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第3章〜転生王子と舞踏会

舞踏会(キャラ年齢修正5/3)

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 大広間の大きな扉を開けると、正面奥に王族の席が設けられていた。中央に王と王妃が座り、王妃の隣にステラ、王の隣にアルフォンスと俺の席があった。

 その席に座り、俺はそっとため息を吐く。
 参加したくないとは思っても、結局は舞踏会に参加してるんだもんなぁ。

 アルフォンスは俺のため息に気付いたようで、微笑んで顔を覗き込んできた。
 「緊張しているのかい?」
 俺はコクリと頷いた。
 「えぇ……まぁ。シュリ姫と初めてお会いしますし」
 「大丈夫。フィルは可愛いから、きっと素敵なダンスパートナーだと思っていただけるよ」
 そう言うと、グッと握りこぶしに力を込めて俺に頷いて見せる。

 「ありがとう……ございます。」
 その根拠のない自信は何ですか?
 この兄のブラコンフィルターはどこまで分厚いのか。

 すると、その隣にいたマティアス王もこちらを見てからかうように微笑む。
 「何だ?何か失敗するんじゃないかと思っているのか?」
 「心配することないわ。あのミリアムが合格と言ったのでしょう?」
 微笑むフィリスに、俺は頷いた。
 「先日ようやくダンスも及第点貰えました」

 すると、ステラが珍しく「えっ!」と驚いたような声をあげた。そして、そんな自分に気付くと少し頬を赤らめる。
 「失礼しました。でも、それが本当ならすごいですわね。……ミリアム先生は厳しい方ですもの」
 実感のこもった後半の言葉に、俺とアルフォンスはうんうんと頷く。
 フィリス王妃はそんな俺たちを見て、口元を押さえながらくすくす笑う。
 「本当よ。フィルは優秀だと、毎日私に報告しに来ていたくらいだもの」

 え、あの鬼教官にそんなそぶりは全くなかったけど……?

 「へぇ、大したものだ」
 アルフォンスは感心したように俺を見ると、セットが崩れない程度に俺の髪を撫でる。
 そんな様子にマティアス王は目尻を下げた。
 「成果を見るのが楽しみだな」
 皆が微笑みながら頷く。

 き、期待が重い。
 こうやってプレッシャーと共に、退路が断たれてくんだな。
 口元を引きつらせながら、俺はへらっと笑った。
 「……頑張ります」

 見た目は外国人でも、中身はNOと言えない日本人。
 嫌でも無理をする気質。
 なかなか前世の性格って抜けないものだ。

 姫君のダンスやお話しの相手になることはまだいいんだ。今夜だけ頑張ればいいことだし。
 ……これが見合いでないのなら。

 はっきり言われたわけではないが、年齢から考えて確かに可能性は一番高いんだよな。
 政略結婚……自由恋愛社会にいた自分には、いまいちピンとこない。

 俺がうーむと唸っていると、大広間の扉は開かれた。

 「ナハル国アバル国王陛下、マリサ妃殿下、シュリ殿下、ナハル国大使トマル様ご入室でございますっ!」

 扉を開けた衛兵の声と共に、4人の人が入ってきた。俺たちは席を立つと、他の貴族たちと一緒に拍手で出迎える。
 それとともに大広間に優雅な曲が演奏され始めた。

 あれがナハル国の御一行か。
 先頭の男性がアバル王だろう。金糸で細かく刺繍された腰までの長い上着に、白いストレートのズボン。頭にえんじ色に金糸の刺繍が入ったトルコ帽を被っている。金のネックレスや指輪をいくつも付けていて。とてもゴージャスだ。

 隣の若草色のロングドレスを着た女性がマリサ王妃か。金のイヤリングに金の腕輪。首に同色の薄い布がロングマフラーのように巻かれている。金糸の刺繍がされているのか、その布が揺らめく度にキラキラしていた。控えめな感じの女性だ。

 後ろには大使のトマルと思われる男性。服装はアバル王と同じだが、こちらは色や刺繍もシンプルで金色が少ない。
 ただ2人とも恰幅が良く、口髭を蓄えているので、ナハル国の男性はこういう見た目の人が多いのかもしれない。
 
 トマル大使にエスコートされている少女がシュリ姫だな。
 頭はポニーテールにして、それに金の髪飾りと金糸の刺繍のされた水色のヴェールをつけている。足首までの丈の長い水色のドレスは、腰までスリットが入っており、そのスリットからは白いズボンが見えていた。可愛いらしさと言うより、機動性重視と言った風態だ。

 6歳にしてはスラリと背が高く、足が長い。
 ミリアム先生が言っていたように、大人っぽい綺麗な子だ。強めの眼差しが、意志の強さをうかがわせる。


 「ようこそいらっしゃいました」
 マティアス王は席を立って歩み寄ると、アバル王とがっちり握手した。
 「このような舞踏会を開いて下さり、誠にありがとうございます。マティアス国王陛下」
 2人の様子を見ると、グレスハート国とナハル国の国交は良好のようだ。

 俺たちもマティアス王の脇に立ち、頭を下げ挨拶をする。アバル王はそれに対し会釈で応えると、ふと俺に視線を止めジッと見つめてきた。
 
 何だ?めっちゃ、観察されてる……。
 居心地の悪さを誤魔化すように微笑むと、アバル王もにっこりと微笑んだ。
 「アルフォンス殿下やステラ殿下はお会いしたことがありますが、フィル殿下は初めてお会いいたしますな」
 「はい。お会い出来て大変嬉しく思います。どうぞよろしくお願いいたします」
 そう言うと、アバル王やマリサ王妃は驚いたような表情になる。

 「これは驚いた。幼いながら大変利発な殿下だ」
 アバル王は笑いながら同意を得るようにマリサ王妃の顔を見ると、王妃は控えめに微笑んで頷く。
 「本当に」

 「それでは、さっそく我が姫のお相手をお願いできますかな?」
 そう言ってシュリを前に出したアバル王に、俺は微笑みで返す。

 俺たちがダンスしなきゃ、舞踏会始まらないもんな。もう、こうなりゃやってやるしかない。

 俺はシュリ姫の前に立つと、ダンスの申し込みの為、手を差し伸べお辞儀をした。
 シュリ姫はそっとその手を握る。

 それが合図だったかのように大広間には軽やかな三拍子の曲が流れ始めた。
 皆が壁際に移動する。ホール残ったのは俺たちだけだ。

 
 ダンスが始まる。
 
 始まる前からわかっていた。
 ……背が足りません。足の長さが違います。

 子供で歳近いって言っても、女の子はとても成長が早い。特にシュリ姫の場合、子供モデルのようにスラリと手足が長かった。
 
 だが、急に足や背を伸ばせるはずもない。
 歩幅とステップを合わせる為、めいいっぱい大きく体をさばく。

 すると、シュリ姫が踊りながら小声で話しかけてきた。
 「貴方、その歳でもう武道やってるの?体さばきにキレがあるわ」
 「そうですか?それを言ったら殿下も動きにキレがありますね」
 「シュリでいいわ。え、そう思う?」
 言われてシュリ姫は嬉しそうに笑う。

 リードする男性はともかく、女性で武道のキレがあったら優雅さには欠けるとは思うが。俺はそう言うの気にしないし、こんなに喜ぶと言うことは、このシュリ姫、武闘派なのかもしれない。
 
 「剣の師匠にはかなり筋がいいって褒められてるのよ」
 大人っぽい雰囲気だが、自慢気に話す様子は子供らしかった。
 「へぇ」
 感心したように微笑むと、シュリ姫は少し驚いた顔で俺を見てくる。
 「女のくせにって言わないのね」
 「それが貴女のやりたいことなら、それはやるべきことでしょう」
 クルリとターンしながら言うと、俺の手をグッと掴み引き寄せる。
 「そうなの!やるべきことなのよ」
 顔を近づけ、小声だがハッキリと言った。

 あ、あの、引き寄せるの俺の役目なんだけども……。
 気迫も相まって、まるでカツアゲにでも合っているような感じだ。
 
 「うちの国は今、女も強くならなきゃいけないの」
 切羽詰まったような雰囲気に、俺は驚いてシュリ姫を見つめた。
 「それってどう言う……」
 詳しく聞きかけた時、突然大広間の灯りのいくつかが消えた。
 
 ただでさえライトより薄暗いランプや蝋燭だ。火が消えればさらに薄暗い。
 演奏が止まり、俺たちはダンスを止めると辺りを見渡した。





※この度の熊本地震で被災された皆様、ご家族の皆様、心よりお見舞い申し上げます。 
 被災地の皆様の安全と1日も早い復興を、心よりお祈りいたします。
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