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第3章〜転生王子と舞踏会

刺客現る!(キャラ年齢修正5/3)

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 そうか、狙いはシュリ姫なのか。
 だとしたらかなり面倒な事態だ。怪我人を出さず、早急に対策を立てなくちゃならない。
 焦る気持ちに、冷や汗がにじむ。

 「大広間からシュリ姫だけそっと出せないかな?」
 【この部屋にいる刺客は1人ですが、外に敵が何人いるかわかりません。単独になるのは危険でしょう】
 あーそうか、単独はマズイか。だからと言って皆で逃げる時、人ごみに紛れて刺されても困るしな。
 【それに、大広間の扉は壊されて今開きませんし】
 
 ……それ早く言ってよ。

 じゃあ、どうしたらいいかな。
 俺は腕を組んで唸った。
 今このことに気付いているのは、多分俺だけだ。マティアス王やアバル王に知らせたいところだが、薄暗いうえに犯人がまだ隠れている状況では下手に動けない。
 俺たちの行動が犯人を刺激し、無差別に攻撃し始める可能性もあるからだ。

 何故シュリ姫が狙われているのかはわからないが…。
 どんな理由だとしても、小さい姫君を傷つけていいはずはない。
 
 「ヒスイ、闇の妖精って弱点ないの?」
 小声でそう聞くと少し考えるような間があった。
 【……そうですね。闇の妖精は強い光に弱かったはずですわ。一時的に弱らせる程度ですけど】
 光か……。鉱石の力を使えば、可能だけど……。
 鉱石はすでに極秘事項になってしまっている。使ったらマズイよな。
 しかし、今は緊急事態だ。ここで使わず大事になって、後悔はしたくなかった。 
 「弱らせるだけで充分だ。灯りがつけられればいいからね。鉱石を使おう」  
 自分自身に頷いて心に決める。

 「俺に矢を射った人は、まだ闇に紛れてるはずだよね?俺が光を放ったら、その人を捕縛できる?」
 【お任せ下さい。闇の妖精が使えぬ状態であれば、取るに足りませんわ。フィルに矢を射ったこと、後悔させてやります!】
 物騒な物言いに、俺は口元をヒクリとさせた。ヒスイは基本柔和だが、時々コクヨウより激しい性格だなと思う。
 「お手柔らかに……」
 俺は心の中で手を合わせる。

 【闇の妖精はいかがいたしますか?】
 「ん?ああ、それは別にいいよ。妖精が悪いわけじゃないし」
 笑ってヒラヒラと手を振った。
 妖精には基本善悪と言うものがわからない。どうやって刺客が闇の妖精を操っているのかはわからないが、妖精にとってはイタズラ程度で、悪い事をしている意識はないのだ。
 闇の妖精よりも操っている者の方が重要だ。
 【畏まりました。では、御心のままに】
 ヒスイはくすりと笑ってそう言うと、移動したのか気配が消えた。
 
 
 さて、刺客が距離を詰めて最終手段に出てくる前にやるか。
 俺はスウっと息を吸い込む。
 「父さまーっ!こんな時は、まずは落ち着かなくてはいけません。皆に目を閉じさせて下さーい!」
 俺が叫ぶと、少し訝しげな父の声が聞こえた。
 「フィルか?目を閉じるとはいったい……」
 「大丈夫なのかい?」
 心配そうなアルフォンスの声に、明るく答える。
 「僕は大丈夫です。目を閉じて10数えてみたら落ち着いたので、皆もやってみたらと思って」
 詳しくは話せないので、一生懸命をアピールして頼む。
 しばらく悩むような間があったが、マティアス王は意を決したように号令を出した。

 「皆の者っ。ナハル国の方々。まずは落ち着くために、皆で目を閉じよう。っ!早急に事態を収束させると約束する」
 威風堂々とした声だった。先程まで不安でざわめいていた声が、次第に落ち着いていく。
 
 やっぱ凄いなぁ、国王様は。何だか俺まで誇らしくなって、自然と口角が上がる。
 よぉうし!俺も頑張らなきゃな。

 見るとシュリ姫も目を閉じている。そろそろ行動を起こしても大丈夫だろう。
 俺は服の中からネックレスを出した。
 太陽のモチーフにオレンジ色の鉱石がはめられている。
 鉱石屋の親方に、森で採掘した鉱石を渡す代わりに、鉱石をアクセサリーに加工してもらったのだ。
 光の鉱石はネックレスに。火、風は指輪。土、氷、霧は細い腕輪にしてもらった。
 おかげで成金のようですけど。

 ネックレスを掴んで、目を閉じる。
 イメージはカメラのフラッシュ、それも特大の発光だ。
 
 「発光」

 鉱石を使ったと気取られないよう小さく呟く。
 それは一瞬だったが、目蓋を閉じても強く明るい光を感じた。

 【うわぁっ!!】【眩しいっ!】
 妖精だろうか?そこかしこで小さな声が聞こえる。
 俺はそのまま火の指輪を付けた手を出す。先程まで灯っていたたくさんのロウソクの火をイメージで頭に浮かべた。

 「灯す」

 辺りが明るくなっていくのを感じて、そっと目を開ける。
 部屋が急に明るくなって、その眩しさに目をシパシパさせる。
 片目で何とか見渡すと、他の皆も驚いたように目を開け始めていた。
 
 「こ、これは一体どういう事だ……」
 「何があったのだ……。」
 マティアス王とアバル王は、眩しさに目を細めながらも俺たちの元へやってきた。
 それから、自分の子供をそれぞれかばうように抱きしめる。
 何だか少し気恥ずかしいな。

 「う、うぅぅぅっ」
 呻く声が聞こえる。
 俺たちの前には、木の蔦でぐるぐる巻きになった黒い物体が床に転がっていた。

 これが刺客か……。
 俺はゴクリと喉が鳴った。
 闇の妖精によって包まれている様子は、予想していたよりもさらに不気味だ。
 予想もしていない他の人は、俺以上に衝撃だろう。
 「何なのだ。これは……」
 マティアス王は驚きのあまり乾いた声を発した。
 周りにいた貴族たちも、不気味な物体に声も出ないようだった。

 だがその黒い物体も、闇の妖精が離れていくことによって徐々に中身が現れていく。

 そして驚いた。

 10歳くらいの少年だったからだ。
 黒装束を着た少年は、平均より細身に見えた。だが、蔦を振り解こうともがいている力は強いので、かなり鍛えているようだ。
 漆黒の黒髪が、顔の白さをやけに際立たせる。
 ただ、その白い顔に赤い平手跡を発見した。……どうやらヒスイの仕業のようだ。

 少年は目をギュッと閉じて、呻いている。
 自害させない為か、ヒスイが口にと蔦を噛ませているので呻くしかできないのだ。
 さっき目を開けていたから、モロに光の衝撃くらっちゃったんだな。きっとチカチカして目が開けられないんだろう。

 見ると装備していたらしきナイフや小型の弓矢が遠くに散らばっていた。
 あの弓矢で俺射られたのか。
 ……ん?あの矢の先端、有り得ない色してない? 
 紫と黒が入り混じったどう見てもヤバそうな色だ。

 ねぇ……もしかして……
 毒?俺、毒矢射られたのかっ?!
 
 今更ながらに命の危険を再確認し青くなる。ブルリと震えて、マティアス王の服を掴んだ。

 「フィル……いったいこれはどういう事だ」
 少年を凝視しながら呆然とマティアス王は聞いてきた。
 「多分、刺客です」
 「刺客?!この少年がか?」
 見下ろした俺の近くに毒矢が転がっているのを発見して顔色が変わる。
 「お前が射られたのか?怪我はしていないか?」
 しゃがみ込み俺の体のあちこちを確認する。

 俺はコクリと頷いた。
 「僕は無事です」
 安堵の息を吐いたマティアス王は、それから少年を振り返る。
 「そうか。……しかし、何故フィルを……」
 「僕じゃなくて、シュリ姫を狙っていたのだと思います」
 アバル王の側にいるシュリ姫を見る。
 「そんな……まさか……」
 アバル王は青ざめ、シュリ姫を抱きしめる手に力を込める。だが、シュリ姫は唇を少し噛んで、俺をジッと見つめていた。

 なるほど……。思い当たる節があるって表情だ。
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