し合いだけな? 絶対に剣を向けるなよ?」

 念を押すツヴァイの言葉に、自分を含めたブルーカラーのメンバーが頷く。そうして手分けしてドラゴン捜索が開始。自分はファスト北東の、特に何もない所を探すことにした。とりあえず適当に、ある程度大きくなったアクアに乗せて貰って広範囲を探し回る。アクアの足のお蔭で広範囲を探し回る事が可能になったので、しらみつぶしに周囲を調べたとしても大した時間がかからないのはありがたい。

 そうして探し回る事数分、走っていたアクアが突然急ブレーキをかけた。アクアの体質で体を沈める事で半固定状態になっている自分が勢い良く宙に投げ出されることは無かったものの、それなりのスピードでアクアは走っていたのだから、前方に体を投げ出される感触を味わう事にはなった。

「急にどうした!?」「ぴゅい」

 自分のやや非難が混じった言葉に対して、アクアはある一定の方向を翼で指さすようなしぐさを取る。その方向に視線を向けても特にこれといった物は何もないのだが、アクアがこうやって具体的に方向を指示すのだから、見えないだけで何かが居るのかも知れない。アクアから降り、小さくなったちびアクアを頭に乗せた後に指示された方向に向かって一直線に歩を進めると……いつの間にか、目の前に漆黒の鱗を持ったドラゴンが居た。

『おお、ようやくいらっしゃいましたな。グリーンドラゴンの若い者達に協力を頼んで噂を街にばら撒いたまでは良かったのですが、なかなかアース殿が姿を見せなかったのでやきもきしておりました』

 自分に顔を近づけた後にそんな言葉を口にしながら──鱗の色からブラックドラゴンと呼称する──ドラゴンが自分に視線を向けてきた。確かに鱗は黒だが、髭と思われる長い毛などは白色だった。なんというか、かなりのおじいちゃんというイメージが、立派な髭のせいで掻き立てられる。

『わしの周りには、幻視の結界……まあ簡単に言ってしまえば、かなり近くまで近寄らないと姿を見る事が出来ない膜が展開されておりますのじゃ。儂の体は御覧の通りデカいですからのう、こうしておかねば人族の街に住む者達を脅す事になってしまいますからの。こちらにその意思はないと言っても、それを信ずる事はなかなかに難しい事も理解しております』

 まあ、ドラゴンってのはそう言う存在でもあるからなぁ。さてと、それはそれとして……わざわざ噂を立ててここまで来るように仕向けるって事は、何か頼みごとがあるって事だろうな。

「その様な事をなさった理由は、私に何か頼みごとがあると言う事で宜しいのでしょうか?」

 間違いはないとは思うけれど、念のために確認しておいた方が早い。わざわざ自分の名前を挙げた以上、十中八九そうなんだろうけど。

『ええ、お時間を頂けませんかの? むろん報酬は支払いますので。かつてご迷惑をおかけした愚かなグリーンドラゴンの様な事は決して致しません事を宣言しますぞ。それに、他の人族たちでは今回の頼みに関しては少々話が通じない所がありますからのう……』

 ふむ、それならばいいかな。もちろん内容にもよるが、少なくともここまで敵意が無いのなら剣呑な事にはならないだろう。

「分かりました、出来る出来ないはお話を伺った後でしかお答えできませんが……まずは依頼内容を伺ってもよろしいでしょうか?」

 自分の言葉に、ブラックドラゴンはゆっくりと頷いた後に、こう告げてきた。

『それでは頼みたい事なのですがの……わし、臭いですかの?』

 この言葉に、自分の頭上には? マークが一気に複数浮かび上がったのは言うまでもないだろう。


 で、更に話を詳しく聞くと……なんでもここ最近、可愛がっているお嬢様から「おじいちゃん、なんか臭いです」と言われるようになってしまったらしい。ブラックドラゴンも水浴びなどはしているらしく、不潔にしているつもりはないらしいのだが、それでもお嬢様が「臭いです〜」と言って距離を取るようになってしまったらしい。んで、このお嬢様ってのがかつて自分が助けたレッドドラゴンの子供の事らしい。そりゃ、自分じゃないと話が分からんね……だから自分に相談を持ち掛けてきたとのこと。ちなみに、この話を聞いている最中、目の前にいるブラックドラゴンのお爺様は、もう涙をボロボロとこぼしながら話していた。話をしているうちに思い出してしまい、涙が止められなかった様子だ。

『それで、臭い匂いを消したいと言うのが頼みごとになるのじゃが……なんとか、頼めないじゃろうか……元気なお嬢様を間近で見る事は、わしにとって何事にも代えがたい癒しと生きる活力の元でございましてな……』

 なお泣き止まないブラックドラゴン。うーん、これは何とかしてあげたい。でも、臭いかなあ? ブラックドラゴンに許可を貰ってあちこちの匂いをかいでみたけど、変に臭いと言う所は無かったんだが……加齢臭の様な物も無かったし。お嬢様、つまりあのレッドドラゴンの子は、このブラックドラゴンのどこが臭いと言ったのだろうか?

「ちょっと他の人の意見も聞きたいので、一定数の人を呼んでも良いでしょうか? むろん、信頼がおける人達ですので……」

 匂いというか、五感に関することは自分一人だけの判断ではちょっと結論付けるのは難しい。なので、許可を貰ってからブルーカラーのごく一部のメンバーをこの場に呼び出した。具体的には、ツヴァイ、ミリー、レイジ、カザミネ、ノーラ、ロナの初期メンバーのみ。男女で受ける感じが違う事も考慮してある。ブラックドラゴンを見つけたが、事情を説明して了解を得てから来て貰った。その後は来て貰った全員でブラックドラゴンの匂いを嗅いでもらった訳なのだが。

「臭いか?」「いや、そんな事はないな」「私からしても、別段そう臭いとは〜」「別段嫌な臭いはしませんよね?」「うん、普通でしょ?」「別に問題ないと思うわよ?」

 と、ブルーカラーメンバーからも特にへんな臭いはしないとの意見で一致した。その後うーんと皆で頭を捻ったのだが、そこでロナちゃんが手を上げた。

「いや、今思ったんだけど。もしかしてボク達にはなんでもない匂いでも、そのお嬢様って子だと臭いのかも。ほら、小さい子って音とか味とか匂いに敏感じゃない?」

 あー、なるほどね。その可能性を見落としていた。そうするとそれを解決するためには何をすべきだろうか? すると、続いてカザミネが手を上げた。

「ならば、ブラックドラゴンさんをここに居るメンバーみんなで洗えばいいだけではないでしょうか? 幸いファストにもペットなどを洗う道具を販売するお店があります。そこで各自ブラシやボディシャンプーを買って来て口の中や体を隅々まで磨けば、そのお嬢様が感じている嫌な匂いを洗い流せるのではないでしょうか?」

 それが良いかも知れないな。報酬とかは別にしても、ここまで涙をボロボロ流すブラックドラゴンは放置できないし。そういう事で、ツヴァイとカザミネとレイジの三人に買い出しに行ってもらい、自分とミリーとロナ、ノーラはここで待機。ついでにブラックドラゴンとの会話とブルーカラーメンバーに対する報酬を決める事になった。といっても、ブルーカラー側への報酬は一発で決まった。ブラックドラゴンに乗って空中から世界を見てみたいという願いに、ブラックドラゴンがすんなり了承したためである。

 対して時間もかからずにツヴァイ達が帰還。各自ツヴァイ達が買って来たブラシを手に取り、持ち場を分担してブラックドラゴンを洗う事になった。なお、水はブラックドラゴンは魔法で出してくれると言う事になったのでそちらも問題ない。自分の担当は背中を洗う事。そうして許可を貰った後に自分はブラックドラゴンの背中への取った訳なのだが……そこで自分は匂いの元を突き止める事になる。これ、放置したらよろしくない奴だ。早速ブラックドラゴンに教えないと。




もし自分が異世界に言ったらやってみたい事の一つ。
グリフォンやドラゴンと仲良くなって、その体を洗いたい。
理由? 『私にもわからん』
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