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第3章〜転生王子と舞踏会

おまけ〜会談前夜

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 それは会談前夜のこと。

 話し合いもひと段落ついた頃だった。
 アルフォンスも部屋に戻り、俺も戻るかと堪えていたあくびを盛大にする。

 「ホタル」
 俺が召喚すると、白い毛玉が空間から飛び出してきた。
 温暖なグレスハート王国も夜は肌寒い。城自体石造りだから暖炉のない廊下は底冷えするし、隙間風も多かった。
 しかし湯たんぽみたいなホタルがいればあったかく帰れる。

 むぎゅっと抱きしめれば、もこもこも相まってほっこりあったかい。
 そんな時、俺の胸元辺りから「ピッ!」と音がした。

 「ん?」
 笛なんて入れてたっけ?
 首を傾げて胸元を見ると、ぷはっとポケットの中からヒヨコが顔を出す。ホタルを抱きしめた事で、一瞬潰されかけたようだ。

 はっ!返すの忘れてたっ!
 慌ててホタルを床に置くと、ポケットからヒヨコを出す。
 「どうした?」
 マティアス王が上から覗き込むように見てきた。そして、俺の手の上の物を発見する。
 「光鶏こうけいではないか。」
 このヒヨコ光鶏って言うのか。
 「シュリ姫のなんですが、返しそびれちゃって。」
 「シュリ姫の?」
 マティアス王は不思議そうな顔で首を捻った。

 【気が利いてるな。夜食か?】
 コクヨウはペロリと口元を舐める。俺は首を振って、ヒヨコを頭の上に掲げた。
 「違う違う。何でいつも食べようとするの。さっきプリン5個食べたじゃないか。」
 話し合いの最中飽きたと言って、プリンがっついていたくせに。
 鼻の脇にプリン付いてるからね。

 【夜食は別腹だ。】
 欠食けっしょく子狼め。
 デザートは別腹みたいな言い方してからに。
 「とにかく食べちゃダメだよ。」
 俺はすぐさまヒヨコを頭の上に避難させる。
 【なんだ。種仮シュカで夜食を出してくれたのかと思うたのに。】
 コクヨウはつまらなそうに言うと、手足を伸ばす。

 「えっ今、シュカで出す・・とか何とか言った?」
 俺が眉を寄せると、マティアス王が声をあげた。
 「そうか。種仮シュカか!」
 答えがわかったようにスッキリした顔で頷く。
 くっ!俺だけがわからない。

 ううーん、シュカ、シュカ、シュカ………………種仮シュカ

 俺はポンと手を打った。
 古代の召喚法だから、勉強の時サラ〜っと流したやつか!
 【種族を呼び出す召喚法だ。知らずにやっておったのか?】
 呆れたような物言いに、俺は肩をすくめる。
 「これを出したのシュリ姫だから。」
 「召喚獣は普通あるじから離れたがらぬものだ。だから返し忘れたと聞いて疑問に思ったのだが……。」
 マティアス王は珍しい物を見るように俺の頭の上のヒヨコを見る。
 「今は殆ど使われていないから忘れていたな。」

 そうだよな。制御出来ない為すたれてしまった種仮シュカ
 召喚獣であったなら命令は絶対なのだが種仮シュカは違う。
 言われてみれば……、シュリ姫もヒヨコが命令を聞かないって言っていたじゃないか。
 自分のうっかり具合にがっくりする。

 「あ、あの……。」
 マティアス王の後方。少し離れた所で立っていたカイルが、躊躇いがちに声を発した。
 「ナハル国では、まだ種仮シュカを使う者もいます。」
 「そうなんだ?じゃあその人がシュリ姫を利用する為に教えたのか。」
 俺はうーんと考えるように唸った。
 マティアス王も神妙な顔付きで頷く。
 「その可能性は高いな。確認は必要だろう。だが……。」
 俺の頭をひと撫でする。
 「それも明日の話だ。眠いのだろう?」
 はい。限界MAXです。さっさと部屋に帰りたい。だけど……

 チラリとカイルを見る。
 「牢屋には入れないですよね?」
 マティアス王は俺の気持ちを察したのか苦笑した。
 「まだ処分保留だからな。監視は付けることになるが、牢屋には入れぬ。」
 俺はホッと胸を撫で下ろす。

 「じゃあ、おやすみなさい。」
 頭にヒヨコを乗せたまま、ホタルを抱き抱える。コクヨウが鼻でドアを押し開けてくれた。

 今日は長かったな。ようやく部屋に戻って眠れる。
 だけど、明日は朝から会談か……長くなりそうだ。

 俺はあくびを噛み殺しながら、執務室を後にした。
 



※感想・お気に入り登録ありがとうございます!
 前回のお話、楽しんで頂けたようで嬉しいです。わちゃわちゃでしたが、成長前に召喚獣の皆を出したかったので。
 年齢のあたりはせめて徐々に成長させれば良かったですよね。反省するばかりです。

 今回のおまけは載せるかどうしようかなと思ってたとこで、でもせっかくなので載せてみました。
 

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