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第8話 後ろで入れるか、前から入れるか

07:イランイラン

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    07:イランイラン

「亀虎管理官との話どうでした?」
 久しぶりに署へ顔を出した喉黒警部補が、最近の6係の動静を私に聞いて来た。
「6係への増員は確定したそうだ。昇格の方も目鼻が付いたらしい。」
「それは良かったじゃありませんか。」
「係の昇格はともかく、増員は助かる。君たちには負担を掛けっぱなしだからな、、。」
「浮かない顔ですね、他に何か?」
 喉黒警部補は気が回る、それが気を遣ってではないところが頼もしい。

「鷹見浩三氏だよ。今回の流れを裏で加速させたのは鷹見氏だ。その鷹見氏が亀虎管理官に見返りとして偽狩野の首を差し出せと言ってきたらしい。」
「パペッターですか、、。」
「そうだ、パペッターだ。本当は美馬の首や美馬に仕事を頼んだ正解関係の人間を潰したいらしいが、まだ様子を見るそうだ。」
「蓮華座の流れを止めただけでは、まだ本格的な復讐には着手しないと、、慎重な人物だ。」
「それでも二人の息子を殺した犯人を操っていた男の首を取れば、少しは気も晴れるんだろう、、。まあ、それは判らなくはない。だが問題は、それをやる我々の方だ。」
「想像以上に組織が大きいですからね。それに過激だ。本格的な捜査をやれば実質、戦争になる。本来なら特別対策本部を置いて全署対応でやるような内容だ。」
 門戸照人と共に確保したブルーこと寒楚から、美馬が組織している暗殺団のコードネームだけは聞き出している。
 チェルノボグ・サーカスだ。
 少なくとも十名以上の構成員がいるようだった。

「それが出来ん。又、出来ない事案対応こそ、我々6係の存在意義だ。」
「相手がパペッターなら指尻さんにも協力して貰う必要がありますね。こっちの対抗馬は丑寅だが、彼には足りない部分がある。」
「純粋な正義感や非情さがないのは美徳なんだがな。」
 私は少し憂鬱になった、別に丑虎巡査部長を疎んでいるわけではい。
 彼の正直さが6係ではブレーキになってしまうという事実が問題なのだ。
 もちろん正しいのは、いつも丑虎巡査部長だが。
「いつもなら丑虎の足りずは、我々でカバー出来るんですが、精神的な知略攻防戦となると、その代表選手が、とうの丑寅ですからね。やはり指尻さんと一緒にやらせるほうがいいですよ。」
「しかし指尻女史が、真栄田の件でパペッターらしき男と接触しているかも知れないという話が勘違いでないなら、かなりの危険を覚悟しなければならん。」
「でもこの話を持って行けば、必ず指尻さんは、引き受けてくれるでしょうね。」
 確かに、指尻女史がパペッターに対して相当強い執着を持っているのは確かだ。
 すこし表現はずれるが、指尻女史はパペッターの事を真栄田陸の仇とまで見なしているかも知れない。

「どうです。パペッターの首を取るまでは、御白羅と香山微笑花を指尻さんの護衛に当てて見れば。その間、表の事案を入れないように管理官に動いてもらうんです。」
「短期なら出来るが、長期は無理だな。君には、この件を短期でカタを付けられるという目処があるのか?」
「壇伊玖磨の獄中自殺で面白い話を聞き込んだんですよ。あれは自殺じゃないんじゃないかという。」
「又、パペッターか?、、そこから辿れる可能性があるかも知れんと言うことか。今度は範囲がかなり絞れそうだな。行きずりの人間が何とか出来る場所じゃない。解った。その線でもう少し当たりをつけてくれ。やれそうだったら、君が言ってくれた態勢でやる。」


「あたしのアナルどうでした?」 
「いや、まいったな、、、すっかり堪能させてもらったよ」 
「あんっ! やめてくださいな、そこ弱いんです、、」 
「このほっそりしたうなじ、香しい髪の匂い、、たまらんな、、」 
「ちょっとシャワー、浴びてきますね」と言ってエリカは、背後からからみついて首筋にキスしてくる男を払いのけるようにしてベッドから下りた。 
「シャワーが済んだら、もう一発だ。わしのムスコ、またこんなになっとる」 
「あらいやだ、、」 
 エリカは艶然と笑みを浮かべながら男に背を向けた。 
 バスルームに入って、肩甲骨に届く長さの髪を巻き上げてタオルでターバン状にカバーしてから、シャワー栓のタッチスイッチに触れる。 
 熱い湯が全身に降りかかる。 
(ああ、、気持ちいい、、) 

 あの指尻ゑ梨花になりきって過ごすのだ。
 男である自分が、指尻ゑ梨花という名のシーメール美女になって、にぎやかな繁華街をハイヒールで闊歩し一夜かぎりのアバンチュールを求める。
 そして同時に、指尻ゑ梨花という存在自体を汚す。 
 すれちがう男どもは、皆、必ずといっていいほどエリカに注目する。 
 おおっ!すげえいい女じゃねえか、という賛嘆の目、こんな美人と犯りたい、という酔っ払いおやじのいやらしい目、、。
 そんな視線を浴びるのが、めくるめく快感なのだ。
 サポーターできつく固定してあるペニスが発熱膨張して痛くなる。
 その疼きがたまらない。 
 今夜の男は甲斐と名乗った。 
 本名かもしれないし、偽名かもしれない。どちらでもいいことだ。 
 甲斐は誘い方が手慣れていた。 
「土曜の夜も更けてひとり寂しくしているお姫さまのお名前は?」 
 ショットバーの隅っこでひっそりとグラスを傾けていると、いきなり、そう言われたのだ。
 馬鹿かコイツと思いながら、こういう自意識の高い男は暗示に掛けやすい事も判っていた。 
 彼氏にフラれたの?などと、つまらない常套句で誘いをかけてくるタイプの男の方が、かえって難しい。
 そういう男は簡単に術に嵌められるが、心に厚みがないから、深い施術が出来ない。 
 年の頃は四十代の半ば、遊び慣れた風できちんとしたスーツ姿で、会社員の匂いがした。
 本物の遊び人の相手をするには危険がありすぎる。
 『今は、少し自重してくれ』と美馬の筋から言われていた。 

「エリカよ」 と答えると、「それじゃ、エリカ姫のエスコートをさせてもらえませんか?」と笑みをたたえて言うので、「よろしかったら、お願いします」 と返事をした。 
  そのあと、ホテルのベッドを前にして口唇を重ね合わせたところまでは、正体を見破られていなかったはずだ。
 けれど、抱擁されて、甲斐の手が胸元に伸びたとき、偽乳房で胸のふくらみをつくっているのを察知された。 
 ここが勝負の分かれ目、ひどくスリリングな瞬間だ。
 普通なら催眠の意識誘導でなんなく切り抜けられるが、今は、指尻ゑ梨花としてその事自体を楽しんでいる。 
「そうか、、、お姫さまは、実はお姫さまじゃなかった?」 
「そうなの、失望しちゃった?」
 実は、それどころか、お前の想像してるような人間でもない。
 私は正真正銘の化けものだ。 

「いや、、」 
 甲斐の顔が戸惑いを隠しきれない。
 女を装った指尻ゑ梨花、いやそのゑ梨花になりすましたエリカの色香が試されるときなのだ。 
 エリカが男だとわかって撤退するのか、それとも、男だとわかっても、エリカの濃艶な色香に屈してしまうのか。 
 甲斐は屈した。 

 シャワーを終えて、桜色に染まった裸身を姿見に映してみる。 
 顔だけ見ると男好きのするいい女だ。
 そのように見えるメイクをしてあるのだけれど、、。 
 肩は撫で肩気味で、ほっそりとした華奢な身体に平らな胸、腋の下や脚の無駄毛は念入りに処理してある。
 ただ一点、股間に垂れている男根だけが美女の完成を裏切っている。 
 けれども、平板な胸とペニスを持つ倒錯美女を、甲斐という男は堪能してくれた。
 本物の指尻ゑ梨花は人口乳房を持っている、だから、その意味では私はライバルに勝ったのかも知れない。 
 エリカはパウダーをはたきなおし、紅筆を使ってルージュをくっきりと塗りなおした。 
 そして、定番だがシャネルの5番オープルミエールを耳たぶのうしろ、胸、尻朶につけた。
 マレー語で「花の中の花」を意味するイランイランは、女性の魅力を大幅に高めてくれる。
 トップでイランイランのエキゾチックな甘さがふんわりと立ち上がる。
 男の匂いを消し去り、妖しくも淫らに男を翻弄するための役に立つツールだ。 
 バスタオルを胸にまいて腋の下で留め、エリカは宴の閨へと戻った、、。 

 ベッドの枕板にもたれて煙草を吹かしていた甲斐は、エリカがベッドに腰かけるや否や、エリカを抱き寄せて口唇を奪った。 
 煙草のヤニ臭さとお酒の匂い、、、壮年の男の味がする。 
 普段の自分ならどうかと考えてみる。こういう男に化ける事はあっても、逆にキスを受け付けることなど考えられない。
 だがそうするのは、指尻ゑ梨花の、倒錯を知るためだ。
 指尻はこんな時に、自分は女には興味が無くて男が好きなホモなのだ、と実感しているのではないかと想像をしてみる。 
「あら、付いちゃった」 と、口唇を離して、エリカは真っ赤な長い爪の指で甲斐の口唇にべっとりと付着したルージュを拭ってやった。 
「シャワーを使ってる間、待ちきれなかったぞ」 
「だって、あなたがいっぱい出してくれたから、いちどきれいにしてこなくっちゃ、と思って、、」 
「こうして顔だけ眺めていると、とても男だとは思えん」 
「あら、そう?」 
「髪の毛も、男の髪じゃない」 
「そうかなー?」 
 エリカは頭に巻いたタオルを外し、しなやかに首を二度、三度と振って自慢のロングヘアを波打たせ、手櫛でうしろに梳き流した。
 その仕草はいかにも女っぽい艶かしさで、男の視覚に訴えかけるのをエリカ自身が最もよくわかっている。
 というよりも、私はそんな指尻ゑ梨花になりきりたいのだ。 
 甲斐は即座に反応し、エリカの細肩を抱いた手に力をこめて引き寄せ、エリカは腰かける姿勢から甲斐にしなだれかかる姿勢になった。 
「こんなに色っぽい女なのに、ここにはこんなものが生えてる、、」 
 甲斐の手は膝の間から太腿に這い上がってきて、勃起しつつあるエリカのペニスを撫でる。 
「あんっ、、」 と、エリカは腰をくねらせて喘いだ。 
「本当を言うと、わしは男とやったのは初めてだ」 
「でも、上手でしたよ。初めてだなんて、ほんと?」 
「ウソじゃない。わしは女遊びはしているが、男と遊んだことはない。、、まさか、こうなるとはな、、自分でも驚いている。ほら、触ってみろ」 
 もちろん目で見てわかっているのだが、エリカは言われた通りに腕を伸ばして、甲斐のペニス棒を握ってみた。 
 硬く怒張し、熱く脈打っている。 
「あらあら、もうこんなに元気になって、、」 
「エリカのせいだぞ」 
 灼熱したペニスを掌に包みこんで触感すると、えもいわれぬ陶酔感に見舞われる。 
 この男は、指尻ゑ梨花に化けたあたしに発情している! 
 今さっき、あたしの肛門に挿入して、あまりにもアブノーマルで刺戟的な興奮を味わい、その糜爛した快感をもういちど味わいたくて勃起している、、。 
「エリカも元気になってきたぞ」 
「いや、、」 と、シナをつくって恥じらいを見せ、腰をくなくなとくねらせてみる。 
「しゃぶってくれ」 
「あらまあ、下品ね」 
「さっきもしゃぶってきれたじゃないか。エリカのおしゃぶりは絶妙だ。その赤い口唇を見てると我慢できなくなってきた」 
「じゃ、そのあとで、いっぱいしてくれます?」 
「ああ、もちろんだとも。わしはな今、女を知ったばかりの小僧のような気分なんだよ。今まで知らなかったのが損をしたような、もったいないような、そんな気分なんだ。男の尻がこれほどいいものとはなあ、、」 
「そんなにほめていただくとうれしい。それじゃ、お口でね」 
 エリカは体の位置を変えた。 
 横座りをさらに崩すような格好になって甲斐の下腹部にしなだれかかり、細指に握りしめた肉棒を間近でじっくりと眺めてみる。 
 おそらくは長年、女の淫らな汁で磨かれてきた黒い魔羅だ。
 鼻先に迫る黒紫に艶光りする亀頭から強烈な牡の臭いが漂ってきて、エリカはめまいがしそうなほど頭がクラクラとなった、、。
 ああ私は今、指尻ゑ梨花になっている。
 気持ちがいい、、、。
 そうだ、いっそのこと指尻ゑ梨花を殺して、この私が指尻ゑ梨花になってやろうか、、。

 パペッターは、その時、そう思った。



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