トップ>小説>その男、青い女を落とす
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episode 00. 序

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 春の夜空に、煌々と月が輝いている。月面の肌が見えるのではないかと思うくらい、大きな満月だ。
 天窓から月が覗く寝室のベッドで、男女が激しく交わっている。

「あっ……んんっ、いい……っ」
「ねぇ、っ、中に出してもいっ?」

 ギシギシとベッドを軋ませながら、二人は迫り来る快楽に身を投じている。六年越しの片思いを成就させた男の破壊力は凄まじい。奥の奥を的確に突き上げる。

「はぁ……んっ、ああっ!」
「……い……くっ」

 喘ぎを交えた声を吐いて、二人は同時に果てた。汗ばんで大きく上下する乳房の上に、甘えるように男が顔を埋める。
 精魂尽き果てて、体に力が入らない。吐精して少し柔らかくなった陰茎が、強く収縮した膣壁に押し出された。

いろ、愛してるよ。ずっと……」

 そうつぶやいて、男は胸の上で眠ってしまった。彩と呼ばれた女が、男の頭を優しくなでる。男の割に柔らかいくせ毛を、指に絡ませてほどいて何度もなでる。

「おやすみ、仁寿じんじゅ

 彩は初めて男の名前を呼んでみた。しかし、名前を呼んでとあんなに強請ねだっていた仁寿の意識はとうに夢の中。その耳には届いていない。

「ふふっ。聞きそびれちゃったね、仁寿」

 仰向けの体を横にして、彩は仁寿の体をベッドに下ろす。よっぽど疲れたのか、仁寿は少しも動かずに眠っている。
 チュッと仁寿の頬にキスをして、彩は二人の体に布団を掛けた。布団の中が互の体温で程よく温まると、睡魔がゆっくりと彩を眠りの底へいざなった。

 昼過ぎに婚姻届を出して、二人は今日、晴れて夫婦になったのである。
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