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第3章〜転生王子と舞踏会

一件落着!

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 「あーーー!終わった終わった!!つっかれたぁ〜。」
 俺はごろりんと芝生に寝っころがった。ついでにそんな俺をのぞき込んでいたホタルを捕まえて抱きしめる。
 「あっ!フィル様、今敷物を敷いてますから」
 木陰に敷物用の布を広げているカイルが焦ったような声を出す。
 「そんなものはどうでもいいよ〜。ごろごろしたい」

 ホタルを抱っこしたまま、芝生の上をごろごろと転がった。転がるのが好きなホタルは、転がる度に楽しげにナウナウ鳴いている。
 「ホタル〜楽しいかー?そーれごろごろ〜。ごろごろ〜ごろごろ〜ごろご…うっ!」
 やばい。あんまりに喜ぶので調子に乗ってごろごろしてたら目が回った。

 「目…目がぐるぐるする」
 ホタルをラグビーのトライのように芝生に置くと、力尽きてそのまま芝生に突っ伏す。
 「あぁ!だから芝生で転がらないで敷布の上でお休みくださいってば!」
 カイルが慌てて芝生に倒れこんだ俺を回収に来てくれた。
 痩せているのに力がかなりあるようで、俺を小脇にひょいっと持ち上げて敷布の上に置いた。
 
 なんか今、クレーンゲームの景品の気持ちがわかったわ。
 
 むくりと起きると、足を伸ばして座る。
 「アリスさんからのお茶も用意しましたから」
 カイルは慣れない手つきで、マクリナ茶の入ったカップを置いた。セッティングの作法をアリスに習ったようだが、一朝一夕にはいかないようだ。

 微笑ましく思いながら、お茶のカップを取ろうと手を伸ばす。すると、そのカップの周りをウロウロしている黄色い綿毛を発見した。
 「コハク?」
 名前を呼ぶとカップの隙間からヒヨコが顔を出す。シュリ姫が召喚したあのヒヨコだ。結局俺のポケットに居座ってしまったので、召喚獣の正式な契約をすることにした。

 コハクは俺を見つけると、テテテテと駆け寄ってきた。
 【ポッケ!ポッケ!】
 俺に向かって翼を広げ、ぴょんぴょんとジャンプする。 ポケットに入りたいアピールだ。
 俺のポケット……どんだけ魅力があるんだろう。まさかコハクにとっての俺の存在意義、ポケットじゃあるまいな。
 コハクを俺のベストのポケットにしまうと、満足そうにフンスと息をつく。

 【ごろごろおしまいですか?】
 芝生からこちらへ転がってきたホタルは、俺を見上げて残念そうな声を出す。

 まだ……ごろごろし足りませんか?

 すると、ポケットのコハクも声を上げる。
 【ごろごろ!したい!】
 いや、このままごろごろしたら、コハク確実に潰れるから。
 「ま…また今度ね。」
 俺がへらっと笑って誤魔化すと、食い気味で返事が来た。
 【約束です!楽しみです!!】
 【楽しみ!】
 
 ……どうしよう。ごろごろが日課になったら。

 自分が墓穴を掘ったことを感じて沈んでいると、ヒスイが俺の前に降り立った。
 【ナハル国の船に風を送ってきましたわ。あれでしたら3日の行程が1日で着くと思います】
 追い風にするだけでそんなに移動速度が変わるのか。これで事件のせいで遅れた分をチャラにできるだろう。
 感心しながらにこっと笑う。
 「ごくろうさま」
 
 【でも、残念でしたわね】
 頬に手をあて、ふぅと息を吐く。俺はお茶を飲みながらヒスイを見上げる。
 「何が?」
 【シュリ姫とのお見合いですわ】 
 俺は「んぐっ」とお茶を詰まらせるようにして飲んだ。
 あっぶな、あやうく吹き出すところだった。
 「それはもう済んだ話でしょう。」
 俺は脱力しながら、チロリとヒスイを見た。

 先刻、ナハル国一行の乗る船を見送った時のことを思い出す。
 乗る直前アバル王は俺を呼び寄せ、こっそりと言った。
 「フィル殿下、あなたはとても賢く優しい。今回こちらに参ったのも、シュリ姫の婿にふさわしいか見定めるためでした。素晴らしい王子であれば、いずれは我が国の王にと思っていたのです」
 アバル王の真剣な言葉に、俺は目を見開く。
 今回の舞踏会、マジで見合いだったのかと汗が吹き出る。
 「マリサの処罰に関しては誠に感謝しております。お世話になったグレスハート王国に何かあらば、ナハル国は協力を惜しみません」
 俺の小さな手を大事そうに掴み、ほほ笑んで握手をする。しかし、すぐにそのほほ笑みは落胆で消えた。
 「ですが…残念なことに、獣人を側に置き擁護する決断をされては、我が国の婿にする事が出来ませぬ。他の国の王族も同じでしょう」
 アバル王は心底残念そうにため息を吐く。俺は何とか眉を下げると大きく頷いた。
 「そうですか。残念です。まぁ、そうでしょうね」 
 そんな俺を見て、アバル王は苦笑した。
 「この決断を後悔しないのか聞こうと思うたが…、愚問でしたな」
 やはり喜んだのばれたか。
 俺は頭を掻くと笑って誤魔化した。
 「僕はきままな三男坊ですから。きっと王様とか似合わないと思います。」
 すると、アバル王は俺をジッと見つめた後、深いため息をついて『残念だ残念だ』と言いながら船に乗り込んでしまったのだった。

 
 【王になれる機会であったのに】
 木陰で寝ていたコクヨウは、あくびをしながらこちらにやってきた。
 「性に合わないって。根っからの庶民なんだから」
 俺が軽く笑うと、コクヨウはニヤリと笑い返した。
 【相変わらず野心がないな】
 野心なんてないよ。あったら自分の知識と能力フル活用している。
 「俺はフィル様が王になられたら、獣人にとっては幸せだと思いますが……」
 お茶のお代わりを注ぎながらカイルは言う。
 「知ってる?王様って忙しいんだよ?」
 父親見てたらとてもじゃないが王様になろうなんて思えない。気楽な三男坊でどれだけ良かったか。

 と、ふと首を傾げた。
 あれ?今普通に会話に入ってきたな。
 「カイルは皆の言ってることわかるの?」
 獣や精霊の言葉が解るのは俺だけだと思っていたが。
 「いえ、ですが俺は闇の妖精の言ってることだけはわかるので、通訳して貰ってるんです」
 カイルの胸元辺りから、得意げにぴょこりと闇の妖精が顔を出す。
 なるほど、同時通訳か。それは便利だ。
 【私キミーだよ。あと私の兄弟のキム、キラ、キキ、キリ、キオがいるよ】
 「へぇ、兄弟なんだね。よろしく。」
 カイルはキミーに指示を出してお辞儀させる。
 「俺が生まれた時から一緒にいるんで、契約とかはしてないんですが。俺の家族みたいなものです」
 そうか。だから捕まった時心配して離れなかったんだな。

 「カイルも僕の家族だからね」
 俺がそう言うと、驚いたような信じられないような表情で俺を見る。
 それから、泣きそうな顔になって頭を下げた。
 「ありがとうございますっ!!」

 コクヨウはそんなカイルをチラリと見ると、俺の膝に飛び乗ってきた。
 【お前はフィルの仕える我らの中でも、一番下っ端だぞ】
 そう宣言するように、ズビシと右前足をカイルに向ける。

 「し、下っ端……」
 カイルは俺の胸ポケットから顔を出すコハクと見つめ合う。
 【下っ端!】
 ヨッ!と挨拶するようにコハクが手を挙げると、ショックを受けてカイルがよろめいた。
 あぁ……確かにこの生後1週間も経たないようなヒヨコに下っ端と言われちゃあな。
 だが、グッとカイルは堪えた。
 「いや、だがそうかもしれない。家来にすると言ってはいただいたが、正式に仕えるとなったのはコハク先輩より後。なら当然と言えば当然」
 そう自分に言い聞かせるようにブツブツと呟く。

 その様子を見て俺は苦笑した。
 「いや、順位はないよ。皆同じ僕の家族だ」
 【家族の中で、僕は何ですか?】
 ホタルは小さなしっぽを振り、ワクワクしながら聞く。

 俺はうーんと唸って考える。
 「コハクが末っ子で、ホタルがお兄ちゃんかな。」
 「お、俺は?」
 カイルが心配げに見てくるので、笑ってしまった。
 「カイルはコハクとホタルのお兄さん」
 カイルはホッとしたように胸を撫で下ろす。

 それで言うと、スケさんカクさんは従兄弟のお兄さんぽいな。
 【あら、では私は年の離れたお姉さんってところですわね。フィルは何ですの?】
 ヒスイが首を傾げて聞いてきたので、顎に手をやり空を仰ぐ。
 「お父さんかなぁ」
 いちおう家族の中心だし。

 すると、コクヨウが膝にのったまま俺の方に向くように座り直した。
 【待て、フィルが父ならば我は何なのだ】
 異議ありとばかりに、右前足で俺を指さす。俺はコクヨウを抱っこしてマジマジ見た。
 「え、コクヨウ自分がお父さんだと思ってたの?」
 【皆をまとめられるのは我くらいであろう】
 二本の尾をファサファサとさせて、当然とばかりに胸をはる。

 いや、今までで一度もまとめられた記憶ないけど。
 
 コクヨウかぁ。イメージとして、お兄さんでもないし、お父さんでもないんだよな。
 コクヨウをジッと見る。そして、閃いた。

 「おじいさん!」

 カイルとヒスイが吹き出し、コクヨウのぷにぷに肉球パンチが飛んできた。
 【年寄り扱いするなっ!】

 え、えぇー。
 生き字引みたいに物知りだし、お父さんが何言ってもコントロール不能なあたりピッタリだと思うんだけどなぁ。

 肉球でぷにぷにされながら、うーんと唸った。




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今回でナハル国の話は一件落着です。成長する前に、会談前夜の話を1話おまけで出す予定です。

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